✒ 都 前 / 彫刻を堪能する吟遊詩人
「 一日目 」の始まりです。
──*──*──*── エルゼシア大陸
時は夕暮れ。
自身の事を『 偉大なる吟遊大詩人 』と名乗る “ 自称 ” なんちゃって吟遊大詩人のセロフィート・シンミンは、近くを通り掛かった≪ 都 ≫へ立ち寄る事にした。
態々人目を避けて旅をしているセロフィートが、何故≪ 都 ≫へ立ち寄る事にしたのかと言うと、野宿をする事に飽きたからだ。
お腹も空いたし、僅な非常食も尽きそうだった事もあるが……。
何よりも雨や風を凌げる屋根と壁のあるベッドで眠りたいと思っていた。
セロフィートの視界の先に見えている≪ 都 ≫の正門は閉じられかけていた。
なので、セロフィートは急ぐ。
但し、 “ 急ぐ ” とは言っても、慌てて急ぐのではなく、あくまで自分のペースを乱さずに────である。
2名の門番は双子ではないが、まるで双子のように眉間へ皺を寄て、徒歩で向かって来る旅人を嫌々しくも険しい表情で睨んでいた。
然し、当の本人はと言えば、2名の門番の気持ちを知ってか知らずか、全く気にする事もなく、徒歩の速度を上げる事もせず、お構いなしに、のんびりと歩いている。
壁に設置されている彫刻がセロフィートの視界へ入れば、2名の門番から睨まれているにも関わらず、セロフィートは暢気に、じっくりと彫刻を眺めては愛でる始末だ。
あまりにも見事で立派な彫刻にセロフィートは、人間の実際の肌の色とはまるで似ておらず、理想化されたような綺麗過ぎる宍色の指で触れてみたり、ゆったりとした動きで撫でてみたりする。
セロフィート
「 これは──。
ははぁ…。
とても良い彫刻です。
“ いのちのかほり ” を感じます。
素晴らしい!!
ワタシは好きです♪ 」
2名の門番にではなく、返事をしてくれない彫刻へ向けて、おっとり口調で話掛ける。
じっくりと彫刻を見入り、堪能したセロフィートは漸く正門を抜けると≪ 都 ≫へ入った。