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9 燃えるプライド

「出たよ、野喜美さん」

風呂から出た一真の体から湯気が漂っていた。

「結構長風呂だね」

優香はベッドに腰掛け足をぶらぶらさせていた。話し相手もいないので、優香は退屈しているのだ。

「いつもこれぐらいだよ」

一真はそう言うと髪をかき上げて、髪をタオルで拭く。

「そうなのか…」

「そんなことより、野喜美さん」

「ん?」

「野喜美さんは、魔法で空を飛んだり、落ちたときの衝撃を和らげる魔法は使える?」

「一応は使えると思うけど……」

優香は答えにくそうに答える。

「やったこと無い」

「試してみて」

優香は一真の提案を聞き入れ、早速試した。

「飛翔!」

優香は自分の体が飛ぶ状態を想像すること五分、優香が呪文を発すると共に体が浮き上がる。その様子は危なげだが、確かに空をとんだ。

「飛べた!」

優香が喜びの声出した途端、床に落ちてしまう。集中力が切れたのだ。一定のイメージが無ければ、魔力があっても魔法が切れてしまう。


「あっと」


優香は転けること無く、床に着地を決める。さすが運動をやっているだけ、着地も見事に決める。

「それで窓から外に出れるな」

「そうね…でも高坂は?」

「ここで一晩過ごすさ」

「ここを開けるよう言ってみようか?」

「いや、余計なことはしないでいいから」

一真そう言って優香の提案を蹴った。そんなことをしたら、なぜ優香がここに一真が閉じ込められていることを知っているのかとなるかもしれないかだ。そうなった時言い訳を考えるのは面倒だ。

「そう、……おやすみ。飛翔!」

優香はそう言うと、一真を部屋に一人残すことに一瞬躊躇ったが、窓から外へ飛んでいった。二人一緒に外に出るのが理想だったが、優香は自分の魔法では優吾を一緒に飛ばす事が出来ないことは分かっていた。一真も躊躇いなく優香が外に飛んでいったことを気にすることは無く欠伸をすると、ベッドにダイブ。

「流石貴族が使うものだけあって、寝心地最高ぉー」

一真は呟くと寝てしまった。






次の日、一真が目を覚ますと、ベッドとの隣にはティファナが横になっている。

「へっきしゅ!」

一真は小さくくしゃみをする。昨日窓を開けっ放しで、寝てしまったので、朝の冷たい空気が部屋に入ってくる。いつの間にかティファナがベッドで寝ていた。一真は自分の近くにいるティファナに疑問を持つこと無く体をくっ付けて、暖を取る。ティファナの体は、寝ていることもあって体温が高く丁度良かった。

その温かさで、一真はまた眠りについた。一真がそれから目を覚ましたのは、二時間後だ。目が覚めるとティファナが、一真の頬を突っついていた。

「何してるんだ?ティファナ」

「隣には美女がいるのに、Hな悪戯をしてこない男性に抗議をしております」

そう言うとティファナは、更に一真の頬っぺたをつつく。一真は自分の頬っぺたをつつく手を握って止める。

「じゃあ、何で俺の隣に寝ている」

「お隣が寂しそうだったので」

ティファナは一真が優香に振られてと思い、慰めのためにベッドの隣で寝ていたのだ。ティファナは笑みを浮かべて、唇を近づけてくる。一真は特に何もせず、そのキスを受け入れる。別に不快でも無く、何となく受け入れなければいけない気がした。

「でこのキスは?」

「おはようのキスです」

ティファナは一真がキスをしたことに気を良くて、妖艶な笑みを浮かべて、ベッドから出た。ティファナは体のラインがくっきり出る服を来ていたのだ。さっき起きた特は寝ぼけ眼で気付かなかったか。俗に言う勝負服だ。一真は手を出さないで二度寝をしてしまったことを心の中で悔やんでしまう。



ティファナは服を脱ぐと、てきぱきとメイド服に着替える。着替えるとまだ布団にいる、一真に近づいて、もう一回キスをした。

「これは悪戯をしなかった分のキスです。それじゃ」

ティファナはそう言うと足早に出ていった。


ティファナは自分の体を見ても、手を出さなかった一真を非常に不満に思っていた。大抵の貴族は骨抜きしてきた。ティファナはそれが自慢の種でもあった。ある時は、非公式に貴族が決闘をしてまで、ティファナを求めたのだ。それなのに一真は全然手を出してこない。それがティファナのプライドに火をつけた。


「絶対、骨抜きにしてやる」



一真は朝食が出される時間になってベッドから出た。本来なら朝食の前に訓練をするのだが、一真はサボった。一真の考えではこの技で、クラスの半分ぐらいには勝てると考えたからだ。あせる必要が無い。

食堂に行くと、殆どの生徒が、席についていた。


「かーずーま」


後から、達也が抱きついてきたのだ。


「珍しいね、一真がこんな時間まで寝てるなんて」

「おはよう」

「お、おはよう」

美由紀と真人の挨拶に一真は驚きながら挨拶を返した。

「で、どうだ一真調子は?」

ここ最近一真は一人で訓練していたので、真人達と顔を会わせていなかった。様子が聞きたくなるのも普通だ。

「まあ、ぼちぼちだな」

一真はそう言うと朝食の席につく。

「お、何だ?その発言の割には余裕が見えるぞ」

達也が一真をからかう。

「そんなことは無いよ。頂きます」

一真は達也にそう言うと手を合わせて食事を始める。

「行儀良いね、一真は」

一真を見て、美由紀が感心したように言う。

「一真はそう言う所が、育ちが良いわね~。まあ、真人も良いけどね~」

美由紀は真人が朝食を綺麗に食べているのを見て呟く。

「まあな、親父に連れられて高級レストランとかで食事をすることが多いから、こう言った物に慣れてるんだよ」

真人は大したことは無いと言う感じに言うと、パンに手をつける。真人の親は学校の理事を努めている。その関係で家族ぐるみで学校関係の人達と食事に出かけるのだ。

「それに比べて、あんたは」

美由紀は達也を横目で見る。

「悪かったな、お上品な食べ方が出来なくて」

達也が拗ねたように言って、パンに齧り付く。達也も消して食べ方が汚い訳じゃない。ただ、この中で一番汚いと言うだけだった。

「そう言うお前だって」

「何よ」

「好き嫌いはいけないぞ」

美由紀のお皿の上には、野菜の大半が残っていた。達也がそれを見ながら、さっきの意趣返しで言う。

「仕方ないでしょう、生野菜嫌い何だから」

美由紀は生野菜をホークでつつきながら文句を垂れる。

「お前らさっさと食べちゃえよ」

真人はパンを半分食べた所で文句を言う。この二人の言い合いは、ヒートアップすると止められなくなるので、真人が早めに止めたのだ。

「わ、悪い」

「ごめん、真人」

二人は黙々と食事を続ける。

「ごちそうさま」

「頂きました」

一真と真人は同時に食べ終わる。一真がご馳走様を言って席を立とうとする。そんな一真を真人は呼び止める。

「一真」

「ん?」

「お前今日も一人で訓練するのか?」

「いや、今日は基本的な筋トレだけにしておく、たまには体を休ませないと」

「それなら、今日は俺たちと一緒にいられるな」

達也が一真の返事を聞いて、嬉しそうに一真の肩を叩く。

「まあな」

「……達也、お前最近ホモホモしくなったな」

「あ、確かに~。達也、あんた一真がいない~って寂しがっていたしね」

真人と美由紀の発言を切っ掛けに、達也をホモネタでからかうのが始まる。

「た、達也…お前」

一真ももちろんその流れに乗って、達也から離れるような仕草をする。

「おいおい、俺はノーマルだぜ」

と言いながらも、笑みを浮かべて、一真の肩に手を置く。

「いや~ホモ」

「アハハ」

「ククク」


もちろん、達也も一真もホモでは無いことは全員が知っている。丁度真人が美由紀と付き合い始めた頃と同じくらいに、一真も達也も彼女を作った。学生にとって恋人がいると言うのは、一種のステータスのようなものだ。そこまで好き出はなくても、『あ、良いかも』で付き合うことは多い。そして、そう言う女子はチャライ女子が多く。そのチャライ女子と一真は付き合った。そんなカップルが長続きする訳が無い。結局お互いに歯車が合わず、自然消滅した。まあ、一真はめでたく童貞は卒業した訳だが。一方達也は「付き合うのに疲れた」と言うことだった。達也は付き合った彼女にかなり振り回されたらしく、自分から別れ話を切り出して別れたのだった。


二人の恋愛はこれぐらいだ。



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