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57 買い物と武器と奴隷の扱い

遅くなりました リアルが忙しくて中々投稿出来ませんでした。 申し訳ありません ((。´・ω・)。´_ _))ペコリ

翌日の朝一真は冒険者ギルドでカンダー達を待っていた。その腰に長剣が装備されていた。この長剣は昨日適当に買ってきたのだ。普通の量産品で特徴的な武器では無い。一真は正直無手で戦うわけにも行かないので、買ってきただけなのだ。そんな高価な物を買う気はなかった。


「おう、坊主待たせたな」


カンダーは装備を固めた姿で一真の目の前に現れる。その装備は前回見たものより、良い物になっている気が一真はしていた。その視線を感じ取ったのだろうか、嬉しそうな顔をして、一真に装備を見せる。


「いや~、今回の報酬で買った装備だ。どうだ?」


カンダーは新しいおもちゃを自慢するように、一真に装備を見せびらかす。確かに新しい装備だが金ピカの装備で目に見えて豪華に見える訳でもないのだ。一真にはその装備がどれくらい高価なのか分からなかった。


「この装備なミノタウロスの革を使って、更に革と革の間に薄い鉄板が入っている。重量も無くて、ある程度の防御力もある装備だ」


ミノタウロスって言ったら、ダンジョンの五十一層にいる魔物だ。それなりに強い魔物だ。魔物の階級だと中級程度の魔物だ。一真がよく使っているハイウルフマンと同じくらいの強さに当たる。


「他の人の装備も新しく?」

「ああ、サンダーは盾も片手剣も強化した。エンダーの槍も強化してある」

「あれ、カンダーの武器の強化は?」

「ああ、わいか? わいの武器は基本使い捨てることを考えているから、そんな高価な武器は買わないぞ」


一真はカンダーが手斧を投げて、戦っていたことを思い出す。ああ言う戦いをするとなると高い武器を買うわけにはいかないのだろう。


「それじゃ、クエスト受けてきたぞ」

「クエスト内容は何?」

「行商人の護衛だ。行き帰りの護衛をすることになっている」

「へえ~、行きはどこまで行くの?」

「それが、今回わいらが緊急クエストで行った町だ。物資が足りなくなっているから、それを届ける行商人を護衛する。一応行商人も子飼いの護衛はいるようだが、そらだけじゃ人数が足りなくなるから、それを補充する為に雇われた」

「へえ~」


大量の魔物に襲われたことで、破壊された城壁や家屋などがある。それを修理する為の木材や鉄など、他にも食べ物も不足しているのだった。


「食事は向こうが用意してくれるらしいから、食料は基本的に用意しなくても大丈夫だ」


エンダーはそう言うと自分達の荷物を顎で示した。そこには武器や寝袋、テントがあるだけだった。食料は向こうが用意してくれると言うことは、水も用意してくれているであろう。食べ物はともかく水はかなりの重量になる。魔法で水が出せると言っても、生活するのにはかなりの水がいるので、持ち歩くのが普通なのだ。それが無いと言うことはかなり荷物を軽くすることが出来る。


「分かった、武器は既に持っている。寝袋は……まあ、このローブが寝袋替わりにする」

「そうか……まあ、最悪俺達の寝袋で一緒に寝るってことも出来るぞ」


流石に一真はむさいおっさん達と肌をくっつけて寝るのは遠慮したいので、丁重にそれは断った。


「でも買わないわけにはいかないだろう」


カンダーは奴隷を指差して言う。


「ここに奴隷とは言え、この年頃の子供を一人置いていく訳にはいかないだろう。その子も連れて行くのだろう?」

「まあ……確かに」


奴隷の服はしっかりしたものを着ているとは言え、この服で寝かすわけにはいかないだろう。自分はともかくそんな服で寝たら、いくら暖かいとは言え体調は崩す。だけどこの為に態々寝袋を買うのもどうかと一真は考えた。


「俺のローブで一緒にくるまれば良いだろう。それなら態々寝袋を買う必要はない」


一真が来ているローブはダボダボとは言わないが、ある程度余裕がある。こいつの体の小ささなら十分入るだろう。

一真の言葉に奴隷は顔を赤らめ、地面を向いてもじもじとする。ダーさんが珍しい動物でも見るように一真を見る。


「何だ?」

「いや、あのなその奴隷、性奴隷じゃないよな」


カンダーは確認するように聞いてくる。一真は何を当たり前なことを聞いていると言う風に、カンダーの質問に頷いた。


「いや、それは……」

「毎日体は洗って貰っているから、別段不潔でも無い。問題は無いと思うんだが?」

「毎日体を洗っているのか?!」


サンダーは驚いたように声を上げる。この世界の常識では、性奴隷以外はあまり不潔でも気にしない。それなのに毎日体を洗っていると言うのだ。その言葉を裏付けるように奴隷から悪臭はしなかったことにサンダーは驚いた。


「不潔なのはいやだから」

「いや、でもなー」

「ストップだ、カンダー」


カンダーの言葉をエンダーが打ち切った。


「これはこいつの奴隷だ。その扱いに兎や角自分たちが言うのはお節介と言うものだろう」


これ以上は余計なお世話になると思ったエンダーがカンダーを止めた。この世界では奴隷の扱いは基本的に主人に一任されるのだ。


「それじゃあ、荷物が用意出来たら教えてくれ」

「既に出来ている。今からでも出かけられるぞ」


一真は持ってきた荷物を掲げて、カンダー達に見せる。荷物の内容は特に何も入っていないから、スカスカだ。正直必要なものが思い当たらなかった。食べ物は後から買う予定だったが、買う必要も無い。これで出掛けられるのだ。


「そ、それだけで良いのか? ぶ、武器は?」

「これだけです」

「それが使えなくなったらどうするんだ?!」


頭を抱えるようにしてカンダーが叫ぶ。冒険者は武器が壊れたときや奪われたときなどを考えて、普通は予備の武器を用意しているものなのだ。


「……何とかなりますよ」

「何とかなる訳無いだろう!」


実際一真はどうにか出来る力があるのだが、そんなことを知らないカンダーにとっては、何も知らない初心者が無謀なことをしているとしか見えないのだ。カンダー叫ばずにいられないようで、一真に怒鳴る。


「分かりました、武器を買いに行ってきます」


ここで反抗しても、あまり意味が無いことなので、一真はそう言って冒険者ギルドを出て、直ぐに装備を買ってこようとした。


「待て、カズマ、ストップだ!」


そんな一真をカンダーが止める。


「装備を買うならわいらも一緒に行く」


カンダーは今までの一真の行動を見て、適当な装備を買ってくるんじゃないかと思ったのだ。命を預けるものなのだ。しっかりした物を買わなければいけない。今の一真ではしっかりしたものを選ぶことは選ぶことは出来ないだろう。カンダーも一緒に装備を選ぼうと考えたのだ。


「別に良いですけど……」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「いらっしゃい、おや、ダーさんじゃないか? どうしたこんな所に? 装備の修理かい?」


一真が連れてこられたのは、一真が腰に差している剣を買った店とは違う店だ。ついてくるとカンダー達は言ったが、自分たち御用達の店があると言って、そこまで連れてこられたのだ。一真もカンダー達の噂を聞いて、腕の良い冒険者だと言うことは知っていたので任せた。


「いや、こいつの装備を買おうと思ってだな」


カンダーは一真を店主の前につき出す。店主は一真をじーっと見つめてる。体の隅々まで見ているようだった。一通り見ると、気が済んだとばかりに一真から視線を外す。


「それでどれ買ってく?」

「え~っと」


一真は店内にずらりと並べられた武器を眺める。もう一本余分な剣が欲しいだけなので、剣を中心に眺めていたが、どれが良い物か区別が付かないので、今持っている剣に重さと形が似ていて、一番安い剣を手に取る。それでも金貨三十枚と書かれている。中には金貨百枚や白金貨十枚とまで書かれている武器があるのだ。一生分の稼ぎをつぎ込んでも買えないような武器がある。


(こう言う武器は一体どんな人間が買うんだろうな?)

(成金じゃ無いのか?)


ゼノンが興味無さげに、あくび混じりで一真の質問に答える。ゼノンも武器には興味は無かった。自分の体を傷つけられるドラゴンスレイヤーならいざ知らず、普通の武器でゼノンを殺すことは出来ないからだ。


「坊主それで良いのか?」

「ああ」


店主の問いかけに短く一真は答えると、面白くなさげに鼻を鳴らすと、代金を寄越せとばかりに手を突き出してくる。一真は素直に代金を渡そうとした瞬間、店主のもう片方の手からナイフが投げられた。代金を渡そうと手を伸ばしたのだ。その距離はナイフを避けるにはあまりに近かった。一真は突然ことで何をされたかは分からなかった。だがゼノンは違った。一真の見ている景色もゼノンは見ているのだ。


(一真、ナイフだ!)

(よけれるか?)

(無理だ、防げ!)


ゼノンと一真が言葉をやり取りするにはナイフが飛んでくる時間で十分だった。一瞬で一真とゼノンは意思疎通を行う。既に腕を動かして防ぐのは不可能な距離だった。ナイフが刺さるであろう場所がゼノンの鱗で覆い尽くされる。こんなちっぽけなナイフで傷が付くことがない。一真にそのままナイフが当たる。ローブを切り裂いて、一真の肌にナイフが触れるが、ゼノンの鱗によってナイフは弾かれて地面に落ちる。


「ほお~」


店主は感心したように息を吐くと。一真の手から何事も無かったかのように代金を受け取った。一真も剣をそれに流されてナイフが投げられたことが無かったかのように剣を受け取る。だがここで現実に戻ってきたエンダー達が正常な反応を見せる。


「おい、何やってるんだ、いきなりナイフを投げるなんて!」

「大丈夫か、坊主?」


エンダーが抗議の声を上げて、サンダーが心配そうに一真のことを見る。


「この武器を使いこなすなら、これくらい凌いで貰わなければ困る」


何でもないかのよう店主はそう言う。一真は逆にサンダー達が驚いていることに驚いた。ここをサンダー達は御用達にしているのだから、攻撃されることを知っているのかと思ったのだ。


「自分達が買う時はそんなことしなかっただろう?」

「お前らがいつ俺の武器を買った? 修理と素材の加工だけだろうが。俺の武器を買うんだそれなりに実力が無きゃ困る。そこら辺のボンクラにいい武器を与えても意味が無いだろう。俺の武器がそんな風に使われるのは我慢ならんのでな」


店主はそう言って先ほどの代金を渡した時とは一転して、一真を面白げに眺めている。


「坊主もそのボンクラだと思っていたんだがな、そうでは無かったらしい。今のナイフの攻撃を顔色も変えず、無傷とはな」


おっさん無傷と言う言葉でカンダーたちは驚いたような顔をして、店主を見つめた後、一真のローブを捲り上げる。その下には無傷な肌があるだけだった。薄皮一枚切られてはいなかった。ドラゴンの鱗は咄嗟にゼノンが引っ込めてくれたことで、見られることは無かった。


「本当に傷が無い……と言うかこの下裸なのかよ!」


傷がない事よりそっちの方が驚きだと言うように、カンダーが叫ぶ。一応ローブの下にはズボンは履いて、その上からローブを着ているので、ローブの下は上半身裸なのだ。サンダーは本当に傷がないかと触って確かめ、エンダーはジロジロと遠慮会釈なく見てくる。


「いつまで見てるんだ、サンダーくすぐったいから手を離せ」


一真はそう言うとカンダーの手からローブを無理やり離させ、体を触っているサンダーの手を弾いた。


「本当に傷が無いんだ…」


未だに信じられなとばかりにカンダーが言う。


「と言うかおっさん、どうしてくれるんだ、ローブに穴が空いちまっただろう」


一真は小さく空いた穴から指を出して文句を言う。


「悪かったな、ほれ。これをやるから許せ」


そう言って投げて渡してきたのは、先ほどのナイフと同じものだった。唯一違うのは、柄の中心に嵌っている球体の色が違うことだろうか。投げた方の球体は赤色で貰った方が青色だ。


「投げたナイフもサービスだ、やるぞ」

「サービスね~、これ元々このナイフと二つで一つの武器じゃ無いのか?」

「あ、ばれたか?」


店主はいたずらがばれた子供のように顔をしたが、一真はそんな顔を見てもムカつくだけだった。いい年したおっさんがそんな表情など誰が得をするだろうか。一真は投げられたナイフと地面に落ちているナイフを拾った。銀色の短い刀身が一真の顔を写す。


「なあ」

「なんじゃ? そのナイフの使い方は秘密だぞ。教えたら使った時の驚きが薄くなるからな」


店主の言葉に一真は、このナイフを絶対に使わない事を心の中で誓って、鞘にナイフを収めるとバックの中に放り込んだ。


「裁縫道具を貸せ、ここで縫ってく」


仏頂面で一真が言うと、店主は面白くなさそうに鼻を鳴らして、裁縫道具を奥から持ってきたのだった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「これで良し」


一真はしっかりとローブが縫えたことを確認すると、ローブを着る。


「そう言えばその下何も着てないんだよな、なら防具が必要なんじゃないか?」

「アホか、俺のナイフで傷がつかない肌があるんだ。防具などいらんだろ」


店主の言葉にカンダーは『それもそうかと』と言う風に頷くと一真達は店を出た。


「さて、あのナイフが起動して坊主が驚く顔が見ものだな」


店主は店を出ていくとニヤニヤと笑みを浮かべていた。




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