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53 妹と食事会とアンナ

「ただいま」


俺が上に戻るとアルサートとアンナと優吾が魔物相手に戦闘をしていた。周りには魔物死体、その血に誘われて、更に魔物が引き寄せられていると言う無限ループが出来ていた。


「随分盛大にやっているな」

「無事戻ってきたんなら、手伝え!」


アルサートは魔物を剣で押し返しながら叫ぶ。他の人間はまだまだ余裕が有るようだけど、アルサートは必死なようだ。


「はあ、我は先ほど死闘を繰り広げてきたところなのだぞ(棒読み)」

「そんな棒読みで言われても!」

「じゃあ、私がやりますね」


アンナがゼノンの戯言を信じて、右足のつま先から氷が走り、周りの魔物が死体も関係なく全て凍りつく。


「こんな感じでどうでしょう?」

「すごいな」

「取り敢えず、下のビャクガンは倒した。さっさと上の地上に帰るぞ」

「分かりました」


アンナは返事をすると地面と天井に魔法陣を書き始める。その間はアルサートと優吾で魔物を倒していく。五分も時間が経てば魔法陣は書き終わり、俺達は地上に戻った。


「はぁ~、死ぬかと思った」

「すいません、私達のせいで」

アルサートは生き残ったことで、気が抜けたのだろう。ため息と共に呟く。アンナはその言葉を聞いてすまなそうに頭を下げる。


「いや、すいません、そんなつもりじゃ?!」


それを見てアルサートが両手を左右に振って、謝罪がいらないとをジェスチャーで示す。ゼノンと優吾はそんな二人のあたふたしているのを見て笑みを浮かべていた。無論俺も笑っていた。


「優吾、貴様の目的はもしかして……」

「ああ、最終層にいるあの魔族を殺すことだ」


(これはどうやら俺もこの戦闘に参加した方が良いだろう、アンナの転移魔法も魅力的だし、あの魔族を殺すのはお前が居れば容易だろうし)

(それは良いのだが……)

(どうした? ゼノン)

(あの魔族を殺してしまって良いのか?)

(え?)

(側近と言っていたのだぞ、それなら魔王の仲間と言う事になる。それを殺すのは……)


ゼノンに言われて俺は思い出した。もし殺すという事は魔王と敵対しかねない。


(……忘れてた、どうしよう?)


あの魔族を倒せないかもしれない。 俺たちの前に新たな問題が生じだったのだった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ゼノン達は冒険者ギルドに行って、取り敢えず依頼の報酬を全員で受け取ると、エイミーから嬉しい情報が聞ける。


「緊急クエストで出て行っていた商人が戻ってきました。馬車の方は無理ですけど、奴隷商人の方は戻ってきていますよ」


俺はそれを聞いて後日この奴隷を買い取ってもらう事に決めた。ゼノン達は一旦冒険者ギルドの前で解散して、お昼を食べるために全員がまた冒険者ギルドの食堂に集合と言う事になった。色々と話をしなければいけないこともある。


俺とゼノンは宿に戻ると早速クリスタルに魔力を込めて、魔王に連絡しようとしたが、魔王が向こうで取ってくれなかったようで、連絡が出来なかった。


(仕方がない、連絡が来た時のためにこのクリスタル持って食事に行こう)


ゼノンにそう言ってクリスタルを持たせて食事に出かける。途中で連絡が来ても直ぐに出ることが出来る。トイレや建物の影で話せばそこまで問題は無いだろう。


ゼノンは冒険者ギルドに向けて歩く。そこまで遠い場所でも無いので、馬車は置いていく。奴隷はゼノンの後ろを影のようについてくる。奴隷にはお昼としてダンジョンで食べるはずだった食べ物をゼノンが与えた。ゼノンもお腹が空いていたので、ギルドにつくまでのつなぎとして、干し肉を齧る。奴隷は乾パンを少しずつ口に含んで食べていく。


ゼノンはギルドに着くと早速優吾たちの姿を探した。アルサートは既について席を人数分確保していた。ゼノンはそこに近づくと、アルサート以外にもう一人席についている人間に気づいた。


(確かアルサートの妹の……)

(エリルとやらだったな)


エリルはこちらを一瞥すると、何も言わなかった。ゼノンは席につく。


「妹を連れてきたのだな」

「ああ、まずかったか?」

「いや、問題はない」


アルサートの質問にゼノンは簡潔に答える。ゼノンが席に着くと、その横の床に奴隷もぺたりと座る。店員がゼノンに気づくと、水が入った容器を置いて立ち去る。その水を奴隷が物干しげに見つめている。先ほど乾パンを食べたことで、口が乾いたのだろう。ゼノンは黙って水が入った容器を渡してやると、奴隷は黙って受け取り水を飲み干す。それを先ほど水を入れた容器を持ってきてくれた店員が見ていたようで、新たに水を入れた容器と水のおかわりを入れた容器を置いていってくれる。ゼノンも干し肉を食べたことで、口の中がパサパサしていたので、水を口の中に流し込む。


「意外」

「何がだ?」


呟くようなエリルの言葉にゼノンが聞き返す。


「奴隷に水をあげたこと」

「そうか?」

「あんたのことだから奴隷に泥水でも飲ませているのかと思った」


毒気たっぷりそう言うエリルにアルサートが慌てて妹を宥める。そう言えばこいつには、家を襲撃してから会っていなかったので、好感度が最悪なのだろう。


「お、おいエリル」


アルサートが慌てた様子で、エリルを宥めるが、エリルはお構いなしな様で、更に攻撃的な言葉をゼノンと俺を挑発する。


「何兄さん? 兄さんのお金を巻き上げて尚且つダンジョンまで突き合わせてるような人なの……よ?」


エリルの言葉が中で止まる、何か確かめるようにローブのフードで隠れた顔を覗き込む。


「あなたそんな顔でしたっけ? いえ、顔どこからリザードマンでしたっけ。と言うか金色です?!」


エリルが初めて会った時より容姿が変貌している事に気づいたようで、混乱しだす。


「あれは我の高貴なる姿を隠す仮の姿だ」


ゼノンが適当な事をドヤ顔で言い出す。俺はその言葉に自分の顔を平手で打ってしまう。恥ずかしくて穴があったら埋めてやりたい。俺はそんな風に思いながら、ゼノンの中二病の発動を見守っていた。正直恥かしに体を掻き毟っていたが、精神世界だから特に何ともない。


「そうね、その鱗を剥がして売ったらお金になりそうです」


エリルはそう言って鱗を見つめる。ゼノンその答えに乾いた笑いを見せる。ある意味ドラゴンの鱗と言えば、かなりの値打ちがあるから、間違ってはないない。


「流石に金色と言ってもリザードマンの鱗だ。そこまでの大金にはならないだろう」


アルサートが可笑しそうに笑いながら言うけど、ゼノンは正直そこまで笑えてなかった。そんな話をしていると、丁度いいタイミングで、優吾とアンナが到着した。


「優吾達が来たな」

「アルサート、そいつは?」

「俺の妹のエリルだ」

「妹がいたのか……」


優吾はそう言うとエリルを見つめる。そして足に視線が移る。


「歩けないのか?」

「いえ、歩けないことはないのですけど、体力が無いだけです」


エリルはそんな優吾の不躾質問と視線に気を悪くした様子もなく答える。声からも表情からも機嫌の悪さは見えない。


「病弱な物で」

「あなた……獣人とエルフのハーフなんですね」


アンナもエリルの事を見つめながら呟く。アンナの発言にエリルが驚いた表情をする。


「良く分かりましたね」

「えっと、何となく雰囲気で分かったの」


アンナはそんな風に笑って言うが、誤魔化しているようにも見える。アンナも色々と混ざっている事が関係してるのかもしれない。


「それじゃ、食事会を兼ねた話し合いを始めよう」


アルサートがそう言うと料理を適当に注文して、食事会兼会議が始まった。


「まずは今後の方針について考えよう」

「取り敢えず、俺達はダンジョンの最下層にいる魔族を殺すことを目的だ」


優吾はそう言うとポテトを一齧りする。


「我の目的はダンジョンの最下層に行くことだ」


ゼノンもポテトを食べる。優吾と俺達の一緒に行動を共にすることは出来るだろう。魔族を倒すかどうかはまだ分からないが、最悪魔族との戦闘に手を出さないで見ているだけと言う手も取れる。


「俺の目的は……ゼノンの借金の返済?」


アルサートは無理にダンジョンについてくる必要はないが、マップ作成要員としては欲しい人間だ。マップがあると無いとじゃ、ダンジョンの進み具合がかなり違ってくる。正直借金の返済が終わったら、金を払って雇うレベルなのだ。


「アルサートはゼノンに借金をしているのか?」

「まあ、色々ありまして」


アルサートは笑って誤魔化して、エリルは仏頂面になる。正直アルサートが悪いから俺達には全く非がないと思うのだけど。


「それで魔族の件なんですが、冒険者ギルドに報告しませんか? 今なら勇者がいるので魔族を倒しに出張ってくれますよ」

「悪いが、それは無しだ」


アルサートがそう言うと、俺が否定の意見を言う前に優吾から否定の言葉が入った。


「魔族は俺達の手で殺したい」


優吾は殺気溢れる視線でアルサート言う。アルサートもその殺気に気圧され、頷くことしか出来なかった。よほどあの魔族を自分の手で殺したいのだろう。このダンジョンにいた数ヶ月間で、俺が知っている優吾より少し変わっていた。


「わ、分かりました。ですけど、どうやってあの魔族を殺すんです? 今のままじゃ魔族にたどり着くどころか、あいつが作った魔物に殺されてしまいますよ」


アルサートの言う通りでビャクガン改ぐらいに手間取っていては、あの魔族を殺すことは到底できないだろう。それに偽アンナの事も気になる。


「それは数回死にかければどうにかなる。そこら辺は気にしないでも大丈夫」


数回死ぬだけで魔族を殺せるだけの力が入るかは疑問だが、最悪の場合俺が倒せば良いだろう。それにもし、魔王の命令を受けているのであれば、魔法陣が書かれた石版だけもらって、ここから離れれば良いだけだ。


「ちょっとお兄ちゃん、私そんな事を聞いてないよ」


エリルが目を鋭くして、ゼノンの事を睨む。ゼノンは睨まれても困ると心の中と顔で表すと、エリルの目がアルサートに向けた。


「兄様、危険は無いと言っていませんでした?」

「いや、本当に危険は無かっただって、この前までは………」


エリルの視線に耐えられなくなったのか、言葉の最後が尻すぼみになる。エリルはそれを見て、ため息を付いた。


「兄様、ダンジョンに行くのを「やめないよ」」


エリルの言葉を遮って、先ほどの弱気が嘘のような真剣な表情をする。


「俺にはこれしか無いんだ。やめるわけにはいかないよ」


アルサートのさっきとは違う顔つきに何か思うことがあったのか、それ以上は何も言わなかった。


「分かった、だけど私も一緒に行くからね」

「はぁ?!」


全員がエリルの顔を見つめる。正直冗談かと思ったが、とても冗談を言っているような顔はしてなかった。どうやら本気のようだ。


「エリル何を言ってるんだ!? ダンジョンが危険なのは知っているだろう! それにお前は!」

「だからってお兄ちゃんが死んだら、私も終わりだよ。それに私も少しは戦える」


確かにエリルには魔法が使える。だけど体力面の問題もある。今の病弱なままでダンジョン言っても足でまといになるだけだろう。それでは他の人間の命が危険に晒されるだろう。


「それじゃ、他の人間の命を危険にさらしかねない。ダメだ!」

「で、でもそれじゃ……」


アルサートの今まで見ない強い口調にびっくりしながらも、自分の主張は曲げる気は無かったようだ。アルサートとエリルの視線はぶつかり合う。


「ねえ、アルサートは妹さんが強ければ問題無いんだよね」

「まあ、そうだけど」

「で妹さんはお兄さんについてきたいんだよね」

「うん」


アルサートとエリルの意見をアンナが聞くと、何か納得したように頷いてある提案をした。


「じゃあ、妹さんを強くしましょう。私が修行するわ」


「「「!?」」」


全員がこの発言に驚いた、俺も含めて。


「え、でも……。迷惑じゃないか?」

「大丈夫、しばらくの間魔族を倒すためにユウゴも修行するから、その間時間がある。それでダンジョンに入って、足でまといにならないレベルになったら連れてく。そのレベルに達しなかったら諦めてもらう、それで良いかな?」

「いやで「よろしくお願いします」」


アルサートの否定的な言葉を遮って、エリルが頭を下げてこの案を受け入れたのだった。しばらくの間これでダンジョンには挑まないだろう。


「じゃあ、これからの方針とすれば、ユウゴが修行している間、私は妹の修行を見る。それで良いかな?」

「我は構わない」

「俺も別に構わない」


アルサートだけが不満そうな顔をしているが、アルサート意外がOKを出しているので、何とも言えない顔をしている、


「別に無理に連れて行くつもりはない。我も自分の命が掛かっているから」


ゼノンはそう言ったが、俺達の命は全く掛かっていなかった。最悪アンナを見捨てることも視野に入れているし、それにあの魔族に殺されることは無いだろう。


「それと聞きたいことがあるのだが、アンナ」

「何です?」

「アンナ、貴様と同じ姿をした女に襲われた」


ゼノンの言葉にアンナ驚いた顔をしたが、既に想定していたことのようで、それほど動揺は見られなかった。


「それは……私と同じように作られたホムンクルスですね。聞きたいこととはそれですか?」

「いや、それだけじゃない。詠唱無しに魔法を使っているが、それについてだ。アンナが使っているように、あの女も詠唱無しで魔法を使ってきた。その原理について聞きたい」

「そうですか……」


アンナは少し沈黙する。一体何を悩んでいるのか、俺には分からなかったが、その原理が分かればある程度対策がゼノンは取れるのだろうか? 


「分かりました、お話しますね」






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