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45 ハチミツ菓子と奴隷と睡眠

「イッテー、何すんだ!!」

俺は怒鳴りながら立ち上がる。怒鳴ったことで、自分が何をしたのか分かったようで、子犬のように震えだす。どうやら思わず突き飛ばしたようで、青い顔になると、また気を失う。


「お、おい!」


さっきと同じように倒れてくる。違うのは仕切り板の代わりに俺の方に向かって倒れてくることだ。


(また、気を失ったな)

(くそ、面倒な!)

(高坂が怒鳴るから)

(うるさいな!)


俺はゼノンのそんな言い合いをしながら、体を適当に拭いて服を着せる。宿の人のお古とは言っていたが、お古とは名ばかりでまだ十分着れて、綺麗な状態の服だった。装飾は一切ないが、布自体はしっかりしている。服を適当に着せると抱えて宿の中に入る。


ドンッ!


俺は半ば投げるようにして、奴隷をベッドに投げ出すスプリングは軋む音がする。


「ふう~」


俺は投げ出すと同時に深いため息をつく。


「他人の体を洗うのも着替えさせるのも肩が凝るな」


肩を自分で揉みながら呟く。


「ぞうだな(そうだな)」


ゼノンは早速俺の体から首を生やして、ハチミツ菓子を食べている。食べることに夢中で、適当に相槌を打っているのが分かる。ハチミツ菓子が入っている袋を没収でもしようかと、一瞬考えたが、疲れているのでやめた。些細な抗議として、俺もハチミツ菓子を食べる。


「さっさと起きないかな? こいつにも何か食わせないとまずいな」


俺はハチミツ菓子を食べたことで、奴隷に何か食べさせなきゃいけない状態だと言うことを思い出した。


「流石にこれから食べさせるのは不味いよな」


俺がお菓子を食べながら呟く。


「そうだな、流石にいきなりお菓子は……」


そう言いながら、ゼノンがお菓子の袋を抱える。こいつ奴隷の心配じゃなくて、自分が食べれるお菓子の量を心配しての言葉だろう。心のなかでため息をつきながら、後で店主にスープを作ってくれないか、聞いてみることにした。


「取り敢えず、晩ご飯まで時間があるから、寝るか」


俺はそう言うと奴隷が寝ているベッドに横になる。二人分の重さで、ベッドが沈む。ゼノンは俺に気にせず、ハチミツ菓子を食べている。俺もゼノンを気にせずそのまま意識を手放した。


起きたのは晩ご飯ぴったりだった。多分俺もお腹が空いたのだろう。お腹の虫が微かに鳴いていることが分かる。ゼノンはハチミツ菓子を食べ尽くして寝ていた。ゼノンを体の中に戻して、晩ご飯を食べに食堂に降りる。既に食堂には多くの人が食事をしていた。ここの食堂は出遅れると、席が取れるまで時間が掛かるらしく、早いうちから並んで待たなければいけなかった。俺は最後尾に並んで食べる順番が来るのを待っていた。


正直時間を潰す道具も持っていなかったから、退屈に時間を過ごすしかなかった。30分後に席が空いてやっと食事が取れるようになった。これでも早い方で、複数人で来ている人間は中々席が空かないようで、俺より先に並んでいるのに、未だに食事にありつけていない団体は多数いる。空いているカウンターで食事をすることになる。今日は焼き魚の中心に食事だった。焼き魚と煮魚、それと魚の甘露煮だろうか。今日は肉が無いようだった。それと野菜。ゼノンが見たら肉がないと騒ぎそうな食事だった。俺はそれを早速食べ始める。魚料理は骨まで柔らかくなっていて、食べやすくなっていた。だけど俺は骨が喉に刺さるのを警戒して、骨を避けて食べていた。隣の客は俺のように骨を避けて食べるようなことはせず、そのままかぶりついている。


食事の終盤で、水が空になると従業員が入れてくれる。それと同時にあの奴隷のためにスープが無いかと聞くと、賄い用の食事でスープならあると言う事だった。なので、食事が終わったら、スープを用意して貰うことになった。


俺が食事を終えるとスープの入った木のお皿とスプーンを渡された。俺はそのままに自分の部屋に帰る。帰ると既に奴隷は起きていて、俺が部屋に入るとベッドの上から飛び降りて、床に座る。俺は無言で奴隷に近づくと、奴隷の体が震えていくのが分かる。多分体を洗っている時に突き飛ばしてしまった事を気にしているのだろう。既に数時間経っているので、とっくに怒ってはいなかった。取り敢えず、気にせず奴隷の前にスープが入った皿を置く。奴隷は目に前にある皿と俺の顔を視線が行ったり来たりしている。


「食べていい、ゆっくりと食べろ。お代わりが欲しかったら、下の従業員に言えばお代わりがおらえるから。皿は返しておけ。俺は寝るから」


俺はそう言うと皿を置いてベッドに横になる。奴隷は目の前に現実は信じられないようだったが、それ以上声を掛けるようなことはせず、そのまま寝ることにした。だが流石に昼間寝たことが効いているのだろう。中々眠りに入ることが出来なかった。未だに奴隷はスープを食べようとはしなかったが、お腹が鳴いているは聞こえたが、未だに御預けをされた犬のようにスープに口をつけない。


そしてスープに口を付けたのは、それから五分ぐらい経ってからだった。五分待ったスープは一分もかからず空になったようで、俺が起きないようにか、足音を忍ばせて、部屋の外に出て行っていく。スープのおかわりを貰いに行ったみたいだな。


俺は足音に意識を集中させていたのだが、やはり足音はゆっくりと下に降りていくのが分かる。俺は足音で何もトラブルに巻き込まれたりはしてないようで、すぐに部屋に戻ってくる。俺はそれを確認すると本格的に眠りに入ってしまった。




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