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32 牢屋とスパイ容疑と勇者

(ここはどこだ?)

俺は起き上がらないで目を開けた、腕には手枷が付けられて鎖で壁に繋げられて、行動範囲を制限されていた。壁は石造りで、俺の寝ている場所も石の上に藁をひいただけの粗末なベッドだった。内臓がまだ痛む特に心臓が痛むので、俺が寝たまま辺りを観察した。やはり鉄格子がされていた。

(牢屋か?)

外には見張りの魔族がいる。もちろん肌の色は黒で、戦闘態勢だ。俺は寝たまま服を調べた。持っていたアスカロンと金は亡くなっている。俺が魔法を使おうとすると

(無理だぞ、その手錠で魔法は使えない)

(ゼノン起きていたのか?)

(ああ)

(俺が気を失っている間に何があったか教えてくれ)

(我も先程目が覚めたからよく分かっていないが……無事救出した後、空を飛んでいたが、そこで限界が来た。我もそこで気を失ってしまった)

(俺よりは少し長く意識があったようだな)

試しに指先をドラゴンにしてみた。どうやらスキルは使えるようだ。この手錠で封印出来るのは魔法だけのようだから、逃げ出そうと思えばこの牢屋からも逃げ出せるだろう。俺は起き上がると、牢屋の外で見張りをしている魔族の肩を突っついた。魔族は振り返るが、特に興味を見せず見張りに戻る。どうやら俺と会話をする気は無いようだ。それとも俺との会話するのを禁止されるのだろうか? すぐに逃げ出さなければいけない状況でもないので、俺はおとなしく捕まっていることにした。嬉しいことに服を脱がされることは無かった。俺は藁のベッドで横になると、そのまままた眠りに入ってしまった。ドラゴンになった事での内臓のダメージが残っているようで、まだ痛む。それに正直まだお腹は減っていなかった。





「……い、おい!起きろ、人間!!」

俺が目を開けると目の前に真っ黒な顔がある。

「誰?」

「僕の名前はマルバス・アーク・シャン」

………誰だっけ?

(マルバス・アーク・リーアの弟だろう)

ゼノンが助け舟を出してくれる。こういう時もう一人いると覚えてくれるのはいいな。

「お前はアークの妹か……」

シャンは俺が誰だか気づくと胸ぐらを掴んできた。

「そうだ!お前のせいで姉様がスパイの容疑を掛けられてる。どうにかしろ!」

俺はシャンにそう怒鳴られたが。

「どうにかしろって言われてもな………」

俺の気の抜けた言葉に更に胸ぐらを締めてくる。

「姉様はお前を庇ったせいで処刑されそうなんだ!」

「何?」

俺は驚いて聞き返した。あの女がそんなことをしてくれるとは思わなかったからだ。

「姉様はそのせいで裏切り者の可能性があるってことで処刑されそうなんだ」

「はぁ~、俺はどうすればいいんだ?」

「家にきて証言してくれれば良い。母様は出したく無いようだけど、こんなことになったことも僕のせいだから……」

「分かったから、ここから出せ」

俺がそう言うと、シャンは俺の手から手枷を外さず、壁に繋がっている鎖から外して外す。その手枷に新たに鎖を付けて、囚人のように鎖はシャンが持っている。

「お、おい。この手枷は?」

「外せる訳無いだろう。このまま行くよ」

シャンはそう言うと、鎖を引っ張って俺を歩かせた。階段を上がると、綺麗な廊下に出る。どうやらこの牢屋は地下にあったようで、上は普通に居住区のようだ。

「ここはどこだ?」

「僕の家、ほら行くよ」

そう言うと鎖を引っ張って、俺を歩かせる。


この野郎~、ここでこの手枷ぶっ壊して、ここから逃げ出してやろうか?


そう思ったが、ここから逃げ出したところで、周りは魔族だらけだから、逃げ出すことは出来ないだろう。そして俺が連れてこられた場所は、多くの魔族が集まっている場所だ。中心にはアークが立たされていた。

「ωαΓι、θζσξ? ΝιθΜζπΚδ(なんです、シャン? 入ってこないように言いましたね)」

一番派手な姿をしている女性が話しかけてくる。魔族の言葉だから何を話してるかは、分からない。たぶんシャンの母親だろう。アークは振り返って、俺の姿を確認するとすぐに全身が真っ黒になる。やはり周りにいる魔族と思われるやつは人間と同じで肌が白かった。

「ΝιθΜ? θΜζπΚ?(どうしたんです? シャン突然真っ黒にして?)」

「ΚΗμι、θΖκα、εΕζγΓΒΕΗδγΗΓα(その、母様、彼は私が連れてきてしまった人間です)」

「?!」

そこにいる魔族が全員真っ黒になる。戦闘状態だ。

「ΕζγΓΒΕθΜζπΚ!?(シャンあなたどういうつもりですか?!)」

「ιθ、ΜζπΖκΗμΔΗΚδΔΖΗιΓΕηδη(母様、姉様をスパイと言うなら彼の事もしっかりと調べるべきです)」

シャンは母親の剣幕も諸共せず堂々と言う。

「γΓΒΕθΜζπ…(あなたって子は……)」

母親は頭を抱えるが、シャンは気にせず俺を中央まで引っ張る。

「まずは名前と自己紹介を」

シャンは俺にそう言う。今度は俺に分かるように魔法言語を使ってくれる。周りの人間はこの事態にどう対応していいか、戸惑っているのだろうか?

「え~と、高坂 一真だ」

「何をやっている?」

ここでバカ正直に勇者と答えるのもあれなので、嘘を付くことにした。

「農奴だ」

「ふ~ん。農奴がこのような高価な剣を持っているものなのか?」

シャンがどこから出したのかアスカロンをブンブンと振り回す。誤魔化すことは出来なようだ。他に良い言い訳も思いつかないし、たぶん俺の正体にも調べがついているだろう。



「勇者だ、勇者。俺はこの世界に勇者として召喚された人間だ」



俺の発言であたりが一気に静かになる。


え? 俺の正体は調べがついているんじゃなかったの?!


「お、おい」

俺はシャンに声を掛けるが、シャンも呆然としている。

「な、何をしているのです?! 今すぐその男を厳重に拘束しなさい。なんてこと……国に勇者を連れ込むなんて?!」

「私も知らなかったんです?! まさか勇者なんて…」

「これは魔王様に報告しなければ案件です!」

周りが物凄い慌て様だ。あれ?もしかして……

(高坂の正体はバレていなかったようだな……。冒険者とでも言っておけばいい物を)

(さっきその案だしてよ!! 遅いよ)

(高坂が我が何か言う間に先の答えてしまっただけだ)

(時間はたっぷりあったろう! どうせ漫画読んでいて気づくのに遅れただけだろう!)

(……そんなことは)

(嘘だって、分かってるからな)

(……うむ)

ゼノンは最後に呟くと奥に隠れてしまった。俺が心の中でゼノンと会話している間に、俺はあれよあれよと言う間に、さっきの牢屋に。さっきと違うのは更に頑丈な鎖で雁字搦めされた。そして……

「γΓΒΕθΜζπ!(ちょっとなんで私まで?!)」

一緒にアークまで牢屋に入れられた。アークは怒鳴るがそんなこと関係なく見張りの兵士は二人そして、鉄格子に更に鉄板のドアが雨戸のように横から出して牢屋を頑丈にする。アークは聞き入れないと思うと、俺を責めて来る。

「どうして言ってくれなかったの?!」

「だって…聞かれなかったし……こんなことになるなんて思わなかったんだよ……だけど何でお前まで入れられてるんだ?」

「勇者を国に入れたことを私に擦り付けるためだろう。下手をしたら一族郎党皆殺し、よくてお家が潰されるかも」

「どうするの?」

「魔王様からお呼び出しが来るんじゃない?」

アークはどうでも言い様に呟くとベッドに横になる。

「落ちつているな」

「まあ、折檻として牢屋に入れられることはあったから慣れているわ」

「お、おい俺はどこで寝ればいんだ?」

俺は慌ててアークに聞く。

「床よ」

「おい、流石にこの石造りの床で寝るのは冷たすぎる」

「一緒にここにいることだけでも、私は気に入らないのよ。それなのにベッドに一緒に寝るわけ無いでしょう? 殺さないでいるだけでありがたいと思いなさい」


……この女が俺の事を庇ったとは信じられないな。本当に庇ったのか?


俺は疑いを抱きながら、仕方なく床に寝ることにした。石の冷たさが体を冷やす。そんな状態で寝れる訳もなく一晩中起きていることになった。そして翌日、魔王に呼ばれたのだった。




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