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31 救出とドラゴンとスパイ容疑 

一真は少し沈黙して考えて、ゼノンに質問をする。

(俺が助けに入らなきゃ死ぬのか、あれは?)

(少なくてもあの場所から、力尽くで逃げることは不可能だ。あの魔法の鎖から簡単に壊すことは出来ない)

(……はぁ~、分かった、助けよう。だけどこの姿では助けたくない。せめて人相がバレないようにしたいんだけど)

(我の体を使え)

ゼノンはそう言うと俺の背中から翼を出す。

(一部だけ出しても仕方ないだろう?)

(我の体を全部出せば良いだろう。人相どころか種族さえバレることは無いだろう)

(なんでお前が俺の体を使っているか、考えてから言って欲しいんだけど?)

(う、うむ)

ゼノンの内蔵器官はドラゴンスレイヤーによって、傷ついて使い物にならなくなっている。ゼノンの今は俺の内蔵器官を代用している。

(ならば高坂の内臓器官を使ってはどうだ?)

(胃袋や肝臓ならともかく心臓までやられてるんだ。俺の代用するのは無理なんじゃないのか?)

(いや、短時間なら高坂の心臓でも我の体を動かせる……はず)

ゼノンが自信満々で一真に言うつもりだったが、やはり分不安になって『はず』を付ける。人間の小さい心臓でドラゴンの大きな体に血液を循環させるのは無理じゃないかと一真は思っていた。

(試しにやってみないか?)

ゼノンが熱心に言うので一真が折れた。

(まあ、そこまで言うならやってみよう)

こうして一真の体は全体がドラゴンに変化した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



このままじゃ……


リーアは処刑台に登ってくる兵士を片手で斬り伏せていたが、だがそれも限界が近づいていた。リーアは兵士を倒す合間合間に、自分に絡みついている鎖を破壊しようとするが出来なかった。

「応援を呼んできたぞ!!」

兵士のその言葉でリーアの視線が鎖から外れる。リーアの視界の中に沢山の兵士がこちらに向かって走ってくるのが見えた。あの兵士が処刑場に到着したら、魔族のリーアたちの命は無いだろう。リーアが着地したと同時に、処刑を見学していた住民はそこから逃げ出していたので、中々兵士がここに来れなかったが、すでに殆どの住民が逃げ出した今、この処刑場に来るのには時間が掛からないだろう。そしてついに処刑場にたどり着いてしまった。だがそれと同時に別の物も処刑場にたどり着いた。処刑場を登っていた兵士が予期せぬ突風で転げ落ちる。リーアたちは幸運なことに鎖に縛られていたので、飛ばされることは無かった。

「一体何?!」

リーアが顔を上げると頭上に金色に光るドラゴンが舞い降りた。

「な、何だ?!」

「ド、ドラゴン?!」

それは久しぶりのゼノンの全身の姿だった。着地するとゼノンは格好良く翼を伸ばして、天に向かって吠える。その咆哮で周りの兵士が恐怖する。

「我が名を黄金竜ファフニールのゼノン。黄金に生まれしドラゴン。この地上でー」

(口上はいい、時間がないんだぞ)

(なんだと?!これからがカッコ良い所なのだぞ。我はこの口上を考えるのに何日掛かっとー)

(ゼノンお前、それを言うためにこの作戦を提案したんじゃないよな?!)

(そ、そんなことはない。だがな、せっかく考えたのだ)

(いい加減にしろ、この中二病ドラゴン!!)

(わ、分かった、分かった。怒るな、高坂)

一真はゼノンの口上を途中で止めて、さっさと救出するように急かした。だがゼノンの目の前に斬撃が飛んでくる。ゼノンは軽く腕を上げて斬撃を弾き返した。

「くっそ! ドラゴンが来るなんて聞いてない!」

「今更文句言ったって仕方ないでしょう」

一真にとって聞き覚えのある声だ。一真は声の主を先程のゼノンの咆哮で萎縮している兵士の中に見つけた。周りの兵士が着ている装備とは別格の装備だとすぐに分かる。たしか中学生組の中にいた男女だった。

(あいつら……)

(知り合いか?)

(噂の勇者御一行だよ。多分あの二人だけじゃない、もっといるはずだ。さっさと回収しよう)

(心配するな、あの程度の攻撃なら直撃してもダメージは入らない)

ゼノンはそう言うと処刑場を両手で掴む。この鎖の魔法を解除するよりも、処刑場ごと回収したほうが速いと考えての事だった。一真はゼノンの手首あたりから上半身出して、リーアとコンタクトを取る。

「おい、アークしっかりそこに捕まっていろよ、そこから落ちるなよ」

「どうやったらこの状態から落ちるのよ!」

リーアのそう怒鳴り返して、手首に巻き付いている鎖を見せて怒鳴る。それと同時にギシギシと処刑場が軋む音がする。もう少しで持ち上がるのだろう。だがそれを邪魔する奴らが出てきた。

「ソニックショット!」

「フレイムランス!」

飛ぶ斬撃と炎の槍が飛んでくるが、ゼノンはその攻撃を歯牙に掛けなかった。ゼノンの言う通り、この程度攻撃は当たってもダメージは入らなかった。

(早くしろゼノン、も…う…限…界)

一真の苦しそうな声がゼノンに聞こえる。一真の内臓器官でドラゴンの体を動かすのも限界が来ていた。

(分かっている、だが力加減が難しいのだ)

例えるなら卵が床に接着剤でくっついているのを、卵を割らないように外すようなものだ。もう少しで処刑場を外せそうになる。そこに勇者御一行は、走ってきているのが聞こえた。だがこれなら余裕で逃げ切れるとゼノンは考えた。勇者御一行からの攻撃が出来る距離に来た時には、処刑場が空中に浮いてその場から飛び立った。後ろから魔法や弓などが飛んでくるが、ゼノンの皮膚を傷つけることは無かった。すぐに村が見えなくなる。

「た、助かったわ、い、一応お礼を言っておくわね」

リーアはどうにかして、自分の鎖を解き終わり、ギブリの鎖を解いていた。

「………しろ」

「え?」

「早くしろ。もうもたないっ」

ゼノンの苦しそうな言葉と共にドラゴンの姿が解ける。リーアはギブリの鎖をすでに解いて、空を飛ぶ準備をしていた。リーアは咄嗟に弟を抱えてギブリの上に乗せる。ゼノンは地面に落ちながら一真の姿に戻っていく。処刑場の板と一真が一緒に落ちていく。

「ま、まずい!?」

リーアは一真を追ってギブリを急降下させる。

「ギブリ掴んで!」

「承知!」

ギブリは地面ギリギリで一真のことを捕まえて、急上昇した。処刑台の板は地面に落ちて粉々なになった。普通の人間に戻った一真が地面に落ちていたら、真っ赤な花を地面に咲かせていただろう。ギブリは元の上空まで戻ると、一真を背中に乗せた。

「リーア様、この人間どうするんで? 殺すのなら今の内です」

ギブリが鋭い眼光でリーアに問いかける。

「人間?! 姉様どういう事?」

リーアの弟であるマルバス・アーク・シャンだ。

「もう傷は大丈夫なの?」

リーアはシャンの傷の具合を聞く。捕まってから拷問を受けていたこともあって、体は傷だらけだったのだ。

「うん、僕の傷は大丈夫。あとお腹が減ってるぐらい」

「ごめんね、今は食料持ってないの。後でどこかで調達するね」

「ありがとう、姉様。それで人間ってどういう事」

シャンは12歳の少年だが、その年齢に合わない真剣な目線でリーアのことを見つめる。リーアは誤魔化す様に頬を掻いたり、目線を逸らしたが、シャンの死線に飽きられて話を始める。

「その、シャンを救出するのに力を貸して貰ったの」

「……この男、殺そう姉様」

「でもあなたを助けるために、この人は力を貸してくれたのよ」

「人間側のスパイに仕立てられ、姉様の立場が! どうせ今回の任務にも見張りがついてる。あの母様が僕の救出任務に見張りを付けないはずがない。姉様が救出に失敗したら、代わりに救出出来るようにしているはずだし、それに………」

シャンはそこまで勢い翌捲し立てたが、言葉が止まる。

「ごめん、姉様。これも僕が捕まったせいだよね、ごめん。僕はこんなことを言える立場じゃ無かった」

「良いのよ、私もあなたのことを助けたたかったから」

リーアは慰めるようにシャンの頭を撫でた。


「マルバス・アーク・リーア」


唐突にこの空気をぶち壊して、リーアの名前を呼ぶ奴がいた。

「姉様」

「大丈夫よ」

シャンが心配そうにリーアを見つめるが、リーアは落ち着くように頭を撫でる。そこにいたのは先程言っていた、リーアの見張りをしていた魔族だ。その人数は三人。三人ともドラゴンに乗っている。魔族の中でもかなりの手練の戦士だ。

「マルバス・アーク・リーア。アーク家次期当主マルバス・アーク・シャン様の救出任務ご苦労だった」

名前を呼んだ一人が事務的にリーアを労う。リーアは頭を軽く下げる。

「だが残念なことに現地の人間と接触した所を発見してしまった」

ギブリの背に乗っている一真を顎で指して、続きを喋る。

「君にはスパイ容疑が掛けられる。このままご同行頂こう。逃げ出すようなことをしたら、殺すように言われている」 おお


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