23 村と行商人と蜂蜜菓子
「飽きた」
俺は肉に食らいつく手を停めて呟く。
「何がだ?」
ゼノンが食べている手を停めて俺に問いかける。
「この食生活にだ!毎日同じ物ばかりだぞ!」
食べている肉を葉っぱのお皿に叩きつけて叫ぶ。
「熊の肉、羊の肉、牛の肉と同じじゃ無いぞ」
ゼノンが心外そうに言う。
「全部肉だろう!俺はたまに果物とか野菜が食べたいの!」
ここに来て五日ほど経つが、朝昼晩全部肉なのだ。確かに肉は美味しい。だけど肉ばかりだと流石に飽きる。それに健康にも悪いだろう。
「そうは言ってもここら辺には果物がなる木なんかない。食べたければ村に買いに行くしかないぞ」
「買いに行ってくる」
「好きにしろ」
無愛想なゼノンの言葉を背に洞窟を出ようとしたが、俺は足を停めてゼノン元に戻っていた。
「そのゼノン……」
「どうした?」
「村までの道が分からないだけど…………」
ゼノンは呆れたようにため息をつく。
「洞窟を出てかなり歩くと道が開ける。そこから山を下っていけば村につくぞ」
「それと……」
「なんだまだあるのか?」
「俺一文無しだから、金が欲しいんだけど」
「……分かった」
ゼノンが財宝の中から金をつまみ出す。
「あともう一つ」
俺が遠慮がちに指を立てて言う。
「なんだ?」
「大体の金の計算と物価を教えて欲しいんだけど」
「お前は一体城で何を習っていたんだ?社会常識が欠如してるだろう。ドラゴンの我より知らないのは問題があるぞ」
ゼノンの心底呆れたような口調に俺は恥ずかしくなった。例えるなら割り算の問題を解かされてる時に掛け算が出来ないことがばれるみたいな感じだろうか。
「いいか。銅貨、銀貨、金貨、白金貨、豪貨だ」
俺の目に前に硬貨が並べられる。
「銅貨数枚程度でりんご一個買える。銅貨数枚と銀貨数枚渡しておく、買い物に行って来い」
ゼノンは俺の掌に金を落とす。俺はそれを受け取ると洞窟を出た。久しぶりの洞窟の外は太陽の光が降り注いでいた。
「んーー!」
俺は体を伸ばして新鮮な空気を肺一杯に吸い込んだ。
一真はゼノンに言われた通りの道を通る。すると俺の目の前に村が出てくる。
「ここが村か、思っていたより大きくて良かった」
門も形は簡素だがあり、門番までいる。門の所まで行くと門番が俺に槍を突き出す。
「おい、そのフード取って顔を見せろ」
「分かった」
俺がフードを取って顔を見せる。素直に見せるとすぐに槍を引っ込めてくれる。
「何の目的でこの村にきた?」
「買い物目的だよ」
「そうか、犯罪行為するなよ」
俺がそう言うと門番は素直に入れてくれる。無礼だと思いながらも俺は軽く頭を下げると、村の中に入った。村の中は城下町ほど賑わっていなかったが、様々なお店で賑わっていた。俺は果物を売っているお店に最初に立ち寄った。
「いらっしゃい、何をお買いで?」
元気のいいおばさんと無愛想なおじさんが迎えてくれる。
「そうだな……この赤い奴を五個、いや六個くれ。あと……そこにある緑色のやつを四個」
「あいよ、銀貨5枚になる。りんごを入れる麻袋はサービスしておいてやるよ」
「ありがとう」
俺は銀貨を渡すと果物が入った麻袋を渡してくれる。俺は早速買った赤い果物を口に含む。瑞々しく甘酸っぱかった。肉以外に久しぶりに食べた果物は新鮮ですごく美味い。取り敢えず、俺は目的が済んで村を出ようとする。
「行商人が来たぞー!!」
住人の誰かが叫ぶと荷車に人集りが出来る。その時荷車に色々と商品を積み込んでいた。一真は村まで来たんだ、ついでだから見学していくことにした。一真は荷車に積まれている商品を適当に眺める。日用品が多かったが、その中にあるものが一つだけ目に止まって手に取る。
「お!お客さん御目が高い。それはお城で食べてられている蜂蜜菓子です」
「ふ~ん。いくら?」
「そうですね~。今回は負けて銀貨20枚、いや銀貨15枚でどうでしょう?」
行商人は一真の身なりを見て、このお菓子がこの値段で買えると判断して、かなりの値段を吹っかけてきた。
「じゃあいいや」
だが行商人の思惑通りには行かなかった。何故なら一真の手持ちの銀貨では足りなかったからだ。無い袖触れないという事だ。
「し、仕方ありませんね。銀貨11枚、いや10枚でどうです?」
だけど行商人はここで一真にこのお菓子を売っておきたかったので、値段を下げる。ここから先の村に行っても、このような高価なお菓子が買える人間がいるとは限らないので、行商人はここで売りつけたかったのだった。
「無理」
一真がそう言って行商人から離れようとすると、行商人が一真の肩を掴んで止めた。
「まあまあ、お客さん。分かりました勉強させて頂いきます。そうですね………8枚でどうです」
「さようなら」
「わ、分かりました。お客さんには負けました。銀貨5枚で、5枚でどうです」
「それなら帰る」
一真は銀貨五枚を出して、蜂蜜菓子を受け取った。
「お客さんには負けましたよ」
「?」
一真は単に自分の持っているお金では買えなかったので、断っていただけだった。果物を食べながら蜂蜜菓子も麻袋に入れて洞窟に帰っていた。
「帰ったよ」
俺が洞窟の入口で叫びながら洞窟の中に入っていった。
「……果物以外に何か買ったな?」
ゼノンが鼻をクンクンとさせて匂いを嗅いでくる。
「分かるか?お菓子を買ったんだ。あげるよ、ほい!」
俺は麻袋から蜂蜜菓子を出すと、ゼノン顔に向かって大きく投げる。ゼノンはそれを大きな口で器用にキャッチする。
「甘いな、蜂蜜か」
「ああ蜂蜜菓子だよ」
俺はそう言うと自分の口の中にもお菓子を入れる。お城で食べられれると言われるだけあって、蜂蜜が贅沢に使われている。
「もう一つくれ」
「そいよ」
俺はさっきと同じように蜂蜜菓子を投げる。ゼノンは舌を伸ばしてキャッチする。
「美味しいな」
「そうだな」
俺は新たに蜂蜜菓子を口の中放り込む。
「あ、お釣り」
俺はローブのポケットから残ったお金を渡す。
「そんな端金財宝置き場に向かって投げておけ」
「OK」
俺は思いっきり財宝置き場に向かってお釣りを投げた。向こうで金属同士が当たる音がする。
「今日は何を教えてくれるんだ?」
俺は地面に胡座をかきながら聞く。
「そうだな、我の種族ドラゴンについて教えよう。人間が魔物にランク付けをしているがそれを知っているか?」
「下級、中級、上級、最上級で分けられている」
「その通りだ。上級、最上級は大抵本姓がつく。だがその中でも色持ちと呼ばれる特別ドラゴンがいる」
「色持ち?」
俺は買ってきた果物を食べながらゼノンの話を聞く。
「本姓に色が入っているドラゴンだ。そのドラゴンはドラゴンの中でも格が違う。決して戦おうとは思うなよ」
ゼノンのやけに力の入った口調に驚きながらも話を聞いていた。
「分かったけど…どんなドラゴンがいるんだ?」
「……黒龍ファルニゲシュ、赤龍ウェールズ、白龍サクスン、紫雷龍ヴリトラ、死黒龍ニーズホック、青龍タイダイル、銀龍サンサーラ。今思い出せるのはこれくらいだ」
「あと、あんただろうゼノン」
「そうだな、我もだ」
ゼノンが何でもないと言うように言うが、俺が思うにゼノンもドラゴンの中でかなり上位の強さだと思う。
「そのような者と戦う時はドラゴンスレイヤーを持っていくことが必須だ。覚えておけ」
「ドラゴンスレイヤー?」
俺は初めて聞く名詞を疑問形にして聞き返す。何となくドラゴン専用の武器なのは分かるけど、それだけだ。
「ドラゴンスレイヤーとは対ドラゴン専用の武器のことだ。武器のレベルにもよるが、色持ちドラゴンでも刺されれば動けなくなるほどの力を秘めている」
「そうなんだ…」
俺は適度に相槌を打ちながら、ゼノンの話を頭の中に入れていた
風邪を引いていたので、なかなか投稿できませんでした ((。´・ω・)。´_ _))ペコリ
ごめんなさい




