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21 黄金竜ファフニールのゼノン

目を覚ますと俺は、暗闇の中にいた。まだ寝ているのかと思ったが、近くに生き物の息遣いを感じる。ゆっくり体を起こした。あの女副団長からやられた傷はすでに無くなっている。誰かが治療してくれたのだろう。だけど誰が? 洞窟の出口は爆発で閉じられた。あそこから俺を助け出すには洞窟の天井の穴から入るしかない。いや、別の出入り口があるのかも知れない。あの爆発の音を聞いて地元住民が駆けつけ、助けてくれた。ありそうな話じゃないか。


「目覚めたか」

噂をすれば治療をしてくれた人間が俺に話しかけてくれた。

「どうも助けて頂…い…て………」


後ろからくぐもった声が聞こえる方向に、俺はお礼を言おうと振り返った。背後に大きなシルエット。俺は考えるべきだった。人に助けられたのなら、なぜこのような暗闇なのか。そしてあの時空の上から何が降りてきたのか。


「この暗さでは何も見えぬな、フレイム」


周りが明るくなる。目の前が金色で染まる。俺はゆっくりと首を上げて音源を見る。真上を見るぐらいになって、やっと顔が見えた。細長い顔に口から牙が見えている。爬虫類特有の目で俺のことを見つめてくる。


「どうだ、これで明るくなっただろう」


得意げに笑みを浮かべる金色のドラゴンがいた。俺は驚いて何も言えなかった。


く、喰われる。


俺は目を瞑って自分の命が食われる時を待った。


「ガハハハハ、心配するな。食ったりせんぞ」


俺の思考を先読みしたのか、面白そうにドラゴンが笑う声が部屋に響く。無理やり冷静にして、周りが見えるようになる。どうやらここは洞窟のようで、そしてこの竜の巣だろう。


「我は黄金竜ファフニールのゼノン、人族の青年よ」

「高坂 一真……です」


思わず正座になっていた。恐怖でおしっこをチビリそうなのは必死に正座で我慢していたのだ。


「タカサカ カズマ……随分と変わった名前を持っているな。タカサカか……タカサカ」

ドラゴンは何度も口の中で転がすように何度も呟く。俺も同じように名前をつぶやことするが、名前がどこで切れるか分かってなかった。

「黄金竜?ファフニールノゼノン」

「違う違う」

ドラゴンが慌てたように訂正をする。

「黄金竜が本姓、ファフニールが苗字、ゼノンが名前」

「ゼノン」

俺は確かめるように名前を呟く。

「そうだ、ゼノン。それが我の名前」

黄金竜ファフニールのゼノンは満足そうに頷くと、俺の前に葉っぱの上に用意された肉と水を尻尾で突き出した。

「食べろ、食べながら話してやる」

それを見た途端俺の腹がなる。誘拐されてからかなりの時間が経っているようで、お腹はペコペコだった。

俺は肉を食べようと引き寄せて気がついた。

「ねえ……」

「どうした?肉は腐っていない」

「違う」

「ならどうした?」

「生なんだけど」

俺がそう言うとゼノンがうっかりしていたように、自分顔を叩く。

「そうだ、そうだ。人族は生では食べなかったな。すまぬな、忘れていた」

ゼノンはそう言うと肉を摘んで、口から炎を出して燃やす。燃やすこと10秒もう一度肉が俺の目の前に戻される。俺は食えるようになった肉を手で掴んで口に含む。肉の旨みが口の中に広がる。俺は肉を食いながら、ゼノンの話を聞いた。







一真は肉を口いっぱいにすると、水を口の中に無理やり流し込んで胃の中に流し込んだ。ゼノンの話によると、あの洞窟はゼノンの財宝の隠し場所だと言うことだった。そして財宝に触るとゼノンまで知らせた届く魔法が設置してあり、その知らせを聞いて飛んできたのだ。宝を持って逃げる騎士は殺したが、他の騎士は見逃したそうだ。ゼオンは財宝を回収して、自分の巣にもって帰ってきたのだが、その財宝を回収したときに、一真を財宝と一緒に回収してしまったと言う事だった。人間だが殺そうと思っていたが、騎士の人間に拷問されていた所を見ると騎士の仲間では無いようなので、助けても良いだろう気まぐれで思ったと、ゼノンは語った。


一真はゼノンに気まぐれに心から感謝した。ゼノンの気まぐれが無かったら、今頃あの世だっただろう。一真は食べ終わると口を拭った。


「でここはあそこからどれくらい離れてるんだ、です?」


一真は自分の命が今でも少し危ない気がして、丁寧口調に無理矢理する。


「クククク、心配するな。我が一度生かすと決めたんだ。今更命を奪ったりはしない。この洞窟は……あの洞窟から馬車で一週間と言ったくらい距離だ。近くに村もある、小さいがな」


ゼノンはそう言うと愉快そうに低く笑う。だが一真にはその笑いが不気味で仕方なかった。だけど一真はこのドラゴンの笑みのことばかり考えていられない。これからどうするかを考えなければいけない。城に戻るにはリスクが高すぎる。門番の兵士があの騎士団の息の掛かったものだとその場で殺されかねない。そこまで考えて、その次の考えが出なかった。一真は仕方がないので考えるのをやめた。まだ、考える時間はある。


「タカサカ。どうするのだ、これから?」


そう思った直後にゼノンから質問が飛んでくる。一真は少しの間沈黙して何を目標にするか考えた。


「取り敢えず、一人で生きていけるぐらいには強くなるよう訓練したい」

「……帰る場所がないのか?」

「……ある、だけどすごく遠い。帰り方も良く分かってない」

「帰り方が分からない?迷子か?」

ゼノンが小馬鹿にしたように聞いてくる。一真はゼノンの小馬鹿にしたような態度に若干怒りを覚えながら、首を振って否定した。

「違う。たぶんあなたに言っても分からないだろう」

一真がそう言うと、ゼノンが面白そうに笑う。一真はゼノンが、何が可笑しくて笑っているのか分からなかったが、面倒なので正直放置しておきたかった。

「クククク、我はドラゴンの中でも一二位を争うほどの長生きしている。我に分からないことは無いと言っても過言ではないぞ。どこから来たか話してみろ、我が答えてやる」

ゼノンが胸を張って、鼻息を荒くして一真の質問を待ち構える。一真は駄目で元々でゼノンに聞いてみることにした。

「俺は異世界から召喚された。元の世界に帰りたんだ」

ゼノンが興味深そうに俺を見つめる。

「異世界、異世界か。タカサカお主は異世界の住人なのか?」

ゼノンは異世界について知っていたのか?あまり驚かなかった。

「そうだ」

「そうか、お主が噂の勇者か」

ゼノンの『勇者』と言う言葉に心臓が飛び上がりそうになる。そしてゼノンが元の世界の帰り方を知っているかもと期待が高まる。一真は自分に期待は禁物と言い聞かせても期待をしていた。

「噂になっているのか?」

「我々ドラゴン族も勇者の噂に敏感に成らざるを得ない。勇者がドラゴンの装備を作ろうと、ドラゴンが狩られることが増える。我には多くの子供や妻がいる。警告をするためにも他のドラゴンより警戒する」

一真はゼノンがこの話をした時、自分が殺されるんじゃないかと一瞬ヒヤッとしたが、ゼノンに特に変化が無かったので、不安はすぐに収まった。

「タカサカの質問だが……魔王を倒せば元の世界に帰ると言われている。我が知っているのはこれだけだ」

ゼノンは罰が悪そうに答える。自信満々に言って、しっかりと答えられなかったことにゼノンは少し恥ずかしさを覚えていた。

「他の質問はないか?」

ゼノンはしっかりと答えられなかったのを取り返すように、一真に次の質問を促した。

「魔王の強さを聞きたい。出来たらスキル構成まで知りたい」

ゼノンはその質問で頭を抱えた。

「……すまない、その答えは知らない」

「そうですか……」

一真の諦めたような声がゼノンのプライドに刺さる。ゼノンはどうにかして、一真の質問に答えようとする。

「な、なんでもいい。他に質問は無いか?」

ゼノンが顔を近づけて聞いてくる。一真はそんなゼノンの態度に若干引きながら、質問をした。

「な、ならスキルについて聞きたいことがある」

「聞いてくれ」

一真は定期入れからスキルカードを出す。

「あれ?」

スキルカードの表示が変わっていることに気づいた。


タカサカ カズマ  

剣術1

合体

分離

魔徳15




魔徳スキルのレベルが上がっていた。スキルレベルが上がったという事は使ったということだ。いつの間にか魔徳スキルを使ったのだろうか?まあいいや、取り敢えずスキルの正体を教えてもうおうか。

「合体、分離、魔徳について」

「そうか分かったぞ、理由が……」

「何が分かったんだ?」

「我がタカサカを殺さなかった理由だ」

「どういう事だ」

一真が聞くとゼノンが面白そうに笑って答えてくれた。

「まず、魔徳と言うスキルはだな。魔物に敵意を向けられにくくなると言う効果だ。レベルが上がれば上がるほど上位の魔物にも効きやすくなる。我もこれに当てられたのだろう、影響は少ないがな」

ゼノンの解説がダンジョンで一真が魔物に襲われなかった理由が分かった。ゴブリンに攻撃されたのは、怒らせたせいだろう。スキルがあると言っても、限度があるみたいだ。

「合体、分離で魔物を体に取り込み自分の体の一部として使うことが出来る」






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