表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/61

16 初めての戦闘

俺たちは5層の入口あたりでお昼を取って休憩していた。人数を半分に分けて、見張りをする隊と食事をする隊だ。俺たちはいま見張りをしている。だが正直階段付近と言うこともあって、魔物は姿を現す気配は無かった。

「暇ですね」

背後から楓が話しかけてきたが、俺は無視して見張りに集中した。こんな風に油断している時に襲われるってこともあるからだ。

「無視しないでくださいよ、一真先輩」

「見張りに集中してくれ」

「以外に真面目なんですね」

「命が掛かってるからな、誰だって真面目になるだろう」

「それもそうですね」

俺の言葉に納得したのか、黙って見張りに集中する。ちなみにここまで来るのに五体の主を倒したが、一層の主がカエルを直立させて、蛮刀を持たせた魔物だった。これは秀一たちの隊が戦闘に当たった。戦闘には一分も掛からず決着ついた。さすがチート組だろう。二層の主は骸骨騎士だった。身長は俺たちと変わらなかったけど、戦闘慣れしていて、倒すのに時間が掛かった。最終的には魔法のゴリで倒した。三層主は俺たちの隊が担当することになった。敵は初めて魔法を使う魔物だった。敵はゴブリン、だが魔法が使えるとあって、知恵があるゴブリンだった。ゴブリンは群れで戦いに来ていた。魔法を使うゴブリンは後衛で指示と魔法攻撃で前衛ゴブリンの支援をしていた。そんな敵だから俺も戦うしかなく、大剣を振るった。鎧のおかげもあって、対したダメージを受けなかったが、俺の剣術のレベルだと多一の戦いをできる訳無く、ゴブリンを殺すことが出来なかった。魔法使いのゴブリンは俺がゴブリンを殺せないことが分かると、騎士の方に攻撃して前衛のゴブリンを殺させないようにしていた。こちらも後衛から魔法や矢で攻撃をしてくれるが、強力な攻撃魔法は前衛の俺たちがいて放つことが出来なかった。このままでは前衛が少ないこちらが不利だった。俺は思い切った行動に出た。騎士たちには複数のゴブリンと魔法を使うゴブリンがついているが、俺にはゴブリンが2体だけだ。俺は大剣を逆手に持つと。

「ファイヤーボール」

虎が咥えている赤いクリスタルから優吾と戦った時より大きい火の玉が放たれる。火の玉の大きさは丁度ゴブリンの頭で同じで、ゴブリンの顔が炎で包まれ肉の焼ける嫌な匂いが、俺の鼻に届くがそんなことは気にしてられなかった。俺は大剣を普通に持ち帰ると、もう一匹のゴブリンに体当たりを食らわして、無理やりどけた。ゴブリンは突然の魔法に驚いていたこともあって、すんなりと俺の前に道を作ってくれる。魔法が使えるゴブリンの顔には驚愕の表情が浮かんでいることが俺にも分かった。いままで弱いと思っていた奴が、想定していない強さを持っていたからだろう。だが魔法使いのゴブリンも馬鹿ではなかった。ゴブリンは腰にある剣を抜こうとしている。このゴブリンも自分が接近戦をすることをしっかりと考えているのだろう。このままではゴブリンと切り合うことになる。そうなったら勝ち目は薄いだろう。俺は剣を頭の上まで振り上げて、振り下ろす。その時にはゴブリンは剣を腰から抜いて防ぐ。それでゴブリン体勢が少し崩れるが、すぐに戻せるだろう。だけど俺はその一瞬にかけた。

「燕返し」

地面スレスレまで落ちた大剣がゴブリンにまた舞い戻ってくる。そしてゴブリンの体を斜めに切り裂いた。切り裂いた場所が良かったのだろう。ゴブリンの喉をしっかりと切り裂いて、血が噴き出した。ゴブリンは必死に喉を抑えて出血を止めようとしていたが、俺はそんなゴブリンを蹴り飛ばすと、馬乗りになって止めとばかりに喉に思いっきり突き刺した。俺はもう一度突き刺そうとしたが、ゴブリンが最後の足掻きとばかりに暴れて大剣が抜けなかった。


「クソが!動くな!」


俺は怒鳴ると、ゴブリンの顔を踏み潰した。それでも暴れるから何度も踏み潰していた。


「クソクソクソクソクソ!なんで抜けないんだよ」


大剣を抜くことに集中していて、背後に迫っているゴブリンに俺は気づいていなかった。体に大きな衝撃が走りゴブリンの死体の上から飛ばされる。鎧を着ていたから対して痛くなかったが、俺の上にゴブリンがまたがっていた。俺は必死に起き上がろうとしたが、ゴブリンと鎧の重みのせいで起き上がることが出来なかった。俺の首元にナイフが振り下ろされそうになる。


「クソクソクソクソ!!」


俺は焦って体を動かしてナイフから出来るだけ自分の体を離そうと必死だった。俺の首にナイフが振り下ろされる瞬間横から何かが飛んできて、ゴブリンの頭を貫く。ゴブリンの動きは止まり、俺の上に体が落ちてくる。俺はそれを引き剥がすと、あたりを見回した。


「大丈夫ですか?一真先輩?!」


楓が焦った様子でこちらに駆け寄ってくる。今の攻撃は楓の矢によるものだったのだろう。俺は驚異が去ったことで、少し冷静さを取り戻してあたりを見ることが出来た。


「ああ」


あたりでは司令塔をやっていた魔法を使うゴブリンを倒したことで、前衛のゴブリンの統制が崩れたようで、既にゴブリンは全滅していた。


「お手柄ですね、一真先輩!」


楓が興奮気味に俺のことを褒め称えるが、俺には楓の声が少し遠くに聞こえていた。そして俺の隣にある魔法を使えるゴブリンの姿が目に入る。


「うっぷ おえぇぇぇぇ!」


その途端気持ち悪くて嘔吐してしまった。たぶん今の戦闘で一気に心に凄まじいストレスが掛かっていまいオーバーフローを起こしたのだろう。溢れ出したストレスが口から噴き出す。


「ちょ、先輩大丈夫ですか?」


楓の心配そうな声が聞こえるが、俺はそれに答えている余裕なんて無かったが、無理やり答える。


「はあはあ。だ、大丈夫だ、怪我はしてない」

「そう言う意味じゃないんですけね……」

俺は楓のそのことばを無視して、無理やり立ち上がり俺の大剣が刺さっているゴブリンの所まで歩いて行った。


「剣抜かなきゃ」


俺はゴブリンに足を掛けて、大剣を抜こうとしたが中々抜けなかった。

「くそくそ、なんで抜けないんだよ」






一真は泣きそうな声が出ていた。そんな声を聞いて一人の騎士が近づいてくる。

「私が抜こう」

団長だった。一真の様子を見て心配になって来てくれたのだった。

「お、お願いします」

一真は素直に剣から手を離して、団長に託した。


ズシャッ


そんな音とおもに一真の大剣は抜ける。

「ありがとうございます」

一真は大剣を受け取ると、大剣を鞘に戻そうとした。


カチカチ、カン!


「くっそ、なんで?!」

大剣は一真の腰にある鞘には収まろうとはしない。一真が無理やり鞘に収めようとするが、余計に鞘から外れる。

「そんなことでは怪我をするぞ」

団長がそう言って一真の手に自分の手を添える。

「私がやろう」

「すいません」

「気にするな」

団長はそう言うと一真の手から体験を受け取り、腰の鞘に収める。

「大丈夫か?」

「は、はい」

一真はそう言った物のとてもじゃないけど、誰から見ても大丈夫そうには見えなかった。団長は自分の腰から革で出来た水筒をはずして、一真に渡したが、一真は受け取らなかった。一真はとてもじゃないけど飲める精神状態じゃ無かったからだ。


それからのことはよく覚えていない。機械的に歩いていただけで、残りの層は記憶にほとんど残らなかった。楓に聞くと残りの層の主はいなかったそうだ。倒してから一ヶ月立っていないのだろう。そして俺は見張りに集中することで、色々なことから目を逸らしていた。


「食事終わったみたいですね」


俺の背後で食べ終わっている人たちが大半を占めてきていた。そろそろ見張りを交代することになるだろう。正直俺の胃が食べ物を受け付けると思えなかったが。


「交代だ!!」


一緒に見張りをしていた団長が交代を宣言したことで、俺たちの食事の順番がきたが、俺は渡された食事に手を付けず、水を飲むだけで精一杯だった。


「食べないと体がもたないぞ?」


後ろから団長がパンと干し肉を食べながら、話しかけてきた。これまでの戦闘で俺みたいにダメージを受けているのは俺だけだった。そんな状態だから俺は目立つだろう。だが他の人間は戦闘の高揚感あって、自分たちがあげた戦果を自慢げに話してる。とてもじゃないが、俺はそんな気分にはなれなかった。


「分かりました」


無理やり干し肉を口に含むと、肉の味が下に伝わる。噛めば噛むほど肉の旨みが出てくる。俺はそれとお供にパンをちぎって、口の中に放り込む。思った以上に上手くて、少しだけ気分が少しだけ軽くなる。


「食えば少しは気分も楽になる」


団長はそう言うと俺から離れていった。団長の言った通り食べるだけで、かなり気分が楽になった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ