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12 降参

大会初日の一真は順調に勝利を重ねていった。殆どの対戦相手は魔法や武器を振る時間さえ与えず、倒していく。他の人の戦っていくに連れて強くなっていくので、時間が掛かる戦いもある。試合を全は終えるには、日をいくつか跨ぐようだ。一真は出来るだけ、他人の戦いを見て、強敵になりそうな相手をマークした。



一人はエクストラスキル持ちのやつだ。神速と言うスキルでスキルレベルが上がるにつれて、速さがどんどん上がっていく。見てる限り相当な速さがある。スピードが互角以上なら、次の攻撃で速さが負ける俺には勝ち目は無い。次は秀一の妹だ。彼女は弓矢を武器として使う。しかし、エクストラスキルによって、矢は魔力が尽きるまで次々と出てくる。矢をつがえる必要が無いため隙が無い。しかも、魔法つきだ。魔法を発動させるなは駄目だが、武器を構えるのは許可されているので、すぐに射抜く事が出来る。今の俺がどんなに速く動いても、相手が矢を放つ前に自分の攻撃を当てることは出来ないだろう。しかも俺は途中で体の動きを変えることが出来ない。この技の弱点は、技の発動中には、イメージ通りにしか体が動かせないことだ。下手をしたら、自分から飛んでくる攻撃に突っ込むことになる。無理に避けようとすると、体にかなりの力を入れるので、大きな隙が生まれる。たが、魔法の発動が終われば、直ぐに動くことが出来る。あとは人形使いか、魔法によって、土や炎の人形を使って攻撃してくる。一つ一つの個体能力は高くは無いが、数で押されると勝つことが難しくなることは間違いない。魔法を発動される前に倒さなければならない。あと幾人か気になる奴がいるが、今の所はそれぐらいだな。まあ、何とかなるだろう。



一真は今まで勝ってきた事から、そんな風に楽観的に考えていた。次の日からは、スキルがアナウンスされなくなった。一真は初日に気になる奴のスキルをメモしておいた自分に感謝をしていた。そして、10回戦目、一真は初めて負けそうになった。対戦相手は魔法一択だったので、一真は対して警戒せずに戦いに望んだ。審判の開始の合図と共に飛び出した。だが一真の動きが途中で鈍くなるのを感じた。


足が重い。それに冷たい。


一真は視線をしたに向けると、足首近くまで、水に浸かっていた。そのせいで一真の動きがかなり鈍くなる。


まずい!これじゃあ、相手に距離を開ける時間を与えてしまった。離されたら負けだ。


一真が力を足に込めるが、全然前に進まなかった。


このままじゃ!


一真が足から正面に視線を向けると、相手がゆっくりとこちらに倒れてくるのが目に入る。


「あれ?」


一真のそんな間抜けな声と同時に木刀が振られた。その倒れてくる体に木刀が当たり、体は吹っ飛ばされる。


どうやら魔力切れで倒れたようだった。この闘技場に足首まで浸かるほど水を出現させたのだ。それに加えて呪文無しだ。殆どの魔力だけで、水を出したのだ。魔力切れを起こしてもおかしくは無いだろう。


あ、危なかった。魔力にもう少し余裕があったら負けていただろう。


一真は自分の水で濡れた足を見ながら思った。一真は他の奴が同じような戦法を取ってきたら、どうするか、早急に考えなければならないと焦っていた。しかし、一真の焦りは無駄となった。その試合を見たことによって、闘技場を水で満たすことが、無謀な戦法だと言う事が伝わったのだった。


戦士系統の戦うときは、一真は直ぐには攻撃はしない。攻撃をして防がれてしまう可能性があれからだ。たから、一真が攻撃するのは相手が攻撃してきた時だ。一真の攻撃は相手が攻撃してきたのを確認してから、攻撃をしても充分間に合う。


一真の敵は膨大な魔力を持っている人間か、最初の一撃に耐える人間が、剣技の速度が上回っている人間だろう。そんなやつは上位にしかいないので、それには負けても構わないと一真は考えている。


次の戦いは岩尾いわお 健太けんたと言う中学生だ。健太は得物を持っていなかった。一真はその事に不審に思いながらも、発表されたスキルは剣術スキルと格闘スキル、それと魔法スキルだったので、特に警戒するものは無かったはずだ。戦いは基本的に木刀を使っていたので、一真の記憶にはどの様な戦い方をしていたかは、無かった。


まあ、得物が無いんだったら、魔法を使って戦うのだろう。それならば速攻で攻撃しつも、問題は無いだろう。


一真はそう結論付けると、審判の試合開始の合図と共に攻撃を仕掛けた。


スカッ


そんな音がするみたいに、一真の攻撃は空を斬った。一真がそれを感じると同時に顎の辺りに衝撃と痛みを感じると一真の体がぶっ飛んだ。一真の体が無様に地面を転がっていく。


くそ、一体何が?


一真は体を立たせようとするが、足が震えて立てなかった。顎を殴られたせいで、脳が揺れているのだ。


くっそ、体が言うことを聞かない。ここで、追撃されたらまずいんだよ!動けよ!!


無様に倒れている一真に近づいてくる。

一真は自分の膝を叩いて、立とうとするが、そんなことで、脳の揺れが収まることは無い。



「た、立て!」



しかし、一真のその一言でしっかりと立ち上がる。健太は自分のパンチを受けて立ち上がるのを見て警戒する。あれだけしっかり拳が入ったのに立ち上がるのは、既に脳の揺れ止まったと言うこと。相手がかなり強者だと言うことだからだ。しかし、実際には一真の脳はまだ、グラグラと揺れていた。その状態でなぜ、一真が立てるかと言うと、魔法を使って立つのを手助けしてもらって、立っているのだ。魔法によって、剣術を発動させるように、立つ姿勢を魔法で維持しているのだ。周りから見ると、普通に立っている様に見えるが、一真本人は未だに足が上手く動かせ無いでいる。


ヤバイ、まだ脳ミソの揺れが収まらない。今は相手も警戒して、俺を攻撃してこないが、このままぼっ立ちしていたら、いつかは攻撃してくるだろう。


だが相手は攻撃するつもりは全く無かった。


くっそ!確実に入ったはずなのに、すぐ立ち上がるのか。どんだけタフ何だよ。

健太は心の中で悪態をついていた。

俺の隠し玉である拳を出したのに……それにしても動きが速い。攻撃することを一切捨てて避けることに専念しないと、とてもじゃないけど、避けられない。


健太は一真が攻撃した後の隙を狙う作戦で来ていた。だから健太から攻撃をしてくることは無いのだ。しかし、一真がその事を知るよしは無く、脳の揺れが

収まるまで攻撃してこない事を願うしか無かった。


一真は脳が揺れるのが収まると、攻撃してこない相手に不信感を感じるぐらいには余裕が出来た。しかし、理由が解らず、攻撃を躊躇っていた。そして、一真が攻撃をしないことで、相手も攻撃出来なかった。しかし、このままでは拉致が空かない。そう考え一真はもう一度、攻撃をしようと近づいていく。攻撃の間合いに入ると居合いの構えで、固まる。一真は先程より速い攻撃を繰り出すために、集中する。理由が分かっていないが、相手が攻撃をしてこないのだから、時間はたっぷりある。そして、相手も一真の攻撃を避けるために集中する。



…出来た。



ついに一真の中で最速の抜刀のイメージが出来上がったのだ。一真は上体を落とす。相手もそんな一真を見て、避けるために神経を更に尖らせる。



「紫電」



一真のその呟きと共に、一真の腰から木刀が抜かれる。そしてー



スカッそんな音がするみたい見事に避けられる。一真の木刀を放った残心で固まってしまう。そこに相手の拳がクリティカルヒットする。



一真は前もって心の準備をしていたので、先程よりはダメージを受けなかった。一真はそのまま数歩下がる。一真の脳は先程違い揺れなかったので、魔法で立つ必要が無かったが、精神的には倒れそうになっていた。なぜならー


あれを避けるのか…


今までの中で最速と言って良いほどの攻撃だった。それを避けられたのだ。一真にもう打つすべは無いのだ。一真に残されたものは1つしかない。それはー


「参った。俺の負けだ」


―降参である。



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