1 異世界転移
今回の主人公はいじめっ子の手下その1です。不快かもしれませんがご了承ください
暗い洞窟の中、その暗さとは裏腹に騒がしかった。そこにはドラゴンと鎧を装備した騎士、そして両腕を失って地面を泣きながら這ってドラゴンに近づく一真。
「ゼノン!ゼノン!」
ドラゴンに手が届く距離まで来ると一真は、ドラゴンに必死に呼びかける。
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学校の昼休みのとある教室。
「お、僕の弁当返せよ!」
「あ、これお前の弁当だったの?」
横寺 優吾の言葉に笑みを浮かべる柄の悪い男子、上田 達也だ。優吾は学年カーストで下に位置する、ようはいじめられっ子だ。少し太っているが、それ以外は普通の少年だ。そんな優吾を毎度のごとくいじめてくる一人が達也だ。見た目がチャラチャラしていて、喧嘩騒動は数知れず、そしてその喧嘩も負け知らずで強いのだ。
「お前には勿体無い弁当だな」
そう言って笑っているのは、このいじめのリーダー格で雰囲気は悪いが見た目が優等生の男子、露口 真人だ。弱者を虐げることには喜びを覚える性格で、頭もキレるし、真人の親はこの学校の理事長をやっていることと自分から殆ど手を出さないと言う事もあり、他の先生型もいじめの行為を半ば黙認している。喧嘩騒動は無いが、昔から空手などの格闘技を習っているので相当強いらしい。
「お前の弁当は、豚小屋にあるんじゃないか?」
そう言って笑ってる男子は高坂 一真、いじめっ子達の中では特に目立った素行の悪さはない。なぜ、いじめっ子達と一緒にいるのかが不思議なタイプの人間だと思う。自分でもそう思っているほどだ。
「豚小屋とかキャハハハハハ、マジ、受ける」
笑ったのは露口 真人の彼女の千葉 美由紀だ。校則違反だが髪の毛は軽く染めててある。イケイケ系女子だ。染めた茶色い長い髪で顔は綺麗と言うより可愛いと言ったほうがいいだろう。
「返せよ」
優吾がそう言いながら、弁当を持っている達也に迫る。
「ほーれ」
達也はそう言って、優吾の頭を超えるようにして、真人に弁当を投げ渡す。
「ナイスキャッチ♫」
「今度は美由紀だ」
ナイスキャッチと言った美由紀に弁当を投げ渡すと、彼女は汚いものでも触るように直ぐに一真に弁当を投げる。
「おとと」
一真は危なげに弁当をキャッチする、正直一真はこう言った事が楽しめる人間では無いが、真人達のグループにいるには必要なことだ、そう割り切ってやっている。そこでこの弁当のキャッチボールを中断させる者が現れた。
「何やってるの、あなた達!」
それはこのクラスの副委員長の天海 美羽だった。学校では男女問わず絶大に人気を誇る美少女。少したれ気味で大きな瞳で優しげで、そして薄い桃色の小さな唇がかわいい 微笑みがいつも絶えなくて、非常に面倒みが良い。副委員長と言う事もあって美雨が毎回優吾のいじめを止めるのは日常の出来事だ。
「何だよ?」
達也が肩を怒らせながら近づいてくる。美羽はそんな達也に一歩も引かないでいる。周りの見ている人たちがハラハラと見守っている。
「また、お前らかよ。今度は何をしているんだ」
そこで副委員長の美羽に守るように、委員長の相沢 秀一が出てくる。クラスメイト達の男子は尊敬の眼差し、女子はヒーローでも見るような視線を向ける。秀一は美羽と幼馴染でサラサラの少し茶色い髪と優しいげな瞳180センチあり、高身長で引き締まった体。そして正義感が強くて、小学生から野希美道場で剣道を習って腕も立つ。そんな秀一が美羽と達也の間には割って入る。
「こいつと遊んでいただけだよ。だけど天海が邪魔したんだよ。ちょ~、萎えるわ」
真人がそう言って、笑みを浮かべる。
「横寺の弁当、返してやれ」
秀一の言葉に、やれやれと言う感じで、優吾に弁当を投げて返す。
「仕方ないな」
優吾が弁当を受け取ると、風呂敷を解いた。
「なっ?!」
「何よ、これ」
優吾と美羽が、二人で驚きの声を上げる。風呂敷の中には弁当箱ではなく、丁度弁当箱と同じくらいの大きさの木材が入っていただけだった。
「ちょっと、お弁当をどこにやったの?」
美羽が怒りながら、真人に詰め寄る。
「知らねーな~」
真人はそんな美羽の怒りの言葉にふざけた調子で返事をする。もちろん、弁当を隠した本人なので、弁当がどこに隠してあるかは知っているが、そんな証拠がある訳でもないから、真人を問い詰めることができない。
「言いなさいよ!」
美羽が更に詰め寄ろうとするのを、そんな美羽の肩を触って止めた人間がいた。
「美羽さん、もう良いよ」
優吾だった。優吾は、美羽の身を案じて止めているようだった。正直優吾はこれ以上美羽に、自分のことでこれ以上関わって欲しくないようだ。今は秀一がいるからこれだけで済んでいるが、真人が本気でわずらしくなったら、帰り道に襲いかかってもおかしくは無い。
「で、でも」
「そいつが自分で言ってるんだ、ほっといてやれよ」
秀一が、そう言って美羽を止める。一真はそれが正直不思議でならなかった。秀一は正義感が強くて、正義のヒーローみたいな人間だ。そんな人間がいじめられている優吾に対して冷たい、理由がわからないが。これが優吾でなければ秀一は、無理矢理にでも優吾を真人から離して自分たちのグループに入れるはずだ。だけど秀一は美羽が関わった時だけ秀一は優吾のいじめを止めるが、それも美羽を引き離す方向に動いている。
「分かった、けど優吾君何かあったら言ってね」
美羽は去り際にそう言った。
「優吾、お前がはっきり言わないのもいじめられている原因なんだからな」
秀一はそう吐き捨て美羽の後を追いここから離れていく。その言葉を聞いて一真は、やっぱり秀一は優吾に冷たいと思う。疎ましく思っていると言ってもおかしくないは無い。
「頑張れよ、弁当探し、ククク」
真人が、勇吾の肩を叩いて、その場から離れていく。真人に続くように、美由紀、達也、一真の順に動いた。一真は勇吾の前を通りすぎるとき、小さい紙切れを落としていく。真人たちがいなくなるのを確認するて、その小さい紙切れを優吾が開く。
『弁当はお前の下駄箱の中』
そこには弁当の隠し場所が書かれていた。一真はこうやって、勇吾を助けている。これは別に、勇吾を可哀想に思ってのことではなく、自分の保身のためだ。もしこのいじめが優吾が自殺をしたら、このいじめが公になるだろう。いじめの主犯である真人は、親が権力者であることもさらながらに、基本的にいじめの実行犯ではないから、警察に逮捕される確率は低い。しかし、一真はそうもいかない。一真には後ろ楯になるものが無いから、下手をしたら主犯として、逮捕されかねないのである。だからこうやって勇吾を助けているのである。もし自殺したなら、勇吾は遺書か何かを残すだろう。そこに真人の名前たちが書かれているが、その中には一真の名前が入らないように企んでの行動だ。いじめられたご本人が苛められてないと言っているのだから、逮捕される事はないだろう。しかも、その企みが外れたときのために、一真は日記を書いている。そこにはいじめの内容と虐めていることについて、心を悼めていることと、勇吾をどのように助けたが、書かれている。そこに書かれていること真実との違いは、一真の心情である。それが違うことは、誰にも分からないだろう。
(あと想定してないとしたら、真人達が俺がいる時に優吾いじめてる中で殺してしまうことだろう。まあ、流石にそこまで酷いことはしないだろうが……)
美由紀と達也とは、弱者に暴力を振るうことに、酔いしれている。
(それを考えると安心も出来ない、気を付けなければ)
一真は、弱者に暴力を振るうことに酔いしれている訳ではなく。学校の始めに一真との話が弾んで、気に入られたからだ。本来なら教室の隅で、縮こまっている人間の一人だった。適当に会話して適当に遊ぶだけどの友達関係を築いてるだろう。
そして気付いたときには、クラスメイト大体の立ち位置が、決まってしまい。真人の子分をやめるにやめられなくなってしまったのだ。
(全く、勇吾は学ばない。真人が、実行犯になるときは、直接手を下してな時なのに、勇吾はやっぱり馬鹿だな)
一真は心の中で馬鹿にしていた。
「おい、お昼どうする?」
「あたし、購買でパン買うつもりだったけど」
「この時間は購買込んでるな」
「そうだ、勇吾に買わせに行こう、あいつの奢りで」
達也がとても素晴らしい考えのように言う。
「あ、それいい」
「達也に任せるよ」
「そうだな」
真人は、やっぱり言質を避けて『達也に任せる』と言う。真人やはり頭が良いと、一真は思う。そこに運が悪いことに、一真の手紙を受け取って、弁当を取りに勇吾が教室から出た所だ。
「おい、勇吾!」
達也に呼ばれて、肩をビビらせて勇吾が、振り替える。
「購買でパン買ってこい。俺はカツサンドとイチゴパンと炭酸ジュースな」
「あたしはイチゴパンとクリームパンとイチゴミルクね」
「カレーパンとサンドイッチとお茶」
「ジャムパンとレーズンパンそれと紅茶」
達也、美由紀、真人、一真の順に注文をしていった。
「んじゃ、頼むは」
達也は、そう言うと、勇吾が
「あの…お金は」
「ああ?」
勇吾は恐々とお金を要求すると、達也が恫喝する。
この馬鹿が!お金なんてこいつらが払うわけないだろ。そんなことも分からないのか?一真が心の中で罵倒しながら、フォローに動いた
達也が勇吾に詰め寄る前に、一真が勇吾に詰め寄る。
「おいおい、勇吾俺達が購買で買いに行けなくなったのは、勇吾が、俺達に遊んで貰ったかだよなあー?」
「う、うん」
「だったら感謝の念を込めて、パン代金はもちろん奢りだよな?」
「うん、そ、そうだね」
「なら、頼むな」
一真は後ろにいる、真人たちに見えないように、勇吾の胸ポケットに、紙を二枚入れた。一枚は一真達の注文を書き留めた紙だ。大抵注文がパターン化しているので、一真があらかじめ用意したものだ。これ以前の時に注文したものと違うものを買ってきて、達也にボコボコにされたことがあったからだ。そして、もう一枚は千円札を入れたのだった。これで頼んだパンの代金に充てるようにように渡したのだ。最初は一真の頼んだパンだけだっだのだが、一真にパンを渡すときに、お釣のお金同士がぶつかるあい、お金を渡したことがばれそうになって以来、全部使って良いと言ったのだった。全く、いじめられっ子は、どこか抜けている。それがいつまでもいじめられている要因でもあるのだろう。
一真たちが、教室で談笑しなが、勇吾が、帰ってくるの待っている。
「しかし、おせーな」
達也が舌打ちをして、呟く。
「勇吾トロイから」
一真が笑みを浮かべながら言う。
「そのお陰で、あたし立ちはパンを買いに行かせられるんだけどね」
美由紀が、愉快そうに笑う。
その時、教室の床が眩しいほど発光する。教室中は『まぶっ!』『目が!』声で埋まる。全員この光で目が見えなくなったのだ。目が慣れると、教室の地面は発光しているが、先程より発行が弱くなって鼓動するように、光が点滅している。ラインは床全体に広がっていた。5秒ほど経っても特に何かが起こることは無かった。
「何だよ、脅かしやがって」
誰かがそう言った。その時教室の扉が開く音がする。一真が見ると勇吾が、パシリから戻ってきたのだ。その瞬間、さっきまで鼓動をするようにしていたラインが強烈な光を発し、教室の中には誰もいなくなった。
この事件は、お昼の他の中高校で起きた集団神隠しとして、大いに世間を騒がせることになるが、また別の話。
「助けて下さい、勇者さま!」
一真たちは、異世界に飛ばされたのだった。
ここは中世のお城のようだった。場所はどこだか、分からないけど。少なくても、先程までいた学校じゃないようだ.