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幽霊の正体見たり異世界か  作者: 固い六
第二章
23/44

第十九話 キツネさんの大岡裁き

今回ちょっと短めですね


5/6 修正しました。詳細は後書きにて。

先日から3日後、王都出発の当日の朝。俺は眠い目を擦りながら昨日のうちにまとめた荷物を家の前に停めてある荷馬車へと乗せていた。


「どうした、アル。目の下にクマが出来ているぞ?」


「いえ、何でもありません...」


楽しみで眠れなかったなんて言えなかった。


その後朝食をとり、俺と親父とエリーゼの3人は既に兵士がスタンバっている馬車へと向かった。ちなみに朝食の際、親父がエリーゼにも俺と同じ質問をしたら「い、いえ! 決して楽しみで眠れなかったわけではありませんよ!?」と、ダダ漏れであった。


馬車に乗る前に家族から別れの挨拶だ。


「それじゃあ、アナタいってらっしゃい。アル君のことをよろしくね」


「あぁ、わかっている」


「アル君もいってらっしゃい、気をつけてね?」


「はい、お母様」


「それと...」


チラリとエリーゼに視線を送るお母様。


「エリーゼのこと、お願いね?」


「ちょっと奥様!?それワタシに言うことじゃ!?」


「だってあなた心配なのよ」


「そんなぁ!?」


エリーゼはショックで半べそかきながら地面に屈み、ブツブツ何かをボヤきながら指でぐるぐると地面に円を書き始めた。乙女か。


「えっと、アルバート様、これを」


シャルルが何かを手渡してくる。


「これは?」


「お守りです。昨日作った物ですがどうかお持ちになってください」


「ありがとう、シャルル。大事にするよ」


俺がシャルルに礼を返すとお母様からちゃちゃが飛んでくる。


「あらぁ?シャルちゃんプレゼント?女の子ねぇ♪」


「お、奥様!?わ、私は別にそんなんじゃ...」


「あら、アル君じゃ嫌なの?」


「い、いいえ!決してそんな、嫌だなんて...」


「なら良いじゃない、シャルちゃんも年頃なんだからねぇ~♪」


「うぅ...」


顔を真っ赤にして俯くシャルル、お母様...俺はまだ4歳ですよ?


『(キミのお母さんは相変わらずだね、はは...えっと、ボクからは何もあげられないけど...いってらっしゃい、アル)』


「(あぁ、その気持ちだけで十分だよ。行ってきます、シャティア)」


シャティアにも心の中で言葉を交わし、全員との別れもちょうど済んだところでタイミングよく兵士からの声が届いた。


「準備はいいっすか?そろそろ出発するっすよー」


お前かラリー。


「じゃあみんな、気をつけてね。行ってらっしゃい」


「行ってくる」


「行ってきます、お母様」


「行ってまいります!」


俺たちはお母様に別れを告げ、馬車へと乗り込んだ。



馬車に揺られ、しばらくして俺は親父にミスティについて尋ねた。


「あの、お父様。ミスティはやはり来ないのですか?」


「あぁ、声は掛けたのだがな"誰があんな所に二度と行くか! ぶっ飛ばされてぇのか!?"だとのことで行きたくないそうだ...」


「あぁ、なんとなく察します...」


「ところでお前、ミスティとはどうやって知り合ったんだ?」


「えっと、雨季のひと月くらい前ですかね...」


俺は親父に当時の惨劇とも呼べる凄惨かつ残虐な非道の数々を鮮明に話した。あの時のことは一生かかっても忘れることは出来ないだろう...


「そ、そんなことがあったんだな...」


親父はそう言うと俺の頭をポンポンと撫でてくれた。


「いやぁ、あの時の坊っちゃんは凄かったっすよ、旦那」


話を聞いていたのか、馬車を操作しているラリーが会話に参加してきた。


「あの兵長に勝つことでも凄いってのに、魔術を同時にいくつも使ってたっすよ」


「(あ、馬鹿...)」


ラリーの言葉に親父が眉を潜めた。


「...なに?」


「あ、やべっす...」


「どういうことだアル、魔術が使えると言うのは聞いていたが複合魔術が使えるなんて聞いてないぞ?」


「えぇっと~それは...」


重苦しい空気、俺とラリーはダラダラと嫌な汗を流し、親父は腰に携えている短剣へ手を添えている。下手なことを言ったら即首が飛ぶ勢いである。その空気を打ち破る者がいた。


「あの?魔術が同時に使えるとどうしてダメなんですか?」


たった今までぐっすり寝ていたエリーゼだ。


「...何を言っているんだ、今から8千年前に悪魔がこの地にやってきて複数の魔術を使い一瞬で大地を砕き、海を凍らせ、空を割ったという伝説は知っているだろう!?」


「それは知っていますけど、その事実を誰かが見たのですか?長寿で有名のエルフですら長く生きて千年くらいだというのに」


「それはそうだが...」


「それに王宮お抱えの魔術師だって複合魔術を使うことが出来ると言う話ではないですか、彼らは悪魔ではないのですか?」


「か、彼らは長年の努力と持ち前の才能を駆使した上で習得したものだ、悪魔と呼ぶのは失礼に値するぞ」


「ではもしその才能が坊ちゃまにあるのだとしたら?」


「なに?」


「ワタシは毎日毎日坊ちゃまが魔術の練習をしているのを知っています、その努力の結果が複合魔術だとしたら?」


「そんなわけあるか、複合魔術を扱うまでにどれだけの時間がかかると思っているんだ!」


「旦那様こそその努力を本当にご存知なのですか?」


「う、それは...知らないが...」


一瞬の沈黙が馬車の中流れる。


「ふぅ、正直ワタシとしては悪魔だろうが王宮魔術師だろうが関係ないと思っています。旦那様は複合魔術が使えるというだけで坊ちゃまを殺したいのですか?」


「っ!?そ、そんなわけあるか!滅多なことを言うな!!」


「なら!...なぜその手を剣にかけたままなのですか?」


「っ...!?」


「旦那様、その手を離して下さい。そして坊ちゃまに謝って下さい」


「く...分かった、アル...済まなかった...」


「い、いえ。僕も隠していたことですし、顔を上げてください...」


「悪魔と決めつけて悪かった、俺も気が動転していたとはいえお前を殺すような言動をとってしまった...」


「僕もお父様の立場であったなら自分の息子に剣を向けていたかもしれませんし、僕はもう気にしていませんから」


「本当に済まなかった...」


エリーゼの見事な大岡裁きによってなんとか親父は俺のことを人だと理解してくれた。これはあとでエリーゼに礼を言っておかないとな、王都に着いたら何か買ってやろ...


「ふぅ、一杯喋ったら眠くなってきちゃいました、ワタシはもう一眠りさせてもらいまひゅ...」


...礼は言うがそれ以上のことはしてやんねぇ。


とりあえず今日はこれでおしまいです



修正箇所:最初から「エリーゼのこと、お願いね?」までが2回繰り返されていたので修正。

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