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幽霊の正体見たり異世界か  作者: 固い六
第一章
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第十七話 秘密とカツラ

無事テストが終わりました。遅れた分を取り返すべく今日の投稿が飛ばしますよ!


「つまりだな、俺に魔術の才能があると公表すると周辺の連中がここと関係を持とうと言い寄ってくる。するとこの領地はどうなると思う」


「人が来るため領内の治安が悪くなる...ですか?」


「確かにそれもある、だが本質は別にあるんだ」


「本質...ですか」


「あぁ、今この領地は山によって他所との関係がほぼ断たれている、だが別に困ったことは何もないのがここの特徴だ、王都御用達の良質な小麦の収入によってここは金銭面で全く困っていない、さらにその金を使うところもほとんど無い」


「そうですね、せいぜい村の施設の修繕費が少しくらいです」


「そうだろう?で、なおかつこの領内は自給自足が出来ている。有り余る小麦でパンは作れるし、各家庭で野菜も育てていてそれが領内を流通している、肉や魚は四方八方を囲む山に行けばすぐ穫れる、魔物による被害も全くない、山には薬草も自生しているから薬に関しても問題はない。強いて言うなら金属が手に入りづらいことと領民たちの娯楽が少ないことだ」


「そんなに好条件が揃っている土地なのになぜ他の領地はここへ手を出さないんですか?」


『それはね、ここを手に入れるメリットが少なすぎるからなんだ』


「少ない...ですか?」


「そうだ、ここを取り入れてたとして自分たちの領地に与えられる恩恵はせいぜいちょっと質のいい小麦だけだ、人は少ないから貸し出せないし鉱山があるわけでもないから金属も取引もできない」


「なるほど、けどそれだけならアルバート様に才能があるってだけでは今までの待遇にあまりかわりが出ない気がするのですが」


「確かにその可能性はなくはない。だが今この会話をしている俺を見てどう思う?」


「...3歳児にしては異常な理解力と知識、それに魔術...言いたくありませんが私がどこかの貴族なら引き込まないほか無いですね」


「自分で言うのもなんだがな。それに俺を通してウチと関係を持つと小麦で作った王都との太いパイプが多少有利に使えるようになる、そうした実利と福利が同時に手に入るようになる」


『あと、追加で説明するなら今のこの領地の管理は非常に簡単なんだよ、だから領主のウィルホーキンス卿には余裕があって痒いところに手が届くようになっているんだ、その結果がこの平和な環境さ』


「つまりそこに貴族や他の領主の邪魔が入ると今のような平和は失われるってことだ、な?"めんどくさい"だろ?」


「そういう事だったんですか。考え無しの発言、申し訳ありません」


「いや、いいんだ。俺も今の会話で現状把握がついたから」


俺はふぅっと一息ついて椅子にドスンと座り目線を閉まっているドアに向ける。


「さて、じゃあこの話はここにいる4人で秘密だな」


「4人?私とアルバート様とシャティアさんと...?」


俺は霊力で作った糸を伸ばしドアを開ける。


「あれ?うわあああああああ」


ビターンと音をたてて倒れる神父、それを見つめる俺ら3人。


「さ、神父様?話を聞いてたんだから、どうすればいいかわかるよね?」


「え、いや!私は何も聞いてない!私は、何も...」


「聞・い・た・よ・ね・?」


「はい...」


3歳児の圧力に負ける大人、なんて惨めなんでしょ。とりあえず神父の目にも霊力を流しシャティアを見えるようにする。


「おぉ、なんだか不思議な感覚ですな、治癒魔術を受けた時と似ている気がします」


まぁ、確かに霊力流しただけで怪我してる部位が治ったりするからあながち間違いでもないな。


「さて、神父にもシャティアが見えるようにしたし、改めてここにいる4人で今後の方針を決めようと思う」


「今後の方針...というのは?」


「まぁ基本は俺の魔術やらシャティアやらをどう隠していくか、だな」


『ボクのことはアルが霊力を他人に流してあげないと見れないから議論する必要もない気がするんだけど』


「そうは行くか、俺はこの土地を出るまで魔術を練習するんだ、どっかの誰かがその練習風景を見てしまったらどうする、誰からも教わらずに3歳児が一人で魔術をバンバン使う。一般論からすれば異常だな、さっきのシャルルみたいに俺を悪魔だと騒ぎ始める輩が出てくるかもしれん」


「では、どうするんですか?まさか幽霊から教わっているなんて領民には言えませんよ?」


「そこでだ、シャルル。お前に頼みたいことがある」


「はい、なんなりとお申し付け下さい」


「村で白い直毛羊(ストレートシープ)の毛を買ってきて欲しい」


「直毛羊のですか?何に使うのでしょうか」


「簡単だ、単にそれでカツラを作ってお前に被せるだけだ」


「それって...」


「あぁ、シャルルをシャティアとして偽装する」


「なるほど!シャルルちゃんをシャティアさんに見立てることで、偶然練習姿を見てしまった領民に白い髪の女性がアルバート様に魔術を教えていると思わせるわけですな」


「その通りだ、教わっているとなれば多少の異常さは誤魔化せるだろ。それに魔術が使えるとバレても公にするのと違ってウワサで収まるし、この閉鎖された土地だ、そうそう外に漏れる訳が無い。仮に漏れたとしてもそんな非現実的なウワサを信じてここまで来るバカはいないだろう」


シャルルと神父がなるほどと言った感じで頷いている。


「さて、この話はコレで終わりだ、何か質問は?」


「直毛羊の毛はいつまでに用意すれば?」


「あぁ、なるべく近いうちが良いな、十日以内してくれると嬉しい」


「分かりました」


「他に質問は?」


3人は何もないと言った表情をしている。


「何もないなら今日はここで解散だ、帰るぞシャルル、シャティア」


「はい」


『はーい』


俺らが席を立ち部屋を出ようとすると神父が俺に声を掛けた。


「このあとの授業はどうしますか?」


「あ~、そうだな、また後日にしようと思う、流石に今日は疲れた」


「そうですか、ではまた近いうちに」


「おう」


俺は神父に別れをつげて外に出る。


「さって、帰る前に兵舎によるぞ、ミスティとの勝負の件を口止めしておかないと」


兵舎へ着き、ミスティに魔術のことを広めないでくれと言ったうまを伝えると「分かった、もし誰かがバラしたらオレがそいつをバラしてやる!」と言い、兵士たちが震え上がっていた。あの様子なら大丈夫そうだな。


帰り道、シャルルが辺りをキョロキョロと見回し俺に尋ねてきた。


「あの、シャティアさんの姿が見えませんけど、どこへ行ったんでしょうか...」


『ボクならここにいるよ?』


シャルルが何やら意味不明なことを言っている、シャティアなら俺の隣に...あ。


「そうか、霊力が切れたか」


「霊力?」


「あ、いや、そう、霊を視る力略して霊力なんちて...」


「はぁ...で、その霊力が切れたかからシャティアさんが見えなくなってしまったんですか?」


「お、おう。そうだな、シャティアなら俺の隣で浮いてるよ」


「そうですか、なんだかその言葉を聞いてやっとシャティアさんが幽霊だって実感が湧いてきました」


『ボクは最初から幽霊だよ』


「もう一度見えるようにしようか?」


「いえ、アルバート様もお疲れでしょうし、無理はさせられません」


「そうか、じゃあシャティアに何か用があれば俺に言ってくれ」


「はい」


そんな会話をしながら俺らは家路へと着...


「あ!」


「ど、どうした?大声なんかあげて」


「お使い...忘れてました」


「あぁ...忘れてた...」


『すっかり記憶から抜け落ちてた』


...かず、一旦村へ引き返すのであった。


まあ、よくある主人公のチートを秘匿にしようの回でした。

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