第十六話 悪魔憑きアルバート
今週からテストなので今回からしばらく更新出来ません!申し訳ございません!!
訓練所での壮絶なバトルを終え、俺とシャルルと神父の3人は兵舎をあとにし、教会へと足を運ぶのであった。
「いやぁ、未だに信じられません、あのミスティさんに勝ってしまうなんて、まさか土魔術をあのように使うとは」
「いやあ、あはは...(色々と隠しておきたかったんだけどな...)」
神父にぎこちない笑みを返し俺はすぐ横にいるシャルルに目を向ける。
「あの...シャルル?いつまでその~、抱きついているの?」
「お家に帰るまでです、アルバート様」
シャルルはさっきの一件以来小さな俺の身体をぬいぐるみの様に抱きかかえて歩いている。
「(3歳児の身体とはいえ、俺もそれなりにデカくなってるはずなんだけどなぁ...)」
俺は教会に着くまでのあいだ、疲れもあったせいか反抗もせずされるがままを貫いた。ただ、たまに首筋に顔をうずめて匂いを嗅ぐのはやめて欲しい、くすぐったいし恥ずかしい。
そうこうしているうちにあっさりと教会へ到着した。
「さぁ、ここがこの村の教会です」
教会はこじんまりとしていてシンプルな作りだった。
「では、私は授業の準備をしてまいります、シスターにお茶を用意させるのでお二人はこちらの部屋でお待ちください」
「わかりました、ではアルバート様、行きましょうか」
「行こうって言っても歩けないんだけどね」
俺は未だに抱かれたままだ。
応接室はなんの飾り気もない質素な内装だ、中央に椅子がいくつかと広めの机が1つ、あとは窓際に花瓶が1つあるだけだ。シャルルは俺を椅子に座らせ、自身も隣に座ると真剣な面持ちで俺に聞いてきた。
「アルバート様、あなたは...何者なんですか?」
シャルルが核心を突いたようなことを聞いてきた、俺はすぅっと深呼吸をしてゆっくりと口を開いた。
「俺は俺だよ、アルバート・ウィルホーキンス、3年前にウィルホーキンス家の次男として産まれたただの3歳児だよ」
「ウソです、ただの3歳児が現役の王都兵士であるミスティ様に勝てるはずがありません」
「けど現に勝ってここにいるじゃないか?」
「今ここにいるのはアルバート様の皮を被った悪魔です」
悪魔とか言われちゃったよ、ボクちん泣きそ。
「なるほど、だから教会か...」
「その通りです、今神父様に悪魔祓いの準備をしてもらっています」
「ふーん、なるほどね。ちなみにいつから俺を疑っていたわけ??」
「...本格的に疑いはじめたのは先ほどの勝負の時です。複数の魔術を同時に組めるのは王宮魔術師か悪魔くらいですから」
「そうか...」
俺がシャルルの話を聞き終えると後ろにいたシャティアが声をかけてきた。
『(もういっそのこと全部話しちゃったらいいんじゃないかい?)』
「(全部って前世の事もか?そんなこと話したって絶対信じてもらえないだろ)」
『(じゃあ前世の事は隠しつつ、話をしてみたらどうかな?)』
「(随分アバウトだな、けどこの場を切り抜けるにはそれしか無いか。ちょっとお前にも手伝ってもらうぞ)」
『(?)』
まぁ、なんとかなるか。死にゃしねぇだろうし。
「なぁ、シャルル、お前俺が幽霊を見ることが出来るって言ったら...信じる?」
「はい?幽霊...ですか?アンデッドなら知ってますが」
「アンデッドじゃなくて幽霊だ、死んで器を無くし行き場も無くさまよう魂、そそれが幽霊」
「はぁ、それが...どうしたんですか?」
「俺はその幽霊から魔術を習ったんだ」
俺は前世と霊力のことを省き、今までのことを全部説明した。
「...それで、その幽霊のシャティアさんは今もこの部屋にいるんですか?」
「あぁ、今はそこの花瓶の中身を覗いているよ」
「にわかには信じられませんね」
「だろうな、だからシャルルには実際にシャティアを見て欲しいんだ」
『「!?」』
シャルルとシャティアが同じ反応をする。
「えと、そんなことできるんですか?」
「おそらくな、あくまで見れる"かもしれない“だからどうかは知らんが」
『(え!?ボクの姿を見せるの!?)』
「(あぁ、もう見てもらった方が早い)」
『(ちょ、ちょっと待って、まだこころの準備が...)』
「(知るか)」
シャティアは必死に身だしなみを整えている。その姿を尻目に俺はシャルルに声を掛けた。
「よし、じゃあシャルル、頭を下げてくれ」
「な、何をするんですか?」
「お前の目を一時的に幽霊が見えるようにする、だから頭を下ろしてくれ」
「は、はい...」
シャルルはビクビクしながら俺に頭を近づける。俺はその頭に手を添え、霊力をシャルルの目に集中させて流した。
「ふぁ、なんか変な感じがします、目の辺りが包まれるような...」
「痛くはないか?」
「はい、大丈夫です」
「よし、これで良いだろう。シャルル顔をあげて」
「はい、わっ、なんか景色が青っぽい...」
「成功だな、そこの窓際を見てくれ」
「はい...」
シャルルが俺の指示に従い窓際に目を向ける。そこには未だ髪を手櫛で整えているシャティアの姿があった。
「えっと、誰...ですか?」
『へ!?もう見えるの?ちょっと待ってまだ髪が...』
「コイツがさっき俺が話したシャティアだ」
『えと、御紹介に預かりました《シャティア・ヴァロッサ》です...』
「あぁ、これはどうも、私の名前はシャルルです、え?シャティアさんは...幽霊...なんですよね?」
『うん、そうだ...ですよ。今はウィルホーキンス家に住み着いてるんだよ...です』
「普段通りの喋り方をしたらどうだ?」
『そ、そうだね!なんか緊張しちゃって、あはは...』
「その、住み着いているっていつもウィルホーキンス家に居たってことですか?」
『うん、そうだよ、アルとは2年くらい前かられい...魔術の指導をしているんだ』
「え!?てことはアルバート様は1歳の時から魔術が!?」
「いや、あの時はもっと前段階の魔力を動かす練習だった」
「そ、そうなんですか...すいません、まだ状況が整理出来なくて...」
『いや、いいさ。ボクがキミの立場だったらキミ以上に驚いて騒ぎ回る気がするし』
二人がはは...と力の無く笑い、会話が途切れ重苦しい空気が室内に充満する。二人は俺になんとかしてという意思が伝わってくる視線を送る。
「さて、紹介が済んだところで本題に戻るぞ、シャルル俺の話は信じてくれたか?」
「正直まだ整理が付かないので何とも言えませんが、見てしまった以上は信じざるを得ないんでしょうね」
「よっし、じゃあこの話はコレでおしまい!俺らだけの秘密だぞ?」
「なんで秘密にするんですか? もっと公表してアルバート様の才能を有名にした方が良いのではないでしょうか...」
「えぇ~、だってめんどくさいじゃん」
「め、めんど...」
「まぁ、確かに私的な感情もあるが公的な部分も含めて"めんどくさい"なんだ」
「え?どういうことですか?」
俺はシャルルに説明するため立ち上がり、こほんと軽く咳き込んだ。