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幽霊の正体見たり異世界か  作者: 固い六
第一章
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第十三話 第一村人発見

ここから何話分かは村でのイベントが続きます。それが終わったら第一章の一区切りとさせていただきます。


さて、今日はホントに領内の唯一の村へ行こうと思う。前回はエリーゼの(俺が魔術モドキを使った)せいで行くことは叶わなかった、しかし今回は我が家の常識人ランキング第一位に輝く不動の救世主(メシア)、シャルルがお付きなのだ。


「では奥様、アルバート様には私が責任を持ってお付いたします」


「はい、シャルルちゃんお願いね、アル君もシャルルちゃんに迷惑をかけないようにね」


「はい! おかあさまいってきます!」


「行ってまいります」


「行ってらっしゃい、おつかいの方もよろしくね」


「はーい」


そうしてごくごく普通にお出かけすることができたのだった。廊下の角でメイド服の狐耳がハンカチを食いちぎろうかという勢いで引っ張りこちらを睨んでいたが、安定の無視である。


「アルバート様は村へ行くのは初めてでしたよね?」


シャルルがいつもどおりの冷静な顔をしながら聞いてくるが俺には分かる、ちょっと声が弾んでいるのだ。


「うん、こないだはエリーゼのせいでいけなかったの」


「らしいですね、でもアルバート様が突然魔術をお使いになられたから仕方がないのではないでしょうか」


「シャルルもまほうつかえる?」


「いえ、私は魔術を使えません」


「そうなの?じゃあぼくがまもってあげる!」


「ふふ、そうですね、アルバート様お願いしますね?」


「うん!」


そうこう話していると隣に付いてきたシャティアがテレパスモドキで話しかけてきた。


『(キミの最近の幼児演技は目を見張るものがあるね)』


「(前世では演劇部に入ってたんだ、これくらい朝飯前だよ)」


『(ふーん、あ、村が見えてきたよ)』


シャティアが指さした先にあったのは黄金色に輝く広い広い小麦畑と複数の民家だった。


「アルバート様、あそこがウィルホーキンス子領の村です、規模は小さいですが良質の小麦が毎年安定して大量に採れるので王都からの需要が高く、僻地の割に領民達は裕福な暮らしが出来ています。少し難しいですかね」


「へぇ、村には畑以外に何があるんだ?」


おっとつい見蕩れて素の喋り方になってしまった。しかしシャルルは特に気にすることなく説明してくれる。


「はい、他には各家で個別に作っている作物やそれを売る広場があります。建物だと役所や教会、領民の娯楽のための酒場、あとはたまに来る行商人や旅人や冒険者に向けた小さな宿があります。宿は領民たちが食事処としても扱うので宿泊客がいなくても普段から賑わっています」


「まものとかはだいじょうぶなの?」


「はい、王都から派遣されてきた兵士たちが駐屯している兵舎があるので魔物が現れた時は彼らが退治してくれます、もっともこの領内で魔物はほとんど現れませんが」


「へいしのひとたちはずっとこのむらにいるの?」


「いえ、順番で3ヶ月に1回王都へ帰る機会が与えられます、帰る帰らないは自由で、兵士の中には帰る権利を掃除の役割や食事のおかずとかで売買していたりもするそうですよ」


「ふーん、へいしのひとたちはまものがでないとき、むらでなにをしているの?」


「午前中は朝早くから訓練で昼食をはさみ、午後は兵士間で作られた班を日毎のローテーションで訓練、座学、自由行動を回しています。最近は訓練内容に畑仕事が追加され、領民達からの評判も良くて、兵士たち自身も『自分達が頑張れば頑張るほど毎日の飯が旨くなることに実感を覚えている』とのことで、特に不満の声は上がっておりません」


「もうそれは兵士じゃなくて農民になればいいんじゃないか?」ボソッ


「何かおっしゃいましたか?」


「んーん、なにもいってないよー」


どうやらこの領地内は平和そのもので、前世で読んだ転生モノのラノベっぽく『前世の知識で領地改革してやるぜ!』と言う展開は必要無いらしい、ちょっと残念だ。


『(ホンットこの領地は平和だね、他の子領ではこうはいかないよ)』


「(そうなのか?)」


『(うん、ここら辺の地形も関係しているのかも知れないけどね、この領地は周りが高い山に囲まれているよね、この山がうまいこと他所からの防壁の役割をしていてね、王都街道に続く道の部分だけ山が低いんだ)』


「(つまり敵は主にそこからしかここに攻められない...と)」


『(そのとおり、他所との関係が断たれている現状だけど、さっきシャルルちゃんが説明した通り王都からの需要が非常に高いんだ。だから王都とのパイプが太いここを攻めると言うことは王都にも少なからず喧嘩を売ることになるんだよ)』


「(なるほどな、そりゃこんだけ平和なわけだ)」


村の中に入りしばらく進んでいるとシャルルのことを呼ぶ知らない男の声が聞こえた。


「お?おーい!シャルルちゃーん!」


「あ、神父様こんにちは」


「はいはい、こんにちは。今日はどうしたんだい?買い物かい?」


「えぇ、それもあるのですが本来の目的はこちらです」


「ん?この子は...」


「アルバート・ウィルホーキンス、領主様のご子息です」


「おぉ!てことはエリオット様の弟殿か、ふむ、確かにエリオット様とどことなく似ていますな」


どうやらこの村の教会の神父らしい、まあ挨拶くらいは基本だろう。


「こんにちはー」


「おぉ!しっかり挨拶も出来るなんてしっかりしていますなぁ、それで今日は次男様を?」


「はい、本日はアルバート様とこの村を見て回るために参りました」


「ほうほう、なら教会の方へも寄られるんですな?」


「えぇ、ちょうど今から向かおうかと思っていたんです」


「それは良かった!実は私もこれから教会へ戻るつもりだったんですよ」


「そうなんですか、ところで神父様はこちらで何を?」


「いやぁ、これから授業で子供達に教える植物を採取していたんだよ」


「へぇ、実物を見せるんですね」


「もちろんだよ、こんなにも自然豊かなのだから実際に見て触れないと損だよ」


「じゅぎょう?」


俺はつい聞いてみたら、神父は俺の疑問にすかさず答えてくれた。


「はい、村の子供達に私が先生となって勉強を教えているんです、普通の農民は王都の学園へなんてお金が無くて行けないですしね」


なるほど、確かにこういった僻地では子供も貴重な労働者だしお金も大金が必要だから行かせられないのか。まあ、農家を継ぐんであれば文字を読めるだけでも十分アドバンテージになるし、計算が出来ればそれだけでも役所仕事ができる。子供が優秀になれば将来的にもこの村は発展していく、それに教会側もそういった慈善事業で教会を利用する人が増えればおのずと信者も増えていく。なかなかに画期的なシステムだな。


「アルバート様も教会で授業を見学されてはいかがですか?」


「うん、いってみたい!」


「ほう、アルバート様は今いくつですか?」


「ぼくね、いま3歳」


「なんと!3歳でこれほどまでに利口なんて、ウィルホーキンス領は今後も安泰ですな、しかしシャルルちゃん、流石に3歳では授業の内容を理解出来ないのではないかい?」


「そうかもしれませんが、アルバート様はとても秀才でして、つい最近魔術も使えるようになったんですよ?」


「えぇ!?その歳で魔術が使えると!?」


「はい、アルバート様、今魔術は使えますか?」


「うん、いつでもつかえるよ、でもまとがないとあぶないよ?」


「そうですね、神父様、どこか練習できるような場所はありますか?」


「えっと、でしたら兵士の訓練所の一角を借りましょう、あそこなら弓用の的があるはずですから」


と、言うわけで俺らは王都兵士が駐屯しているという兵舎へと向かうのであった。


新キャラ神父登場です。年齢は40

代半ばくらいだと思っていてください。

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