第十話 天高く突き上げる右腕
ひゃあ~みじけぇ~。
前にシャティアと霊力についての会話を思い出す。
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『(霊力は詠唱や魔法陣を必要とせず、明確なイメージさえあれば実現可能なんだ)』
「(ん?て事は鉄や金とかも霊力で生み出すことが出来るんじゃないか?)」
『(まぁ、理論上はね?けど鉱石についてそんなに深く詳しく知るのはドワーフですら無理なんじゃないかな?)』
「(えー、炭鉱のスペシャリストでも無理か、じゃあちょっと諦めるか)」
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そうだ、あの時は何となく諦めていたけどあれが本当なら...
「(シャティア!俺は今から水を生み出す!)」
『(え?水?確かに魔術の中でも割と簡単な方だけど、霊力だけで簡単にいくものかな?)』
「(いや、お前の言ってた事が本当なら霊力は大変なモノになるぞ!)」
『(え?そ、そうなの?)』
シャティアは半信半疑な様子でこっちを見ている。
俺は手のひらを上に向けて目をつぶり、記憶を引きずり出す。前世の俺にトドメを刺したあのスプレー缶を思い出し、少し気分が悪くなる、しかし俺は止めない。
「(簡単だ、化学で最初にやるじゃねぇか、水素と、酸素を...)」
俺は頭をフル回転させる、前世でもこんなに集中した事はない。たかが中学や高校の基礎レベル、一般常識とも言えるようなことに全力を尽くす。俺の前世の世界を知っているやつが今の俺を見たならさぞかしアホらしく、滑稽で、くだらない事だと吐き捨てるだろう。
「(だが、それでもいい、この興奮はもう、止められないっ!)」
結果はすぐに出た、冷たい感覚、成功だ...
「(いよっしゃあああああああああああああ!!!)」
『(う、うわっ、ホントに出てきた!?)』
「(シャティア!やったぞ、成功だ!!)」
『(ふぇ?う、うん、そうだね、でもどうやって?さっき言ってたスイソ?だとかサンソ?が関係してるの??)』
「(そうだ、詳しい話は長くなるから端折るが、これならホントに魔術なんて必要ないぞ!?)」
そうして俺は水を作り出すことに成功した、この世界の人間はたかが水を作っただけで...などと言うかもしれない、だが、たかが水でもされど水だ、ある意味俺は無から有を作ることに成功したのだ。魔力でも水は作れる、だが霊力は魔力と違ってコスパも良い、応用も効く、俺はそのこと対して並々ならぬ興奮をしていた。
するとそこへ新たな来客、エリーゼだ。
「ぼ、坊ちゃま?何をなさってるんですか...?」
今彼女の目には何がうつっているのだろか、それはベッドの上で下半身を水で濡らし、濡れた手を天へと高く突き出し喜びに打ちひしがれてるアルバートの姿であった。
「何してるんですか坊ちゃま!?!?」