閑話 アルバート、大地に立つ
閑話です、一応以前名前だけは紹介したシャルルちゃんと親父が出てきますが特に重要な話でもないんで飛ばしてもなんの問題はありません。
俺がこの世界に生を受けて早8ヶ月、俺ことアルバート・ウィルホーキンス、大地に立つ!...はまだなので大地にヨツンヴァイン!
いや、一応立つだけなら何とかなる、しかしウィルホーキンス家の過保護さが災いし、今の今まで地に足を付けたことがなかった。もうとっくにハイハイが出来るわけだが練習範囲が狭く柔らかいベビーベッドの上しか無かったため、いかんせん足腰がまだ弱い。
そんなとき、悩みを解決してくれる救世主が現れた。
「奥様、そろそろアルバート様に歩く練習などいかがでしょうか」
シャルルだ、シャルルが救世主となりお母様へ俺の切なる気持ちを代弁してくれたのだ。
「う〜ん、そうねぇ、まだ早いんじゃないかしら?」
「いえ、奥様。アルバート様ももう生後8ヶ月が過ぎました、今から足腰を鍛えておかないと将来に支障を来たすかと思います」
シャルルの最もな意見にお母様がうんうん唸っていると親父から支援射撃が行われた。
「そうだな、シャルルの言う通りだ。ましてやアルは男の子だ、多少無茶をするくらいが丁度良いんじゃないだろうか、エリオだって半年くらいにはハイハイしてたじゃないか」
「そう...ね、うん。確かにアル君をあの狭いベッドの上って言うのもかわいそうだものね」
やった、神のお許しが出た!シャルル、親父!このご恩は忘れないぜ。
かくして、俺はとうとう異世界の地に足を付けることが出来たのだった。
俺はシャルルに抱き上げられて、家族の注目の中、綺麗に掃除の行き届いた子供部屋へと連れていかれ、そこで俺はシャルルに仰向けのまま床へと寝かされた。
「アルバート様、まずは起き上がる練習ですよ」
シャルルが俺にそう言ってくる。そこで俺は考えた、このままいつも通りに起き上がっていいのだろうか...初めての練習を一発で成功させていいのだろうか...そんなにすぐ出来たら家族から奇異な目で見られるのではないだろうか...そんな数々の疑問を頭の中で巡らせながら、俺はいつもの通りに起き上がっていた。
「あ」
誰の言葉だっただろうか、俺かもしれないし俺じゃないかもしれない、ただ俺は『起き上がる』と言う行為を全くの無意識に、極々自然にこなしていた。
そこで俺はある極論に行き着いた。
「(もう行けるとこまで行っちゃおう)」
吹っ切れた俺はそう決意し周りを見回してみるとシャルルが驚いたように言った。
「あ、アルバート様もう出来るんですね」
「あいー」
とりあえず返事をしておいた。
「うん、流石は俺の息子だな、誰にも教わらず一回で成功させてしまうなんて」
「あら、その部分はあなたじゃなくて私に似たんじゃないの?」
親父とお母様がなにやら喧嘩を始めそうだったが無視しておいた。
そこからは俺の独壇場だった、軽く3、4回おすわりの練習をしたりハイハイも完璧にやってみせた。流石に練習中の立つまでやってしまうと色々うるさそうなのでハイハイでお茶をにごしておいた。
ちなみに今日この場で一番うるさそうなエリーゼは夕飯の買い物でこの場には居なかった、哀れな奴め。
そんなこんなで俺は8ヶ月かけてハイハイデビューを華々しく飾ったのであった。