プロローグ前編
初投稿ですのでいたらぬ部分もあるかと思いますが、どうか生暖かい目で見てやってください。
独特な浮遊感、目の前の暗闇、何も聴こえない音、力の入らない身体、身体を包み込む様な暖かさ。これらが何を意味しているかその時はまだ分からなかった。俺は死んだんじゃなかったんだろうか...。俺の目はまたゆっくりと閉じた。
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俺、灘芝龍一は極々普通の高校生だ、高校に入ってから友達の影響でヲタク気味だが。幼稚園に行き、6歳で小学校に入学し、水泳のスクールやテニススクールに通って高学年からは塾にも通っていた、中学校ではテニス部に入部し2年生の後半から部長も努めたりした、県大会優勝するくらい強かったんだぜ、その後は推薦で公立高校に入りテニス部を継続して、掛け持ちで演劇部にも入ったりしつつ、普通に学校へ行き、普通に授業を受け、友達と下らない話で盛り上がったり、放課後は部活に参加したり寄り道したり、とにかく普通だった。突然真っ黒いノートを拾ったり、ネットゲームの中に2年間も拘束されたりもしない平凡な日々、だが別に不満は無かった、友人関係は良好だったし成績も特別悪くもなくちょっと頑張れば名の知れてる大学に進学することも可能だった。強いて言えば彼女が出来なかったことくらいだ。
そんないつも通りの普通な日々の中でその日は異常だった。たまたま家に鍵を忘れてしまい、父子家庭で親父が仕事のため家に入れなかった。部活も休みで完全に暇を持て余していた、仕方が無いので俺は図書室に篭って友達から借りたファンタジーな内容の小説を読んでいた。ここまではまだ普通だった、ここまでは。
ジリリリリリリリリリリリリリ
耳を抑えたくなるほどの音、火災ベルが鳴り響く。
『2階男子トイレにて火災発生、校舎に残っている生徒は速やかに避難するように!これは避難訓練ではありません!!』
そんな緊急連絡が校内放送で流れた。
「まじかよ、4階の非常出口ってどこだっけ...」
俺は割と冷静だった、今自分がいるのは4階の図書室、火災の発生源は2階の男子トイレ、3階を挟んでいるうえに図書室と男子トイレはほぼ対角の位置にあったからだろうか。
「確か化学室に非常出口があったはず...でも、男子トイレ側か...、仕方ない行くか」
化学室は同じ4階にあったが不運な事に男子トイレのほぼ上にある。
廊下に出て直線にある化学室を目指す、焦らず走らず軽く早足になる程度で歩く。半分くらい進んだところで異変が起きた。
ボォオオオン
激しい揺れと爆音が身体を揺らす。どうやらどこかで爆発が起きたようだ。
「しまった、3階を考慮してなかった、あのトイレの上には調理室があったじゃないか」
おそらく3階の調理室のガスに引火して爆発したのだろう、立て続けに起きるイレギュラーが俺の冷静だった頭に発破を掛けてくる。その証拠に足は早足から全速力で走るまでになっていた。
「うわ、もう4階まで火が」
化学室付近まで来ると既に廊下が燃えている、幸か不幸か所々燃えているだけで走り抜ければ何とかなりそうなほどだった。
「しょうがない、ここまで来たんだから急ぐか」
俺は炎に向かって全力で走った、急いで化学室のドアを開けた、幸い既に誰かがここから逃げてたのか鍵は締まっていなかった。しかしそこは既に火の海だった。
「なんだよコレ、なんでこんなに燃えてんだよ」
よく見てみると炎は青が混じっており、床にはアルコールランプが割れている。
「科学部かなんかが使ってたのか、ちょっとまずいなぁ」
化学室は既に火の海、廊下ももう火が広がっていて引き返すことは困難だった。
「ベランダの窓は空いてるし...ほぼ障害物も無く直線だし、やるしかないか...」
俺は意を決してベランダまで走り出した、足元は熱く、熱気をもろに浴びているため肌の出ている部分は燃えるように熱い、それでも助かるなら安い、そう思い必死に走った、しかし。
ボォオオオン
すぐ近く、すぐとなりのドアの向こうで起きた爆発、目が痛くなるような光と目を焼くような熱気が俺を襲う。
「あぁああああああああ、熱い熱いいいいい!!!!」
すぐとなり、つまり化学準備室での爆発、可燃性の何かに引火してドアを吹き飛ばし逃げ場のなかった炎が溢れ出してくる、その炎は倒れた俺を容赦なく襲った、爆発で俺の右半身はほぼ使い物にならなかった右耳は何も聴こえず、右目は何も見えない。それでもなお俺はすぐこそのベランダを目指して手を伸ばす、そこで落ちてくる落下物を見た俺はあまりの不幸に天を呪った、落下物は金属製の円柱型に円錐型を乗っけたようなフォルムの筒、本来上部にあるはずの円錐は下を向いており、筒のラベルに書かれていた文字はでかでかと『水素』
カンッ...
そこで俺の意識は途絶えた、最後に見えた景色は激しい光と激しい炎が襲ってくる瞬間だった。
誤字脱字があれば今後とも報告していただけると嬉しいです。