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パルクール・サバイバー  作者: 桜崎あかり
特別編

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ガジェット暴走事件の真相

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 西暦2017年某日、アカシックレコードを扱ったサーバーにアクセスをしている人物がいた。


「動画サイト……とは違うか」


 私服姿の花江はなえ提督は、モニターに表示された光景を見て何かの動画サイトと思い込んでいた。


 しかし、細部は大手が運営している動画サイトとは異なり、サイトの作り込みもある程度はユーザーの意見を取り入れているが――。


「西暦2017年2月――まさか?」


 その中で彼が発見した記事、それは2月中旬に起きたとされるガジェット暴走事件に関する物だった。


 そして、花江提督は記事をチェックしていくと、そこには事件の一部箇所において食い違いがあったである。


 ニュースで報道された物では、ネット炎上を趣味としている愉快犯との事だったが――目の前の記事では全く違う事が書かれていたのだ。


「大きな部分は、ネットに掲載された物と同じだが――細部が異なり過ぎている。まるで、別の事件と錯覚する位に」


 花江提督は、それでもこの記事が重要な意味を持っていると考え、記事を読み進めていく事にした。



 西暦2017年2月中旬の午後7時30分、舎人近辺のサバイバルゲーム専用の敷地で一風変わったゲームが展開されていた。


『周囲に異常はないか?』


「こちらには異常はない。引き続き、該当エリアへと向かう」


 彼らの装備はBB弾を使うタイプのサバイバルゲームにしては本格的であり、赤外線レーダーやサプレッサー装備のハンドガン、更にはロケットランチャーも持参している。


 まるで戦争をするかのような光景だが、これはARという拡張現実を利用したARゲームと呼ばれる体感系のゲーム。


 実際に武器に見える物も、ARガジェットと言う端末を利用して表示された立体映像にすぎない。立体映像と言っても、メイン端末まで映像と言う訳ではないのだが。


 本来は別分野に活用される予定で開発された技術が、気が付くと1000万人ユーザーとも言われるシェアを獲得するまでに成長していたのである。



 西暦2015年頃には複数ジャンルが確立、FPS、格ゲー、アクション等のゲーセンでも人気を誇るジャンルが次々と進出した事で人気に火が付き、今となっては100以上のゲームが存在するまでに成長した。


 そのひとつであるARサバイバル、彼がプレイしているのも潜入ミッション型のARゲームなのである。


 味方の人物は既に撃破されてしまい、敵陣地へ潜入している彼だけとなってしまった。


 彼の装備は灰色のスニーキングスーツに眼帯型のコンピュータ、複数のガジェットと軽装備ながらも防御力を減らしていないタイプだ。


 重装備でサバイバルゲームに挑むプレイヤーもいるのだが、装備の数が多ければ多いほど有利という訳ではない。


 レア装備だけに頼るという戦法も有効とは言えないのだが、ソーシャルゲーム的な要素を持つ一部作品では有効な戦法とネットで書かれているのが現実である。


 そうした『重課金+レア装備オンリーの戦法を使わない』というのが、彼の戦法の一つである。


 今までも、現地調達の武器だけでいくつものミッションをクリアした彼にとっては、難しい話ではない。


『周囲にドローンが飛んでいる可能性もある。相手に見つかったら、危険度は増加するだろう』


「言われなくても分かっている。周囲には2機ほど飛んでいるのが確認出来るが、何処から飛んできた物か分かるか?」


 無線の人物にドローンの発進エリア割り出しを頼むが、通信的な部分でも割り出しに関しては難しい。


「建物の中にターゲットが5人……と言った感じか。周囲に敵影がないのは、ドローンに任せているからか」


 そして、彼はシステムを立ち上げ、ある武装を実体化させた。


 その後、手持ちのグレネードランチャーに取りつけ、ドローンに狙いを定めて発射する。


 数秒後、発射されたグレネードが爆発、ドローンの方は墜落せずに健在のように思えたが、爆発の際に発生した物質に触れたと同時に動きが不安定、その後に不時着した。


 当たり所が悪ければ、攻撃力のないような小石を投げたとしてもARのドローンは墜落し、爆発のエフェクトと同時に消滅するだろう。


 爆発音を聞けば、周囲の兵士は援軍を呼ぶ事も想定済み――という中でドローンの動きを止めるのが最優先と判断。


 そうした事を踏まえ、彼はチャフグレネードをドローンに向けて発射、通信を遮断する事でドローンを撃破ではなく不時着させたのである。


「ドローンが落ちているようだ」


 双眼鏡で外の様子を見ていた一人が、不時着したドローンを確認する。


 しかし、増援を呼ぼうとしても無線が機能しないので、近くで待機中の兵士に口頭で連絡をする。


「今から様子を見てくる」


 建物内にいた兵士が外の様子を見る為に、建物の外へと現れた。


 そして、彼らはドローンの近辺を調べ始めた。その直後、更に別のグレネードを撃ったのは潜入を考えていた人物の方である。


「スタングレネードか!?」


 別の兵士が叫ぶのだが、時はすでに遅かった。スタングレネードの有効範囲にいた兵士は全員が気絶する。


 そして、彼が大型倉庫の扉から潜入しようと考えた矢先、その事件は起こった。



 同日午後7時40分、建物の隣にある工場エリア、そこに置かれていたのは巨大な戦車である。


 しかも、現実には存在しないような巨大レールガンを装備しているのも気になった。そのデザインはSF作品に出てくるような物なのも、気になる所ではあるが。


「ARサバイバルでは見かけない機種だ。もしかすると、新型アップデートの機体か?」


 この段階では何も異変に気付くことなく、目的である機密文書を発見する為に施設捜索を開始した。



 同日午後7時45分、西新井某所にある組織の運営するガジェット修復工場。


 ここには、いくつかの試作型ガジェットが置かれており、その中には現状では未発表のガジェットも存在した。


「やっぱり。輸送されていたガジェットが奪われている」


 白衣の男性提督が他の提督と思われる人物の連絡を受け、即座に出撃指示を出そうと考えている所だった。


「輸送されていた物はランニングガジェットの試作タイプか?」


 男性提督の前に姿を見せた人物、それは部外者とも言えるような黒マントに黒い軍服の外見をした青年だった。


「君は運営の人間か?」


 提督の方は、彼の外見を見て運営側の人間と考えていた。しかし、それを思わせる証拠は全くない。


 そして、彼は次の瞬間に黒色の試作型ランニングガジェットの方へと走る。


 狙いがガジェットだったとして、何をしようと言うのか? それに気付いた時には――。


「誰か! あの人物を止めろ! ランニングガジェットはARガジェットよりも扱い方は厳重で――」


 提督は叫ぶのだが、周囲に動けるような人物は見当たらない。既に一連の事件で出撃していた為だ。


 それでも、提督の声を聞いた一部の人間が取り押さえようと駆けつけるのだが……。


『了解した……』


 他にも提督は言う事があったのだが、次の瞬間に別の声が聞こえた事に驚き、何を言うのか忘れてしまった。


「あの機体は、教習所へ運ぶ予定だったランニングガジェットか」


『小松提督、ご心配なく。自分は既にランニングガジェット用のライセンスを取得済みです。テストパイロットよりは動かせます』


 小松こまつ提督は暗闇の中から姿を見せたオレンジ色のランニングガジェットに驚きの表情を見せる。


 この機体の武装は一切装備されておらず、ガジェットの調整も完了していない。


 本来であれば、オレンジ色のガジェットはある教習所へライセンス実習用に調整した物であり、戦闘の様な非常事態には対応していないのだ。


「君の事を疑う気はないが、その機体をどうするつもりだ?」


『黒マントの人物を止めればよいのですね』


 オレンジ色のガジェットは調整が完ぺきではない為か、動きもスムーズとは言い難い。


 その関係もあって、黒マントのガジェットよりもスピードは数段劣る。向こうは実戦が可能なように調整されていたのが分かる瞬間だ。


「何だ、このガジェットは。ロボットバトル用の物と違って、操縦も思うように……」


 しかし、黒マントの方はスピードがオレンジ色の方よりも速いのに、動作に慣れていない為かすぐに転倒する。


「向こうが自滅をしてくれたか。本来であれば、ランニングガジェットは専用ライセンスを取得し、初めて動かせるものだ」


 小松提督の一言は、黒マントの人物にある疑問を抱かせるきっかけになった。それは、オレンジ色のガジェットに搭乗している人物についてである。



 午後7時50分、数人の構成員が帰還、黒マントの人物は御用となる。その一方で、彼は小松提督をにらむ事はなかった。


「君は何を目的にして動いている?」


 小松提督の質問に彼は数秒の間を置いてから答えた。


「コンテンツ流通に不満があった。超有名アイドル商法を公認し、それを利用して税金を回収するようなやり方を押し通す政府に……」


 黒マントが話している間に、オレンジ色のガジェットから降りてきたのは、白い提督服を着た提督の一人だった。


「超有名アイドルが地球上の権利を全て独占し、コンテンツ流通を掌握しようと言う理論――まだ、それを事実と言う人物がいるのか」


 そして、彼はハンドガン型のガジェットを黒マントに突きつける。


 それを見た他の提督たちは止めに入るのだが、それを制止したのは小松提督の方であった。


「まるで、炎上勢力の様な発言をする。それが君の目的なのか?」


 小松提督は黒マントに対して、その真意を聞こうとするのだが、次の瞬間に銃を天井に向けて撃ったのだ。


「まさか――!?」


 提督が気づいた時には既に遅かった。


 突如として、周囲の提督が持っているガジェットが機能停止、小松提督の持っていた特殊ガジェットもフリーズをしたのである。


 その後、黒マントの姿は消えていた。どうやら、マントにステルス迷彩のような機能が付いていた可能性がある。


「あの人物は、我々の想定している敵と違うのは分かった。この場所を襲撃したという事は、開発されている物を知っているという事」


 小松提督はランニングガジェットの開発者でもある。


 そして、いくつかの工場等で密かにランニングガジェットの量産も行われており、その現場指揮も担当していた。


 しかし、ランニングガジェットは現段階で公表されている物ではなく、その実装も先の話だ。


 それなのに、ピンポイントで襲撃してきたのには何か理由があるのだろう。情報が外部に漏れていたとは考えたくないが。


「このガジェットが作られた理由……そう言う意味か」


 オレンジ色のガジェットを操って見せた人物、彼の名は花江提督。


 しかし、彼は襲撃の数日後には運営所属の提督を辞職。何故に止める必要性があったのかを含め、真相は定かではない。



 午後8時、サバゲのフィールドは1体の二足歩行型ロボットによって制圧されていた。


 その機体はフィールド内に隠されていた物だが、サバゲの運営側は全く知らないと言う一点張りで話にもならない。


「あの機体は……レギュレーション違反ではないのか?」


『残念だが、あの機体は我々の管轄外だ。ARガジェットには、それぞれのゲームで認識マークが決められている。そのマークがない以上、我々にも手の打ちようがない』


「しかし、あの武装は明らかにARサバイバルゲーム用だ! 現地で試作していた物ではないのか?」


『大塚君……確かに、あの武器は我々の管轄であるという識別信号は確認出来るが、それを扱っているロボットは管轄外で――』


 途中で無線が途切れ、大塚おおつかと呼ばれた人物も何とかするしかないと独自判断し、眼帯型コンピュータをフル起動して対策を考える。


「あの時の戦車が、この機体だったという事か」


 ここで、自分が少し前に発見していた戦車が目の前にいる二足歩行型ロボットの正体だと気付いた。


 しかし、気づいた所で武器のデータがある訳ではないので、対処の仕様がない。似たようなゲームに出ている機体データも、おそらくは知識にはなっても、攻略には結び付かないだろう。



 無線のやり取りをしている間に2分が経過し、ロボットの方が動き出した。


 それが発射したのはジャミング効果のあるグレネードであり、無線が途切れたのも、それが原因である。


「ジャミングか。このタイミングで仕掛けてくるとは……向こうは非常事態だと言うのを気づかないのか」


 大塚もロボットを何とかしようと手持ちの武装で攻撃を行うが、その攻撃が命中するような気配はない。


 攻撃は全てすり抜けてしまうのだ。銃弾も通過し、バズーカの砲弾が爆発する事もなかった。


「よりによって、違うゲームのロボットを持ちだしたのか……レギュレーション違反だけではなく、向こうはアカウント凍結も恐れないだと!?」


 基本的に、タイトルAというARゲームにタイトルBのガジェットや装備を持ち込む事は禁止されている。


 これは、バランスブレイカーを防ぐ為と言われているのだが、実際は課金要素を持つ強力なガジェット近い物を、勝手に持ち込まれるのを防ぐ為。


 唯一の特例として、バーチャル楽器を扱うようなAR音楽ゲームであれば認められているケースは存在し、そうした事を前提としたコラボやイベントも行われている。


 基本的にはサバゲや対戦格闘等の物理バトルが絡む物はレギュレーション違反と判定されるとの事らしい。


「何としても、この機体を止めなければ……下手をすれば、ARゲームで大事故が起きたとしてマスコミが騒ぎだすのは目に見えている」


 大塚は自分だけで巨大ロボットに対抗しなくてはいけない事に対し、少し焦ってもいた。


 下手をすればマスコミの書いた記事を巡って、ネットが炎上する事も考えられた。ネット炎上勢力は、基本的に自分の名前を有名にしたい、満足感を得たい等の理由でネットを炎上させる。


 そうした勢力に都合よくARゲームのフィールドを荒らされる事は、下手をすればサービス終了を招きかねない。



 しかし、大塚が対抗策を考えるよりも先に敷地内へ入ってきた人物がいた。


 黒いARガジェットと言うべき装備、更にはサバイバルゲームには不似合いな大型のパワードスーツまで持ち込んでいる。


 主な武装は、サバゲに不釣り合いのSF系だろうか?


『これはあなたのプレイするべきゲームじゃない。ここからは、私のターンよ!』


 黒いガジェットの人物がパワードスーツの両肩に搭載されたホーミングレーザーを発射する。


 これはサバイバルゲームには存在しない武装だ。そして、ホーミングレーザーはロボットに命中し、動きが鈍くなり始めている。


「あの武装、確かARサイキックバトルやARSFシューター辺りで使われた物に似ている。そして、あれが有効だと言う事は……」


 大塚の結論、それはサバゲの敷地に別のARガジェットを放置、あるいは運び出しの途中で持ち去られたというどちらかだ。


『コレで、止め!』


 最後に展開した物、それはシールドビットと呼ばれる武器なのだが、これは現在稼働中のARゲームでは存在しない武器でもある。


 その為、大塚は自分の目を疑った。ロケテストすら満足に行っていない物を、平気で使用する彼らの目的が理解を超えている――と。


 無数のシールドビットが命中、その直後にビームの一斉攻撃……相手ロボットはこの一撃を受けて沈黙した。


【システムエラーが発生しました。現在のゲームを中止します】


 大塚のコンピュータ端末に表示されたメッセージ、それはゲームの中止を意味していた。


 先ほどまで入手したポイントも、今回は無効と言う事で入手は出来ない。


 第3者の介入にしては、最悪の結果まではいかないが――プレイヤー側にとっては報酬が入手出来ないという事で、運営に詫び石を要求する可能性も出てくるだろう。



 午後8時15分、その後に駆けつけたガジェット部隊が停止しているロボットを調べるが、その内部にあるコクピットは無人だった。


 乗り捨てた跡がある訳ではなく、正真正銘の無人機と言う事になる。これだけの機体を拡張現実の映像ではなく、リアルで出現させた事にも驚きなのだが。


「有人と思っていましたが、こちらも無人の様です。それと、このような機械も確認されました」


 コクピットを捜索していた調査員と思われる人物が、黒いガジェットの人物にある機械の画像を転送する。


 装置の役割としては、映像投影機と言った気配だろうか。


『なるほどね。全ては、別の有名アイドルが起こした犯罪と言う事にしようと言う人間の仕業……』


 会話の途中だが、彼女にはガジェットを軽く叩く大塚の姿が目に映った。


 彼も事件に無関係ではないという事もあり、一応事情を聴く事にする。


 コクピット部分に当たるハッチが開き、そこから姿を見せたのは緑髪の女性であり、スマートは少し言えないような体格に黒のボディスーツ、ガジェットパーツという姿には大塚も驚く。


 あの体格で、ARガジェットを動かせるのか……と言うのも野暮だが。


「貴様か? 噂に聞くパルクール・サバイバーの提督とやらは」


 大塚は彼女が出てくると早々にサプレッサー付きのハンドガンを突きつけた。


 しかし、彼女が動揺するような気配は一切ない。


 大塚がブラフと言う意味で銃を突きつけた訳ではないのは、彼女も気が付いている。


 ハンドガンの銃弾はAR映像なので、彼女に命中したとしてもすり抜けるのは百も承知で銃を突きつけている可能性は高いだろう。


「私はサバイバルトーナメントの運営所属ではないわ。パルクール・ガーディアンのメンバーの一人、夕立よ」


 彼女は夕立ゆうだちと名乗り、サバイバーとも無関係と言う。


 しかし、その一言だけで大塚が納得するとは限らなかった。



 パルクール・サバイバー、それはネット上で噂だけが飛び交っている単語でもあった。


 そこに所属する提督が超有名アイドルファンに対して魔女狩りとも言えるような行動をしている……というのはネットを炎上させる為の煽りにすぎない。


 この段階ではスポーツの一種である事、ロボットを運用するらしいという事しか分からず、運営の存在も確認出来るか怪しい存在だったのは間違いない。


 これはマイナー競技故の宿命だろうか。あるいは、炎上させてやろうという意思表示だろうか?


 ネット上の不確定情報に踊らされ、そこから炎上させる為に炎上請負人や一般ユーザーが目立ちたい為に動くのは、どの世界でも一緒である。



「――色々と簡略的に話したけど、こちらで話せる事はこれ位よ」


 ある程度の事情を簡略的に話した夕立だったが、それでも大塚が銃を下した程度であり、心情の変化はなかった。


 まだ疑っているのは事実なのだが、夕立にもこれ以上話せるような事はない。


「事情は分かったが、お前達が新たなARゲームの頂点に立つ……と言いたいのか?」


 大塚の一言に対し、夕立の返した答えは相当な物だったのである。


「自分達が頂点になったとしても、結局は悲劇の繰り返しが起こるだけ。だからこそ、コンテンツ流通を変えるべきなのよ」


「流通が変わったとしても、結局は金でチートの力を得たようなプレイヤーがあふれ、にわか識者や売名行為を行う夢小説勢が広まり、それこそコンテンツ流通に阻害を生む事になる」


「そこまで言うのであれば運営へ直接行くのが一番ね。今なら、若干名のスタッフを募集しているはずよ」


「サバイバーの運営か。今の自分には真実を確かめるのも重要と言う事か」


 こうして、大塚はサバイバー運営のある北千住へと向かう事になる。



 その数日後の2月下旬、無人ガジェットによる暴走事件は有名アイドルグループによるCDのPR活動が暴走した物、という形で決着する事になった。


 この事件を受けた訳ではないのだが、パルクール・サバイバルトーナメントでは数例の危険なアクロバット行為に関して厳重注意をするとともに、新システムを導入すると発表したのである。


「パルクールとの差別化、協会等からの要望もあって、このようなシステムを実装する事にしました」


 動画での記者会見で発表された物、それはパワードスーツを思わせるような新型ガジェットの投入だったのである。


「このランニングガジェットを使用すれば、大怪我を起こすような事故を防ぐ事も可能になります。見方によっては、運動未経験者でもパルクールを行う為のプロテクターとも言えるかもしれません」


 会見でガジェットの説明を行っているのは小松提督であり、それ以外の人物が姿を見せる事はない。こうした会見には社長の様なポジションを持った人物もいるはずだが……。

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