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パルクール・サバイバー  作者: 桜崎あかり
第2部

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53/57

第24話:ランカー王決定戦―ラウンド15―

・誤植修正(午前2時34分付)

戦闘グループ→先頭グループ


>更新履歴

2015年5月9日午後11時17分付:一部、行間調整。本編内容に変更はありません。


バージョンとしては1.5扱いでお願いします。

 決戦当日、5月28日午前10時25分まで少しさかのぼる。ランスロットが草加駅の会場へ向かっている時に、それは起こった。


「結局、炎上騒ぎが終わる事はないのか。いくら規制法案を成立させたとしても、これでは根本的な対策を打たなければ―」


 ランスロットはスマートフォンでつぶやきサイトの動向を眺めながら、ふと思った事を口に出す。そして、しばらくすると自分宛てにメッセージが届いたのだ。


【打開策として超有名アイドルファンへのマインドコントロールを掲げようとした勢力がいる。そのフジョシ勢力を駆逐して欲しい】


 新手のスパムと思ってランスロットはメールを削除しようとも考えた。超有名アイドル商法その物がマインドコントロールに近いのでは―とふと何かがよぎった。


「これが真実かどうかは不明だが、指定された場所へ向かってみる価値はありそうだ」


 彼が向かった先とは稲荷三丁目の信号から若干コースを離れた道路である。丁度、その途中で何かを企んでいたフジョシ勢力がいたのは事実であり、それらを撃破しながら目的地へと向かう。


 午前10時30分頃、何か怪しげな装甲車らしき車両が複数現れる。自分の姿を見られるのも―と考えたランスロットは商店街のアンテナショップへ入店し、そこでガジェット類を預かってもらう。


「このフジョシ勢力は何処の所属だ?」


「服装から見るに、某バスケやバレー漫画の勢力ではないか?」


「ここ最近は刀の擬人化が人気あると言うが、そちらはフジョシと言うよりは夢小説勢力だな」


「こちらとしては、男性アイドルグループや歌い手、実況者の夢小説勢等の方が都合のよかったのだが―」


「そうすれば、事務所から報酬がもらえると考えているのか?」


「それこそガーディアンの趣旨から大幅に外れる事になる。報酬をもらってフジョシや夢小説勢を狩っていくという事は、海外で運用されようとしている条約と同じ事になる」


「あれこそ、二次創作市場を脅かす存在になるのは間違いない。下手をすれば、一次創作でも―」


 ガーディアン勢と思われる話声が聞こえるのだが、ランスロットに関しては思い当たるような節が見当たらない。


「結局は、超有名アイドル勢とフジョシ勢によるマッチポンプだったと言うのか―AI事件も」


 ランスロットは目的の場所へ向かおうとも考えたが、今の話を聞いて興味がそがれてしまった。結局は、近くのゲーセンへ向かったのが確認されたが、その後の彼を目撃した人物はいなかった。


 午前10時47分、蒼空かなでは長期のガジェット調整を配置されたスタッフに任せ、自分はホットコーヒーを飲みながらネット上の記事を改めて確認している。


 確認しているのは阿賀野菜月の事である。彼女が超有名アイドルに対して懐疑的な意見を持ち、更には超有名アイドル商法を駆逐しようと言う雰囲気があるのはネット上でも分かっていた。


 しかし、彼女が超有名アイドルに対して敵意をむき出しにしている理由が分からない。アカシックレコードを確認したり、赤城と加賀の協力で情報を手に入れたりもしたのだが、それでも彼女の正体を突き止めるには至らない。


「一体、彼女は何を企んで―?」


 ネットサーフィンをしていると、阿賀野菜月とは無関係な夢小説サイトを発見する。そこには、何とサバイバー運営の提督勢をモデルにしたとされる夢小説が投稿されていた。


「このサイトはチェックした覚えもないのに―どうして?」


 蒼空はサイトをざっと調べてみる事にした。提督勢の夢小説以外にも、サバイバーに参戦しているランカーのフジョシが書いたとされるSSや小説も投稿されており、それらはオープンで閲覧できるようになっていた。


 阿賀野が何を懸念していたのかは不明だが、ひとつだけ分かった事がある。何か新たな文化が生まれれば、それを曲解して解釈し、それを拡散しようという勢力がいると言う事だ。


「超有名アイドルだけを合法とした法律の存在、それにフジョシ勢力に夢小説勢……そう言う事だったのか」


 蒼空は何かを確信するのだが、ガジェットの方は修復が完了していない。レースに復帰しようとしても、修復が完了しなければ動けないのだ。


「これだけ複雑なガジェットが存在するなんて……」


「まるで、クラシックガジェットを思わせる。ランニングガジェットが整備しやすいように設計されていたのは、この為だったのか」


「損傷に関しては中枢にまで達してはいないのが、不幸中の幸いと言うべきなのか」


 メンテナンスを担当している整備班からは、そんな声が聞かれた。現在、蒼空が使用しているガジェットは特注品なのだが、それが数年前に使用されていた過去のガジェットだと言う事を聞かされたのは最近の事だ。


『そのガジェットはクラシックガジェットと言う物よ。AI事件以前のARガジェットを使用したアトラクションで使われていた話が存在する――最強と言われていたガジェット』


 あの時に加賀は、そう言った趣旨の発言をしていた。『最強と言われていた』と言うのは、裏を返せば現在の最新型ガジェットに太刀打ちできるかは不明と言う事を意味している。


「しかし、過去のガジェットである以上、最近の物と比べると一段階劣るのは百も承知している。それでも、アカシックレコードに対応したガジェットには、異常なほどの可能性があるとも店員は言っていた」


 蒼空が何かを感じていた頃、ようやく調整が完了したという報告が入る。しかし、完全に復元できたわけではない事も報告された。


「あれを完全復元するとしたら、部品が足りません。修復に関しては問題ないのですが――」


 何か言いたそうなスタッフもいたが、出来る限りの事をしてくれた事に対して蒼空は感謝をする。


「クラシックと言われようが、その力を引き出す事が出来れば―必ず勝てる!」


 そして、蒼空はレースへと復帰した。幸いな事に他の選手が通過したような報告はない。上手くすれば、レース順位を1位で通過できる可能性もあるだろう。


 午前10時50分、レースに動きがあった時間である。他の選手も補給や整備を行い、それが完了したのが49分と言う事もあるのだが。トップが蒼空で変化がなかったのは49分までであり、順位が変わったのも50分だからだ。


『他の選手も整備が終わり、動き出して早々にトップになったのは花江提督です。それに加えて阿賀野が追跡、その後を島風、小野伯爵、蒼空が王と言う展開です』


 太田さんの実況を聞いた途端、悲報ムードになると思ったのだが、逆に盛り上がった事に驚くのはアンテナショップで観戦していた店長や飛参戦の提督である。


「やはり、そう言う事か。自分の慢心がワンマンレースを生み出した……」


 秋葉原のゲーセンでタブレット端末を片手に松岡提督が観戦している。そして、自分がしてきた事がレースの面白みを奪っていた事にも気付いた瞬間でもあった。


「チートガジェット未使用でも、あれだけの大差で勝利すれば周囲の反応も変わってくる。リアルチートがサバイバーで歓迎されない状況は、こういう事だったのか」


 単純に超有名アイドルファンのランキング荒らし的な原因でリアルチートを敬遠していたのではなく、実際は松岡提督等の様なタイプがレースを動かしているという流れがテンプレ化した事……それがサバイバーの新規ファンがつきにくくなった原因だった。


「パルクール・ガーディアンが色々な意味でもマッチポンプとネット上で言われていた理由は、もしかすると別の所にありそうな予感がする。一体、何が起ころうとしているのか?」


 そして、松岡提督はレースの行方を見極めようと考えた。このレースが、全てを変える為の一歩になるかもしれない、と。


 午前10時51分、突如として中盤を走っていた選手が何者かの妨害を受けたという報告が大塚提督や本部の耳にも入った。


「この期に及んで妨害とは―」


 大塚提督は超有名アイドル勢の仕業と考え、つぶやきサイトの検索をするが、それらしいグループは動いていない。


 どうやら、これ以上は超有名アイドルが規制されると考え、下手に動けないというのが本心のようだ。


「サバイバーに乱入は認められない。それこそ、特例でない限りは」

先頭グループを走っていた島風は、別のルートを算出して襲撃犯の現れた現場へと向かう。島風としては、これによって走行距離数を稼いでスコア狙いと言うのもあるかもしれないが―。


 襲撃された現場、それは国道115号線である。先頭グループは既に54号線と言う事を考えると、島風の取った行動はレース順位を無視した物と言える。その後、神城ユウマが島風のいた順位に繰り上がった。


「コンテンツガーディアン―?」


 島風が驚いたのは、襲撃犯がコンテンツガーディアンだったからだ。それに加えて、ガーディアンのアーマーはオーバーボディであり、実際には違う組織のコスチュームだったのである。


「そう言う事、だったのか……。サバイバーと別の勢力がマッチポンプになっているという話自体は…聞いた事があったが」


 ガジェットを一部損傷しているが、佐倉提督は無事らしい。他の一部選手は気絶しており、そこにはヴェールヌイの姿も。


「その通りだ。しかし、我々はコンテンツガーディアンでもあり、コンテンツガーディアンとも違うと言える」


 その後、リーダーと思われる人物のオーバーボディが消滅をする。そこから現れた姿には誰もが衝撃を受けるような正体だったのだ。


「コンテンツガーディアンの正体が、コンテンツ管理勢力だったというのか。ならば、このレースは―何だと言うのか!」


 ギリギリのタイミングで駆けつけた中村提督も驚く、その人物の正体―それは誰もが驚くような存在だった。


《ワレワレハ―アカシックレコード。人類ガ求メテイル、全テノ―技術、権利を持ちし神の存在》


 目の前にいる存在、それはアンドロイドにも似たデザインをしたロボットだった。しかし、唯一違うのはARの様な拡張現実の部分と人間の生身の部分を併せ持った存在だった事。


「アカシックレコード。人類が求めてはいけない存在。それは、非常に危険な―」


 大塚提督には分かっていた。自立型アカシックレコードの出現、それが意味する物を。


《超有名アイドルに我々が求めている理想は実現できない。理想を実現するのは、我々の様なネット出身のクリエイターだ。我々が超有名アイドルの位置になり―》


 アカシックレコードが全てを発言する前に、何者かの大型斬撃がアカシックレコードを切り裂くのだが、実体がない為に手ごたえは全くなかった。


「これが、アカシックレコードの暴走した結果なのか? これが、私の考えていた理想郷であるはずがない!」


 阿賀野菜月の発言、それは裏を返せば彼女が実現しようとしていた事がネットクリエイターによるコンテンツ制覇とも判断出来る物だった。

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