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パルクール・サバイバー  作者: 桜崎あかり
第2部

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第24話:ランカー王決定戦―ラウンド6―

>更新履歴

2015年5月9日午後10時31分付:一部、行間調整。本編内容に変更はありません。


バージョンとしては1.5扱いでお願いします。

 決戦当日の5月28日午前9時58分、ガレス提督は北千住の本部を離れ、再び秋葉原へと足を運んでいたのである。


 しかし、今回はソロモンとして潜入せず、別のランニングガジェットを投入しての単独行動だった。


 アーマーのデザインはロボットにも近いのだが、形状としては中村提督が過去に使用したバイザーに近い。しかも、このランニングガジェットは、将来的に別のARゲームで投入する予定だったものだ。


 それを白銀のカラーリング、装甲を含めてミリタリーな物に調整、武装類は半数がビーム系統、高速離脱を可能にする為に大型ガジェットを搭載しない等の徹底がされている。


「まさか、自分が決着を付ける為に向かう事になるとは―」


 インナージャケットを着た状態でランニングガジェットを装着するガレス提督、彼女は過去に別名義で芸能事務所のアイドル候補生をしていた事があった。


「…この名前とは決別したはずだった。しかし、今はその名前を再び使う事になるとは」


 ヴェールヌイ、これが以前に名乗っていた芸名だった。しかし、様々なトラブルの関係もあって事務所を辞め、パルクール・サバイバー運営の設立にも参加する。


 それでも、全てのスタッフの信用を得られたわけではなかった。松岡提督、花江提督を初めとした運営離脱者を出した事は今でも引きずっており、それに加えて一部勢力が対抗組織を結成した事も彼女にとっては誤算だった。


 結局、彼女は超有名アイドルへの復讐にパルクールを利用しようと言う魂胆があり、それを見抜かれた事がさまざまな作業に遅れを出す結果となる。


 同日9時59分、超有名アイドルの劇場前に到着したガレスは周囲を見回す。そして、既に来る事は想定済みと思われても仕方がないようなARガジェットで武装したアイドル候補生を発見する。これは、以前の再現と言っても差し支えないような流れである。


「こちらとしては阿賀野に来てほしかったが―」


 ガレスの前に姿を見せたのはイリーガル秋元、彼は確かに数回ほど拘束されたはずである。しかし、それが何度もコンテンツガーディアンから脱出に成功している事には不信感を抱く。


「コンテンツガーディアンがザル警備の可能性に関して言及はしない。しかし、あなたが総理大臣代行だったという事実――それは認める訳にはいかない!」


「私が総理大臣代行をしている事を知っているとは……誰から聞いた?」


「それを話した所で、あなたは全力で否定する。ならば、話さない方があなたの為だ」


「いいだろう! こちらとしてもある勢力から横流しで受け取った、これがある!」


 秋元が呼び出したガジェット、それは黒いアルビオンと誤認しそうなデザインをした機体である。しかも、ランニングガジェットではなく別のARゲームで使用されるフレームで作成されたロボットだと言う。


「よりにもよって、それを受け取っていたなんて―」


 ガレスの懸念は的中した。秋元が受け取ったガジェット、それはロケテストが進行中のARゲームに使用される新型ガジェットである。


 ランニングガジェットが一世代遅れを取る位には最新技術が使われており、現地点で勝ち目は低いだろう。


「しかし、阿賀野が来ると想定したのが、逆にお前がきて正解と思うとは――ヴェールヌイ」


 秋元としてはアカシックレコードの秘密を知っている阿賀野菜月が来る事を想定していた。しかし、実際に来たのはサバイバー運営責任者ことガレス提督だった。


「やっぱり、思い出したのか! イリーガル!」


 ガレスが両肩のビームランチャーを発射するが、こちらは秋元に回避されてしまう。さすが新型と言うべきか。その後もガレスの攻撃は次々と避けられてしまい、性能差を突きつけられる結果に。


「思い出したというよりは、ソロモンとして潜り込んでいた事実をコンテンツガーディアンから聞きだし、そこから逆算したのだ。復讐の為に別のコンテンツを立ち上げると言う方法を使った地点で、気づくべきだったか」


 秋元の方は手持ちのビームライフルでガレスを攻撃するのだが、その攻撃はヴェールヌイの装甲にはじかれる。秋元の方も、しびれをきらして途中からは拳一つで殴りかかってきた。


「ソロモンとして潜り込んだ時は超有名アイドルコンテンツを駆逐する為に、内部から崩壊させようとも考えていた―」


 ガレスの方は周囲の超有名アイドル候補生を対処するので精一杯であり、秋元に狙いを定める事は出来ない。


「しかし、それは別の意味で失敗に終わった」


「失敗だと? どういう事だ」


 ガレスの失敗と言う一言に対し、秋元が反応する。一連の黒豹事件で変わったのか、それともBL夢小説勢の魔女狩りからか―。


 実は、意外なタイミングで失敗に終わっていたとガレスは宣言する。そのタイミングとは、想定外とも言えるタイミングだったのだ。


「ランニングガジェットを展開し、ランキング荒らしが現れたまでは良かった。しかし、こちらとは想定外の人物がランキングの塗りつぶしを始めていた……信じられないと思うが」


「そのタイミングで失敗していたのか? 信じられないな。それこそ、サバイバー運営の罠かもしれない」


 秋元もガレスの一言には驚きを隠せない。そのタイミングで失敗と言うのであれば、今のサバイバーを取り巻く環境はどう説明するのか?


「こちらとしても復讐と言う意味では、超有名アイドル勢力によるアクロバット等が問題になった地点で――釣りは成功したと思った」


「それに追い打ちをかける意味でのガジェットだと言う事か?」


「ARガジェット自体は既に市場に出回っている関係で、環境を整える事にはさほど時間はかからなかった。しかし、こちらにも誤算があった」


「それが有名ランカーの登場だと言うのか?」


「ランカーに関しても一部メンバーは、こちらがスカウトしていたが……スカウトした人物以外で好成績を上げる人物が現れた。それが4月期ランカー王の松岡提督だ」


「なるほど。元運営のメンバーに奇襲を受けたという事か」


 秋元も次第にガレスの話を信じるようになった。確かに松岡提督の動きはサバイバー運営とは異なる物なのは間違いないだろう。そうした想定外の要素が出現した事で、ガレスの目的は達成不可能になった――と。


 そして、時間はレースが開始されてから10分が経過し、午前10時10分になっていた。


「しかし、一度は失敗と思われた計画も阿賀野菜月の出現で再び修正が可能になり、彼女の気付かない所で動きを同調させ、最終的には超有名アイドルの芸能事務所を追い詰める事に――」


 ガレスは周囲の超有名アイドルの使用するガジェットを沈黙させ、倒れた候補生はコンテンツガーディアンに回収させる。しかし、候補生は無限に現れる事に対し、何かの違和感を抱く。


「そう言う事か。阿賀野菜月の未来予知もトリックがあったと……」


 秋元が何かを喋ろうとした矢先、秋元を背後からの不意打ちで気絶させたのは黄金のガジェットを身にまとった松岡提督だった。そして、松岡提督の振り下ろした斬艦刀が秋元のガジェットを無力化し、次の瞬間には気絶した秋元だけがその場に現れた。


「やはり、あの話は嘘だったのか――茶番としては良く出来ていると思ったが」


 松岡提督の一言を聞き、ガレスは何が本当で何が嘘なのか信じられなくなっている。一体、彼の使用していたガジェットとは何なのか? 新型ガジェットと言うのはブラフだったのか?


「茶番? パルクール・サバイバーが茶番だと言うの?」


「秋元は気づいていないと思うが――全ては、コンテンツ正常化を行う為に一部勢力の制裁を行う為に用意した舞台だ」


「コンテンツ正常化? 確か、以前に遭遇した如月トウヤも同じ事を言っていたが」


「如月を知っているのか。ならば話が早い。本来であれば別のARゲームをフィールドにしようとも考えたが、それに失敗したのが2年前の音楽ゲームの時だ」


「あの時は超有名アイドルが地雷を踏んだとニュースサイトで知った。あれにも裏があると言うのか?」


「裏は存在しない。あちらも超有名アイドルの利益至上主義型商法が暴走した結果、あのような結末になっただけだ」


 松岡提督の話し方は影のラスボスと言う感じではない。黄金のガジェットを装着したヒーロー、それこそガレスの求めていたランカーにも見える。しかし、現実の彼は違っていた。


「あなたの本当の目的は何?」


 そのガレスの問いに、松岡提督はこう答えた。


「サバイバーの運営にいた時はコンテンツ流通を正しい方向に導く事が出来れば、ブラックファンの出現を防ぐ事が出来ると思っていた―」


「しかし、それが夢物語であると如月に聞いた。結局は、アフィリエイト系まとめサイトやネットの多数決、つぶやきサイトの悪意あるメッセージと言う存在がブラックファンを生み出し、超有名アイドルがそれにタダ乗りするかのようにコンテンツを全て狩り尽くそうと考えた」


 松岡提督の目は、復讐者と言う目ではない。その一方でコンテンツを利用して一部勢力の抑え込みをする事、それは超有名アイドルと行っている事が同じだと悟った。


「結局はコンテンツ流通の未来を願う為には、より多くの意見に耳を傾け、それこそ慎重に議論すべきだと。最終的には、それらを考えた結果、自分は5月期のランカー王参戦を辞退した」


「どういう事なの? 正式には予選落ちという事で……!」


 松岡提督がランカー王に出ないという話を聞き、ガレスは予選落ちをしたはずだと言おうとした所で何かを思い出した。


「その察し通りだ。結局、自分は復讐の為にパルクール・サバイバーを利用しようとしていた――お前と考えている事は同じだった」


 結局は、松岡提督もガレスと同様にコンテンツを利用しての超有名アイドルファン駆逐を考えていた。


「おかしな話だな。サバイバー運営の行おうとしていた事に反対し、離脱をしたはずが別の協力者と一緒に同じ事をしていたとは―」


「協力者? 如月とは別に協力者がいるのか」


 協力者と言う単語に反応をしたガレスは、その名前を聞き出そうとも考えていた。しかし、松岡提督が協力者の名前を出すとは思えない。


「ヒントは阿賀野菜月以外だ。その関係者を外していけば、見つかるとは思う」


「協力者はアカシックレコード絡みではないのか?」


「一つだけ忠告をしておく。有名な大手企業がパルクール・サバイバーの重要性を認め、投資の話を持ちかけてくる可能性がある。その企業の中に、秋元の息のかかった企業が残っている可能性が――」


「大手企業? 松岡提督、お前は何が目的で情報を話すのか」


 しかし、松岡提督は既に姿を消していた。一体、彼はどのような世界を望んでいるのか。

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