第24話:ランカー王決定戦―ラウンド2―
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2015年5月9日午後8時33分付:一部、行間調整。本編内容に変更はありません。
バージョンとしては1.5扱いでお願いします。
決戦当日の5月28日午前8時30分、マスコミが集中したのは北千住である。目的はパルクール・サバイバー運営へのインタビューだろうか。
「一連の政治家逮捕の件でお話を伺いたいのですが……」
複数のマスコミが取り囲んだ人物、それはかつてチート勢力を率いていたとされた人物、ヒデヨシだった。
今の彼はパルクール・サバイバーからは離れ、ブラウザゲーム及びオンラインゲームにおける不正ツール及びマクロプログラム等を検出する為のシステムを開発している。その会社が北千住にある為か、マスコミに囲まれる結果となった。
「政治家逮捕? それは初耳です。朝のニュースをチェックせずに出勤してきた物で―」
こう答えた背広姿のヒデヨシに対し、新聞社の記者が一連のニュース記事の載っているサイトを見せる。それを見たヒデヨシは、何とか状況を把握したようだ。
「こうした勢力が取り上げられるのは今に始まった事ではないと思います。そして、このような事はこれからも続くでしょう。あなた方が都合のいい部分だけを切り抜きして報道し続ける限り」
ヒデヨシは一言だけを残し、仕事場であるビルの方へと向かってしまった。下手に追いかけるのも違うと思ったのか、一部の取材陣はこの辺りで引き揚げる。
同刻、マスコミの動きに対して不信感を抱いていた勢力は他にもあった。それは、上条静菜に指示を出していたハンター組織。彼らは自分達の正体がマスコミに知られてしまったのでは、と懸念している。
「我々の正体が知られてしまったら、それこそ日本のコンテンツ業界は滅ぶ」
テナントビル内の会議室では、複数人の会議参加者が円卓会議を行っている。しかし、彼らは背広に動物の覆面と言う恰好で会議を行っており、シュールな光景を感じさせるのは間違いないだろう。
「しかし、マスコミも所詮は超有名アイドルに買収されている新聞社やテレビ局が多い。あてにできるのは、SNSを活用したゲリラ的活動だけだ」
マスコミが何を使用が関係ない口調でシマウマの覆面をした人物は強気の姿勢を崩さない。他の幹部は強気に訴えるべきと同調する者は少ないのがきになるが―。
「別の世界ではつぶやきサイトの運営が逮捕されたというニュースがあったと聞く。我々の世界でも炎上を誘うようなつぶやきその物が規制されるかもしれない」
強行姿勢に反対するのは、ライオンの覆面をした人物だ。彼は今回の事件を受けて、つぶやきサイトだけでなくSNSその物が規制され、情報発信の場が激減、その結果として超有名アイドル以外は宣伝不可能と言うディストピアが現実化する事を懸念する。
『それでも、守るべき物を守るためには――強硬手段も必要となってくるだろう』
周囲の声を聞き、何かの決断をしたのは黒豹の人物、ハンター組織のリーダーである。
「ですが、それによって戦争にでもなったとしたら、どう責任を取るつもりですか?」
「我々は流血のシナリオは求めない。しかし、超有名アイドル勢は我々がその流れになるのを待ち、ネット炎上させる準備を仕掛けているでしょう」
「噂によると、BL勢も海外の法律改正等によって自然壊滅するとか―。我々としてはBL勢の駆逐は歓迎すべきだが、一歩間違えれば魔女狩りにも見えてしまう」
「一次創作作品から気になる事を噛み砕き、自分の考え等を込めて一次創作として小説等にする方法が流行るとは思えません。やはり、我々としても海外の方法は単純に自分達が分かりやすいようにする為だけの押しつけにも―」
会議の方は自分の意見の押し付け合いに近い状態になっていく。その中で、異論を唱えた人物はドラゴンの覆面をした人物だった。
「我々が一つの情報で混乱し、それに便乗して勢力を潰していく。それは超有名アイドル勢や目立つ為に無関係の勢力を炎上させようと言う個人による常とう手段。それに引っ掛かった事で、炎上した企業も数知れない。その場の勢いで動くのは自滅行為同然だ!」
ドラゴンの覆面は冷静に情報を調べ、それに基づいて行動をすべきと周囲に対して勢いだけの行動に関して自重を求める。
「それでも、目立つのが目的と言う個人を取り締まるだけの法律は存在しない。いっそのこと、先ほどの話ではないがつぶやきサイトその物を潰すべきなのでは―」
パンダの覆面をした人物の一言を聞き、ドラゴンの覆面は思わず覆面を脱いだ。どうやら、我慢の限界だったのかもしれない。
「そう言った行為をすれば、即座に言論弾圧や表現の自由を侵害していると超有名アイドル勢以外からも言及される。そして、最終的には―」
ドラゴンの覆面の正体はパルクール・サバイバー運営の赤羽根提督だった。それを見た複数の覆面達はARガジェットを赤羽根提督に突きつける。どうやら、ハンター側の目的は情報を流出させた人物を割り出す事だったようだ。
『まさか、サバイバー運営が潜り込んでいるとは予想外だった。最近のハンティング情報にこちらがマークしていない勢力が狩られているという通報があって、まさかと思ったら―案の定だったか』
黒豹の人物はサバイバー運営にも訪れた事があるが、その時の目的はスパイを発見する事が目的ではなく、単純な謝罪と交渉だった。しかし、その帰り際にスパイの情報を部下から聞かされ、そこからスパイを調べ始めていたのである。
黒豹の人物が動きだしたタイミングで、赤羽根提督は別の端末を操作し始め、何かの信号を発信し始める。この行動は周囲には気づかれていない。当然、黒豹の人物にも。
「何処から気付いていた。まさか、ソロモンが秋元に協力し始めた辺りからと言う冗談は―」
赤羽根提督は右手に転送されて来たグレートソード型ARガジェットを装備する。しかし、黒豹の人物には剣を突きつけはしない。
『仮にレーヴァ―上条が最初に有名アイドルの芸能事務所マネージャーを狙撃した地点から…と言ったら、どうする?』
「そうなると、事件の発端から全てお見通しでアカシックレコードに付き合っていたと言う事になるが―」
『そうだな。誰が考えてもマッチポンプと気づくだろう』
「アカシックレコード、それも自作自演だとしたら―」
黒豹の発言が本当ならば、全てを承知で赤羽根提督を利用していた計算になる。しかし、それならばどの段階で正体に気付いたのか? それも赤羽根提督に関しては疑問だった。
『アカシックレコードの未来予知に関して疑問を持ったのは、今に始まった事ではない。2年前の音楽ゲーム絡みの事件で、世界に何らかの歪みが生じているのを把握していた』
そして、黒豹は手に持っている銃型のARガジェットを赤羽根提督に突きつけていたのだが―突如として銃を下ろす。
「何故に銃を下した?」
『この辺りが潮時か―』
赤羽根提督の疑問に対し、黒豹の人物は覆面を外す。そして、その顔には赤羽根提督も見覚えがあった。
「貴様も提督だと―!」
「なんて事だ!? この組織もサバイバー運営のマッチポンプ組織なのか?」
「信じられない! 一体、どういう事ですか」
周囲の覆面からは悲鳴にも似たような声が聞こえる。更には、その正体が提督だという事実もショックを受けていた。
「南雲提督―この場合は、武内提督ですか」
黒豹の正体、それはもう一人の南雲提督こと武内提督だった。本物の南雲提督は教習所で作業をしている為、ここにいる南雲提督は武内提督の変装であり、影武者でもあるのだが。
「既にハンター組織は、我々、パルクール・ガーディアンが抑えた! ハンター組織の名を使い、なりすましで形勢逆転を狙った夢小説勢力には相応の報いを受けてもらおう」
武内提督が指を鳴らすと、会議室内に姿を見せたのはコンテンツ&アキバガーディアンの連合軍である。どうやら、夢小説勢やフーリガン化したBL炎上勢を駆逐する為に共闘しているようだ。
逮捕された覆面の人物は、その半数近くがフジョシである事が後の調査で判明、更に言えばフジョシによるコンテンツを狙ったピンポイント襲撃も計画されていたらしいが、その真相はテレビで報道される事はなかった。
一説によると、男性有名アイドルグループ絡みで今回の不祥事が明らかになると人気が下降する――という事が言われているが、これはフジョシが都合よく解釈しているのみだろう。
同日午前8時50分、ビルを出た武内提督は時計を気にしているようでもあった。ランカー王の開催有無に関しては午前9時に告知される。万が一に延期と言う事があれば、それだけでも数億の損害が出るともネット上では言われている。
「様々な所で暗躍しているという話を聞いていますが、何処まで?」
赤羽根提督は武内提督に話せる範囲で裏側の行動を聞きだそうとする。しかし、彼の表情が変化する事は全くない。どうやら、機密事項扱いなのだろうか?
「孔明さんの脱走を手助けした所、司法取引を持ちかけた事、サバイバー運営が出来る前にも色々と動いていました」
まさかの話が出てきた事に赤羽根提督は驚く。孔明は現在の佐倉提督でもあり、その司法取引を持ちかけたという事は―。
「佐倉提督の件、上条には話してあるのか?」
「彼女に話す必要性はないでしょう。おそらく、薄々と気づいているかもしれません」
予想外の一言が武内提督の口から出た事に、赤羽根提督は少し沈黙をする。上条静菜も把握していたという事は、この事を知らないのは実働部隊に該当する提督、それに運営を離れた花江提督、松岡提督辺りか。
同日午前9時、ニュース番組では続報として夢小説勢が大量に摘発されたという報道がされた。表向きは肖像権侵害と言う事で報道されているが、実際は他コンテンツのピンポイント襲撃での逮捕が事件の真相だが―この地点でそれを掴んでいるマスコミは皆無だった。
【やはり訴えられたか】
【そうなる事は分かっていた。ただし、何処に引っ掛かるかで夢小説勢がどのように壊滅するか……という部分が見どころだった】
【肖像権となると、海外の規制関係とは無縁の可能性もあるな。フジョシが海外へ輸出されない事を祈っていただけに、水際で何とか出来たのは大きい】
【この事件を受けて、ランカー王が延期にならなければいいが―】
【サバイバー運営としては、フジョシの存在や夢小説勢の行動は営業妨害に近いからな】
つぶやきではサバイバー運営が一連のニュースを受けてランカー王を延期にするのではないか、と言う動きだった。
『ランカー王決定戦に関してはコースに不審物の設置が確認されていない事を踏まえ、予定通り実施いたします』
スピーカーから聞こえる声、それは誰もが聞き覚えのある実況の太田さんである。その声で予定通りの実施が告知されると、その情報は瞬く間に拡散され、ファンからは一安心等の声が聞かれた。




