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パルクール・サバイバー  作者: 桜崎あかり
第2部

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36/57

第23話:アカシックレコードの正体―ラウンド2―

・誤植修正(午後1時14分付)

勝ちのある→価値のある

なりすまし帽子→なりすまし防止


>更新履歴

2015年5月9日午後11時28分付:一部、行間調整。本編内容に変更はありません。


バージョンとしては1.5扱いでお願いします。

 決戦前日の5月27日午前9時、予備予選に集まったのは40名以上の選手。ランニングガジェットは重量級や軽量級等と種類は豊富である。


「まさか、これだけの強豪がそろうとは予想外だった」


「棄権した選手も複数人いるが、それでも40人はいるだろう」


「ランカー王の称号が得られれば、何か特典でも?」


「特典はないだろうが、ランカー王の称号はパルクールランカーとしては欲しい称号だろう」


「アマチュアの選手もサバイバーに参加する位に価値がある……と言う事ですか」


「ネット上では箱根の山の神と言われた人物を破り、新たな山の神になった神城ユウマの例もある。神城は、山の神に関しては返上したが」


「勿体ない事を……つまり、箱根で言う山の神クラスに価値のある称号が、ランカー王と」


「大まかに説明すれば、そう言う事になる。ランカー王自体は4月にも行われたが――」


 2人の新聞記者と思われる男性がランニングガジェットや会場の様子を撮影しつつ、何か様子を見ているようにも思える。


 同日午前9時10分、エントリー受付がスタートし、それぞれの選手が電子データ化されたゼッケンを肩や胸等の分かりやすい場所へ設定し、それに合わせてカスタマイズを行う。


「マラソンだと、ゼッケンの布等が使われた事もあったが、ここでは電子データ化されているとは」


「しかも、カスタマイズ画面でステッカーを貼るような感覚で肩に設定すれば―」


 別の選手がタブレット端末でゼッケンを指でタッチし、それを自分のガジェットが表示されている所までスライド、最後に肩の部分にゼッケンを固定して設定許可を行えば終了である。


 設定が終了したゼッケンは、数秒後にはカラーカスタマイズと一緒に表示される。こうした電子データ化ゼッケンには賛否両論はあったが、布のゼッケン、ステッカーの様な物では貼り替え等でなりすましが行われる可能性もあっての判断らしい。


 念には念を入れると言う事で、電子化ゼッケンには選手の写真データも登録し、二重の意味でなりすまし防止を強化しているのだ。


「これは便利だな。しかし、自分でタブレット端末やスマートフォンの操作を出来ない人間はどうするのか?」


「それは問題ないだろう。設定が出来なくても、スタッフが代わりにやってくれる。それ位のアフターケアはレースには影響しないと考えているが」


 選手の一人が指さす方向には、提督服を着ている女性スタッフが別の選手にカスタマイズ方法を聞きながら作業している姿がある。大体は自分で作業を行うケースが多いのだが、こうしたケースも実際にあるらしい。


 同日午前9時20分、会場となる西新井近辺、そこではランニングガジェットの撤去作業が行われていた。不法占拠と言う理由ではなく、これは当日のアクシデントによる物。これによって1名の選手が棄権――となるはずだったが、何とかガジェットを確保出来た為に参加可能となっている。


 撤去作業はランニングガジェットではなく作業用のガジェットが使用されている。こちらに関してはARガジェットとは別の技術を応用しており、別のライセンスが必要となるようだ。


 ガジェットの撤去作業と言ってもガジェット自体が大破している訳ではなく、単純な事を言えば『燃料切れ』である。しかし、曇り空と言う訳でもない上空、太陽光も特に問題はないはずなのだが……。


「これは違法ガジェットの疑いがある。どうやら、新手の違法システムが開発されたらしい――」


 調査をしていたスタッフの一人が撤収したガジェットを調査施設へ移動するように指示、その後は道路の舗装や整備等が行われる。


『レース開始予定は10時だが、間に合うのか?』


 新聞記者と言うには疑わしいような人物が、撤収作業の一部始終を見届けている。それもそのはず、この人物は黒豹の覆面をしていたからだ。下手に声をかけるわけにもいかない為か、通行人は目を合わせようとせずにスルーと言う行動が多い。


 黒豹の覆面と言えばガレスの記者会見を妨害した人物として有名だった。しかし、この人物は黒豹の人物の知名度を利用しただけの偽物である事が判明する。


『話はノブナガから聞いた。どうやら、私の名前を騙る偽者が現れたようだな――』


 8日の午前中に彼はサバイバーの運営本部へ直接姿を見せた。彼がこのような場に姿を見せるのは異例であり、サバイバー運営としても予想外だった。


「偽者? あれは貴様の声だというネット上の意見もある」


 他の白服の提督が黒豹の人物を問い詰めるが、彼が怯むような気配は全くない。それを見たガレスも提督たちに下手に煽らないように指示をする。彼の声はボイスチェンジャーを使ったような物であり、一種の合成とは別物だ。


『確かに、そう言った意見があるのは承知している。だからこそ、今回は直接出向く事で誤解を解こうと考えた』


 これにはガレスも驚いた。その後の説明では、一連の映像を確認した後に意図的に仕組まれたトラップを確認し、それを伝える為にやってきたのだと言う。


『我々も超有名アイドル商法に関しては懐疑的で、それを日本の一大産業にしようと言う動きも存在している』


 この後も黒豹の人物は超有名アイドル商法を広めようと考える勢力を発見し、報告を行う事を約束、その後は姿を消した。


 5月27日午前9時40分、準備の方は完了した事もあって、西新井駅方面は混雑している。それでも大きな騒動にならないのは、サバイバー運営が様々な対策をしている為だと容易に想像できるだろう。


「現在、西新井駅をご利用するお客様が優先となります! 怪我の原因になるので、駅構内では走らないでください」


「サバイバー会場の入場には制限がかかっております! スタッフの指示に従って移動をお願いします」


 拡声器を片手に観客の誘導を行うスタッフの服装も白い提督服である。一種のコスプレと言う考え方もされているが、これが定着してしまった為に観客の中で疑問に持つ人物はいなくなっている。


 パルクール・サバイバーが初めての人物は疑問に持つ可能性があるのかもしれないが、慣れてくると提督服が一種の制服と同じように感じるようになるのが現実だ。


 同刻、サバイバーの観戦施設では駐車場が満車と言う状態になり、観戦する際は電車移動かバス、自転車等を利用する人物が多くなっている。


「予想以上の反響は怖いな」


 その状況を提督控室で見ていたのは、特殊なバイザーを装着した内山提督である。彼は一足先に観戦施設入りをしており、そこで色々な調査を行っている。


「どちらにしても、サバイバー運営の手腕が問われるのは間違いない」


 内山提督の隣で中継映像を確認しているのは、白衣姿のオーディン。彼だけは提督服を着ていない。


 同刻、サバイバーのライセンス施設の方は臨時休業せずに営業を続けている。今回の予選を含め、色々な特需を狙っているとネット上で叩かれるのは百も承知で休業にはしていない。


「サバイバー運営も、ここまで準備をするとは予定外と言うか―」


「免許に関しては更新や切り替え、免許停止の手続きもあるから年中無休とは言わないが、受付できる方が便利だろう」


「そう言う物ですか?」


「将来的には24時間営業は不可能でも、夜間対応等も視野に足立区及び草加市と交渉中らしい」


「そう言えばロケテストが草加市で行われていたのは、こうした事情もあってですか?」


「その可能性はゼロではない。それを確かめる為の取材でもある」


 2人の男性新聞記者が何かを話しているのだが、それに提督たちが目を向ける事はない。それ程、提督側の方が忙しいという事か、あるいは産業スパイなのか。


 同日午前9時45分、スタート地点となる西新井大師近辺では提督やパルクール・ガーディアンの動きも慌ただしくなっている。


「超有名アイドルの一件は解決した――と言う事か」


 この件に関して疑問を持っているのは提督勢だけではなく新聞記者達も同じ考えだろう。しかし、松岡提督は納得がいかない様子だ。


 既に松岡提督はスタート地点で準備を行っており、ランニングガジェットの微調整で忙しい。その中で、一連の超有名アイドル騒動があっけなく幕引きされるのはおかしいと考えている。


「予選が始まる前に全ての決着を付け、その後に予選と言う流れを作ったのは運営と言う事か」


 松岡提督が手を下すまでもなく自滅したヴィジュアルバンドの夢小説勢、それ以外にも政治家とのパイプを持っていたアイドルファン勢等もコンテンツガーディアンが先手を打ったという。


 同刻、阿賀野菜月はアミューズメント施設の新ARゲームのロケテストを見学していた。阿賀野を含めたギャラリーの目の前には大型モニターが用意されており、そこからロケテストの様子を見る事が出来る。


 このゲームのジャンルは、どちらかと言うと音楽ゲームに該当する。しかし、システム的にはアクション系のARゲームにも似たシステムが実装されていた。


「音楽の演奏を疑似体験できるゲームは既に数個存在し、ARゲームでも存在する。このARゲームは、どのようなカテゴリーに属するのか―」


 阿賀野は目の前で行われている光景を見て、呆気に取られていた。筺体の形状はガンシューティングに近く、それのコントローラーをARガジェットに変えただけと言う単純な物。


 しかし、阿賀野が呆気に取られていたのは筺体の形状ではなく、プレイスタイルにあった。プレイヤーはARシステムによって現実化しているコスプレを身にまとい、ゲーム画面のプレイヤーを操っているのだ。


 それに加えて、ガンシューティングの的に該当するのが音ゲーで言う所のノーツやパネルだったのだ。つまり、ガンシューティングの要領でリズムよく演奏すると言う物だが、これは過去にも似たようなゲームを見た事がある。


 ゲーム画面のプレイヤーのコスプレは実際のプレイヤーにも装着されるが、男性プレイヤーは男性キャラ、女性プレイヤーは女性キャラしか選択できない。逆の性別を選ぶ場合はARシステムをオフにしなくてはいけないという不便な個所も存在していた。


「これは確か、光のアカシックレコードで見覚えが―」


 ここで阿賀野は何かに気付く。2つのアカシックレコード、花澤提督にある事件から目をそらさせる為に言った事である。しかし、それは口から出まかせではなく本当になってしまったのだ。


 同日午前9時55分、自宅待機で情報を収集していた花澤提督は光のアカシックレコードと闇のアカシックレコードの解読を続けている。


「光のアカシックレコードと同じように、超有名アイドルグループの裏には大物政治家との関係があった。しかし、闇のアカシックレコードには超有名アイドルとは別にCDランキングによるコンテンツ制圧作戦等も書かれていた」


 更にミュージックカードの存在がCDランキングにも大きな影響を与えていた事が記されており、これもランキングから除外された。その他にも色々な案件が闇のアカシックレコードに書かれている。


 闇のアカシックレコードに書かれている不正手段や示唆されている件も、予選前に解決したのが妙な話だ。ここまでハイスピードに事件が解決へ近づくのも都合がよすぎるのだ。


「光と闇、それ以外の第3のアカシックレコードでもあるかのような……その気配さえ感じる記述が闇のアカシックレコードには存在した」


 花澤提督は第3のアカシックレコードが何かを予言しているような気配さえ感じている。一体、この世界を動かしているのは何なのか。


 やはり、この世界は超有名アイドルコンテンツが支配し続けていたディストピアだったのか?

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