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パルクール・サバイバー  作者: 桜崎あかり
第2部

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第21話:最後の黒幕―ラウンド2―

>更新履歴

2015年5月10日午前0時付:一部、行間調整。本編内容に変更はありません。


バージョンとしては1.5扱いでお願いします。

 5月6日午後2時、秋元の芸能事務所が家宅捜索を受けたというニュースが流れていた。家宅捜索自体はコンテンツガーディアンに拘束される前、パルクール・サバイバーの始まる前から数回ほど行われている。


【何故、このタイミングで家宅捜索が注目キーワードに?】


【どうやら、サマーカーニバルを日本全国に展開しようとしていたらしい】


【西暦2020年―つまり、海外スポーツの祭典までに間に合わせようとしていたらしいな】


【パルクールを正式種目に入れようとしている動きも?】


【おそらく、そうかもしれない】


【超有名アイドルコンテンツ以外は全て排除しようと言う世界―まるでディストピアだ】


【このような動きは以前からも察知されていた。それを放置していたのは、芸能事務所が裏で政治家と手を組んで穏便していたという噂がある】


【日本全国へアイドルを展開と言うのは、以前にもあったな】


【実現したかどうかまでは明言されていないが、そうした動きはあったらしい】


【炎上ビジネスに利用されている感じがある。やはり、これは一種の無料で宣伝に利用されている類か?】


 他にもさまざまなつぶやきが目撃され、それ程に家宅捜索というキーワードが独り歩きしている感じがある。日本全国へ超有名アイドルの劇場を置き、そこの利用者限定で税金の免除等を受けられるという冗談にも近いつぶやきも存在するが―。


 同日午後2時10分、白い改造提督服にアンカーガジェットを装着した佐倉提督は、あるアイドルグループの劇場前までたどり着いた。そして、その場で何故かコンテンツガーディアンと戦っている。


「貴様は―脱走犯だな!」


「こちらガーディアン。脱走した孔明を発見。ただちに―」


 無線連絡をされる寸前で佐倉提督はアンカーシールドを分離、そこから拡散される粒子でガーディアンの無線を妨害する。


「無線が切れた? あの粒子が原因か」


 重装備専用の移動砲台を持ちだしているガーディアンの一人がアンカーに気付き、それを迎撃しようとするのだが…照準を合わせようにもノイズが混ざって上手く合わせる事が出来ない。


 そして、迎撃をしようと発射態勢に移行する頃には佐倉提督がビームサーベルで砲台を無力化する。それも、1台ではなく複数台を瞬時に―。


 無力化された砲台は2つに斬られたりはせず、メインコアをビームサーベルの突きで一撃という具合だ。それ以外にはビームライフルで無力化された砲台もある。


 佐倉提督の狙いはコンテンツガーディアンではない。ガーディアンに関しては、孔明の脱走が確認された為に彼女を追跡しているだけ。コンテンツガーディアンの出現は、現状の佐倉提督にとっては邪魔者という気配がするのだが―。


「司法取引自体が嘘だったか、あるいは下の連中に伝達されていない―どちらにしても、この邪魔者を何とかしなければ……」


 通信が途切れた事で不審に思ったガーディアン本部が、次々と増援を送りこんでくる。この調子で送り込まれると、単独で行動している佐倉提督には勝ち目がないだろう。


 増援の対処に手詰まりを起こしていた佐倉提督の前に姿を見せたのは、オレンジ色のランニングガジェット【スレイプニール】だった。向こうはコンテンツガーディアンが出現していたのを察知し、様子を見に来たものと思われる。


「コンテンツガーディアンの狙っている人物―見かけない提督か。何処かのコスプレか、それとも違う勢力が提督を利用してネット炎上を狙っている可能性も否定できない」


 レースの方は順調だったが他の収穫がなく、帰還を考えていた花江提督。しかし、佐倉提督の出現は彼にとっても収穫と言える物だった。


 花江提督もアサルトライフル型ARガジェットとレールガンを装備し、周囲のコンテンツガーディアンに奇襲を仕掛ける。ガーディアンの方は花江提督の出現に関しては想定外だったようで、彼が出現しただけで陣形を一斉に乱していた。


「どうやら、ネームド司令官は不在のようだ」


 バイザーに表示される簡易マップから敵の数を割り出し、即座にアサルトライフルを撃つ。ライフルの銃弾はピンポイントに動力炉に命中し、ガーディアンのガジェットは機能停止する。それを見た佐倉提督は驚くしかなかった。


「あれだけの数を、簡単に沈められるのか? まるで、リアルチートじゃないか―」


 佐倉提督は、花江提督の能力を見てリアルチートと考えているようだ。しかし、花江提督自体はチートと言われるような部類ではない。


 同日午後2時30分、各地の状況を北千住の本部指令室で確認しているのは白銀の提督服姿のガレスだった。彼女は超有名アイドル事務所の一斉家宅捜索のニュースを見極めてから動く予定だったのだが、予定は思わぬ方向で変更される。


「これ以上の泥沼化はネット炎上ビジネスに利用され、最終的には超有名アイドルのタダ乗り宣伝にも利用される。こうなったら―」


 ガレスは駆け足で、本部指令室から提督室へと向かう。それに加えて放送の準備をするように他の提督にも指示を出した。


 同日午後2時40分、北千住のアンテナショップでは蒼空かなでがアカシックレコードの情報を整理していた。途中で昼食を取る為にコンビニでのり弁当と飲み物を買いに行った位で、ほぼアンテナショップで情報整理をしている状態である。


 情報整理は単独ではなく、途中から協力を要請してきた2人の女性、赤城と加賀も一緒にデータ整理を行う。赤城の方は、アンテナショップ内でピザを3枚ほど食べていたようだが…。


「赤城さん、ピザを3枚も食べておいて作業の放置はなしですよ」


 加賀の目線が赤城に重く刺さる。それだけではない。赤城の方は作業もするが、それ以上に燃費が大変なのである。体型の割には大食いと言う事だろうか?


「ちゃんと仕事をしています! 放置していません」


 赤城が胸を張って宣言したとしても、作業量は加賀だけではなく蒼空の量よりも少ない。これでは言い訳はできないだろう。


【アカシックレコード理論】


 蒼空がチェックしていた作品、それは別世界におけるアカシックレコードを巡る事件を描いた小説である。ショートストーリーと言う区別がされる可能性もあるが、書き方としては小説と言えるだろう。


「この作品に書かれているガジェットですが、いくつかが実現していますね」


 音楽ゲームで使用されるコントローラー型の銃、ギター型ロングソード等と言ったような物が実際に商品化されているのは蒼空もアンテナショップで見覚えがある。花澤提督も、この辺りは把握しているのにパクリ等と主張する気配がない。


 こうした流れは『アカシックレコードではよくある事』として特に言及される事はない。逆に、アカシックレコードから現実化した物や事件は無数にあると言われている。その為、アカシックレコードはいつからか予言の書とも呼ばれるようになった。


「でも、アカシックレコード自体は架空の単語ではないわ。実際に使われている」


 赤城が発見した有名な百科事典サイト、そこにはアカシックレコードの記述は確かにあった。しかし、花澤提督の言うような意味ではなく別の意味として。


「アカシックレコード、元々は魂の記録と言われている。一方で、別の人物がアクセスした事で別の意味が浸透。花澤提督がアカシックレコードと言う単語を使った事で…後は、さっき話した通りね」


 加賀の方は説明も丁寧で落ち着いている気配もするのだが、少し略すような癖もある。それでも蒼空は何とか理解をしているつもりだ。


 同日午後3時、新宿の大型ビジョンに映し出されたのは提督服を着用し、それらしい椅子に座り、腕組みをしているガレスの姿だった。さすがに足を組んではいないようだが、パンチラに考慮した物ではないようだ。実際にガレスが穿いているのはズボン系であり、ミニスカ等ではない。


 この映像が始まった際、何かのCMが始まると思った通行人は足を止める。しかし、自動車の方は映像が流れても止まる気配はない。信号と言う例外はある一方で、スルーしてしまう車が多いようにも思える。


 テレビ局の方はガレスの記者会見がある事自体全く掴んでおらず、テレビスタッフは先手を取られたような表情をしている。新聞社の方も夕刊の差し替えが聞くような状況ではなく、号外を発行しようとネットの中継サイトを発見して視聴しようとしたのだが―。


「ネットの方は満席で入る事が出来ない!」


「全てのネットが我々やテレビのマスコミをNG指定しているようだ。あの映像を確認出来るのは―」


 新聞記者は映像の方を確認しようとするのだが、動画サイトの方は満席、その他の動画を流しているサイトでもマスコミ関係者が弾かれる為に視聴できない。


『私はパルクール・サバイバーの運営総責任者であるガレス―今回は、皆様にご報告をしておきたい事があり、大型モニター及びARゲームセンターモニターで放送枠をお借りしています』


 ガレスの声を聞いたギャラリー、レースを終えた選手、スタッフ等もモニターの方を注目する。モニターがない所でも、パソコンでのネット配信等でも確認出来るため、スマートフォンを片手に見ているという通行人も多い。


『ご報告の前に、皆様へ謝りたい事があります。私は本来のパルクール・サバイバーで行われるべき事に反し、ある勢力が行った悪行を公表する為に利用していました。これは、ロケテスト当時及び一部提督が掲げていた目的に反します』


 この発言を聞いて驚いたのは、別所でモニターを見ていた松岡提督、スレイプニールに乗った状態で映像を確認している花江提督、更には再び逮捕された秋元である。


『この件に関しては、アンテナショップの店長を初め、ユーザーから多数の意見がありました。その為、今回の記者会見という形を取る事で、皆様にお伝えする事に―』


 ガレスの記者会見は続くのだが、それを偶然見ていた新聞記者の一人はスマートフォンで新聞社へと連絡を入れようとする。しかし、電波の方は圏外表示で連絡する事は出来ない。一体、何が起こっているのか?


 新聞記者の電話が圏外なのに対し、周囲の携帯電話は通話できる状態。場所によって電波の届き具合が違うのか―と考えたのだが、実際は違っていた。


 何と、第3者の何者かがジャミングを展開して意図的に連絡不能な状態を作っていたのである。何故、このような事をするのかには理由があった。


『私は、その昔にサマーフェスティバルの候補生をやっていました。そして、色々な事情で事務所を辞めることとなりました』


「馬鹿な! ガレスの正体は元候補生だと言うのか?」


 記者会見を取調室で聞いていた秋元には、文字通りの寝耳に水とも言える話だった。サバイバーの総責任者が元超有名アイドル候補生だったという事に。逃がした魚は大きい―と言う訳ではない。


「まさか、彼女は我々に復讐をする為にサバイバーを立ち上げた?」


 秋元の衝撃的な表情を見て、取り調べ担当の人物は『知っている事を話してもらおうか』と追い打ちをかける。


『そして、私はイリーガルこと秋元が薦めようとしている禁断の計画を知ったのです。超有名アイドルの劇場を日本全国へ展開し、2020年までに超有名アイドル大国としてコンテンツ流通の神として降臨する。それが、日本―』


 途中を言おうとしていた場面でノイズが入り、次第にガレスの画像は別の画像へと変化する。音声が完全に消えたタイミングで、黒豹にも似たようなマスクをした黒い背広の男性が映し出された。


 この人物は椅子にも座らずに立った状態、周囲の場所はギャラリーにも見覚えがある場所―お台場。


 しかも、テレビ局のスタジオのような場所にも感じられるが、正確な場所は不明。サバイバー運営も映像が変わったタイミングで場所の割り出しを行ったが、お台場までしか追跡出来ていない。


『彼女の言う事に騙されてはいけません……超有名アイドルが今までも日本経済に多大な影響を与えたのは、ご存知でしょう』


『我々は超有名アイドル優遇が日本経済を救うと訴え―それを実現してきました。それは2020年も同じ事。ただし、秋元が掲げるようなやり方はクールではない。あれは炎上ビジネス+タダ乗り便乗宣伝が生み出した―負の財産と言っても過言ではない物』


『超有名アイドルは我々―サイ―だけで十分なのです。総理大臣も超有名アイドル―クールジャパン戦略を―認めています。だからこそ―我々の手でコンテンツ流通を守るのです―』


 映像は黒豹の人物が立っているだけ、口が動くような演出もない。音声は合成とも言えるような物で、所々が下手なつなぎ方であり、素人による合成を思わせる。


 しかし、黒豹の人物の声を聞いた周囲の人々は、その声を聞いて希望を持ったような表情をしている。


「あのグループは解散していなかった!」


「AI事件で消滅に追い込まれたと思っていたのに、復活したのか」


「彼らがいれば、サマーカーニバルはいらない! 今こそ、彼らの復活を祝おう!」


 様々な声が聞こえるが、声を上げるのは一部の女性だけのように思える。それもネット上でブラックファンと例えられる勢力、あるいは【フジョシ】と特定されるような人物ばかりなのも気になるが―。

 

「図られた。全ては第3勢力に―筒抜けだったのか」


 途中で会見が打ち切りとなったガレスは思わず悔しがる。机があったら、思いっきり叩き壊すような勢いで拳を振り上げそうになる位に。


「炎上ビジネスを展開している勢力が潰しにかかったのは容易に想像できるが、一体誰が何のために―」


 ガレスはどの勢力が潰しにかかっていたのかが想像出来ないでいた。ここまで混乱させておいて、彼らは何を企んでいるのか。


 同日午後3時10分、日暮里駅を出た電車は秋葉原へと向かっている最中だった。混雑の具合は帰宅ラッシュではないので大きくはないが、それなりに乗客は乗っている気配でもある。


「敵は国会か、あるいはそれを隠れ蓑にしている勢力か―」


 電車で移動中なのは、私服姿の中村提督。カバンを持って何処かへと急いでいるようでもあった。しかし、それを阻止するかのように電車は停止したのである。


『大変申し訳ありませんが、線路に不審者が侵入してきたため、電車はこの場で緊急停止をさせていただきます』


 車掌のアナウンスを聞き、混乱する乗客、中にはつぶやきサイトで実況する者、写真を投稿して拡散する者もいる。おそらく、この電車が遅れた事を周囲に伝えてネット炎上を図ろうと言う勢力だろうか。


「あれは―?」


 中村提督が電車の窓から見た物、それはコンテンツガーディアンの警備兵とARガジェットロボだったのである。

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