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パルクール・サバイバー  作者: 桜崎あかり
第2部

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第20話:ランカー王へのカウントダウン-ラウンド3-

>更新履歴

2015年5月10日午後11時33分付:一部、行間調整。本編内容に変更はありません。


バージョンとしては1.5扱いでお願いします。

 5月6日午前10時、草加市にある大手のアミューズメントセンターへ姿を見せたのは、私服姿の上条静菜だった。ここにはARゲームも一部が置かれているが、そちらよりも音楽ゲーム等の人気が高い。


「ここでは特に何か動きがある訳でもないか―」


 上条は目的の音楽ゲーム筺体へ向かおうとしたのだが、その途中でARゲーム用のセンターモニターがあったので、そこで足を止める。


【――電撃ロケテスト開催決定。日程は5月7日~5月28日まで】


 スクロール文字が途中の為、何の作品かは不明だがロケテストが行われるらしい。気になったので同じニュースが流れないか確認しようと考えるが、次のニュースは全く別の物だった。


「ロケテストと言うと機種が気になる所だけど」


 色々と考えるのだが、それよりも優先すべき事はある。それはランカー王が誰になるのか―。


 同日午前10時30分、オレンジ色のランニングガジェットに乗る花江提督は、レーダーに反応があったエリアへと向かう事になった。


 その場所は南千住であり、あの時のレース中に襲撃があった場所に近い。花江提督は気になる事もあったのだが、まずはマップを頼りに該当エリアへ向かう。


 スピードはランニングガジェットとしては異例の時速30キロ。ランニングガジェットがレース中以外の車道を走る事は禁止されていないが、輸送や緊急の手段以外では運用されない。


「―それは、どういう事だ?」


 移動中に通信が入り、先ほど戦闘を行ったコンテンツガーディアンが偽者だと判明する。どの勢力かは調査中であるが、コンテンツガーディアンの本物が持っているはずのアレを持っていなかったのが決定的となったらしい。


『こちらでも詳細は調査中だが、先ほどの連中は便乗勢力なのは間違いない。ランカー王を前に何か大きな事件が起きなければいいが―』


 通信の主は南雲提督である。彼は教習所メインの提督なのだが、今回は人員不足の為に召集されたのだ。


 花江提督が該当エリアへ向かっている頃、タブレット端末を収納したコンテナをホバーボードに乗せ、蒼空かなでが別の場所へと移動を始めていた。


「コンテナの提供だけでいいのか? 荷物を持って行く事も不可能ではないのだが―」


 途中で立ち寄った小菅付近のアンテナショップの男性店員は心配をしているが、タブレット端末の中身を知られる訳にはいかないので、ARガジェット収納用のコンテナをレンタルする。


「これは、どうしても他人が触るべき物とは思えないので…」


 蒼空の方でも思う節があるのか不明だが、このタブレットだけは本部へ持って行くべきではないとも考えた。


 更に同時刻、組織としては壊滅的なダメージを受ける事になったチート勢力、その残党は秋葉原でコンテンツガーディアンと交戦していたのである。目的は本部襲撃だが、状況は圧倒的に不利となっていた。


「ナイトメアは行方不明となったが、我々にはノブナガ様が残っている! まだ、負けた訳ではない!」


 超有名アイドルやBL勢に属せず、彼らは単独でコンテンツ業界を変える事の出来る力がある―と思いこんでいるようだ。


 彼らの使用するARガジェットはコンテンツガーディアンを退ける程の能力はあるのだが、その一方で諸刃の剣とも言うべき仕様も存在する。


「違うな。お前達の負けだ―」


 ある人物が何かのスイッチを入れると、周囲に存在したARガジェットが全て機能停止したのである。どうやら、彼が使用したのは後半に専用ジャミングらしい。


「貴様は―提督だな!」


 ARガジェットを切り離し、何とかコクピットから脱出した戦闘員が見た物、それはパルクール・サバイバー運営の着ている白い提督服である。


 しかし、運営が使用している物とは細部が異なり、右腕にはスレイプニールという神話に出てくる獣が描かれている。それを見た別の人物は、サバイバー運営とは違うある人物を思い出した。


「阿賀野菜月――だと言うのか?」


 その問いに対し、この提督はこう答えた。『阿賀野菜月ではない』と。


 その後、チート勢力の残党は完全に力を失い、完全消滅する事になる。ノブナガは自分達の目の前には姿を見せる事はなかった。彼らは、どうやら見捨てられたらしい。


「結局、彼らもイナゴのように集まるだけの存在だったようだ―」


 この状況をスマートフォンで確認していたのは、元ナイトメアことヒデヨシである。彼は背広姿で別の場所へ向かっており、その姿はナイトメアだった面影は感じられない。


「大義名分等を持たず、単純に目立ちたいだけでマスコミやメディアの前に姿を見せる事、それは自らの破滅を意味する」


 過去の超有名アイドル絡みの事件、某漫画の脅迫事件、デスゲームを正当化しようとした数多くのネット炎上、AI事件、グッズの転売事件―。


 これらに共通するのは、マスコミやメディアを利用して自分が目立ちたいと主張するだけの人間が起こした、重大な犯罪行為でもあった。


「我々が否定するのはデスゲームを世界規模に広げ、地球滅亡の手助けをする事。デスゲームを正当化しようとするような政治家は―」


 ヒデヨシには思う所があった。ARガジェットは軍事利用や類似した案件でもあるデスゲームに利用される事を嫌っている。


 しかし、海外ではARガジェットではないが軍事ロボットの実用化も視野に、ARガジェットの技術を手に入れようとしている国もあるらしい。


 何としてもARガジェットの軍事転用は避けなくてはならない。戦争の時代は20世紀に終わりを迎えたはず…。


 同日午前10時35分、花江提督が到着した場所、それは南千住にあるパルクール・サバイバーの練習コースだった。一体、このコースで反応を示した物とは何なのか。


『待ちくたびれたよ―』


 目の前に歩いて姿を見せた人物、彼の装着しているガジェットは軽装よりも若干装備を強化した、現在開発中の試作ガジェットである。しかも、バイザーを装備している関係もあって、素顔を見る事は出来ない。


 ガジェットの形状は刃の様なシャープな物であり、複数のハードポイントに各種ガジェットを搭載可能、更にはパルクール・サバイバー以外のガジェットにも対応予定という―現状のランニングガジェットとは異質な存在でもあった。


 その関係もあって、背中にはARシューティングで使用されるレールガン等で武装している。パルクール・サバイバー専用と言う訳ではなく、他のARゲームでも転用出来る仕様なのかもしれない。


「試作型ガジェットを持ちだすとは―」


 花江提督も試作型の話自体は聞いた事があるが、ネット上の噂とばかり思っていた。それだけ、試作型という単語だけが独り歩きしていた証拠だろう。


 そして、花江提督がハンドガンで攻撃を仕掛けようと思った矢先、先に相手のガジェットがレールガンを構えて速射、弾丸はガジェットの右腕に直撃、吹き飛ばされはしなかったがしばらくは動かせない。


 花江提督は、どう考えても違法ガジェットクラスの機動力を発揮する目の前にいる存在を否定したかった。


【ターゲットロック】


 バイザーの表示を見てから回避するのは不可能に近い―と思われたが、それでも頭部の一部、右腕アーマーの一部を吹き飛ばされても直撃は回避する。


 これに関しては、花江提督の反応速度が尋常ではないという事を示す物だ。そして、相手の方も若干理解したかのように両腰にマウントされたビームチャクラムを展開、それを思いっきり花江提督の方に向けて投げてきたのだ。


『貴様は阿賀野菜月、それ以上の危険思想を持っている。一体、お前は何を求めている?』


 ノイズ交じりの声、男性だろうか。花江提督は、このガジェットを装着した人物に見覚えがない。それでも、この人物は何とかしなくてはいけない。それは直感で分かった。


「僕が求める物、それは誰にも理解される事はない。生命を軽視するようなデスゲームの存在は放置できない」


『デスゲーム? 小説サイトで見かけるようなVRMMOか?』


「VRMMOのような単純な物で片づけられない。軍事産業、生命を食い物にしようと考えるような政治家――」


『まさか、お前は戦争の根絶でも行おうと言うのか? それこそ、漫画やアニメの世界にすぎない! それを現実に出来ると本気で思っているのか!』


 謎のガジェットの人物は、花江提督の言う事に対して本気で否定をする。軍事産業の否定、更には戦争の根絶―。


「これは本気だ。人の命は、誰かが勝手に価値を決めてよい物ではない…」


 花江提督は泣いているようにも見える。全てを語る前に、彼は何かのスイッチを作動させ、その力で瞬時にダメージを修復させた。


「戦争の時代は20世紀で終わりにするべきだ。そして、21世紀は平和の可能性を―別の角度から試す」


 謎のガジェット使いが感じた花江提督の思想、それは阿賀野以上に常人が理解出来るクラスの物ではなかった。


《コンテンツ流通から、世界平和の可能性を見つける。コンテンツ流通には光と闇が存在する。片方だけでは成立しないのは百も承知だ。ネット炎上のような事例も否定しない》


 これはアカシックレコードにも書かれている一文。ARガジェットと言うコンテンツ、それは下手をすれば戦争にも流用できる可能性を持った力でもある事を意味している。


「アカシックレコードが示す可能性、その力で争いのない世界を作り出す! そして、超有名アイドルでは悲劇の連鎖を繰り返すだけだ!」


 花江提督の訴え、それは謎のガジェット使いにとっても理解不能だった。これが分かる人物は、おそらくは阿賀野菜月だけなのかもしれない。

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