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パルクール・サバイバー  作者: 桜崎あかり
第2部

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第20話:ランカー王へのカウントダウン-ラウンド1-

>更新履歴

2015年5月10日午後11時15分付:一部、行間調整。本編内容に変更はありません。


バージョンとしては1.5扱いでお願いします。

 5月6日午前9時、この日は快晴という天気なのだが、一部の練習コースやサブサーキット、講習用コース以外はメンテナンスと言う事でレースは出来ない状態になっていた。


「メンテナンス自体は早朝に定期メンテナンスを行っているが、ここまでの規模は初のケースだな」


「もうすぐランカー王が始まる。それまでに万全の態勢を整えないといけない」


「その為のメンテナンスと言う事か」


「大変なのはランカー王決定戦からになるだろう」


 コースを整備している特殊車両を見ていたのは、背広姿の男性新聞記者が2人。何かのメモをスマートフォンへ書いているようにも見える。


「整備するのは道路だけらしい。それ以外の場所は営業時間等の関係で、閉店時間や開店前に行うそうだ」


「それは大変だな。コンビニだと24時間営業だから、早朝営業中に行うという話だが」


「意外にもバイト募集は集まるらしい。時給5000円で2時間限定とか、時間設定が多い物ばかりでも定員オーバーもあるようだ」


「定員オーバー? それはすごいが、どんな仕事をするのか」


 その仕事内容を調査する為の取材だったのだが、残念ながらアスファルト整備位しか取材が認められる物はなかった。他の仕事はパルクール・サバイバーのシステム的な仕様で教えられないと言う。


「時給5000円でも、守秘義務ありだったら別の仕事をするような物だが―」


「条件としては年齢制限があるようだ。パルクール・サバイバーに年齢制限は存在しないが、バイトの方は18歳以上とされている。時間帯の関係もあるかもしれないだろう」


「どんな仕事か分からないのに、18歳以上の制限が付くのか。違法の仕事をしているとも感じられそうだな」


「求人広告には【システムメンテナンス】と【ガジェットメンテナンス】の2種類がある。システムはサバイバーのシステムだろう」


 2人の会話は続く。彼らの取材も続くのだが、それとは別に色々な場所で動きはあった。


 同日午前9時30分、薄い黒に近い提督服を着ている花江提督はサバイバー運営ビルの前にいた。彼の目的はガレスに会う事なのだが、受付で話をした所、普通に会わせてくれるとの事らしい。


「提督室ではなく、ここに呼ばれたという事は―」


 彼のいる扉の前には資料室と書かれている。そして、彼は資料室の扉を叩く。特にトラップが仕掛けられている事はなく、ドアも鍵が閉まっている様子はない。


 その後に扉を開くと、そこには無数の稼働中サーバーが並んでいる光景が広がっていた。サーバーの数は100以上、冷房完備、サーバーの電源は全て太陽光発電を利用している為、電気代は事実上の0円である。


 サーバーの配線が見当たらないように見えるのは、特殊なLANサーバーを使用している為らしい。このサーバーは完全に無線で情報のやり取りをする事が可能な夢のサーバーと言える。ただし、これを実用化しようと言うのであれば電波法等の壁が立ちふさがるだろう。


「松岡提督に続き、お前も再び提督を名乗るのか―」


 白銀の提督服を着たガレス提督は、様々な情報を見極めている最中だった。しかし、それでも花江提督がわざわざ出向いてくれたという事もあって、この部屋へ通したという事らしい。


「提督は名乗る。しかし、そちらへは戻らない」


「松岡提督と同じだな。彼も、こちらへは戻らないとレース後に伝言があった。サバイバーには色々と考える部分があり、改善する必要性も―」


 ガレスが何かを言おうとしていたのだが、花江提督が呼ばれた理由は別の一件である。その為、茶番は不要とばかりに話を切り出した。


「僕が呼ばれた理由、それは阿賀野菜月の事でしょう。彼女の未来予知がアカシックレコードと同じだと言う事を確かめたい……と」


「確かに阿賀野の未来予知には色々と不自然と言うか疑問を抱く個所がある。パルクールが東京で行われる事になったスポーツの国際イベント辺りで正式種目にするという動きは―」


「ボウリングも名乗り出ているようですが、他にも複数の種目が競技採用の為に動いている。金メダルを狙うのであれば格闘ゲームや音楽ゲームを対象種目にするべきだ」


「それらの動きをけん制するパルクールの正式種目化。そこには超有名アイドルを含めた勢力が暗躍しているという」


 花江提督はガレスを試すような発言をするのだが、向こうも織り込み済らしい。秋元が拘束されて数日が経過するのだが、情報が解禁される事はない。それが一番の不安材料とも言える。


 それからしばらくして沈黙が続く。10秒程の沈黙後、先に話を始めたのは花江提督の方だった。


「確かに秋元は逮捕され、さまざまな事件に関しても終止符が打たれるでしょう。しかし、それで全てが終わったと思っていると予想外の反撃を受ける事になる」


 そして、懐からスマートフォンを取り出し一人の人物の写真を見せた。写真の人物は男性で、秋元とは違うタイプのアイドルプロデューサーなのは見た目でも分かる。


「その人物ならば、既に調査済みだ。超有名アイドル商法の事件では関係があっても、パルクール・サバイバーとは無縁である事は独自調査でも判明している」


 ガレスの方は彼が超有名アイドル商法に関する過去の事件に関係した事から、サバイバーでも同じような事件を起こす可能性があると考えて数ヶ月前からマークしていたのだ。


「調査はサバイバーのサービス開始前から行っているが、残念ながら大きな情報は出なかった。超有名アイドル商法に関する不正疑惑は浮上したが、コンテンツガーディアンが調査をしても出てこなかった位だ」


 そして、彼に関しては完全にお手上げ状態だとガレスは考えている。それ程に手ごわい相手と言われると賛否両論があるだろう。ネット上でも影の黒幕を彼とする説が浮上している位だ。


「秋元の失策はソロモンを完全放置に近い扱いにしたという事だ。奴を警戒していれば、その結末は少しでも変化しただろう」


 花江提督の話を聞き、ガレスは笑う。花江提督は何がおかしいと感じたが、特に不機嫌になる事はない。


「そうだな。秋元を含めてあの事務所が壊滅したのは、私を正体に関して調べずに違法ガジェット工場等を教えた事だ」


 ガレスの発言を聞き、花江提督は驚いた。彼はソロモンの正体がガレスと言う事は知らないのだ。実際、正体を知っているのは大塚提督と中村提督を含めたごく少数。松岡提督はもちろんだが、阿賀野菜月も正体に気付いていないだろう。


「ソロモンの正体はガレス提督だったという事か」


「そう言う事だ。既に違法ガジェット工場はコンテンツガーディアンが制圧済。違法ガジェットの解析も、時間はかかるがランカー王までには決着するだろう」


「そこまでに決着できればいいが―」


「難しい事はないだろう。ARガジェットはコンテンツガーディアンも使用している物だ。向こうにも解析技術がない訳ではない」


 その後も2人の話は続き、9時50分位までは資料室で話を続けていたと言う。


 同日午前9時50分、あるニュースが報道された事で事態は急展開を迎えた。


『―小菅付近の工場で何者かに襲撃される事件が起きました。現場を呼んでみましょう』


 喫茶店でスマートフォンのテレビモードで番組を見ていたのは、私服姿の阿賀野菜月だった。彼女は別の用事で竹ノ塚へ足を運び、そこで何かを調べる予定だった。


『こちら現場です。現在はパルクール・ガーディアンによる厳重警備の為、半径300メートルへの立ち入りは制限されています―』


 現場の男性記者の話を聞き、阿賀野は耳を疑った。警備が入るのは分かるのだが、それもパルクール・ガーディアンと報道しているのだ。一体、どういう事なのか?


 同刻、小菅の立ち入り制限区域ギリギリの道路付近、そこには私服で何処かへ向かおうとしていた蒼空かなでの姿があった。


 彼はこの先にあるアンテナショップへ向かおうと考えていたのだが、通行止めと言う事で引き返そうとも思っている。しかし、この先に何があるのかにも興味があるのだが、侵入できるような気配は全くない。


 道路の通行止め付近には警備専用のランニングガジェットが配置されており、それを見た一般人は野次馬根性を見せるも即座に引き返すという現状だ。


「あなたは確か―」


 男性警備兵が蒼空の顔を見ると、無言でライセンスの提示を指示される。一体、これはどういう事なのか? とりあえず、言う通りにガジェットに組み込まれているライセンスを警備員に提示する。


【この先はテレビの取材をシャットアウトするように指示がされています。あなたになら、あの先に何があるのか確かめる権利はあります】


 しばらくすると、スマートフォンの着信音が鳴ったので確かめる。画面にはショートメッセージが投稿されている事を示すメッセージが表示されていた。その中身を見る限りでは、マスコミに伝えるべきでないブラックボックスが、この先にあるらしい。


「この先にある物、もしかして―」


 思う所はあるのだが、蒼空は警備兵からホバーボードを借りて移動する事になった。目指す場所は、厳重警戒エリアの中心部である。


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