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パルクール・サバイバー  作者: 桜崎あかり
第2部

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25/57

第19話:限界なんて打ち破れ!-ラウンド5-

>午前11時14分付

誤植修正:隼字で→瞬時で


>更新履歴

2015年5月10日午後11時2分付:一部、行間調整。本編内容に変更はありません。


バージョンとしては1.5扱いでお願いします。

 3周目直線、最初のカーブでドリフトにも似たようなアクションでスピードを保持したのは時雨だった。松岡提督や蒼空かなでは同様のアクションを行う気配がなく、他の選手も危険回避という意味で普通に曲がる。


「あの時の借りは返させてもらうよ―松岡提督」


 時雨のバックパックが変形し、特殊なブースターユニットへと変化した。ブースターと言うよりは、ブースト専用モードと言うべきか。


「こちらも以前のガジェットとは異なる! ガジェットの進化は日進月歩、それこそ―」


 松岡提督も対抗してバーニアを展開するのだが、それよりも時雨のブースト発動が数秒速かった。それによって、トップは時雨に変化する。


「悪いけど、こっちも負けられない理由がある」


 時雨のブーストは時速換算で50キロ、松岡提督のバーニア展開でも45キロが限界である。それに加え、基本時速は30キロが限界とされているのだが、これはガジェット的な意味ではなく人間が速度に耐えられない事を意味していた。


 松岡提督と時雨のトップ争いが続いている頃、3位をキープしているのは蒼空かなでだった。アカシックレコードの起動によって、激しい閃光が包み込んだ。その後には損傷していたはずのガジェットも瞬間的に修復、常識では考えられない事が起こっているに違いない。


 しかし、発動して直後には驚いていた様子だったが、途中からは状況を把握し始め、莫大なデータから必要な物をダウンロードしているのが現状である。


「花江の言っていた事、阿賀野のネット上における噂、AI事件、それを結び付けるのは間違いなくアカシックレコード―」


 考えていても自分に有利な状況になるとは思えない。今の状況を冷静に把握し、そこから自分が出来る限りの行動を取る事、それがパルクール・サバイバーでの生き残る手段でもある。


「今はレースを勝ち抜く事を考える―!?」


 直線エリアの右手側を確認した蒼空は、ショートカットでビルとビルを飛び越える衣笠の姿を目撃する。彼女のアーマーはスタンダードだったはずだが、いつの間にかアーマーは途中でパージしたような様子にも見えた。


『衣笠選手、何とランニングガジェットをキャストオフし、軽装ガジェットでビルとビルの間を飛び越えていきます。まるで、ハードル競技の選手を思わせます!』


 太田の実況を聞き、ようやく蒼空もどのような状況か把握した。どうやら、衣笠は途中で一部ガジェットをキャストオフしたらしい。


「その手があるのか―と言いたい所だが、果たして、その選択は正しい物かな?」


 蒼空の後続を走るのは、夜戦を連想するような黒ベースのカラーリングで構成されたランニングガジェットである。彼は、今回のレースに勝利すればランカー王に出られるという位置にまで到達していた。


 しかし、他のレースでは夕立や阿賀野菜月を初めとした強豪ランカーが参加している。レースの選手エントリー状況を確認し、それから彼はレースエントリーを行った。簡単に言えば後出しジャンケンと同じである。


「どういう事なの? ジャンプ力が落ちている?」


 衣笠が最後のビルを飛び越えようとした時、その違和感に気付いた。エネルギー切れと言う訳ではないが、思った以上のパワーが出なくなっていたのである。


 その原因はガジェットのキャストオフ、それがエネルギーの供給等も絶ってしまう諸刃の剣だと言う事に気付いた時には、もう手遅れだった。


「ガジェット自体は安全性を高める外部装甲という意味もあるが、それと同時に太陽光パネルに代表される発電の効果もある―タイムロスは避けられないだろう」


 結局、衣笠はビルへの飛び移りを断念し、非常階段から1階へと降りるという手段に出た。軽装ガジェットの場合、こうした小回りも利くのは利点の一つだが、高出力を必要とするアクションが出来ない事を彼女は思い知った。


 衣笠がビルを降りてコースへ復帰する頃には最下位となっていた。しかし、それでも彼女が棄権をする事はない。パルクール・サバイバーはガジェットが完全停止するまではレースに参加する事が認められているからだ。


「だからと言って、こちらが手を抜く事は一切しない。我々の悲願の為に―」


 次のカーブを曲がろうとした所、突如として黒いガジェットが機能を停止した。ウイルスの混入、システムエラー等は特に発生した気配はなく、本当の意味でも停止理由は不明である。この状況に陥った男性は悔しがり、思わずガジェットを叩く。


「何故だ! 超有名アイドルの利益等で動くような連中と我々は違うはずなのに……ここでリタイヤになる訳にはいかない!」


 結局、彼のガジェットは再起動することなく、衣笠が通過した地点でリタイヤと言う事になった。これで残るは7人となる。


 その後、この選手は別の大手芸能事務所に所属したアイドルだと言う事が判明したのは、ランカー王が始まる直前の出来事だ。ここまで判明しなかった理由としては、テレビのドキュメント番組として放送する予定があったからである。


 しかも、この番組はサプライズ的な放送にする為に一部以外には知らされていないという事だった。視聴者を驚かす的な意味合いもあり、現状のアイドルが超有名アイドル商法に例えられるグループばかりではない事を証明する為の番組でもあった。


 しかし、パルクール・サバイバーで超有名アイドルを含めた芸能事務所絡みの芸能人参加者を認めていない。その項目を見落としていた芸能事務所はペナルティを受ける事になる。


 別の意味でも、彼らはガイドラインをチェックしなかった事でファンに失望を与え、グループは解散に追い込まれるような状態を生み出してしまい、これをきっかけに超有名アイドルに対する信用失墜を加速させてしまった。


 南千住近辺にあるゲームセンター、そこに設置されたセンターモニターをチェックしていた阿賀野菜月は考えていた。あの7人ならばランカー王に出ても問題はないのではないか、と。


 このセンターモニターはパルクール・サバイバー専用と言う訳ではなく、他のARゲームの情報も閲覧する事が出来るのだが、現状では阿賀野以外では数人のギャラリーが足を止めている程度だ。


 モニターに表示されている映像はレースの中継映像だが、その下には中継されていないレースの結果や昇格情報、連勝情報、新記録情報が流れている。


「今月のランカー王は激戦区か。ここで勝利すれば、間違いなくスポットライトを浴びる事になるだろうな」


 阿賀野はガジェット用のインナーではなく、カジュアルな私服に着替えており、しばらくはレース観戦をしようと言う気配である。


 レースは中盤コースに突入する。トップは時雨、松岡提督だが、3位以下が大幅に引き離されており、蒼空はその位置にいる。メートル換算で100メートル以上だ。


「普通の陸上競技であれば、大差とも言えるが―」


 観客の一人がレースを観戦して、ある疑問を持った。駅伝やマラソンで100メートルと言うのは大差以上に該当する。しかし、パルクール・サバイバーでは100メートルでも大差とは表現しない。


「ランニングガジェットが出せる最大スピードを考えれば、100メートルでも僅差にすぎない。大差という言葉を使うとすれば、それはトラック競技で半周位の差が出ている時だけ」


 観客の隣に姿を見せたのは、カジュアルとは無縁なミリタリーチックの服を着た黒髪ショートヘアの男性だった。彼は観客よりも身長がある訳ではないが、観客と比べると低く見える。165~170の間だろうか。


「あれで大差ではない? それはさすがに冗談だろう」


 別の男性が彼の発言を否定するわけではないが、疑問に思う。あの距離をあっさりと縮める事が可能だと、彼は断言しているのだ。周囲の観客も別の男性の意見には賛成している。


 その発言を受けた訳ではないが、突如としてイエローに近いインナースーツを着た女性が姿を見せる。彼女の顔を見て、驚く観客もいるのだが―ミリタリー服の男性は驚きどころか、表情を変える事もない。


「あれで大差と言うのであれば―最大時速50キロ何て言う物は必要ない」


 突如として彼の隣に現れたのは上条だった。レースの方はリタイヤとなった為、早めに切り上げたとも言えるかもしれない。


「上条静菜―AI事件に関係する重要参考人か」


 彼の冷静な発言を聞き、上条は即座にARウェポンのレーザーブレードを取り出そうとした。しかし、ここはARゲーム専用フィールドではない事もあって、ブレードの展開はしない。


「スレイプニルをベースにしたエムブレム、あなたが花江提督ね」


 上着のエムブレムに見覚えがあった上条は提督の名前を口にした。そして、花江提督と呼ばれた人物は右腕のARガジェットを使って遠隔操作を行おうとしていたが、上条と同じような理由で止める。


 ここで余計なトラブルを起こしてレースを中止にした場合、確実に何か別の疑いをかけられるからだ。その疑いとは、ガレスが今回のレースを特別なものにした理由でもある。


「僕も元々は松岡提督と同じ途中離脱組。君に関係するような情報を持ちあわせてはいない」


 これ以上の発言は向こうに何かを悟られると判断した花江提督は、この場を去ろうとするのだが―。


 次の瞬間、謎の自警団と思わしきパワードスーツを装着したピンクのガジェット集団が姿を見せる。既に他の選手は走った後なので選手妨害とはならないが、狙いは選手ではなく上条と言う風にも感じ取れる。


「こちらにジョーカーを切らせる気―みたいね」


 指をパチンと鳴らす上条、その直後には瞬時でガジェット集団を蹴散らすレーヴァテインの姿があった。どうやら、ステルス迷彩を起動して姿を消していたらしい。これを見た観客は、急いで安全な場所へ退避しようと非難を考える。


「安心しなさい。パルクール・サバイバーが何故に安全を求め続けたのか―それが、この答えよ!」


 上条の一言、その直後にレーヴァテインはセキュリティを解除したかのように重火器を連射し始める。ガジェット集団はハチの巣、次々と歩兵集団も倒れていくのだが―何かがおかしい。


 倒れる歩兵には血が流れるような気配は全くなく、ハチの巣になったはずのガジェットも数秒後には機能停止するが、機能停止後は銃弾の跡は残っていなかった。これは、ARゲームの特徴である『ゲーム終了後は、争いごとを周囲に持ち込まない』というお約束による物。


「一時期に流行したMMORPGのデスゲーム物―ゲームオーバーが死に直結する世界。それを完全否定してクリーン化した物がARゲーム、それに代理戦争という概念を持ちこませないようなルール作りを模索したのが……パルクール・サバイバーよ」


 上条のネタばらしとも言えるような発言だが、それを周囲が受け入れるとは到底思っていない。ARゲーム自体が怪我人を出さないようにする事と犯罪への悪用を防止する事に重点を置いたのに対し、パルクール・サバイバーは代理戦争すら認めないというシステムを構築しようとしていた。


 このような話を『作り話』や『Web小説』という例えで終わらせるギャラリーは数知れない。しかし、それがアカシックレコードを知っている人物の場合は話が違ってくる。


「しかし、運営はこの構築に一度失敗した。それは、運営責任者のガレスの正体が―」


 その話を聞いた時、花江提督は顔には出さなかったが信じられないような衝撃を受けた。これが本当の話であれば、元々のパルクール・サバイバーが出来た理由は『超有名アイドルへの復讐』と言う事になる。


 気が付くとレースは終盤戦、残るはカーブ1つと直線エリアのみ。この段階で松岡提督と時雨の一騎打ちと言う状態だが、その背後にいるはずの蒼空の姿はない。逆に、別の選手が3位に浮上していた。


「蒼空が途中でコースを変更したかのように、移動したのが気になるが」


 松岡提督は途中まで蒼空が追いかけていたのを把握している。しかし、ラストカーブに入る前の直線段階で姿は消えている。レーダーには表示されているのだが、所在不明という状況に困惑していた。


「この段階でショートカットは自爆行為―」


 一方の時雨はショートカットを行おうと考えているのを見破っていた。そのうえで、彼の行動が自爆行為に等しいとも結論を出している。


 午前11時11分、蒼空かなでは最後のチャンスに賭けていた。2周目の途中で気付いたショートカット、それを試してみる価値はあると。


「この直線距離を上手く進む事が出来れば、出口はゴール付近の直線コースに出るはず―」


 バイザーのナビゲーションでも単純な直線距離であれば、ゴール付近に出ると表示されている。これが直線であればだが。


 そして、予想通りだが目の前には立体駐車場が見えてきた。青葉がショートカットで使った駐車場は入り口が存在したのだが、こちらは入り口が見当たらない。壁と言う訳ではなく、視線には車が見えるので、ある程度の窓とも言えるスペースは存在する。


「このパターンは以前にもあったような」


 蒼空が思い出した物、それは阿賀野専用カスタマイズを施されたガジェットでビルの屋上まで飛び越えた事である。そして、それを思い出すかのように両腕に搭載されたアンカーを展開しようとしたのだが―。


【その装備は搭載されていません】


 エラーメッセージがバイザーに表示された。どうやら、アンカーの類は今回のガジェットにはないらしい。だからと言って飛行機能はレースでは反則と判定される為に使えない。


「そう言えば、あの機能は使えるはず」


 飛べないのであれば、ホバリングは使える。即興で蒼空はホバリングの動作を把握し、周囲に人影がない事を確認。一か八か、加速なしのハイジャンプを試してみる。


『これは物凄い事になりました。ショートカットルートを進んでいる蒼空選手、何とホバリングを応用した連続ジャンプを披露しています。まるで、空中に透明のブロックがあるかのようなステップを見せるその姿は、まるでアクションゲームの主人公を思わせます!』


 実況の太田も別の移動カメラが捉えた蒼空の場面を目撃し、思わず実況をせずにはいられなかった。これには松岡提督と時雨も声に出来ない驚きをしている。


 午前11時12分、大幅なショートカットに成功した蒼空はホバリングで駐車場の屋上から急降下、ゴール地点が目の前に見えるエリアまで到達した。この地点で、左手の方角には松岡提督と時雨の姿が見えたのだ。つまり、ギリギリの時間だったのだ。


「どうやら、大幅ショートカットでも短縮できたのは数秒だったみたいだね」


 時雨は勝ち誇る。さすがにグッとポーズを決める余裕はないが、心の中では決めているのかもしれない。


「一瞬ヒヤリとしたが、まだ逆転のチャンスは残って―」


 松岡提督はラスト直線で勝負をかけ、ブーストを起動しようとしたのだが、肝心のブーストが作動しなかった。どうやら、ブーストの回数制限がかけられている事に気付かなかったようだ。


「ここまで来て……タイミングを見誤ったと言うのか。これが、無自覚の慢心と言う事か」


 思わずガジェットを叩きたくなった。しかし、下手に叩けばガジェットの機能停止を招く。そう考えた松岡提督は、ブーストなしで何とか蒼空を捉えようと走り続ける。


「ブーストに回数制限があるのはパルクール・サバイバーでも同じ事。それを無制限に認めれば、それは外部ツール並のチートにもなる―」


 冷静に分析していた時雨だが、こちらもブーストは既にストックなしと言う状況に変わりない。つまり、それをごまかす為の分析とも言える。


 午前11時13分、レースは予想外とも言える結末を迎えた。勝利したのは蒼空かなで。勝因はショートカットもあるが、それ以上に失敗を恐れずにホバリングに挑戦し、見事に成功させた事にあるだろう。


『1位は大逆転とも言えるショートカットを披露した、蒼空かなで選手です!』


 実況の声が響く中、松岡提督と時雨も完走を果たす。松岡提督は2位、時雨は3位と言う結果に終わったのだが、ランカー王という点では逆転のチャンスは残されている。


「蒼空かなで、あの運動センスは脅威となりますね」


 他の選手がゴールしている光景を見ながら、手にはたこ焼きによく似たスイーツを口にしているのはインナーの上にジャケットを着ている赤城だ。


「パルクール・サバイバーはパルクールとは違う。そこで何かを踏み間違え、挫折する者が多いのも…」


 一方の加賀は冷静だったのだが、赤城の持っているたこ焼きを見て「また、買い食い?」と言うような表情を浮かべる。


「これはチョコ焼き。たこ焼きの具がチョコレートになったスイーツよ。一つ食べる?」


 赤城が1つ差し出しているので、一口だけなら―と加賀はチョコ焼きを口にする。すると、加賀の表情が変化したのである。先ほどの深刻そうな顔はどこへ行ったのか。


「悪くないわね」


 チョコ以外にはクッキー等も入っており、ソースではなくチョコを混ぜたホイップクリームが塗られているのもポイントだろうか。


 かなでの勝利を確かめた後、別所で様子を見ていた上条はゲームセンターの方面へと姿を消し、松岡提督もエントリー可能な別レースを求めて移動を開始、時雨も松岡提督とは別の方角へ行ってしまった。


「さて、こちらも動きますか」


 瀬川を初めとした4人は全員がインナースーツに着替え、上野公園で行われるレースの方へと移動を始める。瀬川の方はライバル出現に喜んでいるようにも見えるが、他の3人は強敵出現に嫌そうな表情を浮かべる。


「蒼空かなで、彼以外にも脅威が現れない事を祈るばかりです」


 黒をベースとしたインナースーツを着ていた霧島は身体のラインがハッキリと分かる。しかし、その直後にガジェットを装着したので、その辺りを詳細に拝む事は出来ないようだ。周辺のギャラリーからはため息が漏れる。


「さて、これを阿賀野と秋月はどう見るのか?」


 瀬川はスマートフォンでランキングを確認し、その順位を見ながらつぶやいた。阿賀野は3位、秋月は2位であるのだが―。


 午前11時20分、北千住駅に置かれているセンターモニターでレースの結果を確認していたのは秋月彩だった。レース前と言う事もあり、インナースーツは着ておらず、ランニングをするような軽めの服を着ている。そして、スパッツ。


「蒼空が勝ったの―」


 秋月はレースの結果を確認し、そのまま駅のバス乗り場へと移動する。乗り場に到着していたバスは、パルクール・サバイバーのアンテナショップへの送迎バスの様な物。無料バスではないが利用者は比較的に多い為、50近い席は満席となっており、秋月はバスのつり革を掴む。


「ランカー王、そこならば更なる強豪が待っているかも」


 現状の秋月ならば、慢心をしなければランカー王は余裕だろう。そう言った書き込みがネット上で多かったが、そう言った発言には細かく言及しない事にしている。


 午前11時30分、本部でニュースを確認していたのは特別ルームで今までの中継をチェックしていた私服のガレス。彼女としてはレースの結果はご満悦だが、もう一方の方で不満があった。


「してやられた。芸能事務所と政治家が関係している証拠を、別の所に横取りされたみたいね」


 ガレスは拳を震わせながらニュースを見ている。結局、提督たちを向かわせたのだが間に合わなかったというべきなのだろうか。


『先ほど、○○芸能事務所に何者かが襲撃し、書類等が盗難されたとの情報が入りました』


 このニュースはノブナガを初めとしたメンバーにも伝わり、状況はますます悪化の一途をたどろうとしていた。


 午前11時50分、本部に帰還した中村提督、内山提督を初めとした提督勢はガレスの話を聞いて驚く。あくまで普通に驚くだけで、それ以外の反応は普通だった。


「先を越されただけで済めば、良かったが―」


 内山提督は、偶然撮影した画像のひとつをガレス達に見せる。そこに映っていたのは、何と花江提督の乗っているARガジェットらしきオレンジ色のロボット。


「松岡提督がいた段階で気付くべきだった。寄りによって、阿賀野菜月に先手を打たれるとは」


 中村提督は嫌な予感が的中したと考えている。それも、松岡提督がレースに出ていた段階で気づいていれば阻止はできなくても、彼らの目的の一端は見えたかもしれない、と。


「全ては、これからだ。アカシックレコードが危惧する未来を止める為にも」


 花江提督は再びオレンジ色のARガジェットに乗り込み、何処かへと向かう。既に阿賀野も向かっているという事だが…。

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