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パルクール・サバイバー  作者: 桜崎あかり
第2部

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第19話:限界なんて打ち破れ!-ラウンド3-

>更新履歴

2015年5月10日午後10時16分付:一部、行間調整。本編内容に変更はありません。


バージョンとしては1.5扱いでお願いします。

『これは大変な事になりました。先頭グループの一角が、まさかのシステムトラブルでリタイヤの模様……しばらくお待ちください』


 5月5日午前11時3分、2周目に突入しようとした矢先だった。先頭を走っていた選手が突如としてストップし、リタイヤに。これには周囲も騒然である。一体、彼のガジェットに何が起こったのか?


「レースは続行する。おそらく、これを仕掛けた犯人は超有名アイドル勢の仕業と見せかけようとしているはずだ」


 この状況を見て、レース続行を指示したのは総責任者のガレスである。一体、何故に続行を指示したのか? これには様々な憶測が提督の間にも広まる。


「何故、そうと言い切れる? あの証拠だけでは手を組んだと言うには弱いはずだが―」


 試合を観戦している中村提督は、上着を脱ぐことはなかった。その一方で、別の白い提督は上着を脱いでいるメンバーもいる。


「トラップと言う意味では、超有名アイドル勢に見せかける必要性のある事を踏まえると―?」


 ガレスは話の途中で何かに気付き、即座にスマートフォンである人物へと連絡をする。


「一体、何に気付いた?」


 中村提督も気になる所だが、今は別のターゲットも気になる為に部屋を出ていく。それとは別に白い提督が中村提督とすれ違ったが…。


「例の反応があるかどうか確かめて欲しい。それだけで構わない」


 ガレスは特に固有の単語で説明することなく、電話をかけた人物に一言伝えるだけで電話を切った。向こうも、それで把握しているらしい。


 先ほどの白い提督は書類を渡す為に来たらしい。そして、タブレット端末をガレスに渡して「書類が入っている」と言う事で、データのダウンロードを誘導する。


「わざわざ、ここまでやってくるとは。BLが日本経済を救うと言う世迷言を、まだ信じると言うのか?」


 白い提督の不審な動きに対し、ガレスは偽提督の正体を見破っていた。そして、正体を見破られた提督は服を脱ぎ捨てることなく入口から部屋を出ていく。


「中村提督、今の人物を取り押さえろ! もしかすると、真犯人の事を知っているかもしれない」


 しかし、ガレスの言葉を中村提督は聞き入れなかった。それでも、白い提督の追跡は行うようだ。


「それにしても、このタブレットを置いて行くとは―?」


 別の緑の提督服を着た男性がタブレット端末のデータを開くと、そこには極秘資料と書かれたファイルが複数発見された。ファイルの中身を閲覧しようとしたが、ファイルは自動的に消滅してしまった。


「やっぱり、そう言う事か」


 消滅したファイルを復元させる事は出来ないが、この人物が持ち歩いていたファイルは自分のタブレット端末へコピーしていた場合、他のデータも巻き添えで消える可能性があったのである。


【アカシックレコードの存在否定に関する考察】


 緑色の提督は気になるファイルを端末から発見、そのタイトルをガレスに見せる。そして、数秒の思考後に何かの結論に至った。


「これは、もしかすると―。レース関係及び警備班以外の提督は、草加市のサーバー施設へ向かえ! 今すぐでは向こうに気付かれる可能性があるが―」


 ガレスの指示で運営スタッフ、運営警備、レース担当以外の提督は草加市にあるというサーバー施設へと向かう事になる。しかし、ガレスは何故に草加市を指定出来たのか。


 午前11時5分、結局はレースの中止はせずに続行と言う事になり、他のメンバーは2周目の直線コースへ突入する。残りメンバーは11人、この中にもしかすると犯人がいるかもしれない―という考えが一部メンバーの心によぎる。


「まずは中止等を考えず、レースを完走する事を優先する」


 蒼空かなでは完走を優先するようだが、現状のレース中に損傷したガジェットで完走できるかは分からない。


 最後の直線に入る前のカーブ、そこで蒼空は判断ミスによってバーニア一部と左肩アーマーを損傷する。障害物への衝突ではなく、意図的なガジェット破壊狙いによる攻撃でもない。単純なスリップであった。


「あの時の判断ミスがガジェットの損傷を招いた。現状でも完走は可能だが、次に同じような損傷を受ければ―」


 ピットエリアでの修復と言う概念は、残念ながらパルクール・サバイバーには存在しない。特殊ルールで道路に置かれているアイテムを手に入れる事でガジェットの回復を行えるが、今回のレースは導入を見送っている。


 その為、今回のレースに限って言えばランカー王を目指すプレイヤーにとっては、ある意味でも練習コースとして使える構成になっているのだ。


 一方でレースの続行で動揺している選手は1名だけ存在した。それは、グレーをベースにした軽装ガジェットの選手である。戦闘機タイプなのはリタイヤした選手と同じだが、ブースターのシステムは別物を使っているらしい。


「あの連中は失敗したと言うのか。結局、BL勢や超有名アイドルと同様と言う事か」


 彼女の言う『あの連中』が誰なのかは不明だが、BL勢及び超有名アイドルと同類と考えているらしい。


 そして、バイザーに表示されているマップを拡大表示から縮小表示に変更し、そこから最短ルートで先頭グループを追跡する方法を考える。


 しかし、トラックを回るような正規ルートに対し、ショートカットは色々な意味でも難関だ。


 ビルを駆け登る、川を飛び越える、建造物の屋上ルートと言う難易度の高い物ばかり。飛行に関しては禁止の為、それ以外の手段でショートカットを行う必要があるのだが…。


「仕方がない。正規ルートを途中まで利用し、ビルを飛び乗るコースを使うか」


 彼女は過去にパルクールのアマチュアチームにいた事がある。秋月彩程ではないが、体力などにも自信がある方だ。その彼女が取ろうとしていたコース、それは―。


 2周目最初のカーブ、そこで彼女は右カーブではなく、500メートル弱の直線距離をそのまま進む。このコースは裏コースで設定されている物で、コースアウトの部類ではない。


『これはどういう事でしょう? 青葉選手、先頭グループがカーブしていく中、唯一の直線を走っております』


 この様子を見た実況の太田も驚いていた。彼女、青葉の取ったコースは裏コースであり、運営が設定した物。特にコースアウトのリタイヤは取られない。


「なんだと!? あいつ、無茶なコース取りを行う気なのか?」


 実況の声で状況を確認した松岡提督は、今からコース取りを変更する訳にも行かず、右カーブ後は直線コースを左寄りで走って様子を見る。その異変に気付いた先頭グループに関しては、特にコース取りを変える気配はない。


「軽装ガジェットを甘く見ないでよ!」


 直線距離後、青葉の目の前には右折看板で「この先右折」と書かれている。そのコース通りに行くと、予想通りだが直線距離にホームセンターの駐車場が見えた。駐車場の坂道を越えると、コースを示す看板には直進可能という文字が…。


 そして、青葉は直進通りに進み、短距離ジャンプを試みる。しかし、ジャンプの加速が足りないのか―彼女の手はこの先にあると思われるコースに手が届かない。


「私は秋月彩とは違う! あいつみたいに限界を決めたりしない!」


 青葉は意地でもコースを突破しようと考え、両肩のビームワイヤーを射出、アンカーをコース上にある特殊な障害物に固定、ワイヤーを戻しながらコースの突破……。


「そんな事って―?」


 アクシデントは、そこで起こった。青葉のビームワイヤーが突如として消滅したのである。ワイヤーの消滅が意味する物、それは命綱が切られたのと同義である。このまま3階建ての駐車場から転落してしまうのか。


『これは予想外の出来事です! 青葉選手のビームワイヤーが突然消滅、3階の駐車場からそのまま青葉選手が落下していきます。万事休すか!?』


 このままではレース中に怪我人という問題では済まされない。下手をすれば、パルクール・サバイバーも終わってしまう。その中で動きを見せた人物、それはオレンジ色の小型ロボットを思わせるランニングガジェットだった。選手と言う訳ではなく、通りすがりのようにも見える。


「大丈夫か?」


 この声を聞いた青葉は、まだ生きていると安心をする。しかし、レースの方はガジェットの起動停止によってリタイヤと言う事になった。


 一方のオレンジ色のガジェット使いも、本来であればランニングガジェットのレース外使用と言う事で運営から指摘が入る。


『あなたの行った行動、本来であればランニングガジェットの用途外使用でライセンス停止は免れない―しかし、今回は選手の命を救ったという事で特別に咎めはしないわ』


 遠藤提督はオレンジ色のガジェット使いに専用回線で連絡を入れる。


「ARガジェットの前身は人命救助を目的としていた。これが、本来の使用用途のはず―」


 オレンジ色のガジェットは、その一言を残して何処かへと姿を消した。


 一方で、アクシデントを全く気にせずに突き進むのは蒼空だった。ガジェットの方はバッテリーに問題はないが、下手に出力を上げれば止まる事は確実だろう。


「第2カーブまでは特に問題なく進めている―?」


 蒼空の目の前には先頭グループが見え始めている。しかし、それとは別に2つの反応が自分の背後に迫っている。片方はデータを見ると松岡提督のようだ。


「松岡提督と、もう一方は衣笠?」


 名前を聞いた事がない選手が、松岡提督と一緒に先頭グループを捉えようとしている現実に驚いていた。名前は衣笠、青葉と同じアマチュアの女性パルクールチーム出身でもある。


「パルクールとパルクール・サバイバーは違う。それを何とかして証明したい!」


 蒼空は他のARゲームでの知識がほとんど役に立たなかった現実を、パルクール・サバイバーで知った。それと同じ事はアスリートでも同様であり、それはパルクール経験者にも当てはまるはずと―。


「サバイバーの聖地は、守らなくてはいけない!」


 蒼空が無心で叫んだ言葉が、ランニングガジェットに反応し、突如として青い閃光を放った。この状態は教習所の講習でも聞いた事がある。


「ランニングガジェットには、特定のキーワードに反応するブラックボックスが存在します。ただし、そのキーワードは未だに判明しておらず、むやみにブラックボックスを発動する事も禁止されているのが現状です」


 確か、担当になった提督がこのような事を言っていたような気がする。ブラックボックスの存在自体はネット上でも言われており、それがアカシックレコードと言う説も浮上していた位だ。


【アカシックレコード、アクセス開始します】


 閃光を放つランニングガジェット、蒼空のメットに表示されたメッセージ、それはパルクール・サバイバーが他のARゲームと決定的に違う箇所を露呈させる展開となったのである。

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