僕と彼女その7*
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ビッグニュースが飛び込んできたのはあの合コンから一週間が過ぎた頃だった。
「聞いて聞いて!細田さんと付き合うことになったの」
「は?」
あいあんはなんでこんな大事なことを授業中に言うんだろう。疑問が次から次へと押し寄せてくる。細田さんって誰?付き合うっていつのまに?いつから?
私は話しながらでもノートが取れるしテキストを追うことも出来るけど、あいあんは出来ない。ってか多くの人はこんな器用なこと出来ないらしい。私が出来るからほとんどの人が出来るのかと思ってたけどそんなことないと知ったのはつい最近のこと。指摘されるまで気付かなかった。
授業中にこうやって話しかけてくれるけど実は私とあいあんが仲良くなってから一ヶ月経ってない。看護科、初等科ともに授業はクラス単位。授業の雰囲気は座席も決まっているせいか高校に近く、グループワークも多いから仲良くなりやすい。それに目標が同じっていうのはかなり大きいのかもしれない。
席が隣になったばかりの時は「眠い」と「帰りたい」しか言わないし机に突っ伏してノートを取らないことも多かった。そんなあいあんが今では私が注意する前にノートを取っている。なんでここまで懐かれた(手懐けた?)のかはよく分からない。美季ちゃんや雪穂が言うには私の近くにいると癒やされるらしい。
養護教諭を目指すなら悪い能力じゃないから存分に活かしていこう、と思うぐらいには気に入っている。
「……で付き合うことになったんだよ!」
「この前の忘年会という名の合コンで帰ったと見せかけて飲みに行って、その後に雪穂の家に何食わぬ顔で合流した、と」
「…怒ってる?」
「怒ってないけど」
レジュメを埋めながら話を聞いているせいで顔がキツくなっているらしいが怒っているわけじゃない。こういう顔になってしまうだけ。しいて言うならあいあんのレジュメがほぼ白紙な件については怒ってるけどね。