僕と彼女その3*
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「あ、そーだ。せっかく話しに来てくれたんだから会話しなきゃダメだよぉ?それにあいあんと横浜に行ってわさわざ気合い入れてきたんでしょ?いい匂いさせちゃって!」
私にしか聞こえないように美季ちゃんは言う。
気合い入れてきたのは寝坊してノーメイクで学校に来たあいあんだけで私は新商品の香水がいい匂いだったからつけてきただけだ。
それに根本を言えば話す気分じゃないんだけど…
「話題なんてなんでもいいんだよ?」
美季ちゃんは会話が弾まない原因を話題が無いからと判断したらしい。間違っちゃいないが当たってもいない。説明するのも面倒だからそういうことにして話を進めよう。
「宮田君ってJU●ONのあの人に似てるね!」
「あの人…?いやいや…JU●ONみたいなイケメンに似てるわけないっす…//」
「謙遜しちゃって!ほんとにイケメンだと思うよ。カノジョだったら自慢しちゃう」
そう、だから美季ちゃんは放っておけない。こうやって無差別に、無意識に男をその気にさせる。
「そうそう、似てる。で思い出したんだけど今日の国語概論の授業で何を見て笑ってたの?」
「平安美人の肖像画。あいあんが私に似てるって言い出してツボに入って笑い止まんなくて先生に怒られた」
「平安美人の肖像画…?」
男二人にはいまいち通じなかったようだ。授業が違うから仕方ないことだけど。
「小野小町とかだよ。社会科の資料集とかで見たことあるでしょ?」
「でもそんな有名人じゃなかったよ。おかめに似てたし」
「おかめ?」
「納豆のだよ。見たことあるはず。スーパーに行けばたくさん並んでる」
この男と初めて顔を見合わせて思わずくすくすと笑ってしまった。そこからはピアスの話をして、本の話をした。内容は覚えてないけど会話は弾んだと思う。ノリと流れでアドレスまで交換したぐらいだし。私の記憶がなんで曖昧なのかって?
酔って忘れたわけじゃない。持ち帰られたい!と駄々をこねるあいあんを電車に乗せるのにずいぶんと手こずったからだよ。