非日常LIFE 13日の金曜日に出会いました
これは、とある金曜日の学校帰りの事である。いつもの通学路をのんびりと歩いて帰っているいると、
一人の黒髪でショウトカットの少女が目にはいった。その少女は、道の端っこで三角座りをして俯いている。
その光景を見るのは 初めてではなく今日二度目だった。一度目に見たのは今日の朝だった。朝見たときは見ないふりをして通り過ぎたが、帰りに見たときも朝と全く同じ格好で座っていたので、さすがにおかしいと思い、思いきって話しかけてみた。
「こんなところで何してるんだ?」
と話しかけると少女は俯いていた顔を上げて僕の顔を見た。
「お前、私が見えるのか?」
少女は不思議そうに聞いてきた。
「あぁ見えてるけど」
まるでこの少女は自分が人には見えていないかの様な口ぶりで話を続けた。
「本当か、私が見えるのか!?。いつぶりだろう私の事が見える人に出会うのは」
少女は何だか嬉しそうな顔をして立ち上がった。
「その言い方だと自分が幽霊だって言ってるように聞こえるけど?」
「そうだ、私は幽霊なのだ!」
少女は自慢げに自分の腰に手を当ててそう断言した。どうやら僕はとんでもない奴に話しかけてしまったようだ。
「どこがだよ、どこからどう見ても普通の女の子にしか見えないけど?」
ついついツッコんでしまった。僕のイメージする幽霊と言うのは、頭に三角巾を着けて、着物の様な服を着て、足が透けていると言うものだ。だがその少女の姿は僕がイメージする幽霊とはあまりにもかけ離れていた。その少女は三角巾も着けていなければ、白い着物も着ていなかった。それどころか、その少女はメイド服を着ていた。そして足もはっきりと見えている。もうこれじゃあイベント帰りのコスプレイヤーにしか見えなかった。
「何を言っているんだ、どう見ても上から下まで正真正名の幽霊にしか見えんだろ?」
「いや見えない。じゃあ幽霊である証拠を見せてみろよ」
「よかろうならば私の足元を見てみろ」
と言って少女は自分の足元を指差した。そして僕は言われたとおりに目線を少女の足元に向けた。だが少女の足元には証拠になるようなものは見当たらなかった。
「何が証拠だよ。証拠になる様なものなんて何もないじゃないか。」
「よく見ろ靴と地面の間を!地面から三ミリほど浮いているだろ?これが証拠だ!」
「わかりにくすぎるわぁー」
僕は一応見てみるが確かに靴が地面についていないような気がした。もしかしたら本当にこの少女は幽霊なのかもしれない・・・。
「この三ミリが何を指すかわかるか?」
「お前が幽霊だって言う証拠だろ?」
「まぁそれもあるがもう一つある」
「他に何があるってんだよ?」
「聞きたいか?聞きたいか?聞きたいか?」
と言って少女は僕をじらす様に聞いて気た。あまり興味が無かったが一応聞いてみた。
「あぁ気になるから教えてくれ」
「よかろう!ドラえもんだよ」
「ドラえもん?」
少女は何が言いたいのか全くわからなかった。だがその少女は、逆に何故わからないのと言わんばかりに不思議そうな顔を浮かべていた。
「ここまで言えばもうわかっただろ?」
「わかった、そのメイド服に四次元ポケットがついてるんだろ?」
「私のメイド服には三次元ポケットは付いているが四次元ポケットは付いていない。仮に付いてたとして も三ミリとは関係ないだろ」
「あぁもうわかった、お手上げだ答えを教えてくれ」
呆れたような顔をしながら少女は僕を見て話し始めた。
「彼も浮いてるんだよ」
「浮いてる?登場人物で一人だけロボットだからか?」
「違う、そっちの浮いているではなく彼も私と一緒で三ミリ浮いているんだ」
「知るかそんなもん」
あまりにも拍子抜けな答えだったのでついつい大きな声でツッコんでしまった。しかし少女は僕のツッコみを無視して話を続けた。
「ちなみに何で三ミリ浮いた設定になってるか知っているか?」
「知るわけないだろ」
僕は当たり前の様に答えた。
「だろうななら教えといてやろう。彼は家に入るとき靴を履いてないからいつもそのまま入るだろ?それ が土足あがってるとか教育上よろしくないとかで苦情がきたんだ・・・多分・・・」
「お前もわかってねぇのかよ」
とまたツッコんだが、また無視して話し出した。どうやらこの少女は人の話を無視する癖があるようだ。
「話を戻すがどうだこれで私が幽霊だとわかってくれたか?」
「よく見ないと浮いてるか浮いてないのかもわからない幽霊なんて信じられるわけないだろ」
「ちょっとまて、今の発言にドラえもんの雑学も教えてもらったと言うことを付け加えろ」
「それを付け加えたところでお前が幽霊だって証明できるわけでもないだろ」
「まぁそうだが、こうなればもう絶対幽霊だと信じざるおえないような奥の手を使うしかないようだな」
「そんなのがあるなら最初から使えよ」
「すまんすまん、久しぶりに人と話したものだからついつい調子に乗ってしまった」
「でっ、その絶対的証拠とやらを早く見せてもらおうか」
「うむ、では私の胸を触ってみろただし優しくだぞ」
急に胸を触れと言われても僕はもう高校二年生だつまり十五歳を過ぎている。もしにこの現場を誰かに見られでもしたら確実に通報され捕まるだろう。かといって人生で女の子の胸を触る機会なんてもう一生巡ってこないかもしれない。などと言った葛藤を繰り返していると僕はあることを思い出した。まてよ、よく考えたらこの少女は幽霊なんだろ、自分でも幽霊だって言ってるし誰にも見えるはずがない今見えているのは僕だけだ、なら触っても大丈夫。そう確信した僕は右手を少女の胸に近づけるそして僕の右手はついに少女の胸に触れた。が触れた時の感触は全くなかった。それどころか僕の右手は少女の胸をすり抜けた。この時、僕は確信した彼女が幽霊なんだと・・・。しばらく唖然としていると少女がまた話し出した。
「どうだこれでもう信じざるおえんだろ?」
「あっ・・あぁ・・本当にお前は幽霊だったんだな」
「うむ、やっと信じてくれたか」
「あぁ信じるよ信じるけどお前が本物の幽霊だとわかった今、これ以上お前にかかわりたくない。だから 俺はお前を見なかったことにして家に帰ろうと思う。じゃあそう言うことだから」
と進行方向を我が家えと向け歩き出そうとしたが少女はまだ僕に何か言いたそうな顔をして僕の前に立ち道をふさいだ。そのまま少女の体をすり抜けて無視して帰ってもよかったが一応話を聞いてやることにした。やれやれどうやら僕は女の子には弱いらしい。なんて事を思っていると少女が話を始めた。
「ここで出会ったのも何かの縁だこの先、私の事が見える人間に出会うことももうないかもしれんだから 私はお前に取りつく事にした。お前に拒否権はないぞ」
「拒否する」
「聞こえてなかったか?お前に拒否権などないと言っただろうが」
「いや拒否する。だいたい幽霊なんかに俺の青春を邪魔されてたまるか」
「何を言っている、青春において幽霊は必要不可欠だろうが!」
「全く必要ねえよ、いままで生きてきて幽霊を連れて歩いてる人間なんて見たことねぇよ」
「そんなもの探せばいくらでもいるぞ。現にお前も今からその一人になるんだからなぁ」
「お取込み中のところわるいんだけどちょっといいかなお二人さん?」
そんな口喧嘩をしていると後ろから見知らぬ男の声が聞こえてきた。周りの人から見てみれば今の僕の状況は一人で大声を出している変な奴にしか見えないのだろう。そんな痛々しい僕の行動を不信に思い声をかけてきたのだろうか?いや違う確か今、声をかけてきた人は”お二人さん”て言っていた。このひとにもこの少女が見えているのだろうか?僕はそぉっと後ろを振り向くとそこには黒服を着た二十代くらいの男が立っていた。




