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No.26:side・mako「軍師様に通達!」

「つまり、例のアレは今確認されていない……と?」

「一応な。いつ出るかは知らねぇが」


 王城まで聞こえるような爆破の翌日。ズタボロになった隆司たちに話を聞くのはさすがにはばかられたので、一日おいての事情聴取となった。

 場所は魔導師団詰め所。メンバーはあたし、フィーネ、隆司、光太、アルル。アスカには訓練があったし、礼美は今日はオーゼさんに話を聞くみたいだ。フィーネは興味本位といったところかしら。

 まずは例の不愉快で冒涜的な小生物関係の依頼は一切なかったということ。

 少なくとも誰も見ていないし、ギルドでも確認されてないってことになるんだろうけどそんなことはない。極めて不愉快なことにこの生き物に関するあたしの記憶力はすべてにおいて優先されてしまうのだ。調査ってことであたしが出しとこう。

 次に、森の中で自称魔王軍四天王と名乗ったちびっ子がいたこと。

 あたしは見てないから何とも言えないわね……。見た目がただの子供って時点では信憑性はゼロよね、普通。

 そしてそのちびっ子が乗っていたのが、試作型陸上拠点とやらだったこと。

 つまり、魔王軍の一部が王都付近の森を拠点に活動していたということを示している。そこで何をしていたのか、ということを考えると疑問が尽きないわね……。

 最後に、そのリアラとやらを回収しに女騎士が現れたということ。

 回収しに来たってことは、ちびっ子が四天王かどうかとはともかくこっちの手に渡っては困る程度の存在ではあるってことよね……。

 あたしは隆司たちの話から拾えた情報を吟味する。

 断片的ではあるけど、何気に重要よね。まさかこんなところで魔王軍と鉢合わせるとは思ってなかったし。

 しかし試作型陸上拠点、ねぇ。


「……その、試作型陸上拠点とやらの部品なりなんなりは回収できなかったわけよね?」

「んー、見事にばらばらになったからなぁ」


 何故か残念そうな隆司。こいつもその手のものには弱いのかしら。

 何やら懐に手を突っ込んでごそごそやっていたかと思うと、一枚の鉄板を取り出した。


「回収できた中で一番きれいな奴がこれだなぁ」

「そう……。まあぜいたくは言えないわ、十分よ」


 あたしは言って、隆司から鉄板を受け取る。

 緑色の鉄板だが、どうも鉄でできてるわけじゃないわね。便宜上鉄板とは言ってるけど。

 あたしが普通に曲げようとしてもある程度曲がるくらいの柔軟性はあるようね。そのくせそのある程度以上曲がる気配はない。

 ひょっとして、こちらの世界か魔王軍が独自開発した鉱石かしら。これを解析できないもんかなぁ。

 あたしはそばで興味深そうに話を聞いていたフィーネに顔を向ける。


「ねえ、フィーネ。魔導師団でこれの分析とかできない?」

「できる! ……と断言できればかっこよかったのじゃが……」


 勢い良く立ち上がったかと思ったら、途端に自信なさげに眉根が下がる。どっちなのよ?


「一応、鉱石を専門とする魔導師もおるんじゃ。でも、既存の鉱石をどう活用するかが主な研究内容になっとるから、未知の鉱石となるとどこまで通用するか……」

「いや、完璧に解析しろとは言わないわよ……」


 いくらなんでも、そんな無茶言えるわけないじゃない……。

 ある程度解析できて、その結果が技術応用できれば万々歳よ。

 あ、でも、この国じゃあまり鉱石は取れないんだっけ……。


「まあ、ともかく頼むわね」

「うむ、任された」


 フィーネはあたしから鉄板を受け取り、腰からいつも下げている袋の中にしまい込んだ。


「次は四天王とやらだけど……。ホントに四天王なのそいつ?」

「実際に見たけど、正直自称以上ではねぇなぁ」

「うん。僕も普通の子供にしか見えなかったなぁ」


 隆司と光太、各々頭やら頬やらを掻きながら自信なさげにそういった。

 えぇっと、隆司の見立てじゃドワーフなんだっけ? 見た目小学校低学年くらいだとか。


「アルルはどう? 四天王に見えた?」

「うぅ~ん~。私にも~、ちょっと四天王さんには~、見えませんでしたね~」


 やたら間延びした変なしゃべり方にイライラしつつも、あたしは一つ頷いた。

 三人からそう思われる以上、魔力やなんかの数値も人並みってことかしら。


「フィーネ。ドワーフって、魔族にいるの? 普通は亜人とかそういう扱いだと思うんだけど」

「その“どわーふ”というのがすでに初耳なんじゃが」


 ああ、そうなのね。同じ名前とは限らないし、特徴言えば分ってもらえるかしら?

 と思ってドワーフに対する一般的な認識を話してみるが、結果は芳しくなかった。


「やっぱり知らんのぅ。少なくとも、アメリア王国内で同じ特徴を持つ生物はおらんな」

「そう……」


 となると、魔王軍に味方してるとかそういう感じなのかしら?


「一応、ドワーフみたいな亜人も魔族として扱われる作品はあるよ? たぶん、ケースバイケースだと思うけど」

「だからって、生まれまで魔族ってわけじゃないでしょう?」

「うーん、そうだね」


 光太の言葉に反論しつつも、ちょっと意外性を感じる。

 ドワーフとかが魔族として扱われるって、ちょっと信じられないわね。

 まあ、それは置いとこう。今は考えなきゃならないことが山ほどある。


「で、そのちびっ子を回収に来た騎士だけど……腕前としてはどんなもんなの?」


 自称四天王を回収しに来たってことは、逃げ切れる自信あってのことでしょう。

 馬に乗ってたらしいけど、魔導師がいることを考えるとアドバンテージは少な目よね。後ろから狙撃すればいいんだし。


「うーん……。戦ったのは一瞬で、相手がアスカさん。その上アスカさんは跳んでたから、正直どこまで強いのかは」

「でもアスカさんを片手で持った剣で弾き飛ばすくらいに膂力はあると思うぜ? 空中とはいえ、成人女性一人分だ。相当だろう」


 光太の言葉に、隆司が補足情報を入れる。

 でも参考になるのかしらそれ。


「だって魔族でしょう? 身体能力だって人間と桁外れじゃ……」

「あ。忘れてた。その人間もどっちかっつーと亜人だぜ?」

「はい?」

「え? そうだった?」


 なにそれ。光太も初耳みたいだけど?

 胡散臭げに見てやると、隆司は肩をすくめた。


「まあ、じろじろ観察したわけじゃねぇけど、しっぽも耳もなかったぜ」

「あ~、それ私も見ました~。あの騎士さん~、お耳も尻尾もなかったですよ~?」


 隆司を後押しするような、間延びしたアルルの声。

 うーん、隆司一人ならともかく、アルルも同じこと言ってるってことは、少なくともその女騎士は獣人じゃないってこと?


「アルルさん、よく見てましたね! すごいです!」

「エヘヘ~♪」


 ただ、光太に褒められてだらしなく笑むアルルを見てちょっと考えを改める。

 まさか、光太に褒められたくて隆司に同調したんじゃないでしょうね……?


「じゃあ、その女が獣人系じゃない魔族だとして……。隆司、それに該当する魔族って何がいるの?」

「いや正直それだけじゃ……」


 ……そりゃそうよね。見た目が人間ってだけじゃ、まともに案も。


「まず見た目が人間で有名なのはヴァンパイアだろ? 女だってことを考えるとサキュバスかもしれねぇし、顔上半分が隠れてたから単眼系のサイクロプスってこともありうるよなぁ。ひょっとしたら角が折れたオーガ系? 肌の色は普通に見えたけど……。ああ、ゴーレム系の可能性もあるよな、機械作ったリアラの部下なんだし。場合によっちゃドッペルゲンガーかもしれねぇし、人間の死体に魔族の魂が憑依したゾンビってことも……。ああ、騎士だしデュラハンかも?」


 って、多いな候補!? ぱっと出ただけでそんなにいるの!?

 何やら悩みだす隆司になんて声かけたらいいのかわからず、思わず上げた手を所在なさげにさ迷わせるしかないあたし。


「……ええっと。ごめん、ちょっと待ってもらっていい?」

「んー?」

「とりあえず、候補が多すぎるのはわかったわ……。でもそいつらも人間より身体能力上ってことなの?」

「まあ、魔族として扱われる漫画とかじゃだいたい人間より強いな」


 ああ、そうなんだ……。世界って広いわね……。


「じゃあ、その辺の確認はまた会った時ってことで……」

「えー?」


 正直ほっとくと、いつまでも人間系の魔物を列挙しかねないし。

 何やら不満そうな隆司を置いといて、あたしは次の話題に入った。


「で、陸上拠点とやらだけど……。それがアイティス大移動の原因で間違いないのかしら?」

「一応、俺たちは原因と睨んだけどな」

「ギルド長さんの話だと、一週間くらい様子を見て、アイティスが元の場所に移動したら亀のメカが原因で間違いないって言ってたよ」

「ちゃっかりしてんよな……。移動が確認できるまで依頼料は払わねぇって言うし」


 ははは、と乾いた笑いを上げる隆司。

 いやそれは契約内容をしっかり確認しなかったあんたの落ち度でしょう?

 その手の口約契約なんて、信じないのが基本よ?


「なら、例の生き物もアイティスの移動につられた可能性があるわね……」

「あん? ああ、ネズ――」

「ほらっ! 連中は、なんか危険を察知したら大移動を開始するとか生意気な習性があるじゃない!?」

「いやだからネズ――」

「ならばぁ!! 危険を察知して王都の中にまで逃げ込んでくるのが自明の理! 孔明の罠!」

「孔明の罠て」

「なんじゃ? 何の話じゃ?」


 不思議そうなフィーネに、さっきまであきれ顔だった隆司がやさしい顔していらん説明しようとする。


「いやなに。真子はネズ――」

「イ゛エ゛ァァァアアアアアア!!!」

「――ミが苦手って話だよ」


 あ、チクショウ!? 奇声上げて紛らわそうとしたのに!?

 でも、あたしの弱点を聞いたフィーネの反応は意外なものだった。


「え、マコもか?」

「え?」


 マコ“も”?

 恐る恐るフィーネの顔を見ると、恥ずかしそうに顔を染めながらはにかんだ微笑を浮かべた。


「いや……私もネズミが苦手で……」

「同志よー!」

「きゃー!?」


 思わぬところに同志を発見した嬉しさのあまり、あたしは勢いよくフィーネに抱きついた。

 そのまま柔らかなほっぺに頬ずりしながら、思いのたけを世界に対して叫んでやる。


「そうよね、そうよね!? あんな不愉快で冒涜的な小生物なんて滅ぶべきよね!?」

「え、え? いや、さすがにそこまでは……」

「なんであんな生き物が存在するのよ!? しかも普通に街中で見かけることもあるし! 実験に使うならともかく、地域によっては食うところもあるとか!? 意味わかんねーし!!」

「ふえーん!? リュウジー! マコがこわれたー!」


 なぜか半泣きなりながら隆司に助けを求めるフィーネ。

 なによなによー! 同じ生物を嫌う物なんだし仲良くしましょうよー!

 そんなフィーネを見た隆司は、何やらニヒルな笑みを浮かべた。


「ふ、仕方ないなフィーネは」

「いや、助けてあげようよ」


 光太の言葉を無視して、隆司は何やら右手を高く掲げた。

 ? 何する気よ?

 不審なあたしの視線に、隆司は不敵に微笑みながら自信満々に宣言した。


「いでよツッコミの申し子! サンシタァァァァァァァァ!!」


 高らかな叫び声と同時に、パチィィン!と勢いよく指を鳴らす隆司。

 あたしはフィーネを抱きしめながら覚めた眼差しで隆司を見てやる。


「あんたバカでしょ? そんなんで人が一々出てくるわけ」

「呼んだでありますか?」

「「出てきたし!?」」


 驚きの声はあたしと、呼んだ張本人の隆司のものだ。

 がらりと扉を開けたサンシターは不思議そうな顔でこっちを見ている。

 驚愕冷めやらぬあたしたちに苦笑しつつ、光太が口を開いた。


「サンシターさん、今日はどうしたんですか?」

「ええ。今日も一応非番でありますので、せっかくだから本でも読もうかと」

「本? 何の本よ?」


 いち早く復帰したあたしは、抱きしめたフィーネを膝の上に座らせながらサンシターを怪訝な顔で見る。

 一応の騎士が魔導師団詰め所の本を読むって、どういうことよ。


「ええ。料理の本を少し」

「そんなもんまであるの!?」

「う、うむ。この魔導師団詰め所には、この国で発行された本のほとんどが蒐集される故、そういった雑学系の本も集まるのだ」

「この国で~、本を出す条件の一つが~、魔導師団の検閲を通ることなんですよ~」


 ああ、そうなのねー。魔導師団が出版まで担当してるんだ……。

 納得しつつ、あたしはフィーネの長い髪を手櫛で梳いてやる。


「ふにゃっ」


 フィーネは驚いたような声を上げたが、同時にさっきまで硬かった体から力が抜けていくのを感じた。気持ちよさそうに喉まで鳴らしてくれている。

 ああ、いいわねー。あたしも妹が欲しかったなぁ……。


「にしてもサンシター、お前料理もできたんだなー」

「ええ。こちらに来て五年になるでありますが、女性にご縁がなくてずっと自炊していたのであります」

「いや、そんな悲しい自己申告はいらん……」

「すごいですね、サンシターさん。僕も料理できるように……」

「できなくても~、私が作ってあげますよ~♪」

「え? そんな、悪いですよ」

「お前はそれ以上スキル身に付けるな! そしてお前も媚を売るな! やめろそれ以上面倒なフラグ立てんな!」


 何やら隆司が大変そうにツッコミしてるけど、あたしは知らん顔でフィーネの髪の毛をいじって遊ぶことにする。

 たまにはいいでしょ? ポジションチェンジしてもさ。




 そんなわけで今回は役得な真子ちゃん。またの名を情報整理のターンとも言います。

 軍師キャラいないだけでこういう回が作れる……素敵……!

 次も真子ちゃんのターン。久しぶりに野郎が増えます。わー、うれしくねー。


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