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No.236:side・ryuzi「VS偽神」

―ゲェヤハハハハハハハハ!!!!―

「うるせぇなぁ……」


 偽神と融合したおかげか有頂天になっているガルガンドの声がやたらでかくなって響き渡る。

 今の偽神の肉体は、蛇のような下半身に四本の腕を備えた巨大な化け物の姿だ。何ともうれしくねぇラミアだ。


―ついに私は手に入れたのだぁ!! 世界の、すべてをぉ!!―

「ああ、そうかい」


 俺はため息をつきながら、二、三度飛び跳ねてから構える。

 そんな俺を認識してか、ガルガンドが巨大な顔をこちらに向けて嘲笑うような声を上げた。


―挑む? 挑むかぁ!? この私に、神にぃ!!―


 大声を上げながら、四本ある腕のうちの一つを振るう。

 瞬間、轟音を立てながら岩山の一部が完全に消滅した。

 腕を振るった衝撃だけでこれか。


―ゲヒャハハハハハ!! 無駄無駄!! この身にもはや貴様の肉体など効かぬ! 通じぬ! この力の差に絶望しながら死ねぇ!!―


 無駄だなんだの言いながら、ガルガンドは勢いよく俺に向けて拳を振り下ろした。


「………」


 俺はガルガンドの言動に対してため息をつきながら、軽く体を回し、ガルガンドの拳に合わせて後ろ回し蹴りを放つ。


 ドオォン!!!!


 山を抉られたときに立った音と負けず劣らずの轟音が響き、ガルガンドの拳が俺の蹴りに止められた。


―ゲヒャ!?―


 この結果に驚愕するガルガンド。

 俺は全身に力を籠め。


「――フンッ!!」


 ガルガンドの拳を砕く勢いで思いっきり蹴り上げた。

 さすがに拳を砕くには至らなかったが、足がかかっていた指が一本勢いよくへし折れた。


―ゲ、ゲギャァァァァァァ!?―

「あんまり真古竜エンシェント・ドラゴンを舐めるなよ」


 言いつつ俺は全身の覇気を滾らせる。

 覇気は湯気にように立ち上り、俺の体を戦闘用に仕立て上げていく。


「世界のすべてを手に入れた? 勘違いも甚だしいな。テメェが手に入れたのは、せいぜい小さな自尊心位なもんだ。そんなちっぽけなもんが満たされた後、テメェはどうするってんだ?」

―ほぉざけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!―


 俺の言葉に激高したような叫びを上げながら、ガルガンドが俺に向かって拳を振るう。

 俺は地面を蹴り飛び上がる。さっきまで俺が立っていた地面が勢いよく陥没した。


―ケァァァァァァァァ!!!!―


 中空に浮いた俺を追って、残った腕が迫る。

 俺は迫った腕を足場にし、攻撃の回避と接近を同時に行う。


―グ、カァァァァァァァ!!!!―


 一本の腕の上を走る俺に対し、ガルガンドは攻撃を続行。

 腕の上を這う小虫を潰すような動作で勢いよく平手を振り下ろしてきた。

 しかし平手はまずいね。指の間が開いてる。俺は開いた指から、次の腕へと飛び移る。


―キィィィィィィィ!!!!―


 焦れたような叫び声を上げながら、がむしゃらに腕を振るい始めるガルガンド。

 音速を超える勢いで振るわれる腕は驚異的だ。おそらく、付近を通っただけで全身が砕け散るだろう。

 ……けどまあ、こんなもん当たらなきゃどうともならんわな。

 俺は単調でさえある攻撃群にため息をつきながら、とりあえずむかつくガルガンドの顔面に向かって進んでいく。

 とりあえず一発ぶん殴って――。

 ガルガンドの顔まであとは直線で進めばいい。そこまで進んだ俺を襲ったのは。


―フ、ハ、ハハハハハハハ!!!!―

「!?」


 黒い、触手のような、細い腕。

 その細い腕は人間の手にそっくりだが、その太さは人の胴体ほどもある。

 ガルガンドの攻撃の合間を縫って接近してきたその腕に、俺は体を弾かれた。


「な、に!?」

―魔王様! マオウサマァァァァァァァァァ!!!!―


 狂ったような叫び声を上げるのは、マルコだった。

 ガルガンドの顔の後ろ辺り、うなじ付近から生えてきたマルコの顔が、狂った喜びの笑みを浮かべながら声を上げているのだ。

 おいおい、ガルガンドだけかと思ったら、こいつにも意識があんのかよ……! というか、さっきのドサマギで吸収されたのか!?


―ああ、魔王様ぁ!! 私は、私はここにいますぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!―

―ケヒャァ! 死ねぇ!!―


 中空で体を弾かれた俺に向かって、ガルガンドが剛腕を振るう。


「チッ」


 迫る腕に俺は手を合わせて、自分の体を弾くように振るい、一撃を回避。

 さらに横からもやってくる一撃も、何とか体勢を立て直して回避する。

 横から迫った腕の上に立ちながら、俺はガルガンドを煽るように首を横に振って見せた。


「………おいおい。せっかくのチャンスを活かせてねぇぞ? どうした?」

―クキィィィィィィィィィ!!!!―


 ガルガンドが奇声を上げながら、また一撃をくれてくる。

 それを飛んで回避し、いったん地面へと降り立つ。


―オォノォレェェェェェェェッ!!!!―

―魔王さまぁ!! ああ、魔王さまぁ!!!!―


 ……見る限り、意識の統合がなされてるわけじゃなさそうだな。

 さっきの一撃は間違いなくマルコのもんだろうけど……それはマルコがやった攻撃なのか?

 ……とりあえずその確認から行くか。


「……フッ!!」


 呼気を吐きながら、俺は地面を駆ける。

 今度上るのは、ガルガンドの腕ではなく、体。

 うまい具合に突起物の多い体をしてやがるので、そこを利用して駆けあがってやる。


―ケヒャ!? 神の体を駆け上るな貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!―


 ガルガンドが叫び声を上げながら、腕を使って俺を潰そうと必死になる。

 蚊を叩き潰すような気安さで、即死級の一撃が俺の周辺へと迫るが、狙いがうまく定まっていないようだ。無駄な部分をバシバシ叩いている。

 すいすい駆け上がる俺の周りに、うようよと黒い腕が生えてきた。


―フヒ、ハ、ハハハハハハハハ!!!!―

「……マルコが自分でやってるか、また微妙なラインだな」


 聞こえてくる声の調子は先ほどと変わらず、狂っているようだ。

 しかし黒い腕はガルガンドが振るう巨碗と違い、的確に俺の動きを阻害し、進路を閉ざし、俺を捕えようとしている。


「……これは、マルコの腕で間違いないか?」


 ガルガンドはさっきから力を誇示するように腕を振るっている。無駄に地面を砕いたり、わざとなのかどうかはともかく、力いっぱい音を立てて自分の腕を叩いて見せたり。

 しかし、黒い腕の動きはそんな気配はない。むしろ、無駄な力を削ぎ落とし、効率的に動かしている様な節さえ見受けられる。

 元々のマルコは、効率的に国を運営するために宰相として生み出されたというようなことを聞いている。だとすれば、この腕はマルコが動かしているということで間違いはなさそうだ。

 しかし、あんな狂った様子でもここまで効率的に動かせるとはな。大したもんだ。


―ケヒャァァァァァァァァァ!!―

「おっと」


 俺の動きが鈍ったおかげか、妙に鋭い狙いの平手が上から降ってくる。

 風圧で体の態勢が崩れそうになるが、とりあえず踏ん張り、引き続き体の上を駆け上っていく。

 そして胴体部分まで駆け上がったところで。


―ケアァァァァァァァァァ!!!!―

「ぬおっ!?」


 鋭い叫び声と同時に、胴体が口のようにバックり裂け、その中からブレスが飛び出してきた。

 突然の事でモロに喰らってしまい、俺はガルガンドの体から吹き飛ばされる。

 ブレスの種類はオーソドックスな炎。前のソフィアが吐き出した火炎球の様なタイプじゃなくて、勢いよく噴出した水流のような、火炎流だ。

 こんなのを吐き出せる生き物は、そんなにいねぇ。

 地面に着地するのと同時に、顔を上げると、見覚えのある顔がマルコの反対側の位置に生えていた。


―セ・カイ・マモル……ワ・ワレガァァァァァァァァァァ!!!!―

「ああ、うん。わかってたよ」


 げんなりと鬱陶しい気分を味わいながら俺は腐りトカゲの顔を見上げた。

 あのタイミングで吸収されたマルコがこうして出現するなら、元々覇気を利用されたであろう腐りトカゲの意識が出てこないわけはねぇわな。


―ケヒ、ヒャハハハハハハ!!!! どうだ!? これが神の力ァァァァァ!!!―

「自慢するほどの事でもねぇだろ。他人におんぶにだっこってよ」


 まるで自らの力を誇示するように吼えるガルガンドの滑稽さに、あきれ果てて声も出ねぇ。

 マルコの事で推察ができるが、たぶんさっきのブレスも腐りトカゲが自分で吐き出したものだろう。

 好きな部分からブレスを吐けるってのは、結構驚異的だが、それを一つの意思で統合できてねぇんじゃ、たいして怖くねぇだろ……。

 と、腐りトカゲがぶるぶる震え、また喉の奥を震わせる。


―ワレ。ガ・マモルノ、ダァァァァァァァァァ!!―


 そして、胸の部分に現れたままだった口から、今度は球状のブレスを吐き出した。


「っと」


 こんなブレスも吐けるんだなー、と感心しながら打ち返しのために構える。


「守りの盾よ!!」


 鋭い叫びと同時に、俺の目の前の透明な盾が出現し、済んでのところで火炎ブレスから俺の体を守ってくれた。


「れ?」

「隆司君! 大丈夫!?」


 突然の事に呆ける俺の耳に、礼美の声が聞こえてきた。

 振り返ると、こちらに向かって急いでかけてくる礼美と、紅玉の上に腰かけながらつまらなさそうにあくびをしている真子の姿が見えた。


「ああ、うん。俺は平気だけど」

「よかった……!」

「ファ……そんな心配しなくても、こいつが今更死ぬわけないでしょ……」

「お前はもうちょっと心配する努力をしろよ」


 真子の態度は信頼の証と思いたいが、そもそもこいつの中に俺を心配するという思考があるかどうかがわからん。

 問い詰めてみたい。小一時間、みっちり、サンシターに頼んで。


―ケヒャハハハハ!!! 何をしにきたぁ!?―


 と、背後からガルガンドが何か叫んでいる声が聞こえてくる。

 もう一度振り返ってみると、ガルガンドが腕を振り下ろし、それを礼美が防ごうとしているところだった。


「みんな逃げて!!」

「いや逃げろとか言われても」

「それはこっちのセリフっていうか」


 俺は瞬間的な跳躍の、真子は攻性防御らしい呪文の準備をする。

 しかし、そのどちらも無為に終わる。


「ハァァァァッ!!」


 四本の魔剣で空を飛んでいる光太が、巨大な光剣でガルガンドの巨碗を弾いた。


―ケェア!?―

「礼美ちゃん、大丈夫!?」

「光太君……!」


 宙を回り目の前へと着地した光太の背中を、礼美が潤んだ瞳で見つめた。熱に浮かされたようにも見えるその眼差しは、まさしく俺たちが望んでいたそれだった。


「おいみろ真子……! 礼美のあの眼差し……!」

「望んだ景色がこんなにも素晴らしいものだったなんて……! ああ、生きててよかった……!」

「「二人とも真面目に!!」」


ガッシと手を組みあって涙を流す俺たちを、光太と礼美が一喝する。


―キサマラァァァァァァァァァァ!!!!―


 そんな俺たちを見て、ガルガンドが怒りの奇声を上げる。

 偽神の放つ気配が強くなり、いよいよ本気でブチギレているのがわかる。


「さてと。あんたたち、わかってるわよね?」

「もちろんだよ、礼美ちゃん!」

「フィーネ様と、アルト王子が来るまで時間稼ぎだよね!」

「それじゃー、いってみよー」

―ケェアァァァァァァァァァァァァァ!!!!―


 俺たちはそれぞれの武器を構え、偽神と改めて相対する。

 さて、キモい三連神よ。もう少し遊んでもらうぜ?




 勇者がそろい、戦いが始まる。

 それは、新たな神話のようで?

 以下、次回。


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