表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/254

No.118:side・kota「彼女を助けに駆け抜ける」

「ん!? おや、レミ様にコウタ様!? いつからそこに?」


 と、僕たちの存在に気が付いたのか、Aさんがこちらの方に振り向いてくれた。

 うん。声のかけづらい雰囲気だったから助かったよ……。


「えーっと、真子ちゃんが、この洞窟に潜り込んだって聞いて……」

「急いで追いかけてきたんです! それで、真子ちゃんはどこに!?」


 僕を押しのけるようにして前に出た礼美ちゃんが、勢い込んでAさんに問いかける。

 目の前の光景のせいで、気勢が削がれちゃったけど、真子ちゃんの姿が見えないのは気になる。

 いったいどこに……?


「まふぉさまれしはら、おくのふぉうにひはれまひたよ?」

「ずいぶんボロボロになったな」

「マウントポジション取られてボコボコに殴られましたからねぇ」

「真子ちゃんが、奥に!? まさか一人で!?」


 ナージャさんにボロボロにされたBさんの言葉に、礼美ちゃんがショックを受ける。

 いまだに足元にはネズミがウロウロしている。こんな状況じゃ、逃げ出したくもなるよね……。


「いえ、サンシターが後を追いました」

「サンシターさんが?」

「はい。我々で、ここを抑えて、後で合流するつもりだったんですが……」

「あとからあとからネズミが湧いてうっとうしいったらねぇんだ! っていうか、早いとここっちを手伝ってくれ!?」


 フォルカ君が悲鳴を上げると、また奥の方からネズミが湧いてきた。

 まさか、この調子でどんどん戦い続けてたのかな……? だとすると、この洞窟相当な数のネズミが集まってるってことに……。


「……考えるよりは、まずこの場を何とかするのが先決だね……。アルルさん! 手伝ってください!」

「は~い~♪ アルルに~お任せ~♪」

「ヨハンさん、すいません! お願いします!」

「かしこまりました、レミ様。そのお言葉のままに!」


 真子ちゃんを追うとしても、この数のネズミについてこられたら、真子ちゃんがパニックに陥ってしまう。可能な限り数を減らさないと!

 そう思って剣を抜く僕の横を通り、ギルベルトさんが遮った。


「ギルベルトさん?」

「小兵相手にに無駄な力を使うことはなかろう。まあ、任せろ」


 そう自信ありげに言ったギルベルトさんは、白衣の内ポケットから三本の試験管を取り出した。

 コルク栓でふたをされた試験管の中には、何やら怪しい色の液体が封入されている。とりあえず、危ない薬品だというのは間違いなさそうだ……。

 その試験管を、ギルベルトさんは無造作にネズミの群れに向かって放り投げる。

 試験官は地面に落下し、パリンと音を立てて割れ、中の液体が溢れ出す。

 途端。


「ぢゅ!? ぢゅ、ぢゅぢゅぢゅぢゅー!?」


 試験官の中身が溢れ出した辺りにいたネズミたちが苦しみだす。

 その苦しみは徐々に伝播していき、やがて見える範囲にいたネズミたちがすべて苦しみだした。

 しばらく洞窟の中には苦しそうなネズミたちの鳴き声が充満していたけれど、それもぱったりと途絶える。

 あとには、苦しそうに身悶えしたネズミたちの死体だけが残された。


「……ぎ、ギルベルトさん、これはいったい……」

「ふっふっふっ……。これは某が対ネズミ対策に開発した試作の魔法薬! 気化したこの薬品を取り込んでしまうと、身体を一瞬で侵され、やがて死に至ってしまうのだ!!」


 再び試験官を白衣のポケットから取り出しつつ、自信満々に叫ぶギルベルトさん。

 つまり、殺鼠剤みたいなものなのかな……? この世界には、そういう刺激物はほとんどなかったから、今回に合わせてギルベルトさんが作り出したってことなのかな?


「すごいですね。ネズミ発見の報から、そんなに時間経ってないのに……」

「そうだろうそうだろう! まあ、まだ試作段階だから、ネズミだけじゃなくて人間も吸い込んだら死ぬかもしれんのだが」

「ちょ!? そんなものばら撒かないでくださいよ!?」

「レミ様、失礼いたします!」

「むぐ!?」


 慌てて僕は口を塞ぐ。ヨハンさんも、大急ぎで礼美ちゃんの口を塞いだ。

 まあ、ネズミが即死するんだから、人間に害があるのは当然だけれど、魔法薬なんだからせめて人間には効果がないみたいな感じであってほしかったよ!

 僕たちだけじゃなく、その場にいる全員が口と鼻を塞ぐけれど、僕たちの行動に心外といった風情のギルベルトさんだけは、無駄に自信満々に胸を張った。


「心配するな! 気化した状態でも、普通の空気よりはるかに重く作ってある! 溜まるとしたら、足元にだけだから、少なくとも、立っている状態の人間の口元まで上がってくることはない!」

「……ちゃんと実験はしたんですか?」

「いやまだだが」

「信用できませんよ!」


 なんで未実験の薬品をこんなところに撒くかなぁ……。最悪、この場で僕たちが一網打尽になってる可能性もあるのに……。

 そんな僕の内心を読み取ったのか、憤慨した様子でギルベルトさんは周囲を示してみせた。


「なんだなんだ! 某の薬のおかげで、この場にいたネズミは一網打尽にできたというのに、バカを見るような目で見るこたぁないだろうが!」

「いや、まあ、確かにさっきまでうっとうしいほどに沸いてたネズミはいないけどさぁ」


 ギルベルトさんの言葉に納得するようにフォルカ君が鼻をつまみつつ頷く。

 言われてみれば、さっきまでうるさいほどに鳴いていたネズミの姿は当に無く、さらに追加で現れる気配もしない……。

 いや、気配はするんだけど遠いっていうか。この辺りにばら撒かれた薬品の危険性に気が付いたのかな? でも、ネズミにそこまでの知能ってあったっけ……?


「それでも、危険な薬品を密閉空間で撒いたりしないでください……」

「そもそもレミ様もここにおられるというのに、ネズミが死に至るような薬品を使用するなど……度し難いですな」

「お前さんがたまでそんなこと言うことなかろう……」


 さらにナージャさんとヨハンさんに追い打ちをかけられ、拗ねるように、ギルベルトさんは足元に転がっていたネズミの死体を蹴っ飛ばした。

 うーん……せめて、こういう場面じゃなかったり、しっかり実験を重ねたうえでの使用だったら、素直に褒められたんだけどなぁ……。

 と、ヨハンさんに口を塞がれたままだった礼美ちゃんが、その手を強引に外し、ギルベルトさんにすがりついた。


「ギルベルトさん、すごいです! これで、真子ちゃんに迷惑をかけずに済みますよ!」

「ん……? そ、そうか?」

「そうですよ! ネズミが死んじゃうのはかわいそうですけど、数が多すぎるのは困りますもの!」

「う、うむ。そうだろうそうだろう! なんだ、ちゃんとわかってるやつがおるじゃないか!」

「さすがレミ様……。あの気難しいギルベルト殿をああも容易く浮上させるとは……」

「いや、あれはギルベルトさんがチョロいと言いますか」


 僕もCさんのいうことが正しい気がするなぁ……。

 ともあれ、礼美ちゃんに褒められて気を良くしたのか、試験官をちゃぽちゃぽ振りながら、ギルベルトさんが威勢よく叫んだ。


「よぉし、この場は解決したな! では次に嬢ちゃんを追うぞ! すぐに撤退もできるように、アルル! 王城の適当な場所の座標を転移装置に打ちこんどけ!」

「は~い~」

「それで、真子ちゃんはどっちに!?」

「えーっと……」


 礼美ちゃんの叫びにナージャさんが足元を見る。

 ? 何かあるのかな?

 しばらくうろうろしていたかと思うと、何かの燃えカスのようなものを見つけたらしく、足元に屈みこんでそれを一掬いした。

 そして下に溜まっている薬品を吸い込まないようにしながら立ち上がり、救ったそれを良く検分する。


「……えーっと、フォルカの魔法乱射で灰になってて定かじゃないですけど……こっちが我々の進んだ方ですね」

「悪かったな!」


 ナージャさんの言葉にフォルカ君が怒ったように吠えるけど、いったい何のことだろう?

 そんな僕の疑問に答えるように、ナージャさんが地面に落ちていたロープの束を示した。


「いえ、帰り道が分かりやすいように、入り口から一直線にロープを引っ張っていたんです。まあ、この通り洞窟は一直線なんですけれど……」

「そうなんですか……。それで、真子ちゃんはどっちに?」

「我々が来た方とは逆に進んでいきましたから、あちらですね」


 ナージャさんはロープの燃え残りを掬い取った側とは逆の方を指差す。

 途端に、礼美ちゃんがそちらの方に向かって駆け出していった。


「真子ちゃん!」

「! 礼美ちゃん!? 一人じゃ危ないよ!」


 慌てて礼美ちゃんを追って、僕も駆け出した。

 後ろのほうからも、みんなが僕たちを追って駆け出した音が聞こえてくる。

 それにしても、礼美ちゃん、真子ちゃんが一人で洞窟に進んだって聞いてから、かなり落ち着きがない……一体どうしたんだろう?

 何とか礼美ちゃんに追いついて、落ち着いてもらおうと声をかける。今のままじゃ、真子ちゃんの危険に体を張って挑んじゃいそうだ。


「礼美ちゃん、落ち着いて!」

「落ち着いてられないよ! 真子ちゃんが、危ない目に合ってるのかもしれないのに……!」

「だからって、慌てて追いかけて、礼美ちゃんが怪我しちゃ……!」

「いいの! 怪我して!」

「いや、よくないよ!?」


 やっぱり!? 自分がどんな目に合っても、真子ちゃんを守るつもりだ!?

 何とか暴走だけはやめさせようと言葉を選ぶ僕に、礼美ちゃんはぽつりとつぶやいた。


「……この間の真子ちゃん、酷く傷ついてた」

「え?」

「私を嫌いだって言ってた時……ううん、その前から。真子ちゃんずっと傷ついてたのに、私はそれに気が付けなかったし、気を付けてあげられなかった……」


 必死に真子ちゃんを追う中で、礼美ちゃんはそう独白する。

 この間……礼美ちゃんと真子ちゃんが喧嘩した時のことかな。


「今考えてみれば、ネズミのこととか、初めて負けたこととか、いろいろ悪いことが重なってたのに……私は自分のことばっかりで……」


 負けたことも、ネズミのことも、礼美ちゃんの責任じゃない。でも、彼女にとってはそういうことじゃないんだろう。

 大事な友達が傷ついていたことに、気が付けなかったことを悔やんでいるんだろう。

 もし、仮に隆司が傷ついたとして……僕はそれに気が付いてあげられるだろうか……?


「真子ちゃんは嘘はつかないけれど、弱音も吐いてくれないから……だから、気づいてあげないといけないんだ……。この間、初めてそれに気がついだの」

「……そっか」


 だから、真子ちゃんに無理はさせたくないんだね。

 自分の身を挺して、守ると決意するほどに。


「だから、私も真子ちゃんを守ってあげたい……。ヨハンさんや、光太君が、私を守ってくれるように!」

「うん、わかった。なら、急ごう!」


 彼女の想いを聞き、僕もまた足を急がせる。

 そうだよね……。心配だよね。友達が、危ない目に合ってるなんて……!

 洞窟をかけていくと、先の方に開けた空間が見える。

 僕と礼美ちゃんは、その開けた空間の中へと乗り込んでいった。




 ギルベルト無双! 終了! まあ、ネズミが即死するような薬を乱用されてはかないませんし。

 さあ、再びの光太VSガルガンド! 果たして結果は!?

 以下次回ー。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ