善人ぽくなった婚約破棄をした元婚約者と再会した令嬢の話
「やあ、マーデル、久しぶり」
「ローガ・・・・」
元婚約者、ドレス店の前で偶然に出会った。一方的に婚約を破棄を宣言した男だ。
「今までのことは申訳なかった」
「そう・・・」
確か、どこかの男爵令嬢と恋をしたのね。
そして、二人して追い出された。
平民になったけど服は上等だわ。
世間は私と結婚出来たら侯爵家を継げたのにと噂をした。
男爵令嬢と一緒に我が家門に入ろうとしたのかしら・・・今にしては興味がない。
「声をかけたのは謝罪のため?」
「そうだ。君にはすまなかった。最後、家門からは謝罪したが、私の口から言えなかったから・・・」
「そう・・・・」
「それだけだ。では、失礼するよ」
「ちょっと待って、どこかでお茶をしましょう。ケリー、店に予約をして」
「はい、お嬢様」
話だけでも聞こうと思った。
「いや、子供だった。あれから男爵家からも縁切りされて、ミリアはあっけなく年上の金持ちの隠居と結婚したよ・・・」
「そう・・・・大変ね」
「だが、運命の女性と出会ったのだ」
「まあ、おめでとうございます」
ローガの顔は良い。
裕福な商会長の娘と結婚出来たのかしら・・・
と思ったが、斜め上だった。
「黒瞳族の女性と出会ったのだ。森の中だ」
「ええー!?森の中、信憑性は高いですわ」
黒瞳族・・・不思議なスキルを持っていると評判だわ。黒髪、黒い瞳の特徴がある。
「彼女は田舎暮級だ。つまり」
「領地改革、新しい産業が生まれるのね・・・・」
「そうだ。今、出資者を募っている。私が窓口になっているのだ」
「まあ・・・」
「もし・・・償いになれば・・・いや、やめておこう。ヒドい男に資金を預けるのは嫌だろ」
「いえ、そんなこと・・・お父様に相談しますわ」
「ああ、分かった。枠はあと少しだが空けておこう」
「まあ、枠があるの?」
「あまり、出資者が多いと意見が混乱して船頭が多く山に行くからな」
「分かったわ」
急いで屋敷に戻りお父様に報告しようとしたが・・・
ローガは元婚約者だ。お父様はまだ怒ってらっしゃる。
いくら利益が出るとはいえ。昔、不義理をした男に頭を下げて資金を出す。
貴族の誇りが許せないわ。それに一体どんな事業かしら。
話す直前に悩んだわ。
どうしようかしら・・・
その前にメイドに相談することにした。
「ローガ様は反省しているのね・・・、黒瞳族にも会って事業の話を聞いてから決めたいわね。ねえ、ササキはどう思う?」
ササキ、最近雇った変わったメイドだわ。
紹介状無し。
生まれつき目が悪いので北方の民が雪から目を守るためにつけている遮光器で目を守っている。
慈悲の心で雇ったわ。
だけど、他のメイドと違って忌憚のない意見を言うから、友達のように相談をしたりする仲だわ。
髪は黒瞳族のように黒い。でも・・・黒髪だけならこの世界にもいるわ。
黒髪だから、魔法で目の色を変えて偽る詐欺師が王都にいると聞くわね。
ローガと会ったことを話したわ。
「お嬢様、その黒瞳族の女性の名前は?」
「そうね。タナカ・オニギリ・ヨシダ様、ミドルネームがあって、異界では高貴な身分の出と思いますわ」
「それ絶対にやめた方がよろしいと思いますよ。偽物です。
そもそも田舎暮と言っても少しも田舎暮しではないのですよ。
何か、外敵が襲ってきたり。すごく貧しい領地に赴任させられたりと・・・」
「まあ、まるで賢者様のように黒瞳族のことに詳しいみたいな物言いね」
「それよりも自転車を作りました。お嬢様、見て下さい」
「ええ・・・はい。また、変な機械を作ったのかしら」
お抱えの鍛冶職と相談して勝手に作ったらしい。
鍛冶職も何故かササキの話を聞く。
何か車輪が二つある殿方の馬のオモチャのような物にまたがり走り出したわ。
チャリン♪チャリン♪
「キャア!楽しい!チャリ通を思い出します」
「エへへへ、ササキ、どうよ」
「親方最高ですよ」
「そうだろ?お給金の日に材料費もらうぞ」
「あちゃー!」
「お嬢様も乗りますか?」
すごく腹が立った。私がこんなに悩んでいるのにすごく楽しそうだ。
「ちょっと、ササキ代わりなさい」
「はい、お嬢様、でも、初心者は難しいですよ」
「簡単でしょう。貴方ができるくらいだから・・・ここをこげばいいのね」
「キャア!」
倒れてしまったわ。
「お嬢様、最初は私が補助をします」
「不思議だわ」
・・・・・・
「ササキ、こんなに速くて大丈夫かしら。しっかり持っていて!」
「はい、お嬢様、しっかり持っていますよ」
チャリン♪チャイン♪
「ササキ、このベルはなに?」
「ああ、これは、再現で絶対に外せません。速く走ると勝手に鳴るところも良いです」
「再現・・・何それ!」
振り向くとササキは補助についていなかった。
「・・・ササキ、ちゃんと抑えていてと言ったのに!あら・・・」
「そうです。お嬢様は独りで乗れるようになったのです」
「やったわー!」
「おめでとうございます!」
「自転車の代金払いますわ!親方、もう一台作って下さい」
「お嬢様、もちろんです」
それからお茶会で披露したりもした。
「まあ、マーデル様・・・」
「格好いいですわ。私も欲しいですわ」
「フフフフフ、ええ、販売しますわ。しかし、乗るにはコツがいりますのよ」
ヘルメットを考案したり。学園と調整して自転車通学は・・・認められなかった。
「品位を考えた給え」
「はい、学園長」
「しかし、自転車クラブを作るのは許可する」
「はい」
休日の日に学友達と自転車でピクニックに行ったりもした。
「フフフフ、車輪はゴムを使うようにしましたのよ」
「まあ、揺れは少ないですわ」
「そうですわ。騎乗よりは手頃で、馬車に比べて開放感がありますわ」
チャリン♪チャリン♪チャリン♪
王都中にベルが響くようになって・・・
「あの、マーデル様、婚約者と乗りたいですわ。2人乗りの自転車・・・ございますか?」
「まあ、当家の鍛冶職と相談しますわ」
2人乗りの自転車が出来上がり納品をした。
2人でこぐタイプだ。
これは心に来た。
仲よさそうだ。
チャリン♪チャリン♪
「マーデル嬢ありがとう」
「マーデル様、すばらしいわ」
「まあ、仲がよろしいことね・・」
「お嬢様、考案したのは私ですよ。少し、利益が欲しいです」
「そうね・・・・相談しましょう」
そろそろ鍛冶職の片手間で出来る規模ではなくなった。
正式な商売にするべきだとお父様に相談した。
「うむ・・・マーデル、聞いている。不思議な道具を作ったな」
「はい、ササキの考案です」
「メイドか・・・正式にギルドを立ち上げ。法整備もしなくてはならない」
「はい」
「ところでローガ君、覚えているか?いや、忘れるわけもない。辛いが聞きたい事がある」
「えっ?!」
ここでやっと、ローガ様の話を思い出した。
彼は黒瞳族と事業を立ち上げるのだった・・・・
「お父様・・・まさか・・・もう、遅いのかしら」
「ああ、そうだ。詐欺師に引っかかった。偽黒瞳族の女の広告塔になって資金をあつめたのだ。資金を集めるだけ集めて逃げだした。今は賞金首の身だ。マーデルの所に来なかったか?」
「来たわ・・・」
「何故報せなかった?金は渡しておらんだろうな」
「いえ、渡しておりません。すっかり忘れておりましたわ」
ササキのせい?おかげかしら?引っかからなくて良かったわ。
「グヘへへへ、お嬢様、自転車用のドレス考案しませんか?ドレスだと乗りにくいとの意見もありました」
「ええ、そうね・・・」
このメイドは着々と商売の幅を広げている。
「エへへへ、旦那様から正式に予算をもらって、私を商会長にしてもらえるみたいです」
「そう・・・」
「王国軍に偵察用の自転車、荷台付自転車の試作を依頼されました。旦那様経由です。これで自転車は令嬢が乗る物だというイメージを払拭できます」
ササキはせわしいわね。
黒瞳族の田舎暮を見てみたいものだわとない物ねだりはやめることにしましたわ。
最後までお読み頂き有難うございました。




