ドラゴンを倒すのは犯罪です
ふと気が付くと、俺は4歳くらいの子供だった。
自分が誰なのかは分かる。下級貴族の四男。ミソッカスみたいなものだ。
ただ、こことは異なる世界で成人男性として生きてきた記憶もある。
これは、よくある異世界転生というやつなのでは?と思った俺は四男という気楽な立場に喜んだ。
どうせそのうち家を出て平民になる身なのだ。
それを思えば一応は貴族の身であり、生活に困窮する事もなく養って貰えて、
いづれ出ていく日まで訓練する事ができるというのは最高なのでは?
神に会った記憶はないが、どうやらチート的な能力を授かっていたらしく、魔力量が異常に多かった俺は、屋敷にあった書物を読みふけり魔術師としての腕を磨いた。
そうして15歳となった俺は、家を出て冒険者として生きて行くことにした。
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「おぉ……。アレがドラゴンか。流石にでっかい。そして格好いいな」
近くの町で低級の冒険者から始めたが、そこらの雑魚魔物を倒すなんて造作もない。
暫くして冒険者としての生活に馴染んだら、ドラゴンが棲むという、アレガ山の近くの町まで移動した。
そうして、ドラゴンに挑もうとしているのが今という訳だ。
何でいきなりドラゴンなのかって?屋敷の書物の中に、過去にドラゴン討伐で英雄になった偉人の話が幾つかあったからだ。
ちまちま階級を上げるのが面倒だったというのもある。
「何、俺の魔力ならドラゴンだって倒せるはず。くらえっ!エターナルフォースブリザード!!」
名前はアレだが、効果はほとんどそのままだ。考えるのが面倒だったのでそのまま採用した。
つまり、相手は死ぬ。
「っは!楽勝楽勝!!これで俺も英雄だな!」
完全に氷結し、その後、砕け散ったドラゴンを確認した俺は、素材になりそうなものを漁ってから意気揚々と町へ引き揚げた
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アレガ山近くの町の冒険者ギルドに帰還した俺はワクワクしながら受付の列に並んだ。
……ああ、早く順番回ってこねぇかな。周囲の驚く顔が目に浮かぶぜ。
「次の方」
順番が回って来た俺は、受付嬢の前にドラゴンの鱗を置いて言った。
「ドラゴンを討伐してきました!素材の換金をお願いします!」
その瞬間、周囲が静まり返り、受付嬢は困惑した顔で言ってきた。
「……どこのドラゴンです?」
「アレガ山ですけど?」
「……そうですか。ちょっと確認したいので、こちらの水晶に手を置いて頂けますか?」
……?何だ?普通にあり得ない事だから疑っているのか?それとも今のランク確認だろうか?
ともかく、俺は素直に示された水晶に手を置いた。
ガチャ
「……え?」
手を置いた瞬間、水晶の周りから手枷の様な物が出て、俺と繋がった。
……何だこれ?……魔力が封じられた!?
「衛兵を呼んでください!誰か、ギルドマスターに状況の報告と緊急会議の開催の要請、それから行政官に連絡を!」
「えっ?ちょ、何!?」
俄かにギルド内が騒がしくなるが、俺が思ってた方向と全然違う
「あの!?いきなり何ですかこれ!?説明してください!」
「ドラゴン殺しは重罪です」
「……は?」
それから説明されたことによると
あの馬鹿でかい図体を維持するためにドラゴンは魔力を食べて生きているらしい。
その上、体内で必要な形に精製して、飛行する時などは魔法として食べた魔力を用いる。
それほど動く必要がない時は、余剰分となった精製後の魔力を自然に放出するそうだ。
ドラゴンがいる地域は、原生の魔力が恐ろしく高い濃度で噴出しており、そのままだと魔境化する可能性すらある。
それをドラゴンが食べて、変換し、放出することで周辺環境がある程度穏やかに保たれている。
つまり、ドラゴンを倒すと周辺の魔力環境が激変し、スタンピードなどの魔力災害が発生する可能性が極めて高いとか。
「えっと、つまり俺は……」
「環境破壊の重犯罪者ですね」
思ってもみなかった結果を突き付けられた俺は混乱した。
「いや、でも昔はドラゴンを倒した人が英雄になったって書物にも書いてあったんですけど……」
「いつの時代の話ですか……。確かに昔はそういう事もあったらしいですけど、ドラゴンの数が減り続けた結果、魔境化して酷い事になった国とかが出てきたので、今では法律が変わってます」
「え、じゃあ。ドラゴンって勝手に倒しちゃいけないの?」
「当たり前だろ」
溜息をつきながら、熟練っぽい雰囲気の冒険者が割り込んできた。
「ドラゴン討伐には、討伐申請を出す必要性がある。」
「……そんなのギルドの規約にありました?」
「低級のうちは普通は縁がない話だからな……。が、実例が出来ちまった以上は変えざるを得ないか。……ああ、申請書だったな。普通は危険度、推定年齢、縄張り、推定魔力循環量、周辺生態系への影響を書いて提出するんだよ。」
「えぇ……?」
「行政の環境評価に大体2週間か3週間位掛かるな」
「そんな悠長な……。人を襲ってる場合はどうするんです?」
「その場合は、緊急討伐規定があるにはあるが、今回は該当せんだろ。全く、これからの仕事量を考えると頭が痛くなるぜ。厄介事を起こしやがって。……おい、連れていけ」
そうして俺は衛兵に牢屋に連行されたのだった。
ざんねん!! かれ の ぼうけん は おわってしまった!
整合性を保った設定を組むのってやっぱり大変なので、ちょっと息抜き。
巨大生物ってエネルギー収支とか、食事どうすんだとかで、
魔力食にしようはそれなりにある設定ですが、それだと倒したら食べてた分の魔力どうなんの?
って次から次に問題出てくる奴。
ファンタジーにそんな無粋な事を考えちゃいけないのかもしれませんが。




