1/6
ACT.1 Prologue さやかと則人
二人が教室に戻ると、もう他に生徒の姿はなかった。
秋の夕暮れ。
見事なまでに赤い夕日の光が、教室をすみまで染めあげている。
そのあまりにも美しい幻想めいた空間の中で、二人は会話を見失った。
まるで何かに誘導されるかのように窓際へと歩み寄り、無言でその空に魅入る。
―――――― 時間が過ぎ、夕日が姿を消して空の色は戻り。
教室が薄暗いいつもの見慣れた風景へと還った時。
まだ二人は心をとらわれていた。
彼女が振り返って彼を見つめる。
彼も窓から彼女へと視線を移している。
お互いの視線が、まるで何かの一本の線のようにつながれ、そして導かれた。
……彼女が歩み寄ったのか、彼が引き寄せたのか。
……彼女が引き寄せて、彼が歩み寄ったのか。
見つめあう距離は次第に近くなって、自然と唇が触れ合った。
その刹那に流れる、電流のような痛み。
二人ははじかれたように身体を離した。
―――――― 夢?
彼は、窓を開けて風を入れた。
彼女は、自分の机に戻り、カバンを取った。
「……お疲れ様」
「……おう」
彼は、彼女を振り返らずに応えた。
彼女は、振り返らずそのまま教室から立ち去った。




