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【完結】愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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98 ルークの異変

途中視点変わります。

「わぁ、すっごく美味しい!」

「エミリア、本当にいつも美味しそうに食べるのね」

「あ……申し訳ありません、王妃陛下」

「気にしないで、私はあなたのそういうところが好きよ」



晩餐会が始まり、淑女らしからぬ行動をしてしまっていたことに何だか恥ずかしくなった。



(レイラとルークはともかく……国王陛下と王子殿下に情けないところを見せるわけにはいかないわ)



そう思った私は背筋をピンと伸ばしておしとやかに食事を再開した。



(私だってやれば出来るんだから!)



これでルークたちもきっと私を見直すだろうと思った。

が、しかし――



「何だかエミリアらしくないわね」

「さっきの方が良かった」

「え!?」



私のその姿はどうやら二人には不評だったようだ。



(ちょ、ちょっとこの二人私のこと何だと思ってるの!?)



挙句の果てには国王陛下にも笑われてしまい、顔が真っ赤になる。

穴があったら入りたいとはまさにこのことだ。






晩餐会が始まって少し経った頃、私の隣に座っていたルークにある異変が起きた。



「うっ……!?」

「……ルーク?」



突然苦悶の声を上げたルークに、この場にいた全員の視線が彼に集まった。



「どうかしたの?」

「……」



私が尋ねても、ルークは何も答えなかった。

口元を押さえてただじっと黙り込んでいる。



(どうしちゃったんだろう?)



疑問に思った私がもう一度声を掛けようとしたそのとき――



「おじさん、どうかしたんですか?」



声を上げたのはまだ幼い王子殿下だった。

殿下は心配そうに眉を下げてルークを見ていた。



その言葉でハッとなったルークがニコッと笑った。

気のせいか、無理矢理笑顔を作っているようにも見える。



「…………いや、何でもない。平気だ、心配しないでくれ」

「なら良かったです!」



彼の返事に、殿下は安心したように食事を再開した。



(明らかに変だわ)



納得のいかなかった私は小声で隣にいた彼に尋ねた。



「ルーク、本当に大丈夫なの?」

「ああ、ただちょっと…………喉に詰まりそうになっただけだ」

「そう……」



ルークは平然とそう答えたが、何かが引っ掛かった。



(ルーク……何だか顔色が……)



体調が悪いのか、いつもと様子が違う。

それから彼は、食事の途中でナイフとフォークを置いたかと思うと突然立ち上がった。



「すみません、少しお手洗いに行ってもよろしいでしょうか」

「……ルーク?」



私は驚いて彼の方を見た。



「ああ、許可しよう」

「ありがとうございます」



国王陛下の許可を受けた彼は、すぐさま部屋を出て行った。



「……」



私はルークが出て行った扉をじっと見つめていた。



(やっぱり何か変よ……)



ルークは何ともないと言っていたが、私にはどうもそれが納得いかない。



「陛下、申し訳ありません。私もお手洗いに行ってきます!」



妙な違和感を覚えた私は、すぐに彼の後を追いかけた。







***






「ゴフッ!!!」



王宮の廊下に鮮血が飛び散る。

俺は思わず口を押さえて座り込んだ。



「ハァ……ハァ……」



体内からじわじわと浸されていくような感覚に陥る。



(やはり毒か……)



意識が朦朧とする。

もしかすると俺はこのまま死んでしまうかもしれない。



(ダメだ……俺はまだ……)



死期が近いことを悟った俺の頭に真っ先に浮かんだのは、こちらを見て笑うエミリアの姿だった。

そんな彼女の姿を思い浮かべると、ある思いが芽生えてくる。



(死にたくない……)



少し前までは生きる意味など無く、いつ死んでもかまわないと思っていたのに。

――今は、死にたくなかった。



(エミリア……)



何故だか、あの子にとても会いたくなった。

もう二度とあの笑顔を見れなくなるのだと思うと胸が苦しくなった。



(ああ……こんなことならきちんと気持ちを伝えておけばよかったな……)



今になって後悔しても遅すぎた。

俺は本当にどうしようもない男だ。



「――ルーク!!!」



聞き慣れたその言葉を最後に、俺の意識は途切れた。




読んでくださってありがとうございます!


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