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【完結】愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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54/110

54 友達

「ん~本当に美味しかった!この味が忘れられなかったのよね!」

「……」

「ね!ルークもそう思うでしょ?」

「あぁ、そうだな」



食事を終えた彼は、そう言いながら口元をナプキンで拭いた。



(本当に、どこかのお貴族様みたい……)



ルークの食事の所作は平民とは思えないほど美しかった。

食事中であるにもかかわらず、チラチラ見てしまうほどだ。



(もしかして、本当に高貴な身分の人間だったりして?)



容姿端麗で食事の作法も美しい彼なら十分にありえることだ。



「じゃあ、俺はそろそろ行く」

「え、もう行くの?」

「あぁ、この後用事があるからな」



ルークはそれだけ言って席を立った。



「あ、ちょっと待って!」

「……何だ?」



私の引き留めに、彼は振り返ってこちらを見た。



「ねぇ、ルーク!」

「何だよ」

「私たち、良い友人になれそうじゃない?」

「……………え?」



そんなことを言われるとは思ってもいなかったのか、ルークは固まった。



「私、ずっとそんな気がしてたのよね!あなたとは話も合うし、一緒にいると楽だし!」

「……」



彼は目をパチクリさせて私をじっと見つめていた。



(困惑してるのかしら……)



無愛想ではあるが、彼が悪い人ではないということはよく知っている。

私自身、かなりリラックスして過ごせていたと思う。

家族以外の人間とこんな風にするのは久しぶりだ。



「だから、友達になりましょう!」

「……本気で言っているのか?」



ルークは疑うような眼差しを私に向けた。



(私を信じられないのかしら?)



「当然じゃない!私は嘘なんて言わないわよ!」

「……」



そう言ってもまだ疑いの目を向ける彼に、私はそっと手を差し出した。



「その証の握手よ!」

「……」



ルークは差し出された手を無言で見つめていたが、しばらくしてからゆっくりと私の手を握った。

彼の手の温もりが伝わってくる。



(……!)



何だか嬉しくなった私は、彼の硬くゴツゴツした手を強く握り返した。



「ありがとう、ルーク!」

「……」

「私たち友達になったんだから、これからはいつでも伯爵邸に来ていいからね!あなたなら大歓迎よ!」

「……」



この日、私エミリア・ログワーツは二十八にして初めての異性の友人が出来たのだった。




***




ルークが一足先に店を出た後、私は店内で少し休憩をしていた。



(ふぅ……私もそろそろ帰ろうかしら……)



迎えの馬車も来ている頃だろう。

十分ほど椅子に座ってゆっくりしていた私は、そこでようやく席を立った。



個室を出て勘定をするために、帳場へと向かった。



「ありがとうございました」

「あ、お会計は……」

「……?勘定ならもうお済みですが」

「えッ!?」



私は思わず声を上げて驚いてしまった。



(既に会計は済んでるってどういうこと!?私お金払ってないのに!)



一体何が起きているのだろうか。

驚いた様子の私を見て、店の人が丁寧に説明をしてくれた。



「先ほど、お連れの方が支払いを済ませて出て行かれました」

「え……ルークが……?」



店員さんの話によると、何とルークが代金を全て払ってしまったとのことだった。



(私が奢るつもりだったのに、どうして……?)



彼だって最初からそのつもりでここに来ていたはずだ。

それなのに一体何故。



(もしかして……)



そこで私は、ルークが少し前に言っていたことを思い出した。



『女を悲しませちゃいけないって、昔母親が言ってた』



ルークは母親の教えを守って待ち合わせの場所に来たと言っていた。



(それで、払ってくれたのかな……?)



どれだけ考えても、彼の意図は分からないままだ。




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