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愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした  作者: ましゅぺちーの


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13 衝撃の光景

「ありがとうございました!」

「……」



ブティックを出た私は、一人途方に暮れていた。



(ほ、本当に買っちゃった……)



今になって後悔に苛まれていた。

伯爵家側には事情を説明すればきっと理解してくれるだろうが……。

問題は別のところにあるのだ。



(誰が着るのよ、あれ)



あんなの大して美しくもない私に似合うわけがない。

もういっそ、お兄様の奥さんにでもプレゼントしてしまおうか。



そんなことを考えながら行く当ても無く歩いていたそのとき、視界の端に見知った人物の顔が映った。



(ん……?あれは……?)



その人物はローブを深くかぶっていて顔はよく見えなかったが、たしかに今一瞬だけ銀髪がフードの中から見えた。

失礼だと分かっていながらも、私は遠くに見えるその人物の横顔を凝視した。



(…………やっぱり、あれオリバー様だわ!)



チラッと見えた銀髪に、あの神秘的な紫色の瞳は見間違えようがない。

あれは私の愛するオリバー様だ。

しかし、そうだとすると様々な疑問が浮かび上がってくる。



(どうして彼はここにいるのかしら……?)



使用人たちから聞いた話だと、彼はこの時間王宮で仕事をしているはずだ。

全員がそう口にしていたので、間違いない。

それなのに何故、王都にいるのか。



(休憩時間なのかしら……?)



彼は顔を隠しながら、辺りをきょろきょろと見回していた。

そしてお付きの者も今は一人も連れていなかった。



(あんなに周囲を気にして……まるで隠れて誰かに会いに行っているみたい)



もしかすると、自分の知らない彼の一面を見ることが出来るかもしれない。

気になった私は、いけないと分かっていながらもこっそりオリバー様の後をつけることにした。



(どこへ行くんだろう……?)



彼はしばらく歩いた後、ある邸宅の前で足を止めた。

周りにある家と大して変わらない、平凡な家。

そこに何の用事があるというのか。



そしてオリバー様は優しく扉をノックした。

少ししてからドアが開き、中から出てきたのは――



「お父さん!」



小さな子供だった。



「リオ!元気だったか?」

「うん!」



そう言いながらオリバー様は自身にギュッと抱き着いた子供の頭を優しく撫でた。

その瞳は、私が今までに見たことがないくらい温かかった。



「……」



私はその光景を遠くからじっと見つめていた。

衝撃を受けたようで、体が動かなくなった。



(どういうこと……?)



何が起きているのか分からない。

私が今見ているのは一体何なのだろうか。



そして、そんなことを考えていたとき奥からもう一人の人物が姿を現わした。



「あなた!」

「ローザ!」



それは私と同じくらいの年齢の美しい女性だった。

オリバー様は家の中から出てきた彼女を抱き締めた。



「会いたかったよ」

「もう、つい昨日会ったばかりじゃない」



そして額に優しくキスをした。

腕の中にいる彼女を、オリバー様は愛しそうな目で見つめていた。

私には、一度も向けられたことの無い目だ。



「お父さん、僕行きたいところがあるんだ!」

「何だ?どこへでも連れて行ってやろう!」

「もう、あなた。リオを甘やかしすぎよ」



そして楽しそうに話をしながら、三人は中へと入って行った。

誰一人として、私の存在など気付かないまま。



「……」



オリバー様たちがいなくなってからも、私はしばらくその場から動けずにいた。

さっき見た光景が信じられなくて、信じたくなくて。



しかし、それと同時にどこか納得した自分がいた。



(なるほどね……そういうことなら、私のことなんて愛せないわけだわ……)



何故嫌われているのかと長年疑問に思っていたが、そういうことだったようだ。

今さっき私が見たものがその答えなのだろう。



オリバー様たちからすれば私は悪役なのだ。

真実の愛で結ばれたあの二人を引き裂く悪役。

だからこそ彼は私をあれほどまでに毛嫌いしていたのだ。



(……こんな形で知るだなんて)



子供の年齢は十歳前後くらいに見えた。

ということは、二人は私とオリバー様が結婚する前からの関係なのだろう。



「……」



自分の中で何かが壊れた音がした。



(…………もう、帰ろう)



私は今も和気あいあいと楽しく過ごしているであろう三人のいる家に背を向けて、一人帰路についた。



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