里の元に
ここ、倭国は忍術たちが古くから築いてきた大陸である。
僕迅丸はその一つの里『やまかげ里』の村長息子だ。忍者ってものには沢山の種類がある、武器や忍術がそれぞれ違って、里の価値観も勿論違う。
そんな國で僕は一人前の忍者を目指している。
「迅丸ってさ…どうしてそんなに影潜術が下手っぴなの?」
そう聞くのは僕の幼なじみのさやこちゃんだ。
「ねぇどうして?」
黒い瞳は純粋に疑念を浮かべていた。
「そ、それは…。分かんない。僕も皆みたいにやりたいけど、何度やってもダメなんだ上手く影に潜れないんだよね」
あはは、苦笑を浮かべ話を逸らそうと試みたがさやこちゃんには通用しない。
「迅丸、この里の次期後継者なんだよ?..怠けて散歩してる暇じゃないよ」
そう眉を下げて見つめられる。
「うん」
自分でも理解してる。何千年も栄えてきたやまかげ里の次期後継者である僕が、その伝統である影潜術を覚えられないことが如何に不名誉な事か。例えれば、国で1番鑑定が的確と謳っていた鑑定士が、石のひとつも正しく鑑定出来ないことと同等である。
生まれつき体の弱いさやこちゃんは戦いには不向きだが器用で洞察力が鋭い。毎日僕はサボりを見抜かれ説教されている。まぁ、怒ってるさやこちゃんもとっても可愛いけど。
「____丸、迅丸!」
室内に乾いた音が響く。
「いったぁぁ!さ、流石に酷くない!?さやこちゃん」
痺れを切らしたさやこちゃんが僕の頬を打ったのだ。
いや、そこまで痛くはないけどさ、でも少なからず痛いじゃん!心の中の僕は愚痴を垂れ流すが、その刹那空気が冷えたように重々しく流れて行った。
「迅丸。今のって」
瞳を鋭く細める様子に彼女が何を言いたいのか分かってしまった。
「あ、妖?でもこの里近くには来ないはずじゃ」
「こんな空気、妖じゃないとありえないでしょ」
彼女は立ち上がり、襖を開ける。
「さやこ様、横になってくださいませ」
彼女の家の家臣が戸惑った様子を浮かべる。
「迅丸」
「な、何?」
「私の代わりにあなたが里長様に報告した方がいいわ」その言葉と共に背中を押される。
「で、でもさ!まだ妖って確定した訳じゃないんだよ?杞憂なんじゃ」
言いかけると「何かあってから行動するより、杞憂でも行動した方がいい時もあるの!」とぴしゃん!と襖を閉め部屋に閉じこもるさやこちゃん。
確かにさやこちゃんは体が弱いし無理をさせないように僕が行かなきゃ。
さっきは尋常ではないほど寒気を感じた。妖ってのは仙人曰く、神ノ木から漏れた神の怒りだとか。
神ノ木の根が、重なり層になった物が大陸となり今の『倭国』を創ったと言う言い伝えから大切に祀られている木だ。
僕はさやこちゃんに言われた通り父様の居る館へと駆ける。
「はぁ..はぁ。」
父様の部屋の前で荒い呼吸を整え、その襖を開けた。
「父様!もしかしたら里に妖が」
「何事だ、迅丸」
落ち着いた低い声が部屋に広がる。
「その、里にもしかしたら妖が」
「その情報は確かなものか?」
畳に腰を下ろしながら変わらずクナイを磨く父の風格に長の貫禄を感じる。
「い、いえ…。でも念の為に」
厳格で寡黙な父を前にいつも言葉が詰まる僕は、自分でも頼りないやつだと感じる。
父様は普段から自分のことを話そうとはしない。そのため、僕も父様の事はよく知らないし、父様も僕のことを深くは知らないと思う。
いや、そもそも知ろうとしていないのだと僕は思う。
「一陣の忍者達を向かわせよう」
父の言葉に背後で見守っている護衛の1人が御意、と反応し、瞬く間に陣の元へ向かって行った。
自分とは雲の上のような存在である父様のような里長になるのって何千年もかかるのでは?
そんな考えが脳裏に浮かんでは消えてゆく間に、一室では複数の護衛家来たちが手際よく父様の指示を受け取り行動していた。
続くようにもちろん頑張ります




