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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

モテモテアプリ

作者: 月夜の晩に

◆春恋 モテモテアプリ 


桜舞う季節。


「これで良いのかな…?」


僕は川野辺ひなた。その日、モテモテアプリなるものをインストールした。なんかね、あっぷるストアで見つけたんだ。可愛い桜のお花に、羽の生えたアプリアイコンはなかなか春らしくキュートでよろしい。


「生年月日、名前…えっ住所と電話番号と星座もいれるの?ふうん何でだろう。まあいっか…」


ふむふむと呟きながら個人情報を打ち込んでいくと、後ろから携帯をすいっと取り上げられた。親友の智己だった。


「何しとん」

「なんかねこれインストールすればモテモテに」

「消去と…」

「あーーーー!!やめてよっ」


智己からスマホを奪い返した。


朝の通学路で、やいやいする智己と僕。


「お前なあ、そんなんでモテモテとかなれる訳ないだろ」

「良いのッ」



そんな最中。


ちんたら歩く僕らを、ふいに追い抜いていった美形軍団がいた。高3の先輩達で有名なんだ、あまりにもイケメンだから。桜の下を歩く彼らはあまりにも麗しい。


それぞれにファンクラブができるほど。


まあでもダントツ僕が推しなのが神木先輩!


かっこよくて脚が長くて数学が得意で髪がサラサラで、メガネが高そうなやつでえっとねそれから…。


「そのだらしない顔やめなさい」

「!?」


智己にぺしんとビンタされた。


「いけないいけない…神木先輩の神々しさに打ちひしがれていた」

「使い方間違ってるよ」


呆れ気味の智己に腕を引かれ、下駄箱へ向かう。



「…神木先輩には話しかけないの?」

「う、う〜ん是非そうしたいんだけどまた別の機会に…」

「同窓会の誘いを断る時の言い方だろうがそれは」



智己は知っている。僕が神木先輩にお熱であることを。


智己はシュッとしてキッてしてる塩顔イケメンなんだけど、僕も智己ぐらいだったら神木先輩に話しかけられるのに…。



だけどこんなミジンコみたいな僕じゃ絶対近寄れない。だからせめてモテモテアプリをインストールしてみたってわけ…!




■■■


「神木い。お前はいつたんぽぽくんに話しかけんの?」

「機会があれば」

「とか言ってるうちに俺たち卒業するよ。あっという間だよ。春終わる前にせめて話しかけろよ」


たんぽぽみたいなほわほわした雰囲気だからと、神木が勝手に命名した名前。生徒数が多過ぎてあの子の本名すらまだ知らない神木。


さっき通り過ぎたけど、あの横にいつもくっついてる同級生は一体どういうポジションなんだろうと内心いつも悶々としているのである。



■■■




僕はその日からモテモテアプリに祈りを捧げつつ、そのアプリ内の占いコーナーで神木先輩と自分の相性を占ってみたりした。


しかし超イケメン高3と平凡高2に接点など通常ありはしない。だけどモテモテアプリがナイスアシストをする日が訪れたのである…!





「今日の雨やべえな〜ひなたあ気をつけて帰れよ」

「は〜い。智己も気をつけてねえ」


今日は唐突に大雨な日。あまりに雨が激しいので、午後の授業は中止で下校の運びとなったのだ!やっぴー!



帰りのバスを待っていた時。周囲にたまたま人がほとんどいなかったので、こっそりモテモテアプリを起動してみた。バスまだ来ないから今日の占いでも見ようかな〜って思ったんだけど。


カラン!と手が滑って雨のさなかに携帯を落としてしまった!!やややややばいスマホ買い替えたばっかりなのに!!!!


光の速さで拾おうとしたら、サッとかがんで拾い上げてくれた人が。あっ救世主よ…!


「君、これ落とした、よ…?」

「かっかみき先輩…!!!」


はわわわわわモテモテアプリの画面を見られた!!!!!!


「え、これって…」


まじまじと画面を見つめている。引いてるよね!!!!!

どうしよう!?


「もっモテモテアプリっていうんですよ友達が勝手にインストールしちゃってえ!!!なんかこのアプリ持ってるだけでモテちゃうんですって面白いですよね!!!?」



もう開きなおるしかなくてえいっと画面を見せつけた。見つめ合う僕ら。あうっなんて美しいお顔。しかし『お前アホか』と来るか『死ねよ』と来るか!?だ、誰か助けて〜!!智己〜!!!!


「……確かに君、なんか可愛い気がする」

「え!?」


僕の予想と全く違っていた反応で…。


「うん、君って…やっぱりよく見るとけっこう可愛いね!名前なに?」

「え、ええ〜!?本当ですか!?あっ川野辺ひなたって言います!」



思わずガッツポーズ!モテモテアプリ、き、効いた〜!!!!



■■■


神木がたんぽぽ君改めひなたと初めてたまたまちゃんと話せたと聞いて当初随分と盛り上がった友人2人だったが…。


「てかモテモテアプリって…ひなた君かわいっ」

「それに当てられたことにしてみたって…神木お前…そんな健気なやつだったのかぶはは」


身を折ってほっこりした笑いを噛み締めた友人ふたり。


「…笑うなっ!」


色々恥ずかしくて、首まで赤くしながらつい友人をラリアット。



…しかしなんであの子はモテモテアプリなんぞインストールしているのだろう。狙ってる相手がいたのだろうか…。苦悩の尽きない神木であった。



■■■



「ねねね!智己!!!聞いて!!!モテアプ効いたの!!」

「モテアプて。へえ〜?あの怪しいアプリがねえ」


その日の夜、ウキウキで電話をかけたら智己は若干引いていた。ノリ悪ッ。


「ふふふ先輩とLINEも交換しちゃったんだ〜えへへめっちゃお返事くる〜!えへへえへ」

「ふ〜んやったじゃん。あっごめん俺風呂入るわ」



プツンと電話は切れた。惚気をもっと聞いて欲しかったのに〜!



ちぇっと思いながらLINEを開く。


あっ神木先輩からまたLINE来てる…!うううう生きててよかったあ。



それにしても神木先輩…下のお名前は英智ひでのりさんと読むのですね…。今までえいちって読んじゃってた。ひでのり…LOVE…。


ハッとして僕は改めてふたりの相性占いをモテモテアプリでやってみた。ひでのりだったら相性は…あ!めっちゃいい!!!や、やった〜!!!



■■■


『良かったら映画でも行かない?』


というたった一言を打つのに2時間迷った神木。


…いや急ぎ過ぎ?キモすぎる?いやでも俺はモテモテアプリに洗脳されし男…洗脳されてたら仕方がない。キモがられたら全部アプリのせいにしよう。



そんなヨコシマな考えでドキドキしながらLINEを送る。即既読がつく。


『行きます!』


即返信が来てホッとした。いやドッと疲れた。変な汗をかいていた。



…はあ。それにしても意中の相手をデートに誘うってこんなに楽しいんだ。




モテメンだけど実はひなたが初恋の神木は頬をカッカさせていた。心までほかほかしている。なんか恋って楽しい。人を愛せないんじゃないかと随分悩んできた神木に、ひなたが恋を教えてくれた。



■■■



翌日。学校で智己にでへでへ惚気話をしていた。


「それでね今日ね!これから学校帰りに映画一緒に観に行くことになったんだ〜」

「へえ〜」

「何そのそっけない返事!?もっと盛り上がってよお」


はあとため息を吐いて智己は携帯を出してきた。


「ほら。俺もモテモテアプリ、インストールして

みたんだけど」

「!」





ずいっとモテアプの画面を見せられる。


「あはやっぱ怪しいね!あっもう時間だ!バイバイ智己!また報告するからね〜!夜寝ないでスタンばっててよ〜!!!」



早く行かなきゃ!!!!



■■■



下駄箱からドタバタと走っていくひなたの背中を見守る智己。


「…こんなんで両思いなんてなれたら苦労しねーっつの。ばかやろう…」


失恋がほぼ確定している親友は、そっと肩を落とした。別に張り合う気もなかった。さすがに神木先輩に勝てるわけもない。


神木先輩に恋してるひなたの横顔をずっと近くで見てきたのは紛れもない自分なのだから。



■■■



「神木せんぱい…お待たせしまし、ごほ!」

「えっひなた君あせやばいよ大丈夫?」


ぜえはあと息をつく。やばいやばい本当にあり得ない。浮かれ過ぎて待ち合わせ場所を間違えていた。ば、ばかあー!!!ポンコツすぎる自分に嫌気がさす。どうしてこうドジなんだー!!!!


「ごめんなさい、その。場所、間違えてて。めっちゃ走ってきてげっほごほ」

「う、うん。それは別に良いけど。君ちょっと休もっか?」


優しい先輩がベンチに導いてくれた。水も買ってきてくれた。


「さ、汗ふいて…」

「!!!!」


え、ハンカチでおでこまで拭いてくれた。ドキドキがやばくてあわわ消滅してしまいそうだ。うっでもこれもアプリのご利益?なんだよね…。


アプリがなければ僕なんて相手にもしてもらえない。デートだって実現しないのかもしれない。こんなに凡人でポンコツでミジンコな僕…。


「あ、ありがとうございます先輩。そういえば今何時…ってアレ?携帯?携帯!?」

「え、まさか」


最悪。まじ最悪!!


「走ってどっか落としてきたみたいです…ううううっ映画ああああ!!」


「まっまあまあ!映画なんてまた別日に行けば良いしさ!今日はその、携帯まず見つけて。それから時間余ったらどっか喫茶店でゆっくりお話でもしない?ふたりっきりでさ」


そっと指先を握られてドキッとした。


「せ、先輩…?」


見つめ合う。ドキドキが高鳴る。


「ね?良いでしょ?良いって言ってくれよ。

…てあ〜恥ずかし…」


首まで赤い。多分それは僕も一緒だ。みるみる頬が熱くなっていくのが分かった。


「あ…や、やだな!?なんかほっぺあつい!!」

「おっ俺もモテモテアプリ!インストールしたから!そのせいで俺に恋しちゃったんじゃない!?」


「え!?そうなんですか!?あっそそ、そうですね!うんそのせいだ!!あはは!恋しちゃった!ってか恋してたのは前からですけどお!」

「…えっまじ?りょ、両思い?」


僕の手をつないでぐいと立ち上がった神木先輩。



「ほら!行こ!まずは携帯見つけないと」

「あっそうですね。…ってあれ?携帯が今手元にないのに…モテモテアプリが効いてる…?」


「んな細かいことどうでも良いの!んーなんか遠隔でも効くんじゃない!ほら行こう、ひなた」




携帯なくしてるのにこんなにハッピーな気持ちで良いんだろうか。


でも良いんだ。ドキドキが止まらない。今日この瞬間がずっとずっと続けば良いのに。


初めての恋が叶った薄桃色の夕焼け空はとっても綺麗な色だった。




■■■



両思いを噛み締めて歩く神木の制服のズボンのポケットで携帯が鳴る。きっと友人達からのデートの様子伺いのメッセージだろう。


ちなみに神木の携帯にモテモテアプリがインストールされているのは本当だった。なぜなら彼はアプリの開発者だったから。


趣味でやっているプログラミングと、こじらせた片想いが産んだ自分のためのアプリだったが、思わぬところで真のキューピッドになるとは、開発者の神木自身思いもよらなかった。


それはひなたには内緒の話。


ひなたがモテモテアプリをやっていると知るや否や、開発者権限でひなたの個人情報をめちゃくちゃ調べ相性占いしたのも、内緒の話。


相性がめちゃくちゃ良く出るようにプログラム修正したのも…。





春に訪れた恋のきっかけ・モテモテアプリは、春のうちに2人をしっかり恋人へと発展させた。


彼らの実績が評価され、『春にモテモテアプリ使うと本当に恋人が出来るらしい』


そんな噂話が、今後毎年まことしやかに広まることとなるのである。


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