第96話『魔王ミカリス視点~魔王戴冠~』
しばらく更新お休みして、待たせてしまって、すみませんでした。
本日から、月曜日と金曜日の、週二回ペースで投稿いたします。
遂にこの日がやってきた。魔王の戴冠式を全世界に同時配信する。魔王石を大量に使用して、何千人の奴隷の命と引き換えに、かつての仲間を堕天化させて転生させ、聖女を正式な正妻として娶った。
聖女に会えた時、僕につい甘くなり、かつて恋人だった時のような彼女に甘えまくったが、聖女に『貴方はもう魔王なのでしょう? わたくしに甘えてばかり居ずにもっと魔王らしくしゃんとしなさい!』と叱られてしまった。
僕もやはりまだ詰めが甘い。どうも自分の妻には甘くなってしまう。あと世継ぎは前以上にできにくくなっていた。
互いに魔族となったことで懐妊しにくくなったのだ。こればかりは焦っても仕方がないだろう。
ふたりの愛をゆっくりと育てていけばいい。
そして、様々な優秀な魔族たち千人の兵を従え、僕は玉座の前で記録結晶越しに配信開始のカウントダウンを待っていた。
これから僕は世界を救う希望から一転して、世界を敵に回す絶望と化すのだ。
中途半端な言い方は許されない。やるなら未だ甘さを捨てきれていない人間臭さを捨てて、共感性ゼロで世界に喧嘩を売るべきだ。
僕はスピーチの練習通りの科白を脳内で復習する。完璧だ。これから下等種族のゴミ共の恐怖を煽るには充分過ぎる完成度だ。
ちなみに原稿は賢者ライフィエルに書かせた。僕は魔王軍三大幹部である魔女ガブリエラ。魔賢者ラフィエル。魔剣聖ウリエスを隣に従えてカウントダウンを迎えた。
画面が映し出されて、コメント欄に大量のアンチコメントが流れる。僕はそれらをこの魔王への反逆と見なし、その悔しさを怒りに変えて、傲岸不遜で、独善的な態度でスピーチを開始した。
「待たせたな。下等なる愚民どもよ!」
この一言だけでコメント欄は大荒れだ。再生回数も同接三千万を超えている。この数字は伝説の動画配信者さえ出せなかった快挙である。
僕は原稿に多少のアドリブを混ぜつつ、スピーチを続けた。
「僕は本日より魔王に戴冠した魔王ミカリスだ。かつて勇者と呼ばれた人類の希望が一転して世界の絶望へと至った。この意味が分かるか? 愚民どもよ!」
コメント欄では『ふざけるな』とか『こんな奴は異世界人に殺されるべき』などというアンチコメントが大量に流れている。
だが、僕はそんなアンチコメントに臆することなく、尊大な態度で全世界に喧嘩を売った。
「僕は本日より貴様ら下等なる愚民共を支配し、使えない奴は抹殺することにした! 完全なる魔王天下の下で生き残りたくば、精々使える能力を磨いておくことだ!」
またしても『何様?』とか『こんなふざけた配信辞めちまえ』とか『運営に通報しました』とかくだらないアンチコメントが大量に流れてくる。
当然運営は僕の手先を送って脅迫して、無理矢理許可をとってあるからセーフだし、アンチたちが騒いだところでこの配信は終わらない。
僕は大袈裟に手を画面にかざして、暴力的な発言を臆さず叫んだ。
「聞け! 愚民共よ! この世界は魔王である僕の物だ! 貴様らは魔王である僕の足元に這いつくばれ! これより僕は魔王が世界を支配する時代が到来したと、ここに宣言する!」
僕は鬼の形相で画面を睨んだ。
「ひれ伏せ愚民共! この僕に支配されることに感謝せよ! たった今から僕は下等人類撲滅と魔王による独裁政権のため、貴様らに戦争を申し込む。近々その時が思いもよらぬ形で来ることを震えて待つがいい!」
そして、これだけは伝えておかなければならない。僕は明確に宣言した。
「そして、かつて友と認めし男であり、勇者候補である魔剣士ルシフ・ホープよ! 楽しみにしていろ! 人類最大に希望である貴様を手始めに抹殺してくれる! 僕の勝負から逃げるなよ? ルシフ!」
そこで僕は強化奥義【独善の魔王】を発動させて威嚇した。
「ふははははは! それではこれにて配信は終わりとする! 愚民共よ! 絶望の夜を恐怖のままに味わうがよい! ふははははははは! ふっはっはっはっはっは!」
そして、僕は記録結晶の画面を終了させた。
コメント欄には僕へのアンチコメントと、ルシフによる応援コメントで沢山溢れている。
いよいよだ。いよいよ僕と奴の雌雄を決する時が来た。
待っていろ。ルシフ・ホープ。貴様はこの僕の独善の前に、必ず這いつくばらせてやる。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
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