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第90話『魔人の襲来』

 あれから一週間後。どうやら魔人アスマデウスは北の街を襲撃したらしい。しかし、その街には凄腕の異世界人が居たようで、深手の傷を負わせて追い払ったらしい。


 舞花曰くその異世界人は知り合いらしく、昔好意を寄せられて、何度もフッたのにしつこかったので、縄で締め上げて、警察に通報したらしい。


 アスマデウスと違う意味で色欲まみれの奴に敗北するなんて、少しざまぁと思ってしまう性格の悪い自分がいる。


 それにしても、その街を狙わないとなると、傷が回復次第、次はいよいよこの村を襲撃してくるはずだ。


 その異世界人が真の実力者なのか、スキルの相性が良かっただけなのかは分からないが、ユニークスキル【色欲】も対処さえすれば、そう脅威ではないことに気が付いた。


 実際にここ一週間の練習で、回避する技術が相当上がった気がする。最初の無茶な特訓はやり過ぎだったが、あれも無駄ではなく気配を感じ取るという意味ではかなり有効だった。


 実際に舞花との模擬試合で舞花の攻撃を一撃も当たらなくなった。舞花曰く『元から天才だったけど、地道に技術的な努力したことでそのセンスが怪物クラスの化けたわ』とのことだ。


 ステータスこそあまり変化はないが、それでも108にはレベルアップしている。


 しかも切り札をまた一つ増やした。ゲームにないオリジナルで発展させた物だ。


 ここまで準備して負けるなら、もうそれが運命だったとしかいいようがない。


 そうなったら、俺はなんとか家族や恋人や仲間だけ逃がして、マリアの自宅を教えるつもりだ。あいつの【タイムリープ】スキルがあれば、今の俺は死んでも、きっとやり直した先の俺がなんとかしてくれることだろう。


 俺は今日も村の門の前で瞑想をしながら、まだか、まだかと魔人アスマデウスを待ち続けた。


 そして、遂にその時がやってきた。


「僕様をお待ちかねのようだね。傲慢の魔剣士君!」


 俺は目を開き、たった一言だけ桃髪の魔人に告げた。


「御託はいいからかかって来い。俺を楽しませろ!」


 その科白に魔人アスマデウスはくつくつと嗤った。


「あっはっは。我が魔王様が独善なら貴様は傲慢か。似ているようでやはり正反対だな」


 アスマデウスは魔装備を取り出した。


「ああ。この旅は充実していたいい女とたくさん恋はできたし、街を十個も壊滅させてやった。それも貴様ら異世界人がリークした情報拡散による自業自得だ。つまり異世界の救世主などではなく、世を混乱させるだけのカスなのだよ! 貴様もそう思うだろう?」


 今度は俺が豪快に笑った。それが気に障ったのか、アスマデウスは怒りを露わにした。


「貴様。僕様の言うことの何が可笑しい?」


 俺はシンプルに答えた。


「俺はこう言ったはずだ。御託はいいから楽しませろと。無駄口叩いてないで早く戦おうぜ! こちとらお前が来る前から準備に準備を重ねて、待ちくたびれていたんだよ!」


 アスマデウスはブチ切れて荒ぶった。


「いいだろう。そこまで地獄を味わいたいならすぐに地獄へ送ってやる! 死ね!」


 アスマデウスは細剣で奥義【ホワイトスティング】を繰り出してきた。俺はそれをあっさり回避して、瞬間的にカウンターを浴びせた。


「秘剣――影抜き!」


 前世で舞花から盗んだ秘剣。それによりアスマデウスは一撃で片膝をついた。


「がはぁ!」


 俺は思ったほどアスマデウスが強くないことに気が付いてしまった。俺のあの努力は一体なんだったのか。


 これなら準備せずとも倒せたのではないかとすら思う。だからはっきり告げた。


「この程度か? 魔人アスマデウス?」


 その挑発にアスマデウスはブチ切れて本気を見せてきた。


「これが僕様の本気だと思うなよ! 強化奥義【色欲の魔王】――!」


 そう叫び散らかした魔人アスマデウスは桃色の天使の輪に桃色の翼に、桃色の角が変化したピンクの魔王みたいな姿になった。


 その姿は如何にも少年漫画的変身であり、なんか一割増しイケメンになっているところがちょっとむかついた。


 しかし、そのステータスアップは予想以上で、おそらく十倍近く伸びているだろう。


 俺は思わず好奇心が刺激されて笑ってしまった。


「あっはっはっはっは。やるじゃん。アスマデウス。正直見直したよ。いま俺ものすごく楽しいわ! やっそく戦おうぜ!」


 アスマデウスはブチ切れた。


「僕様を舐めているのか。貴様。傲慢にも程があるだろう! 貴様などすぐに殺し蘇生薬で蘇らせて捕縛してやる! 生かして連れてくるのが魔王様の命だからな!」


 俺を捕縛してという発言から、これでミカリスが仲間になることを拒否した俺のことを根に持っていることが確定した。でもそれ以上に相手の強さへの興味が湧いてしまい、すぐに口の悪い言葉を吐き捨ててやった。


「捕縛してみろよ。逆に俺がお前に熱いゲーマー魂っていうのを思い知らせてやるよ!」


 アスマデウスは血相を変えて激怒した。


「絶対捕縛してやるぞ! 傲慢! はぁ!」


 アスマデウスは今度の十倍以上の速度で【ホワイトスティング】を放ってきた。その攻撃をなんなく回避して、一気に終わらせてやることにした。


「アスマデウス。ゲーマーのプライドを思い知れ! ホワイトスティング!」


 俺も奴と同じ技で反撃した。何の強化奥義を使用していないのに、奴より遅いのに、的確過ぎる刺突奥義が、アスマデウスの胸元をクリティカルに貫いた。


「う、うごぉ!」


 アスマデウスは大量に吐血した。俺は上から目線でアスマデウスに言ってやった。


「どうしたアスマデウス。この程度じゃあまだクッズやベリアスの方が強かったぞ? もっと本気出せよ! 正直これじゃあつまらなくて期待外れだぞ!」


 アスマデウスはすぐに【エクスポーション】で胸元を治すと、ポーチから異宝石に似た物を取り出した。


「こうなったら魔王様にいただいたこの魔王石で今度こそ貴様を地獄へ突き落してやる!」


 アスマデウスは魔王石を噛み砕いて、飲み干した。


 するとピンクの巨大な竜の大怪獣みたいな悪魔へと変化した。まだ昼間だからか、村の人方からも動揺する声が聞こえてきて、ギャラリーが出来ている。そして、そこにレビアの姿も発見した。


 俺は村人とレビアに告げた。


「みんなこっちに来るな! レビア結界村全体を守ってやってくれ!」


 遠目に見るレビアは頷いた。


「分かった。ルシフも気を付けてね?」


「おう!」


 俺がサムズアップすると、レビアは村人を下がらせて俺の魔力から生成した【パーフェクトプロテクション傲慢ver】を使用した。


 これで村人の安全は保障されただろう。俺はアスマデウスに宣言した。


「アスマデウス。自分を捨ててまで挑むお前に敬意を込めて、俺の全てを以てして、ゲーマーのプライドを思い知らせてやる!」


 アスマデウスは嗤った。


「やってみろ! 傲慢!」


 こうして魂の第二ラウンドが開幕した。


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