第9話『高難易度クエスト』
二週間後。さらなる修行の成果により、現在の俺のステータスはこうなっていた。
ステータス
ルシフ
ジョブ 魔剣士
レベル 50
生命力506
魔力485
攻撃力568
防御505
敏捷757
技術506
知性37
幸運795
魔力属性 無
魔力装備 【無の刀】 攻撃力10 効果 全ての敵に与えるダメージが2倍になる。
防具 【黒のコート】 防御力10
ユニークスキル【傲慢】 一度攻撃すると2回攻撃判定が入る。しかも一度に2回魔法と奥義を放てる。2回目は消費魔力はなし。魔法や奥義も1回につき2回判定が入る。かなり高速度で魔法詠唱でき、奥義による硬直時間も無効化する
流派 中央大陸流 免許皆伝 無属性魔術中級。回復魔術中級。
奥義
【魔力強化】 効果 魔力を身に纏い、ステータスをアップさせる。
【スラッシュ】 効果。飛ぶ斬撃を放つ。
【クリアスラッシュ】 効果。魔力を身に纏い、強力な一撃を敵に食らわせる。
【トリプルスライス】 効果。魔力を身に纏い、流れるような三連撃を食らわせる。
【ブレイドダンス】 効果。魔力を身に纏い、踊るような五連撃を敵に食らわせる。
【エクストラブレイク】 効果。巨大な魔力の剣で敵を斬る。
魔法
【ヒール】 効果 体力を回復させる。
【キュア】 効果 状態異常を回復する。
【マジックショット】 効果 無属性の魔力弾を飛ばす。
【マジックバスター】 効果 無属性の魔力砲撃を放つ。
あれから、相当なレベリングを積み重ねた。特に【魔力強化】を限界ギリギリまで高めて、たくさん筋トレと走り込みをし、日課として狩っているキマイラの肉を食って、12時間寝たら、かなりレベルアップしやすかった。
肉体を限界まで追い込んで、栄養を摂取して、質の高い睡眠をたくさんとる。それを【魔力強化】で肉体を限界ギリギリまで追い込みながらやる。どうやら、これがレベル50までの最高率のレベリング方法らしい。
ほとんど現実世界と同じだ。異世界と言っても、人間の肉体はマナによって構成されていると、前に父の書斎の本で読んだことがある。つまり、マナこそが地球で言うところの身体組織なのだ。
それを【魔力強化】で負荷を与えながら、肉体に刺激を与える。それを魔力濃度の高い肉と質のいい睡眠。つまり魔力によって質が強化された睡眠によって成長ホルモンが爆発的に増えて、超回復も数倍になるという算段だ。
地球のフィジカルトレーニングと原理は全く同じである。しかし、そんな努力チートと呼べるレベリングにも、限界が来ており、ここ一週間、1もレベルが上がってない。そろそろ別のレベリング方法を模索する時かもしれない。
ちなみに俺の肉体は前のガリガリな時と違い、身長も多少伸びており、細マッチョになっていた。流石は成長期といったところか。まあ。前世も成長期だったことに違いはないが。
そして、母にクエストの報告をすると、Cランク試験に合格しただけでなく、【ワイバーンキング】を倒したことで、特別指定冒険者に認定して貰えた。つまりCランクでありながら高難易度クエストや、隠しダンジョンへの挑戦権を得たというわけだ。
しかし、それはギルドが指示した時だけらしい。好き勝手にダンジョンや、高難易度ミッションを周回したりして、楽しむにはまだまだ信用が足りないということだ。
なんとか、手っ取り早くBランクやらAランクになれないだろうか。確か、村や街の危機を救い、小さなコミュニティの英雄として認められたら、A級認定されるんだっけ。
目立つのはあまり得意ではないが、それでも隠しダンジョンや高難易度ミッションを自由に行うためには、避けて通れない道である。
まあ。そうそう村がピンチになることなんてないし、むしろ原作のような形でシナリオが進行してしまうと、俺の闇堕ちが確定してしまう。それだけは避けないといけない。
俺は新たなレベリングのヒントを得るために、冒険者ギルドでクエストを受注することにした。
ギルドへ向かうと、相も変わらず酒臭い。俺は不快感を堪えながら、受付カウンターへと向かった。そこでは、愛しの妹が今日も真面目に働いている。
まあ。このあと、お菓子を爆買いして、自室で夜遅くまでだらだら食べまくっているのだ。父に似て怠惰極まりない妹である。
でも自分の働いた金でやっていることだ。半ニート状態の俺が口を出すことじゃない。ギルドカウンターで俺の番が回って来ると、妹は上機嫌でマニュアル通りの対応をした。
「ようこそ冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用向きでしょうか? お兄ちゃん♪」
お兄ちゃんは余計だが、こいつウキウキしてやがる。俺と顔を合わせる度に、ハイテンションになるのだ。こいつはどれだけブラコンなのだろうか。それよりも適当ないいクエストがないか、妹に聞いてみた。
「ベルゼナ。なんかいいクエストとかないか? 最近、これ以上強くなることに、限界を感じているんだ。なるべく強敵と戦いたい!」
すると、ベルゼナは、俺に一枚のクエスト用紙を渡した。
「ちょうど、よかった。母さんから特別指定冒険者として、初の特別クエストに挑んで貰うって、報告が入っていたんだよ。どう受けてみる?」
俺は好奇心が抑えきれず、自然と尋ねていた。
「クエストの難易度はどのくらいなんだ?」
妹は無言で俺に用紙を手渡し、はっきりと宣告した。
「難易度Aランク級のクエストだよ。つまり高難易度クエストだね。正直に言うと、大好きなお兄ちゃんが怪我しないか。あたしめっちゃ心配だよぉ……」
健気に俺の心配をしてくれるとは、なんて可愛い妹だろうか。大概、俺もシスコンだなと思いながら、自信満々な態度を見せて安心させることにした。
「大丈夫。今の俺のレベルは50だ。ソロでも充分にAランク級クエストを攻略できる。それよりも、このクエスト内容ってなんでQRコードなんだよ?」
妹は手短に説明した。
「それだけ極秘のクエストってこと。全くそれくらい、今時なら普通に気が付くでしょ? しっかりしてよね!」
「す、すまん……」
知性のステータスの低さが影響したのか、どうやら俺の理解力はかなり低いようだ。それにしても、異世界人が関与しているせいか。クエスト受注も現代方式なんだな。ちょっと感動した。
俺は手持ちの冒険者カードで、QRコードをスキャンする。すると、魔族の暗殺者討伐のクエストが表示されていた。しかも、その暗殺者の強さは噂通りのAランク。異世界に来て初の対人戦。ちょっとだけ興奮する。
俺は冒険者カードで、クエストの受注をタップし、妹に見せた。妹もマナコン正式名称マジックコンピューターを操作して、クエストの受注を確認した。
「受注は完了だよ。それでは冒険者様のご健闘をお祈り申し上げております。無理しないでね。お兄ちゃん?」
「ああ。心配するな。楽勝で終わらせてやるよ! ゲーマーのプライドを思い知らせてやる!」
ゲーマーという単語に妹は困惑していたが、すぐにいつも通りの表情に戻して、元気よく笑った。
「うん! 頑張ってね。お兄ちゃん。もしクリアできたら、あたしがほっぺにチューしてあげる!」
またしてもブラコン発言をしているので、俺ははっきりと妹の間違いを正してやった。
「だから妹は恋愛対象にならないと、いつも言っているだろうが。いい加減兄離れしろ!」
「むぅ。お兄ちゃんのいけずぅ……」
なんかいじけ出したが、相手にするのも面倒臭いので、俺は「行ってくる。じゃあな」とだけ告げて、冒険者ギルドを後にした。