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第79話『資金調達完了』

 レイルズエクストラダンジョンを攻略したおかげで、レビアの道具屋経営の資金は充分なほど貯まった。


 あと、金貨一万枚の分け前だが、ちょうど四当分の二千五百枚に分けることにした。


 そして、俺たちはホープ村に帰ってきた。久しぶりの我が屋敷に四人で入り込んだ。そこにいたのは真面目にメイドや執事として働くバッカスやエナの姿だった。


 バッカスは俺に駆け寄ると前とは信じられない敬語で語りかけた。


「お帰りなさいませ。坊ちゃん。奥様と旦那様とお嬢様がお待ちでございます! お急ぎリビルグまでお越しください」


「ああ。わかった。ありがとう。バッカス」


「ありがたき幸せにございます」


 まさかバッカスがここまで有能だとは思わなかった。雑事や家事や料理もエナと手分けして完璧にこなす。しかも村人たちからの信頼を厚いときた。これにはもうあの頃のヘタレの兄ちゃんとは言えなくなっていた。やはりこいつに冒険者など向いてなかったのだ。執事が天職だったということだ。


 それよりバッカスに言われた通り、リビングまで向かうと、そこには母さん。父さん。ベルゼナの家族三人が揃っていた。


 そして、母さんが「四人とも座りな」と言ったので、俺たちは空いている適当な椅子にそれぞれ座った。


 ちょうどベルゼナと隣同士になったレビアは手を合わせて喜んだ。


「ベルゼナちゃん。久しぶり!」


「レビア姉も久しぶり。元気だった?」


「もちろんだよ。しかもルシフのおかげでお店出す資金貯まっちゃった!」


「すごい! おめでとう! レビア姉!」


「うん! ありがとう!」


 なんて会話の最中のこほんという咳払いが聞こえた。母さんがどうやら本題に入りたがっているようだ。


 俺たちは自分たちの冒険者カードを見せて、レイルズエクストラダンジョン攻略の報告をした。


「ほら。俺たちきちんとダンジョンの攻略をしてきたよ!」


 母さんは感心したようににんまり笑い、どさっと金貨の山を置いた。


「金貨五千枚だ。実は国王の奴レビアに凄く期待していてね。なんでも国家公認の錬金術師として店を構えて欲しいらしい。なんでもこのホープ村と王都に二店舗」


 その言葉を聞くとレビアは不安がった。


「それってホープ村を離れないといけないということですか?」


 母さんは首を振った。


「そうじゃない。本店はこのホープ村に開いて、王都に支店を構えろということさ。ほら。これが国王の認定証書だよ!」


 レビアはそれをじっくり眺めると、納得したように頷いた。


「はい。それなら構いません。それで支店の方の人員はいらっしゃるのですか?」


 母はにんまり笑うと、二枚の写真を見せた。


「ほら。この二人の錬金術師ルイナと商人ジンクだ。二人ともかなりの天才でね。ルイナもあんたよりかレベルは下だが、世界最高峰の錬金術師だよ」


「本当ですか!?」


「ああ。世界一の錬金術師と呼ばれているくらいだからね。そんな奴があんたの味方をしてくれるのさ」


「ふわぁ~。なんだか夢のような話しみたい……」


 ルイナとジンクの二人の名前はよく知っている。ルシフたちが闇堕ちして旧ハラグロード村が滅んだ時の補充要員として後半に現れる錬金術師と道具屋だ。


 ふたりともものすごく品揃えの良いアイテムをたくさん置いておりこの異世界の原作ゲーム【ブリリアント・ファンタジスタ】をクリアする際にお世話になりまくったキャラだ。


 確かにあのふたりが仲間になってくれるならこれ以上心強いことはない。


 そして、母さんは話しを切り上げた。


「まあ。話しは以上だ。それじゃあ……」


 そこで絵美が母を呼び止めた。


「すみません。卓也、いえルシフのお母様!」


 急に絵美が呼び止めたので、母はせっかく立ち上がったが、もう一度椅子に座った。


「なんだい。何かようかい? 晩御飯のお代わりならないよ。いつもベルゼナが食べちまうからね!」


 そこでベルゼナがムキになって怒り出した。


「もう! お母さん! 人を腹ペコ娘みたいに言わないでよ!」


 そこで一同からツッコミが入った。


「いや。あんたは腹ペコだろうさ!」

 と母が言い、続けて父が。


「レビアは腹ペコだね」


 と言う、次に俺と舞花とレビアと絵美が続け様に言った。


「普通に腹ペコだろ」


「腹ペコだよね」


「腹ペコね」


「腹ペコですね」


 皆に言われて、ベルゼナはムキになってさらに激怒した。


「いいもん。今夜はダイエットしてやるんだからぁぁぁ! うわあああああああああん!」


 俺は内心(まあ。無理だろうな)と呟いた。こいつから食欲を取ったら何も残らない仕事が人並にできるただ阿呆だからだ。


 ベルゼナは半泣きになりながら部屋を出ていった。そこで俺はすぐにバッカスに指示を出した。


「バッカス。それとなくレビアにフォローを入れておいてやってくれ!」


 バッカスはお辞儀した。


「かしこまりました。坊ちゃん!」


 バッカスはレビアの後を追って部屋を出た。


 そして、話しは先ほどの絵美の問題へと移行した。絵美はこほんと咳払いしてから、自分の考えを皆に打ち明けた。


「実はですね。ワタシもこの家に住ませてもらえないかなって? もちろん家賃は払います。こう見えても前世は天才イラストレーターですから! お金ならいくらでも稼げます!」


 すると、父は身を乗り出して絵美の手を握った。


「君、絵が描けるのかい? なら是非ともぼくの小説の表紙を描いてくれないかな? 異世界のアニメイラストは人気だからたぶん売れると思うんだ! もちろん印税は半分ずつだ。どうかな?」


 流石は大人気小説家だ。もう異世界にラノベを誕生させようという発想に至っている。やはり家の親父は天才らしい。


 絵美も喜んで引き受けた。


「ベルフゴルさんの小説があれば、きっと異世界でもラノベが生み出せます! 異世界ファンタジーラノベ描いて天辺獲ってやりましょう!」


 父はハイテンションで喜んだ。


「是非ともお願いするよ? マモいいよね? 彼女の居住を許可しても?」


 母は頷いた。


「確かに春宮絵美のイラストはこの界隈では有名だ。それとウチの旦那の小説が合わせれば若い層にもヒットする小説が書ける。いいんじゃないか。絵美の居住を許可する。家賃は払って貰うけどね。だから遠慮せずにやってみな!」


「本当かい! やった! これで世界一の小説家も夢じゃないぞ!」


「はい! 是非ともよろしくお願いします! 一緒に世界を獲りに行きましょう!」


 ふたりはがしっと固く握手した。どうやらクリエイター同士、意気投合したようだ。


 その時、後ろからよく聞き取れない声が聞こえてきた。


「うぅぅ。絵美ちゃんまで居候なんだ。ライバルが増えすぎだよ……」


「せっかく卓也とふたりっきりだったのに。絵美ったら空気読みなさいよ……」


 俺は背後でぶつぶつ言うふたりに語りかけた。


「お前ら。今なんか言ったか?」


 ふたりは首を振った。


「別に何も言ってないよ!」


「そうよ。あんたの気にすることじゃないわ!」


 なんか若干ふたりの視線がじっとりしている気がするのだけど、おそらく気のせいだろう。


 とにかくこれで夢の道具屋経営は決まった。俺はレビアに声をかけた。


「良かったな。レビア。夢が叶って!」


 すると、レビアは満面の笑みで応えた。


「うん。これもみんなのおかげだよ。本当に、ほんっとうにありがとう!」


 レビアがペコペコ頭を下げると、舞花と絵美も嬉しそうにお祝いの言葉を告げた。


「良かったわね。レビア。これであんたも立派な国家公認の錬金術師ってわけね!」


「本当にすごいです。レビアたんはやはり天才だったのですよ! 当然ですよね! ワタシの最推しなんですから!」


 そして、俺はレビアの身体をそっと抱きしめた。


「本当におめでとう。愛しているよ。レビア……」


 すると、レビアは俺の胸元で涙を流し、そっと顔を見上げて、俺にこう言った。


「これもみんなルシフが最初に手伝おうって言ってくれたからだよ。本当にありがとう。これはそのお礼ね!」


 レビアはそのまま勢いに任せて俺にそっと口づけをした。俺は顔面が朱色に染まるのが分かった。レビアの顔も真っ赤だ。まさか口づけが褒美なんて、これ以上嬉しいことがあるのだろうか。


 そこで一同がこほんと咳払いした。


「「「「ふたりだけの時にやれ!」」」」


 見事に突っ込まれてしまい。俺たちは「「失礼しました」」と頭を下げた。


 何はともかく、こうしてレビアの夢の道具屋経営のために資金集めと、国家公認の錬金術師という世界でもトップクラスの錬金術師になるという夢が同時に叶ったのであった。


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