第77話『下層の地獄』
進んだ先の下層で俺たちは辛苦を経験していた。何故なら敵全員がSランクモンスターばかりだからである。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
何度も何度も剣を振り下ろし、幾度となく攻めくるモンスターの猛攻を斬って捨てる。当然Sランクなので、他の仲間は多少ダメージを受けているようだ。その為、俺は仲間全員にリヒールをかけている。傲慢のスキルのよりほぼゾンビ状態である。
この最強のバフに加えて、レビアの氷の奥義札のおかげで敵を次々一掃できていた。それでも何千匹と次から次へと沸いてくる。
俺はこの地獄をハイになり過ぎないように楽しんでいた。ハイになるのは虚飾の魔王との戦いだけで充分だ。
出現するモンスターのほとんどは【キングミノタウロス】か【ストロングフェンリル】の二匹である。
Sランクの中でも上位勢のこいつらを打ち破るのは、本当に難しい。それでも俺は負けまいと剣を振るい続けた。
「らああああああああああっ!」
怒涛の秘剣――微塵斬りと車懸りで無数の手数と回転斬りで敵を沈めた。それでも無尽蔵に敵が沸いてくる。
俺は楽しくて仕方ないが、仲間にとっては絶望そのものだろう。こんな地獄の中で楽しめる奴なんて、俺にみたいに頭のいかれた奴にしかできない。
舞花は剣士の誇りだけで気高く喰らいついているが、何度もダメージを受けている。
「くっ……! やあああああああああああああああ!」
舞花は持ち前の負けん気だけで【キングミノタウロス】と【ストロングフェンリル】相手に桜花の如く舞うように剣を振るっていた。
この異世界での奥義【ブレイドダンス】を通常攻撃へと昇華させた新たな舞花の秘剣である。
俺も彼女にまけまいとその技を一目で盗んで真似して、さらに昇華させて桜花の舞いで敵を屠りまくった。
一体何匹倒しただろうか。まだまだ終わりが見えそうもない。ここでふとレビアが弱音を零した。
「はぁ。はぁ。はぁ。本当にわたし達、生きて帰れるのかな……?」
すると絵美もその言葉に同意した。
「そ、そう、ですね。ふぅ。ふぅ。これは思った以上にきついです……」
そこで舞花が叱咤した。
「指揮を下げること言うんじゃないわよ。アタシは死んでも諦めないわよ!」
間違いなくみんな精神的に疲弊している。だから俺は盛大に明るく笑い飛ばした。
「あはは。あっはっはっは。あーはっはっはっはっはっはっはっはっはっは♪」
俺の様子に舞花が眉を顰めた。
「どうしたのよ? 卓也? 遂に壊れちゃったんじゃないでしょうね?」
俺は指を左右に振った。
「ノンノンノン! こんなことくらいで絶望するはずないだろう! だって俺にとってこの状況は最高のご褒美だからな!」
そして、続け様にほざいた。
「なぁ。みんな。たとえ地獄だとしても、もっと戦いを楽しもうぜ! どんなに苦しくても、どんなに逃げたくても、それでも希望の光と己がまま戦意を高めよう。本来ゲームなんて物は楽しむためにあるものなんだからな!」
俺の言葉に一同は大爆笑した。
「あっはっは。本当にルシフは呑気だね!」
「うふふ。それでこそ卓也ですね!」
「あはははは。嫌いじゃないわよ。そういうの。いいわ。やってやろうじゃない!」
俺はみんなに号令をかけた。
「行くぞ。地獄の中でも楽しもうぜ!」
俺たちは再び戦意を取り戻し、戦いの渦へと身を投じた。
☆☆☆
三時間後。俺たちはようやく最奥の部屋まで辿り着いた。この下層に試練はなかった。試練なんかで息抜きさせるよりモンスターとの戦いで絶望的に疲弊させるのが、虚飾の魔王の目的だろう。本当に卑怯な奴である。
しかし、その副産物として冒険者カードに映し出される俺のステータスは今こうなっていた。
ステータス
ルシフ・ホープ
ジョブ 魔剣士
レベル 92
生命力920
魔力910
攻撃力1270
防御1210
敏捷1840
技術910
知性250
幸運1840
魔力属性 無
魔力装備 【自尊の魔剣+3】 攻撃力300(350) 効果 全ての敵に与えるダメージが3倍+クリティカルヒット率上昇。追加効果 攻撃力+50
防具 【自尊のコート】 防御力300 効果 全ての魔力耐性と全状態異常耐性を75パーセントアップする。追加効果 魔力耐性25パーセントアップ。全状態異常耐性25パーセントアップ。
アクセサリー 【キュアリング】 効果 全状態異常耐性が25パーセントアップ。
ユニークスキル【傲慢】 一度攻撃すると2回攻撃判定が入る。しかも一度に2回魔法と奥義を放てる。2回目は消費魔力はなし。魔法や奥義も1回につき2回判定が入る。かなり高速度で魔法詠唱でき、奥義による硬直時間も無効化する。
流派 流派 中央大陸流 免許皆伝 東大陸流免許皆伝 西大陸流免許皆伝。虚無流免許皆伝。無属性魔法免許皆伝。回復魔法免許皆伝。防御魔法免許皆伝。天下無双流上級。
奥義。
【魔力強化・改】 効果 魔力を身に纏い、全ステータスを最大1,2倍上昇させる。
【新魔力強化・改】 効果 魔力を身に纏い、物理系か魔法系のステータスを2倍に上昇させる。
【限界突破】 効果 魔力を身に纏い、全ステータスを3倍に上昇させる。
【スラッシュ】 効果。飛ぶ斬撃を放つ。
【クリアスラッシュ】 効果。魔力を身に纏い、強力な一撃を敵に食らわせる。
【トリプルスライス】 効果。魔力を身に纏い、流れるような三連撃を食らわせる。
【ブレイドダンス】 効果。魔力を身に纏い、踊るような五連撃を敵に食らわせる。
【エクストリームブレイク】 効果。巨大な魔力の剣で敵を斬る。
【ファーストブレイド】 東大陸流初級剣術。魔力を剣に纏わせ、敵に大きさ袈裟斬りを放つ。
【セカンドブレイド】 東大陸流中級剣術。魔力を剣に纏わせ、交差するような袈裟斬りを放つ。
【サードブレイド】 東大陸流上級剣術。魔力を剣に纏わせ、四連続で交差して敵を斬る。
【フォースブレイド】 東流秘伝の剣術。魔力を剣に纏わせ、十二連続で交差して敵を斬る。
【ホワイトスティング】 西大陸流の初級剣術。魔力を纏わせ、突き攻撃を繰り出す。
【イノセントレイン】 西大陸流の中級剣術。魔力を纏わせ、三連続で敵を突く。
【ホワイトアウト・スティンガー】 西大陸の中級剣術。魔力を纏わせ、敵にクリティカルヒットを与える突きを繰り出す。
【スノウ・インフィニティ】 西大陸流の秘伝の剣術。魔力を纏わせ、連続四回クリティカルヒットを与える突きを繰り出す。
【シャドウレイン】 無の剣を無数に出現させて飛ばす。
【ブラッドネスバースト】 無の魔力を纏い、ドリルのように身体を回転させて突っ込む。
【デススティンガー】 無の魔力を纏い、敵の急所を突き、一定の確率で即死させる。
【ダークネスブレイカー】 無の魔力を纏った剣で、無数の巨大な剣を出現させて飛ばす。
【火花一閃】 火花が飛び出るような居合斬りを放つ。
【無双連閃】 目にも止まらない連続二十回の連続斬りを相手に浴びせる。
【天下布武】 無心になり斬ることで、敵にクリティカルヒット+二倍のダメージを与える。
魔法
【ヒール】 効果 怪我や体力を回復させる。
【キュア】 効果 状態異常を回復する。
【リヒール】 効果 一定時間自動で体力が徐々に回復する。
【リザレクション】 効果 瀕死や身体欠損を治す。
【エクスヒール】 効果 完全に傷や体力を全快させる。
【バリア】 効果 敵の攻撃を防ぐ魔法障壁。
【プロテクト】 効果 敵の攻撃をほぼ完全に防ぐ魔法障壁。
【ガードウォール】 効果 壁のような魔法結界により一度だけ敵の攻撃を完全に無効化する。
【パーフェクトプロテクション】 効果 巨大な魔法結界を生み出し、敵の攻撃を言って一時間完全に防ぐ。
【マジックショット】 効果 無属性の魔力弾を飛ばす。
【マジックバスター】 効果 無属性の魔力砲撃を放つ。
【マジックボム】 効果 無属性の巨大な魔力爆撃弾を放つ。
【マジックバースト】 効果 無属性の巨大な魔力砲撃で大爆発を巻き起こす。
もうほぼレベルもカンストまで近づいた。しかし、この異世界にはおそらくカンスト以上のレベルが確実に存在するだろう。
つまり俺もまだまだというわけだ。
それでもここまで強くなれたものみんなのおかげだ。レベルも全員80以上になっている。
これで負けるならもうそこまでだったということだ。
俺は負けやしない。どんな相手であろうとも楽しみながら、命の重さも背負ってやる。俺は自分が真の戦闘狂になりつつあるのを自覚した。
そして、みんなに号令をかけた。
「みんな。次でいよいよ。最後だ。一度休憩してから、先へ進むぞ!」
「「「了解!」」」
またしてもガールズトークに花を咲かせる女子を眺めながら、女の子の笑顔って可愛いななんて不埒な想いを抱きながら、俺はその尊い命を守るために全力を出すことを決めた。
そうそれこそが俺のゲーマーとしてのプライドなのだから。




