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第7話『レベリングの成果』

 俺は、あれから毎日、常に【魔力強化】を行いながら、筋トレ、素振り、剣術の型の稽古、戦闘知識の勉強、魔法の練習、モンスターとの実戦、三食なるべく高タンパク質中心の生活、毎日十時間の睡眠を実践した。


 その日々は充実したものであった。俺はやはりゲームのためなら、努力を努力と思わずに楽しくやれるのだ。その甲斐もあって、俺の現在のステータスはこうなっていた。



 ステータス 

 ルシフ

 ジョブ 魔剣士

 レベル 40

 生命力405

 魔力395

 攻撃力436

 防御411

 敏捷615 

 技術405

 知性35

 幸運685 

 魔力属性 無 

 魔力装備 【無の刀】 攻撃力10 効果 全ての敵に与えるダメージが2倍になる。

 防具 【黒のコート】 防御力10 

 ユニークスキル【傲慢】 一度攻撃すると2回攻撃判定が入る。さらに一度に2回魔法と奥義を放てる。2回目は消費魔力はなし。魔法や奥義も1回につき2回判定が入る。かなり高速魔法を詠唱でき、奥義による硬直時間も無効化する。

 流派 中央大陸流 免許皆伝 無属性魔術中級。回復魔術中級。

 奥義 

【魔力強化】 効果 魔力を身に纏い、ステータスをアップさせる。

【スラッシュ】 効果。飛ぶ斬撃を放つ。

【クリアスラッシュ】 効果。魔力を身に纏い、強力な一撃を敵に食らわせる。

【トリプルスライス】 効果。魔力を身に纏い、流れるような三連撃を食らわせる。

【ブレイドダンス】 効果。魔力を身に纏い、踊るような五連撃を敵に食らわせる。

【エクストラブレイク】 効果。巨大な魔力の剣で敵を斬る。

 魔法 

【ヒール】 効果 体力を回復させる。

【キュア】 効果 状態異常を回復する。

【マジックショット】 効果 無属性の魔力弾を飛ばす。

【マジックバスター】 効果 無属性の魔力砲撃を放つ。


 正直、現在の俺のステータスは、原作ルシフがレベルをカンストした時のステータスを既に超えていた。まさか自分でもここまで強くなるとは思わなかった。


 まだ魔法や剣術面で不安があるものの、これなら隠しダンジョンにも挑戦できる。問題は冒険者ランクだ。今の俺の冒険者ランクは最弱のDランク。つまり隠しダンジョンへ挑戦するには最低でもBランクにならないといけない。つまり、あと二ランクも昇級しないといけないのだ。


「よし。母さんに頼み込んでみるか!」


 困った時に母を頼るのは、思春期少年の特権だ。というか、母マモは冒険者ギルドのマスターなので、冒険者という身分である限り、大人でも頼らざるを得ないのだが。


 ともかくだ。母に頼み込んで、Cランクへの昇級試験を受けさせて貰おう。全ての話しはそれからだ。


 俺は、一刻も早く自分の強さを試したくて、冒険者ギルドの建物に向かって駆け出した。



 冒険者ギルドの建物は赤い屋根をした木造建築だ。この村は木造建築が多いのだが、もしも火災が起こった時はどうするつもりなのだろうか。


 簡単に村中、火の海になるのが、目に見えているのに。まあ。それも、きっとあの悪徳領主ハラグロード男爵が、村を発展させる資金をケチっているからだろう。どの世界でも、偉い政治家やら、貴族とやらは、私腹を肥やすことに夢中らしい。


 庶民としての不満はこのくらいにしておいて、俺は冒険者ギルドの扉をゆっくりと開けた。そこは酒場が兼営されているせいか、周囲に漂う酒気で俺まで酔ってしまいそうだった。俺はすぐに受付カウンターへ向かった。そこには愛する可愛い妹が懸命に働いていた。


「またのご利用をお待ちしております。次の方どうぞ!」


 家ではあんなに子供っぽいのに、しっかり接客できているじゃないか。兄として少し妹を見直した。俺はカウンターまで進むと、急に妹は態度を変えた。


「あ、お兄ちゃん。どうしたの? もしかしてあたしへの愛の告白にでも来たの? えっへっへぇ♪」


 前言撤回。やっぱりこいつは、俺の妹だけあって、アホである。俺は妹の可愛いおでこを傷つけない程度にデコピンした。


「あたッ! もうお兄ちゃん何するのぉ!」


 俺は兄の威厳を見せるべく、妹に説教を開始した。


「お前な。今の俺は冒険者として用があって来ているんだぞ? 公私混同するなよな! あと妹に手を出す趣味はない。他の男を当たれ!」


「ぶぅ。お兄ちゃんのいけずぅ!」


「何がいけずだ! ちゃんと仕事しろ!」


 本当に世話が焼ける妹だ。まあ。修行ばかりでほとんどニート状態である俺の言えたことではないのだが。


 妹はようやく本来の落ち着きを取り戻し、通常の勤務態度へと戻った。


「ようこそ冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用向きでしょうか?」


 俺は端的に要件を伝えた。


「ギルドマスターに会わせてくれ。Cランクの昇級試験を受験したい!」


 妹は驚いていたが、何故か嬉しそうに頷いた。


「かしこまりました。では奥の部屋にお進みください!」


 どうやらアポなしでも、昇級試験の場合は、ギルマスに会えるらしい。奥の木製の扉を開くと、また木製で出来た通路をぎしぎしと音を鳴らしながら歩き続けて、わりとすぐにギルマスの部屋へと辿り着いた。


 そこで妹のベルゼナが、木製のドアをノックした。


「ギルマス。昇級試験を受験したいという、冒険者の方がいらっしゃいました!」


 すると、間髪入れず奥から声が聞こえてきた。


「通しな!」


「はい。失礼します。お客様もどうぞお進みください」


 俺は遠慮せずにギルマスの部屋へと進んだ。そこにはギルマスの制服に身を包んだ。いつもの二倍増しでキリっとした母が机の前で手を組んでいた。


「さて。バカ息子。昇級試験を受けたいとか抜かしているらしいね。なら、それを証明できるだけのステータスは鍛えたんだろうね?」


 俺は自信満々に頷いた。


「ああ。当然だ。俺のステータス見てなよ!」


 俺は冒険者カードから自分のステータスを見せた。すると、母は肩透かしを食らったように、口をあんぐりと開いていた。


「あ、あんた。このステータスは一体……」


 俺はゲーマーのプライドに懸けて自信満々に宣言した。


「まあ。頑張ったからな。俺の努力の成果ってやつかな!」


 俺はふふん見たことかと、どや顔を決め込んでいると、何故か母はブチ切れた。


「バカかい! 普通、努力したくらいじゃ、ここまでステータスなんて上がらないんだよ! もしかしてあんた、異世界の人間と記憶や魂が融合した状態。転生者じゃないのかい?」


 やっべぇ。一瞬で見抜かれた。俺は誤魔化すようにとぼけてみせた。


「え、えっと。なんのことかなぁ?」


 母はなるほどと納得したように頷いた。


「とぼけたって無駄だよ。なるほどね。これで、この前のキマイラ戦の無双ぶりにも説明がつく。全く実の息子がよそ様の子供と記憶や人格を共有しているとはね……」


 やっべぇ。これはもう、あんたはアタイの息子でも何でもない。出ていけ、とか言われないだろうな。


「あの、その……」


 俺は冷汗でいっぱいだった。焦る俺を見て、母さんは豪快に笑い飛ばした。


「はっはっは。まあ。転生者と記憶を共有したって、あんたはアタイの息子に変わりはない。そこは安心しな。だって今のあんたは昔の息子そのものだからね。おそらく記憶のベースは向こうの子供の物になっているのだろうが、人格はおそらく同一だ。何せ同じ性格気質や同じ魂を持つ者しか転生者を依り代にしたりできないからね!」


「え? それってつまり、記憶とかは俺だが、人格はルシフってこと? それって俺という存在の自己統一性とかどうなんの?」


 母ははっきりと答えた。


「おそらく統一されている。あんたのあの戦闘狂ぶりも、本来のあんたの気質だけじゃないだろう? おそらくルシフと混じって、そうなったのさ。つまり、あんたはルシフと元の転生者が合体した存在ってところか。まあ。思春期なんて人格が変化しやすい年頃だ。一皮むけて成長したとあたいはそれで納得するさ!」


 そうか、それを聞いて安心した。どうやら俺は俺であることに変わりはないし。ルシフと俺の関係はどうやらパラレルワールド的な自分自身と言って差し支えないようだ。


 俺がトラックに轢かれて死亡して、別世界の同一人物と魂が混じりあったというべきなのだろうか。転生の原理についてこんなに早く分かるとは、正直ラッキーである。てか、なんかこの人やたら転生者のことに詳しいな。もしかして前例があるのか。俺は好奇心が抑えきれずに尋ねてみた。


「ねえ。母さん。もしかして、転生者とか、転移者って他にも居るの?」


 母は頷いた。


「ああ。当然存在する。数もわりと多い。ほとんどは転移者で、転生者は少ないがね。だから、この世界は、けっこう文明が発達しているんだよ。あんたの持っている冒険者カードだって、あんたの世界のスマホによく似ていると思わないかい?」


 確かに今思えばスマホにそっくりだ。似てるとは思っていたが、まさか異世界人が作っていたとは。


 俺は本題が逸れていることを思い出し、母に本来の要件を告げた。


「確かにスマホに似ているね。転生者のことはよく分かったよ。それはそうとさ? 昇級試験受けてもいいよね? これだけ強くなったんだし?」


 母はにやりと笑った。


「ああ。当然だ。まさかアタイの息子が転生者とはね。これは成功者人生確定かもしれないねぇ! ああ。親として鼻が高い!」


 なんか急に意識高いこと言われて怖いんだけど。それに俺は成功するとかあんまり興味ない。自分が未知の隠しダンジョンや強敵と戦えればそれでいいのだ。


 それにしても、この母親と来たら、転生者であることをわりとすんなり受け入れて、しかも喜んでいるよ。それくらい異世界人は、この世界で活躍しているのだろうか。


 ていうか、自分が腹を痛めて産んだ子供が、他所の子供と合体したことについて、どうも思わないのだろうか。てか、成功者人生確定って、この母は【強欲】のスキルを持つだけあって、金にさえなれば、愛とかどうでもいいのかもしれない。なんて毒親だ。


 まあ。それについてはどうでもいい。俺は昇級試験さえ受けられたら、それでいいのである。


 母は真剣な面持ちで語り始めた。


「では、お待ちかねの昇級試験の内容だ。まず……」


 俺は昇級試験の内容を聞いて、正直わくわくしてしまった。

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