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第59話『水竜リヴァイアサン』

 まさか。まさか。まさか。まさか。まさかのとんでもない事態が大、大、大発生だ。


 なんとあの原作ゲームでも六神竜の一人に数えられるSランクモンスターの中でも最強クラスのボスモンスター七神竜【水竜リヴァイアサン】がイレギュラー発生したのだ。


 確かに七神竜だけはクリア後にランダムでイレギュラー発生することが多いので、レアドロップに続き、さらに低い確率を引いたことになる。いや、むしろこんな怪物が現れるというのは、俺みたいなバトルジャンキーじゃない限りは不運と捉えるのかもしれないな。


 だが、俺は目の前でじっとこちらを見据える水竜を眺めて、ワクワクが抑えきれなかった。


「水竜リヴァイアサン! 俺と一騎打ちしてくれ!」


 俺はそう吠えた途端、背後から反対意見が約二名から聞こえてきた。


「馬鹿! 一騎打ちとか何考えているのよ! 相手はユニコーン以上の強敵かもしれないのよ?」


「そうだよ! また無茶なことしないで! ここは三人で戦おうよ、ね?」


 俺は後ろの二人にはっきりと断言した。


「絶対に嫌だ! 俺一人で戦わせてくれ!」


 またしても後ろから口うるさい声が響き渡ってきた。


「あんたバッカじゃないの? 今度こそ間違いなく死ぬわよ?」


「そうだよ。いくらなんでも無茶過ぎる。いい子だからわたしたちと戦うって言って!」


 俺はこれ以上話しても無駄だと思ったので、ふたりの話しを無視して、【パーフェクトプロテクション】は二人にかけた。ユニークスキル【傲慢】の効果で、これで十二分くらいは誰にも邪魔されずに、水竜と戦える。


 結界の向こうからは物凄い大声で怒鳴る声が聞こえた。


「ルシフゥゥゥゥ! あんたこんなことしてただで済むと思ってんじゃないでしょうね?」


「もう! ルシフのバカ、バカ、バカ! もう知らない!」


 もしかしたらレビアに後で別れようと言われるかもしれない。それでも俺はここでこいつとの一騎打ちから逃げたら、もうそれはゲーマーと呼べない。俺のゲーマーのプライドが許されないのだ。


 それに二人がいると正直足で纏いだ。水竜の攻略法を何も知らない仲間が余計な行動をしたら、一瞬で死は免れない。


 そういう道徳的な意味もある。もちろんそれは後付け理論の言い訳だ。本当はこの怪物と一騎打ちしたくてしょうがないのだ。


 俺は魔剣を【水竜リヴァイアサン】に向けるとこう宣言した。


「行くぞ! 水竜リヴァイアサン! お前にゲーマーのプライドを思い知らせてやる!」


 俺は舞花の言うことを思い出した。この世界の戦いは殺し合いだ。一瞬の気の緩みが命取りになりかねない。


まず初手をどうするか。俺は左右にジグザグに瞬歩で移動しながら、思考を巡らせた。敵の攻撃パターンは三種類だ。


 水のブレスによる攻撃。尻尾を振り回して大ダメージを与える強攻撃。最後は【嫉妬の激流】と呼ばれる敵の方が優勢になると放ってくる水の奥義が凶悪だ。それをもろに喰らうと俺の生命力では一撃で即死に至る可能性がある。


とにかく【嫉妬の激流】を呼び寄せないように、火力の高い魔法や奥儀による攻撃は控えた方がいいだろう。


 ならクッズの奴も大好きだったあの奥義で攻めるに越したことはない。俺は【新魔力強化・改】で身体能力を特化させた。


 瞬歩の幅がさらに早く鋭くなる。俺は神速で距離を詰めて、敵にお得意のあの奥義を繰り出した。


「ブレイドダンス!」


 まるで踊るような剣撃の嵐。じわじわ水竜の生命力が削れるダメージ感覚を感じる。おそらく一割は削れただろうか。

 水竜は通常の攻撃パターンである水のブレスを吐き出した。俺はそれに合わせて防御魔法を発動させた。


「プロテクト!」


 これはダメージをほぼ完全に防ぐが、一割くらいはダメージが入ってしまう魔法だ。しかし、ユニークスキル【傲慢】の効果により、そのダメージはほぼゼロに近い数値まで減らせただろう。


 俺はすぐに防御結界を解き、続けて連続で敵を斬りつけた。


「秘剣・燕返し」


 高速二連続の通常攻撃が相手に生命力を削り取る。しかも二回判定が入り、四連続で相手に切り傷を与えた。


「ギャオオオオオオオオオオスッ!!」


 相手は怒っているが、それでも【嫉妬の激流】を発動するまでに至っていない。今度は強攻撃で尻尾を振り回してきた。俺はそれをジャンプして躱し、相手の頭上に一気に襲いかかる。


「秘剣・虎乱刀!」


 強烈な通常攻撃が水竜にヒットし、さらにスキルの効果でもう一発入る。これで生命力を二割削れた。


 あともう二割だ。それくらい削れれば、一気に勝負を決められる。水竜は俺の秘剣でかなりのダメージを受けた結果、またしても怒った。


「ギャオオオオオオオス!」


 またしても尻尾によるぶん回しだ。俺はまた同じようにジャンプで躱し、再び虎乱刀をお見舞いする。


 その繰り返しのコンボが決まり、面白いように敵の生命力が削れる感覚が手に取るように分かる。


 およそ五回そのコンボを決めたあと、 相手もじり貧だと分かり、水のブレス攻撃に切り替えてきた。


俺はまたしても【プロテクト】で防いでから、再びクッズの大好物を使用した。


「ブレイドダンス!」


 またしても華麗な踊りが相手に炸裂する。花びらのように。桜吹雪のように。美しい蝶のように。流れるような剣舞が、水竜の生命力を五割まで減らしたことを実感した。


 そこで急にイレギュラーが発生した。


「ギャゴオオオオオオオオオオオオオス!」


「マジかよ……」


 俺はその声に恐怖の念を隠せなかった。何故ならその方向はヘイトが溜まった状態であり【嫉妬の激流】の発動する前の叫び方だからだ。


 俺はすぐに防御魔法を発動した。


「ガードウォール!」


 敵の攻撃に合わせて瞬時に発動した。恐怖で怯んでいたらもう詰んでいたに違いない。水竜の口から水の砲弾は放たれる。


一発目。二発目。三発目。四発目。ここまでは防御魔法で防げた。しかし、最後の五発目だけは避けようがない。俺は瞬時にポーチから【レア・エリクサー】を取り出し、敵の攻撃が入る直前に一気に飲み干した。


 それが功を奏して、俺の生命力は三割くらい持ちこたえただろう。俺はあまりのピンチ展開に思わず脳汁がドバドバドバっと一気に放出される感覚を味わった。


「おお! いいね! これくらい追いつめられないと燃えてこないぜ!」


 俺は傷だらけの肉体を【レア・エリクサー】で回復したあと、すぐに【新魔力強化・改】を魔力特化に切り替えた。


 そして、例の切り札を発動した。迫りくる虚無。その虚空はまるで永久の牢獄のよう。美しくも常闇の渦が巻き起こり、圧倒的な虚無の魔力が充満する。時は満ちた。そう感じた瞬間、その奥義を解き放った。


「行くぞ! 水竜リヴァイアサン! ゲーマーのプライドを思い知れ! ダークネスブレイカァァァァァァァーッ!!」


 圧倒的な虚無の剣撃波が巨大な渦を呼び、それが四連続で発動される。その圧倒的な暴虐により【水竜リヴァイアサン】の生命力は一気に虚無の闇へと葬り去られた。


 俺は魔剣を軽く払ったあと、鞘に納めて、圧倒的な脳内快楽物質の波に襲われて叫び散らかした。


「よっしゃああああああああああああああああああ!! 水竜リヴァイアサン撃破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 俺は思わず拳を空高く突き上げたのだが。その時、防御結界が解ける音がして、そこから薄気味悪いくらいの笑顔のふたりがこちらへゆっくり歩いて近寄って来た。


「ひ、ひぃぃぃっ!」


 小さく悲鳴をあげながら腰を抜かして、その場にへたり込む。そして、俺の前まで来たふたりはたっぷり怖いくらいの笑顔で闇のオーラを発したまま、ゆっくりと呟いた。


「ねえ? あれほど無茶は辞めてって言ったよね、ね?」


「ふふふ。覚悟はできたかしら?」


 迫りくる俺は土下座で謝罪した。


「調子乗ってすんませんしたぁぁぁぁぁぁ!! お願いだから許してくださいぃぃぃぃ!」


 俺がなんとか助けを懇願するが、それも虚しい努力と化し、ふたり同時に怒りの咆哮をぶつけられた。


「「今度という今度は絶対に許さないから覚悟しなさい!」」


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」


 その後、ふたりから約三時間の長いお説教を喰らわされた。こうして、無事に七神竜【水竜リヴァイアサン】を討伐し、ついでに伝説級素材【水竜の角】も手に入れたのであった。

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